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2009-01-04

鬱病の元患者が鬱病の良き理解者とは限らない。かも知れない。

 新年あけましておめでとうございます!

 

 さてうつ病の話。(おい)

 

 読んで色々考え込まされた(というか微妙に身につまされた)記事があったので。

 

配偶者がうつ病になったときにするべき、たった一つのこと」

 http://d.hatena.ne.jp/Britty/20090103/p1

あなたの配偶者がうつ病であったなら、あなたが病院へ行きなさい。主治医と話をしなさい。治療方針に疑問があるなら、なおさらそうしなさい。

 「身につまされた」と言っても、幸いにして私はうつ病になったことがありません。

 家族もたぶんありません。

 

 だから私は、うつ病については具体的なことは何一つ知りません。

 

 でもたぶん、ここに書かれていることはとても大切なことだと思いました。

 

 ……そう感じた、というのは、すでにそんな気がしていたから、なんですが。

 

 一部で有名な、林先生の「精神科Q&A」。

http://kokoro.squares.net/psyqa.html

 私、例の「まさかとは思いますが」よりもずっと以前から愛読してまして。(でも最近は読んでない)

 

 なのでまあ、

「とにかく主治医と相談しろ。素人意見は聞くな。薬は飲め。うつ病は治る」

 という風に考えていました。

 

 前掲の記事とほとんど同じスタンスですね。

 

 じゃあなんで今更考え込んだり身につまされたりしたのかと言うと、最近卒論ちゃん*1とちょっと議論になったから。

 

 卒論ちゃんはうつ病になったことがあるんだそうですよ。

 いわゆる希死念慮も。*2

 

 で、本人曰く、

「うつ病は薬では治らない」

 のだそうで。

 

カウンセリングとかも行ったけど、結局は自分の気の持ちようだよ!」

 と。

 

 一方私は、

「いや、うつ病というのは基本的に脳の病気であって、“気の持ちよう”をコントロールできなくなるのが症状なのだから、その主張は“ぜんそくを治すためには咳をしないこと”というようなもので意味がない。

 うつ病が脳という臓器の病気である以上、胃や肝臓など他の臓器の疾患と同様、治療のためには内科的治療、すなわち投薬が必要だ」

 と主張したのですが、これはいたく卒論ちゃんの機嫌を損ねました。

 

 なんか、

「うつ病が何年も長引いて、薬漬けになってなんか被害妄想が出たりとか精神的にもおかしくなっちゃった知り合い」

 の話(ちょっとうろ覚え。コメント欄参照)とかを持ち出して反論されました。

 

 個人的には、それは「うつ病ということになっている」だけなんじゃないか*3、うつ病の治療薬ってそんな副作用はないんじゃないか、とか思ったりしましたが、どっちにしても林先生情報だし、林先生は「ネット情報を信じるな阿呆」と常々言っておられるのでそれは差し控えました。

 

 しかしそもそも、カウンセリングと気の持ちようだけで直ったうつというのはホントにうつ病なのか。

 

 当時の卒論ちゃんの、長年にわたって治らない上に日常生活に苦痛をもたらす水準の病気を抱えている、という状態では気分が落ち込むのが当然で、それ自体はうつ病というよりうつ状態なんじゃないのか。

 本当に病院で「うつ病」という診断だったのか……などと確認したら本当にケンカになりそうだったのでその辺で話題を変えました。

 

 いや、後でWikipediaで確認する限り(またネット情報だよ!)、うつ病というのは今日では

社会生活に支障をきたすほどの気分の落ち込み」

 を指すのであって、脳の器質性疾患だとかどうとかは問題にしない(そもそも確認できない)のだそうですから、確かにあの時期の卒論ちゃんは「うつ病」だったのだと思います。

 

 妻の病歴はさておき、考え込まされたのは、

「うつ病は気の持ちようである」

 というのは、たぶん、うつ病になり、そして治った人の主観的経験としては全く正しいのだろうな、ということ。

 

 だって、事実

「うつ病って気の持ちようで治るんじゃね?」

 と思えるようになったら治るわけですから。

 

 でも、本当は「気の持ちよう」は結果であって原因ではない。

 

