社説動向

 オリンピック関係の社説が多かったが、特に気になる見解もなかった。
 田村さん⇒日本を道連れに自沈する野田政権、せめて「超円高」の是正を+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

 超円高は日本の主力艦隊を自沈させる。ゴールドマン・サックス(GS)の7月27日付リポートによると、日本の株価は円・韓国ウォン相場に強く相関する。GSの分析によれば、ウォンの対円相場の下落幅以上に日本株が下方に振れるのは電気機器や鉄鋼である一方、自動車など輸送機器はほぼ同じ割合で変動する。電機産業は韓国のサムスンを筆頭に、半導体、液晶、携帯電話など一部は日本企業に追いつき追い越す具合で、製品品質の区別がつかない。残る国際競争条件の差異は価格に絞られるのだから、為替相場が決定要因になる、と日本株投資家の多数が受け止める。

 まあ、そういうことなんだがなあ。
 変な制裁するより日銀が動けば韓国はぎゅっーとなるのだが。

毎日 社説:天然ガス 調達戦略に手を尽くせ− 毎日jp(毎日新聞)

 原発がゼロないし非常に低い稼働率に落ち込む中で、大停電なしにやってこられたのは、天然ガスの調達がスムーズにできたからだ。米国向けのカタール天然ガスがそっくり日本に回った。米国はいわゆるシェールガス革命で自国産が急増し不要になったからだ。まことに綱渡りであった。だが、こうした偶然に今後も頼るわけにはいかない。

 これは重要な指摘。さらに含みもあるんだが。

 化石燃料の輸入代金は12年度、天然ガスの輸入急増などで福島原発事故以前の10年度に比べ4.6兆円の増加が見込まれる。貿易収支は赤字がちになってきた。少子高齢化が進んでおり数年後は経常赤字への転落が不可避であろう。国債市場の波乱が懸念される。天然ガスを筆頭にエネルギーの輸入価格は1円でも引き下げておきたい。

 実際は総合的に考えたほうがいいのだけど。

朝日 米大統領選―争点がはっきりした : 朝日新聞デジタル:社説

 大きな政府か、小さな政府か。富裕層への増税か、財政削減か――。

 これは共和党バッシング側のありがちな見方で実際はそうでもないんだけど。

 ライアン氏の財政削減策には、高齢者向け医療保険費の大幅削減など、中間層にとっても抵抗が強い内容が含まれる。これを嫌って穏健な支持層が離れる恐れもある。
 民主党は早速、「歳出削減は富裕層減税のためで、中間層には増税になる」「高齢者は大幅負担増になる」と批判し、揺さぶりをかけている。

 というけど、民主党側にビジョンがあるわけでもない。

 陣営にはブッシュ前政権を支えたタカ派が外交ブレーンに入っており、米国の単独行動主義が再び顔を出すのかどうかが気がかりなところだ。

 いや、気がかりなのはオバマさんの及び腰と裏での暗躍(ロボット殺人)などのアンバランスが奇妙な問題を引き起こさないかということ。
 朝日新聞としてはなにげにリベラルだから共和党バッシング的な論調なんだろうと思うが、そう簡単な見立てでわかる問題ではないよ。
 ただ、結論ははっきりしていて、よほどのことがなければ、ロムニーが当選する見込みはない。
 その意味でいうなら、継続するオバマ政権がどうなるのかという視点で見るのが本来の社説なんだけど。

エジプト・メモ

 ⇒東京新聞:エジプト国防相解任 軍側の出方 焦点:国際(TOKYO Web)

 【カイロ=今村実】軍幹部らの解任に踏み切ったエジプトのモルシ大統領は十二日、暫定憲法憲法宣言」の新たな改正令を公布した。立法権や予算承認権、新憲法制定の主導権を軍から奪還する内容で十三日、発効した。憲法宣言でモルシ政権の骨抜きを狙ったが、手痛い反撃を受けた軍の出方が焦点となる。
 軍は新大統領が就任する直前の六月、先手を打ち憲法宣言を一方的に改正し、立法権などを掌握。だが、地元メディアによると、モルシ氏は軍の改正を無効化し、代わりの改正令を出して広範な権限を軍から奪った。新憲法制定については、現行の起草委員会が行き詰まれば、軍に代わり、大統領が新たな委員会を任命すると規定。憲法制定から二カ月以内に人民議会選の手続きを始める、と定めた。
 モルシ氏が国防相から解任したタンタウィ氏は約二十年間、同職にあった軍の最高実力者。今月、新内閣で再任されたばかりで屈辱的な解任劇と言える。

