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ふぃっしゅ in the water

2017-02-26

小金がまわる 10 <看護職賠償責任保険>

日記代わりの手帳を見直すと、私が看護賠償責任保険制度に加入したのは2007年のことでした。


「Coconas」というサイトの「看護師の医療損害賠償保健について」という記事を読むと、この看護賠償保険制度が始まったのが2001年のようです。もしかしたら、2001年当時に勤務していた総合病院では加入していて、その後2000年代半ばに産科診療所転職した時に一旦止めていた可能性もありますが、はっきりした記憶がありません。


ただ、やはりこの件をきっかけに、ひしひしと医療事故にあった時にまず自分を守るのは自分だということを感じたのだと思い返しています。


冒頭でリンクしたサイトの「個人で加入する必要がある看護賠償責任保険」では、以下のように説明されています。

看護賠償責任保険制度は、ナース個人が加入します。病院が加入する医療法人保険では、看護師個人賠償事故をカバーできないこともあるだけでなく、病院側が看護師を過失により訴えることもあります。
そのような場合にも対応できるように、個人で保険に入っておくことが必要なのです。


対人補償や対物補償だけでなく、事故調査費や見舞金などの初期対応費用と、弁護士費用や調停や裁判に必要な訴訟費用に保険適用されます。
また名誉毀損や秘密漏洩などで人格を損害された場合の訴訟費用にも適用されます。
また、看護師賠償責任保険制度の契約者は、実際に医療裁判になった時に、専門の知識を持つスタッフのサポートも受けることができます。
賠償金が妥当な額であるのか等のチェックも行えますので、万が一の場合にもあわてずに対応することができるでしょう。



「一生に一度遭遇するかどうかの事態」の渦中にあると、まずはその状況に動揺し、自分を責めたり、反対になんとか自分の判断が正しかったと合理化しようとして揺れますから、まともな判断というのは一人では難しいものです。


周囲の医療スタッフも、多くはそのような経験を持たない人たちでしょうから、どのように対処してよいのかわからないことがほとんどでしょう。
医療の専門知識はあっても、法律には手も足も出ない感じでしょうから。


2007年に看護賠職償責任保険制度に加入し、ニュースレターが送られて来た時には、なんだか一筋の光を見たように安心した記憶があります。
医療事故などに遭遇した時のために、相談窓口の電話番号が書かれていたからです。
「ああ、一人で悩まなくていいのだ」とほっとしました。


年間3000円程度で、医療事故に遭遇した時の相談窓口がありサポートしてもらえるのですから、保険制度というのはすごいと思いました。
そして、幸運にも私が医療事故に遭遇しなかった年は、その3000円は日本の他の看護スタッフのサポートのために使われるのですものね。


そして年に1〜2回送られてくるニュースレターは10ページほどの薄い冊子ですが、医療事故に関する具体的な特集がわかりやすく説明されているので、いつも隅から隅まで緊張感を持って読んでいます。



そうそう、「なぜ無実の医師が逮捕されたのか」の中で、ちょっとびっくりしたことがありました。
弁護士である著者が、「あの時に弁護士に相談すればよかった」(p.278~279)と書いていらっしゃったことでした。
逮捕される前に弁護士をつけていたら経過が違っていただろうということと、著者が「この本を買ってくださるドクターの方、この本で一番言いたいのは、ここです。」と書かれていました。


私たち看護職もまた、何かがあれば法律専門家の助けが必要になる時代になったのですから、備えあれば憂い無しというあたりでしょうか。




「小金がまわる」まとめはこちら

2017-02-24

行間を読む 62 <「法は人に不可能を強いてはならない」>

一生に一度あるかないかの幸運に遭遇したので、もう私の幸運は使い果たしたかもしれません。なんといっても一勝九敗の人生ですから。


ところが、「一生に一度あるかないかの不幸や悲劇」にはなんだかまた当たりそうな気がするところが、人間の不安の不思議さですね。


私にとっては、あと10年ぐらい働くであろう医療現場で、「一生に一度経験するかどうかぐらいの確率で起こることに遭遇する」ことへの不安が常にあります。
退職したらこの不安から解放されるのだと、その日を心待ちにしている自分がいる反面、やはりこの仕事が好きだったのだという寂しさとの間で揺れている感じです。


