産経 【主張】不審死死刑判決 社会常識が筋道をつけた+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

 「疑わしいだけで有罪にすることは許されない」と殺人についての無罪を主張する弁護側に対し、検察側は論告で、次のように裁判員に訴えかけた。
 「窓の外には夜空が広がっている。夜が明けると、雪化粧になっていた。雪がいつ降ったかを見ていなくても、夜中に降ったと認定できる」
 「誰かがトラックで雪をばらまいた可能性もあるが、そんなことをする必要はない。健全な社会常識に照らして、合理的かどうかを判断してほしい」
 難解な法律用語ばかりがちりばめられた、裁判員制度施行前の論告では、考えられないような表現だった。
 国民に司法に参加してもらい日常感覚や常識を裁判に反映させることなどを目的とした裁判員裁判で、状況証拠の総合判断や事実認定のあり方に、一つの筋道をつけたといえるのではないか。
 36回を数えた公判のすべてに、6人の裁判員は参加した。結審後の約1カ月間続いた評議で、重い結論に至った。

 比喩のあり方には首をかしげるところもあるが、大筋でいえば、これが民主主義国の司法の方向性にかなっている。私たち市民の判断が司法を支えていくのだし、法はその判断の力を抑制するものとしてある。