 アルジャジーラ報道ではタンタウィは合意の上とのこと。タンタウィのシナリオの可能性はある。この場合、問題は、暫定憲法改正令で国会がどのようになるかという点。自然に放置すれば、国会はイスラム色となり、SCAFの利権が奪われる。それをSCAFが見逃すわけはないので、タンタウィとモルシーの密約があればそこの時点で明確になる。
 タンタウィがSCAFで孤立していた可能性、つまり、軍内部が分裂していた可能性はある。この場合は、火だねが残る。
 背景にあるのは、経済の困窮と対イスラエル。その点で重要なのは、先日のガザ問題。
 ⇒エジプト シナイ半島で襲撃、警備兵16人死亡 モルシー大統領に打撃 - MSN産経ニュース

 エジプトは、イスラエルのガザ封鎖政策に協力してきたムバラク政権崩壊後の昨年5月、国民に根強い反イスラエル感情に背中を押される形でラファハを開放。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの関係が深いムスリム同胞団出身のモルシー氏も就任後、ガザ支援の強化を打ち出した。
 しかし、シナイ半島では昨年以来、エジプトからイスラエル天然ガスを供給するパイプラインの爆破事件などが頻発。イスラエルは、ガザとシナイ半島の過激派の連携が強まり、同半島が不安定化することに懸念を強めていた。
 対ガザ政策の見直しに積極的なモルシー氏にとって今回の事件は、軍部から批判を浴びて政治的な打撃となる可能性がある。

 本来なら、これはモルシー側の失点になるはずだったし、モルシーはハマスとの関係を重視するはずだった。
 ところが⇒エジプト大統領、国防相と参謀総長を解任 権力闘争激化へ - MSN産経ニュース

 突然の解任理由は不明。表向きには、東部シナイ半島で今月5日、パレスチナ自治区ガザ地区から侵入したとされる武装集団の襲撃でエジプト兵16人が死亡した事件の責任を問われた可能性がある。

 モルシーは意外にも強行にガザを叩き、責任を軍部に押しつけた。
 これはイスラエルの思惑でもあった⇒エジプト軍、シナイ半島空爆 報復の連鎖懸念+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

イスラエルはもともと、エジプト最大のイスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身であるモルシー大統領が、同胞団を源流とするハマスへの支援強化の姿勢を見せていることを警戒していることから、事件を機にモルシー氏に政策転換を促す思惑があるとみられる。

 これに対しモルシー氏は事件後、シナイでのテロ掃討を約束、ラファハ検問所の無期限封鎖も決めるなど政策の修正を余儀なくされつつある。そこにはイスラエルとの関係が深い軍部からの圧力も働いているとの指摘もある。
 こうした中、モルシー氏は7日、事件で殺害された兵士らの軍葬を欠席した。「警備上の問題」としているが、国家元首が軍葬に参加しないのは異例で、同氏と軍部の対立関係が背景にあるとの見方が一般的だ。同胞団関係者は「(一連の事件で)大統領は十分な情報を得ていない」と軍部を批判、今後、両者の緊張が強まる可能性は高い。

 形の上からすると、モルシーは、実際には、軍部とイスラエルの動向に従って動いたことになる。
 陰謀論めくがこの背景に⇒米国務長官:イスラエル首相らと会談 中東歴訪終える− 毎日jp(毎日新聞)

エルサレム花岡洋二】クリントン国務長官は16日、エルサレムイスラエルのネタニヤフ首相らと会談し、14日から3日間に及んだ中東歴訪を終えた。クリントン長官はイスラエル側に対して、エジプトのモルシ大統領が対イスラエル平和条約を守る意向であることを伝える一方、イスラエルと敵対するイランの核兵器保有は断固阻止すると強調。中東不安定化に対するイスラエルの懸念の緩和に努めた。
 クリントン長官は14日、穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団を支持母体とするモルシ大統領に「平和条約の順守が国益にかなう」と説いた。エジプトの民主化プロセスについては「全ての国民、特に少数者の人権を守り、法の支配を確立しなければならない」と指摘し、米国の支援を約束した。モルシ大統領との権力争いが深まっている軍最高評議会のタンタウィ議長には15日、「国の安全保障を担う役割」に専念するよう求め、政治介入をけん制した。

 陰謀論めくが、シナリオをすべて米国が書いたとすると整合的ではある。
 だが、今回の事実上のモルシーのクーデターは司法がこれを是認するかという問題が残る。
 前回の司法による議会の取り消しだが、一部でSCAFの意向と見る向きが大かったし、SCAFが利用した側面はあるが、エジプトは司法の独立性があり、そう簡単ではない。その意味で、司法がどう動くかも重要な焦点。
 現状どう見るかなのだが、概ねのところ、カネをちらつかせる米国+イスラエルの意向を、モルシーとタンタウィが飲んだという形になっている。これが結局のところ、軍産体にもっとも利権がある。
 問題はこれを同胞団が飲んでいるのか?だが、飲んでいる可能性はある。
 これで、軍部内の奇妙な動き、または司法の動きがなければ、壮大な茶番で、米国外交の勝利といったところ。