医療事故やその裁判として報じられるニュースからは断片的な情報しかわからないのですが、おおむね、「ああ、そのスタッフにとっては一生に一度遭遇するかどうかのことだったのだろうな」と思う内容です。
そして「なぜ他のスタッフの勤務の時でなく、自分に当たってしまったのか」と思うような。


私がブログを始めようと思ったきっかけは、さかのぼれば2004年頃から医療事故報道に対して緊迫感と不安を持ったこともひとつでした。


こちらの記事に「侵襲」という言葉の説明を紹介しましたが、医学的な治療というのは生体に侵襲を加えるものです。
医療事故が怖いということももちろんありますが、その治療が許されている医師にはまた大きな責任が伴うということに、あまりに身近な存在すぎて気づいていなかったのでした。
産科医の先生が逮捕されるニュースを見るまでは。


先日、待ちに待った本が配達されました。
在庫切れでしばらく待ちました。

「なぜ、無実の医師が逮捕されたのか 医療事故裁判の歴史を変えた大野病院裁判」
安福謙二氏、方丈社、2016年
(「福」は示偏)



当時、ネット上で多くの医師がさまざまな情報や考え方を出し合って、大きなうねりとなっいきました。
ニュースから得られる情報では、どうも辻褄があわないという印象がありましたが、ネットでの議論を読むほうが周産期医療スタッフとしても納得できる部分が多かったのでした。


一気に、この本を読み終わりました。
どれだけ慎重に手術を進めていったか。
手術の時系列を追っていくと、たとえばWikipediaの「福島県立大野病院産科医逮捕事件」に書かれている経過は当時ニュースで伝えられていた内容ですが、この本を読んで証言とは異なる内容が社会へと広がっていったこともわかりました。
ようやく、この「事件」の全貌が見えました。


「一生に一度遭遇するかどうかの事故」にあたる怖さはありますが、この本を読んで、10年前に知らなかった法の考え方に勇気づけられました。

法は人に不可能を強いてはならない


人に不可能をしいてはならない。これは法の基本だ。
法は赤ちゃんに仕事をしろとか、病人でも仕事をしろ、とか不可能を強いるものではない。誰もが守れない、不可能を強いる結果となるならば、それは法とは呼べない。法の執行にあたっても不可能を強いたら法治国家ではない。
危険で難しい、それも滅多にないケースでの結果を「業務上過失致死」に問おうとしている。これは不可能を強いることにほかならない。



医療とは何か。
医療の「過ち」とは何か。



10年後、20年後には社会の感情から医療従事者が拘留されたり、医療施設が閉鎖に追い込まれることがないような社会へと変化していけるとよいのですけれど。




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2017-02-23

助産師の世界と妄想 26 <産前産後ケアへの広がりと出版物の影響>

前回の記事で紹介した「一般社団法人産前産後ケア」のHPの「お母さん、お母さんになる方へ」へ進むと、「はなさんばからの月手紙」というメルマガがあります。


「さんば」と「新月ー満月の大潮(お産が多いといわれています)にこだわって配信中」を読んで、まず助産師教育を本当に見直さなければ大変なことになる予感を感じてしまいました。


どんなことをお母さんたちあるいはお母さんになる方たちへ書いてあるのだろうと、まあ、おおよその見当がつきましたが、全てのメルマガを読んでみました。
その中で気になった部分をあげてみます。
メルマガの発行月日しかかかれていないので何年に書かれたものかはわからないのですが、2014年から16年にかけての記事ではないかと思われます。


産後のからだのこと2」(2月15日)


しかし、出産・子育ては辛いことばかりではありません。女性の体が生まれ変わる「チャンス」の時でもあります。
子宮内膜は新しくピカピカになり、ホルモンの影響を受け肌や髪がつやつやに輝きます。新しい自分に生まれ変わる。

もしかして、このあたりの影響でしょうか。


産後養生のこと2」(3月17日満月号)


