朝日社説 日中歴史研究―政治との距離感が大切だ : asahi.com(朝日新聞社)

 研究の継続を確認した08年5月の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の訪日までは、議論は順調だった。だがその後、一般国民への影響などを理由に中国側が、討議要旨に続いて論文すべての非公表を求める事態に陥った。

 ここがとても重要なところで、このあたりから胡錦濤・共青同が劣勢になってきた。それが今回の現代的な文脈になっている。

 とはいえ、曲折を経て1年以上遅れて公表された報告書に驚くような内容はない。南京大虐殺の犠牲者の数も中国側は最大で30万超と主張するなど、評価の違いも当然のことながら目立つが、一方で総じて抑制的な表現が多く、淡々と書かれている。双方の研究者とも、日の丸と五星紅旗から距離を置こうとした跡がうかがわれる。

 これはそのようだ。以前NHK BSで中国側の歴史学者南京大虐殺について言及していたが、日本のウヨサヨが空中戦やっているような問題はすでに事実上凍結されていた。あの歴史は国民党と日本の対応でもあり、さらに上海戦からの文脈にある。史学的な対象としては全体の意味合いもまた問われている。上海戦におけるドイツの関与なども次第に明らかになるにつれ、国民党側での思惑も再検討されるだろうし、共産党との関わりも今後解明されなければならない点は多い。

 共同研究はこれからも続くことが決まっているが、戦後部分の公開を急いでほしい。日中間で相互理解を深めるのは当然だが、研究は日中で独占されるべきものではない。諸外国の幅広い有識者の知恵や研究成果をとり入れてもらいたい。研究が静かに続けられるよう見守りたい。

 このあたり、胡耀邦系の朝日新聞識者の本音だろうが、非常に難しい。
 ただ、ここで不思議だと思うのは、日中戦を含む歴史は、日中学者以外も研究しているので、そういう参照がもう少し積極的に含まれてもよいのではないかと思う。