 そして、現にうつ病である人に対して

「気の持ちようだよ!」

 とアドバイスする、というのは、

「治らないのは治る気がないからだ」

 と言っているに等しいように思います。

 

 それって、実はこの記事↓の筆者が言ってることと同じなわけで。

「健康な人を選べばよかった、」

http://anond.hatelabo.jp/20090103032255

薬なんか飲んでも極論、治らないんだよ。

本人が回復しようと思わないと治らないんだよ。

 もちろん、私も家族もうつ病ではありません。

(妻が結婚以前そうだった、とは言えるわけですが)

 ネット情報なんか信用できません。

 

 だから、自分がうつ病になった経験がある上、「うつ病が長引いた知り合い」がいる卒論ちゃんの意見に太刀打ちすることは難しいのですが……。

 

 ケンカになるしな。

 

 でも、もしも将来、自分がうつ病になったらどうなるんだ、と不安ではあります。

 

 私自身は、そうなったら精神科に行って投薬中心の治療を受けるのが最善だ、と確信しています。*4

 

 しかし身内に

「そんなの気の持ちようだよ!薬漬けは良くないよ!私が経験したから確かだよ!

 と主張する人がいる……というのは、治療環境としてどうなのか……。

 

 まあ、今は新婚で幸せ一杯の生活。(いや、本当ですよ?)

 それなのにうつ病に罹患する心配をして憂鬱になるなんて、豊作の畑を前にして飢饉の心配をするようなもの、とは思うものの……。

 

 でも、いつかは飢饉が来るかも知れませんよね?

 

 ……ともあれ。

 

 してみると、家族が(あるいは自分が)うつ病になったから、といって、

「以前うつ病になったことがある」

 人に相談する……なんていうのが実は悪い結果を招くこともあるのではないかな、などとつらつら考えたことでした。

 

結論:

「だから主治医に聞けってば!(=ネット情報も「元患者」も当てにするな)」

 

*1:我が最愛の妻。

*2:しばしば「もう死にたい」と言って泣く、というのが、大学時代あたりを通して何年もの間あったのは確か。
 深夜に電話してきて、私が何時間もなぐさめたりとかよくあった。

*3:林先生のQ&Aではよくある。
本当は別な病気(多くは統合失調症)なのだが、表向き「うつ病」「自律神経失調症」などということになっている(時には患者家族も知らされていない)……という。

*4:万一卒論ちゃんがうつ病になってもそう勧めるでしょう。
それが治療環境としてどうなのかは、素人の私にはよく分からない。

BrittyBritty 2009/01/04 12:06 はじめまして&あけましておめでとうございます。新春から重い話題を振って申し訳ないです。
さて、「うつ病」という病名ですが、DMS-IVやICD-10など医師が使用する疾病分類としてのうつ病・患者にいうときのうつ病(注3でおっしゃっている「表向き」の病名)・公費補助や保険屋さんあるいは健康保険の診療報酬にいう病名でのうつは完全には一致していないようです(これは当時の主治医から聞きました)。加えて従来うつ病といわれてきた病気(DMS-IVでいう major depression "大うつ病")のほかに心身症等の症例としての「うつ状態」も保険診療やあるいは日常の会話では「うつ」と呼ばれるようなので、言葉が同じでも違う疾病状態を指しているということは往々にしてあるのかなと思います。

BrittyBritty 2009/01/04 12:09 ところで二点気になったのですが
・希死念慮は大うつ病の重要な症例のひとつですが、希死念慮のある病気はうつ病だけじゃなかったような気がする……
・「うつ病が何年も長引いて、薬漬けになってなんか精神的にもおかしくなっちゃった」はこれだけだとなんともいえないですが不思議な把握の仕方ですね。そもそもうつ病になった時点で「精神的におかしく」なっちゃってるわけで……
ともかくも、ご家族ご友人ともども、よい一年でありますように。

filinionfilinion 2009/01/04 12:37 はじめまして。コメントありがとうございます。
 
>新春から重い話題を振って
 いや、こちらが勝手に言及しただけですので。
 補足等していただいてこちらこそありがとうございます。
 
>言葉が同じでも違う疾病状態を指しているということは往々にしてある
「医師が使用する疾病分類」と「健康保険の診療報酬にいう病名」で違いが生じることがあるとは知りませんでした。
ご教示ありがとうございます。
 