ひとつめは「体を冷やさない」ということです。
体が冷えると、免疫力や内蔵機能が低下します。そのことは、心にも影響します。
昔から女性は「首」がつくところは冷やしてはいけないよ、と言われてきました。
「首」「手首」「足首」このような場所は、しっかり保温してあげましょう。
特に、下半身は水分が貯留しやすく冷えやすいので気をつけてくださいね。
靴下は重ね履き。レッグウオーマーなどを活用するのも良いでしょう。

ああ、きっとこのあたりの影響かな。



「赤ちゃんとの生活7」(11月7日満月号)


さて、今回からは、五感を総動員して行うおっぱいについて、お話していきたいと思います。


人間は「ほ乳動物」です。
だから、赤ちゃんをおっぱいで育てます。
と、とてもシンプルな事なのですが。


「赤ちゃんとの生活8」(11月22日新月号)


もう一度言います。
母乳は、「ち」で出来ています。
「ち」と、2回言うと「ちち」
そう!!「乳」になります。
では、お母さんの「血液」は何からできるかというと、言うまでもなく、食したものからです。

なんだか近代医学以前の世界ですね。


なんでこういう「知識」が助産師の中で受け入れられ広がるのだろうと、ますます絶望的に感じる昨今です。



「対象の生活史を観察し続け、個別性に合わせたよりよいケアとは何か、社会の変化はどうなのかと多様な角度から何度も何度も考察を重ねている」他の看護領域と比べて、なぜ周産期看護は別世界へと行ってしまうのでしょうか。


前回の記事で、「研究会」の講師の紹介にこんなことが書かれていました。

ペイネイタルケア「助産師さんが知っておくとプラスになる『薬膳・生薬』の知識」【2014年度連載】



ああ、本当に助産関係の出版は責任が大きいと思います。
30年ほどの時間をどうやって取り戻して行けるのでしょうか。




助産師の世界と妄想」まとめはこちら

2017-02-22

産後ケアとは何か 36 <「産前産後ケア推進協会」とは>

前回紹介した産後ケア協会アロマセラピーの流れがあるようですが、もうひとつ「一般社団法人産前産後ケア推進協会」という団体がありました。
理事会のお名前を見ると、看護学科教授や准教授といった方々が名を連ねています。



「ごあいさつ」には、「生み育てやすい、社会のしくみや環境づくりのために。私たちは、産前・産後ケアに関する各種情報提供、研修、支援、認証、調査研究などを行っています。」とあります。


学問的な基礎がある団体のようなので、そろそろ産褥入院早期退院推進と産後ケアのその後の全体像が見え始めて、お母さんたちに伝えられる情報があるかと期待して読んでみました。


事業概要」に「産前・産後ケアの普及・啓発」とあり、「産前産後ケアの定義」が書かれています。

産前産後ケア推進協会では、産前産後ケアとは、女性が、妊娠・出産・育児期における心身の変化や、仕事・家庭における役割変化、地域社会とのつながりにおいて、自分自身と子どもにとって最善の方法を選択し、かつ対応できるよう支援する実践をさすと考えています。すなわち、「親としての自立」です。




え?本当にその定義で大丈夫ですか?
「親としての自立」とは何でしょうか。


さらに「産後ケア」については以下のように書かれています。

特に、産後ケアについては、「分娩後、妊娠や分娩によって変化したからだが妊娠前の状態にもどるまでの期間、あるいは、分娩後のホルモンバランスの変化に伴い精神的に不安定な期間、母親になった女性の心身を癒し、親子の愛着形成と、親としての自立を促し、社会復帰への援助を行う、産後の女性を包括的に支援する実践」と定義し、社会に浸透することを期待します。


この定義に基づき、産後ケアのプログラムは、産褥期特有の心身の変化を踏まえた個別的なケアと、母乳育児をはじめとした育児全体の支援、さらに社会における関係性の再構築を行うことによる女性の自立支援を目的として実施します。単に、美容としてのケアやマッサージのみを行うことをさすものではないということを申し添えます。



今度は「女性の自立支援」ですか。
母乳育児の定義って何だろう?
「社会における関係性の再構築」って何だろう?
「産前ケア」の定義は何だろう?


