社説動向

 久しぶりに社説にコメントしてみたが、特に、する必要もないような社説ばかりだった。
 薬事法関連にしても、金融政策にしても、後期高齢者医療にしても、かなり技術的な知識と政策の対応を理解する能力が問われる。そのあたりをかっ飛ばして、安易な正義の自己満の文章を書いても意味はない。

毎日 社説:薬ネット販売 安全確保を大前提に− 毎日jp(毎日新聞)

 概ね正しい。

 厚労省は、関係業界と協議し、まずは利用者の安全が守られる販売のルール作りに取り組むべきだ。

 購入の数量制限や、電話を使った薬剤師による説明義務など、通販でもリスクが的確に伝えられる仕組みは工夫できるはずだ。悪質業者の締め出しも必要だ。ドラッグストアを含めた販売業界や薬剤師会などは権益を超え知恵を出し合ってほしい。

 これが重要で、まず、業界ルールを作ること。
 加えると、「仕組みは工夫できる」を個別のショップ対応にしないこと。
 あと、率直に言うが、薬剤師を直接関与させないで第一類を販売するのは今後の第一類市場のビジョンも消してしまうことになる。そのあたりの配慮が必要。

毎日 社説:緊急経済対策 見えない再生への効果− 毎日jp(毎日新聞)

 これはごく基本的なエラーの社説。

 経済対策には確かに、「これまでと異なる次元」が含まれる。日銀が「明確な物価目標」を定め積極的に金融緩和を行うよう促している点だ。日銀総裁が出席する経済財政諮問会議などを通じて、政府が追加緩和の要求を強める恐れがある。金融政策を決めるのは、法律で日銀の金融政策決定会合だと定められていることを十分尊重すべきだ。

 金融政策を含め、政策を決めるが行政府。
 それをどのように実施するかについて、専門技術を要する具体的な金融政策の手法に政府が口出ししてはいけないのが、中央銀行の独立性ということ。

読売 安倍・橋下会談 政権安定化への布石となるか : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 政局話題が大衆受けするのはわかるが、政策の視点を持たないと市民には実質的な意味がない。その意味で、この社説はつまらないゴシップ記事みたいなものになっている。

読売 緊急経済対策 「強い日本」取り戻す第一歩に : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 この社説は、率直にいうとただの無意味。
 結語が

 政府は、具体的な財政再建目標を設定し、中長期的な財政健全化への取り組みを急ぐべきだ。

 それをどうするかというのが問題であり、そのためには名目成長率をあげなくてはならない、だからという話が現状なので、この社説、およそ議論の骨格がない。

朝日 薬ネット販売―国会と政府に反省促す : 朝日新聞デジタル:社説

 大筋でそう間違った議論でもないが、誰かを叩きたいという欲望が剥き出しで、それを「国会、省庁双方の意識の低さ」としているのが、情けない。

 改めて思うのは、国会、省庁双方の意識の低さである。
 薬事法改正の際、ネット販売の扱いは当然問題になった。だが国会での議論は生煮えで、結果として「対応は厚労省にお任せ」という事態を招いた。

 まず簡単に言えることは、国会、つまり議会が問題だということは、一義には国民に責任があり、国民とその関係を切り込まないでいたジャーナリズムに次の責任がある。
 「省庁」についてだが、これが非常に難しく、詳細を知る人が見れば、それなりに技術的にかなりよく詰めていた。特に、「指定第二類」が設定されているのは、実際には、ネット業界の育成(つまり業界基準の設定)をまってそこまで引くはずのものだった。これは、大衆薬チェーン店市場とのバランスを考えてのことで、現行ではチェーン店側が強くならざるをえないが、厚労省はその利害だけで動いているほど阿呆ではない。欧米では業界基準があることを知っている。
 まず、誰かを叩いくことで正義を語るという文脈をやめたほうがよい。
 そしてこの問題が何であり、誰に利益で誰に不利益があるのか、きちんとした全体構図を見た方がよい。
 全体構図でいうなら、一連の改革は安全性に配慮しつつ、処方薬を市販薬化することで医療負担を減らし、その分、有益な医療に注力するためだった。
 そのスキームが壊れるとどうなるのか。そこを念頭に議論しなければいけない。
 そうであれば、もし批判されるとするなら、業界基準を作らず、判決日に第一類を販売再開したネット業界が問題だろう。

朝日 高齢者医療―国民はなめられている : 朝日新聞デジタル:社説

 いろいろ問題が絡まっていて、どこから手を付けていいかわからない。
 原点はある。高齢者医療についてはかなり技術的な問題で具体的な政策としては三つくらいのシナリオしかないが、政治意識のような主体は今の日本にはないので、反対が政治的に少ないという点で政治リスクを避ける穏当な線で見るなら、中福祉中負担しかありえず、ようするにこれを技術的に詰めていくしかない。
 そしてこのことは、識者会議に委ねるが三党合意なので、その様子を見守るほうがよい。
 そうしたことを知らないで、この社説のように素人議論で蒸し返しても、麻生政権時の衆愚をループするだけだ。
 こんな感じ⇒過ぎ去った後期高齢者医療制度についての麻生失言を振り返る: 極東ブログ
 率直にいうと、この手の問題は新聞社内の識者にゆだねて、簡易な社説で煽るのはやめたほうがいい。