>希死念慮のある病気はうつ病だけじゃなかったような気がする
 よく知らないのですが、そうなのですね。
 でも、本人が「うつ病だった」「希死念慮(そういう言葉は使いませんでしたが)もあった」と言うのでたぶんそうなのだろうと。
 医師の診断も受けたらしい(少なくとも病院には行ったらしい)ので……。
 
>そもそもうつ病になった時点で「精神的におかしく」なっちゃってるわけで……
 ああ……確かに。
 これは私の記述の不備でした。
 本人の言い方では、確か「被害妄想みたいなのも出てきて」といった、(素人判断的には統合失調症を疑わせる)内容でした。
 記憶が曖昧だったので書かなかったのですが、訂正しておきます。

fivefogsfivefogs 2009/01/07 16:58 ども。快方に向かいつつある“現”うつ病患者です。

私は卒論ちゃん、もとい、奥様と同意見。抗うつ剤(ジェイゾロフト・ソラナックス)を処方されて服用しましたが、結局服用前と何ら違いを感じられなかったもので。
ただし、あくまで「私の場合は…」なんですよね。たまたま私は、薬効に気づかないまま快方に向かったものの、全ての患者さんにあてはまる保証はないわけで。
そういう意味では
「鬱病の元患者が鬱病の良き理解者とは限らない。」
は真理だと言えるでしょうね。

うつ病は急性期の対応を誤ると重篤になる恐れがある上に、薬が心の支えになる人もいれば、会話が心の支えになる人もいて、さらに回復期に入っても慎重な対応(薬の処方とか)が必要な病気ですからね…などと『素人意見』を述べたりして。

filinionfilinion 2009/01/11 11:28 誰とは言いませんが熱心な読者の方からメールがありました。
「ところで、Brittyさんって“2007-09-11 集合知vs最高学府”でコメントしてませんでしたか?」
 え。
 
 ……うわーほんとだー!
 
 なんか印象が違ったのでしまったー!
 
 ……失礼しました>Brittyさん
 
(メールにはもっと色々書いてあって色々引用したのですが、本人の希望により削除しました)

filinionfilinion 2009/01/11 11:32 >霞先生
 コメントありがとうございます。
 
>奥様と同意見。
 むむ。
 どうも旗色が悪いでしょうか。
 
「抗うつ薬は即効性はないので効果は自覚されにくいが(しかも時として副作用だけ速効だったりする)薬効はある」
 と主張しようと思ったのですが、どうも反証不可能命題のような気がしてきました。
 
 いやまあ、臨床試験を経て認可されてるんだから効果はあるのでしょうが。
 
 本文中では重視しませんでしたが、周囲の人やカウンセラーの精神的支えも大切、というのはおっしゃるとおりだと思います。

jan_janjan_jan 2009/01/15 10:30 はじめまして
トラックバックのご挨拶をかねて、コメントさせていただきます。

僕も抗うつ剤飲んでいた経験がありますが・・・
filionさんの「抗うつ薬は即効性はないので効果は自覚されにくいが(しかも時として副作用だけ速効だったりする)薬効はある」という意見に賛成です。数週間して、効いてくるのでわかりにくいものだと思います。
ただ、数多くある抗うつ剤の中でその人によって効くものと効かないものはあると思います。また、薬が効かないタイプのうつ病ってのもあるみたいです。
とはいえ、医者にかかっていれば、ECTとか薬以外の治療の可能性もあるわけだし、危険と思えば入院なんかの手続きもしてくれるわけで・・・結局、「だから主治医に聞けってば!」てのは、王道だと思います。

filinionfilinion 2009/01/17 17:43 トラックバックありがとうございます。
 
>数多くある抗うつ剤の中でその人によって効くものと効かないものはあると思います。また、薬が効かないタイプのうつ病ってのもある
 
 ありがとうございます。
 医者に行けば、薬の種類も、あるいは薬以外の治療方法もあるわけで、たくさんの手だての中からその人にあった方法を選んでもらえる、というのは心強いですね。
 
>結局、「だから主治医に聞けってば!」てのは、王道だと思います。
 
 ありがとうございました。

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