<「ケアはニーズのあるところに発生し、順番はその逆ではない」>


疑問がいろいろありますが、この団体の定義する「産前産後ケア」が少なくともニーズに基づいているのであれば、そのニーズはどのように「私的領域」から「社会問題」へと認められるようになったのか、学問的な手法で調査研究された結果を知ることができるかもしれません。
でもざっと読んだ限り、そうした研究は紹介されていないようです。


さらに、そのHPの研究会の内容をみると、「食」を中心にした「産後ケア研究会」が開催されているようです。
ちょっと気になった回をピックアップしてみます。

第5回目の食材はお茶でした。浮腫予防、ドライアイ、乳腺炎予防など、身近な食材がを使ったお茶をご紹介しました。(2015/06/27)


第1回「冷やさずに快適に過ごすためのマタニティメニュー」として、冷房で冷えないための工夫をこらしたメニューと、夏バテ防止のメニューを作りました。(2015/08/22)



第2回「この秋、風邪をひかずに快適に過ごすマタニティメニュー」として、妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生メニューをつくりました。(2015/10/31)


第3回「妊娠中や産後は水分不足により便秘になりがち、(妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生!)食物繊維の他に養生する秘策とは!」(2015/12/19)


第4回「中医学的セルフチェック!!顔色や舌、話し方などから自分の体質を知ろう」妊産婦さんのチェックに役立つ!」(2016/04/15)


第5回「産前・産後のお茶のいろいろ!好評につき第2弾!!浮腫にオススメのお茶、悪露にオススメのお茶、産後養生茶など」(妊娠中や授乳期の薬をのみにくいママのためにオススメ食養生!)
(2016/06/18)


第7回「母乳トラブル予防の薬膳!!乳腺炎予防や母乳不測など養生する秘策とは!」
(2016/10/16)


第9回「産後うつ予防の薬膳!」春先は特に多い産後うつ!ママだけではなくいろいろ悩んでいる方へ養生する秘策とは!(妊娠中や授乳期の薬を飲みにくいママのためにオススメ食養生!」
(2017/02/19)




なるほど、この団体の使う「ケア」とは「養生」という意味のようです。


妊娠中も授乳期にも処方できる便秘薬や風邪薬はきちんとあります。
むしろ食事などだけではコントロールしにくいのが、妊娠・授乳期なので、ためらわずに主治医にご相談くださいね。


また、「春先に特に多い産後うつ」という傾向があるのかという点は、「わかりません」というのが、周産期関係者の責任ではないかと思います。そんな話は周産期医学関係の本には書かれていません。


ニーズの判断を間違うと、対応策は現実的なものではなくなります。
やはり理論化を急がないほうがよいのではないかと思いますね。



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2017-02-21

散歩をする 12 <向島百花園>

梅が咲き始めたら行ってみようと思っていた向島百花園 に、先日行ってみました。


清澄白河庭園周辺を地図でながめていた時に、ああそういえばこの公園の名前もなんとなく聞いたことがあると、検索してみたのでした。

向島百花園(むこうじまひゃっかえん)は、東京都墨田区東向島にある都立庭園で、江戸時代に発祥をもつ花園である。みどころは早春の梅と秋の萩である。



清澄白河庭園に行ったのは12月でしたが、付近の家ではもう梅が咲き始めていました。
きっともう満開に近いぐらいになっているのではと、2月に入って行ってみました。
東向島駅から歩いて数分で、もう付近には梅の香りが漂っていました。
期待して近づいたのですが、残念なことに、まだ六部咲きといったところでした。


「開園当初は360本の梅」とありますが、現在はどれくらいあるのでしょうか。
こじんまりとした庭園ですが、さまざまな梅や植物が植えられていて、池や石碑を巡りながら歩いていると、周囲を住宅街に囲まれていることもふと忘れそうになりました。


当初梅園として営まれたが、その後、園主や文人たちの構想で詩歌にゆかり深い草本類を多数栽培した。園内には多数の野草が植えられ、とくに秋の七草その他、秋の草花の美しさで知られた。また池泉、園路、建物、30余基の石碑などを巧みに配した地割でも有名であった。


その後も民営の公園としての長い歴史を経たが、明治以降、周辺地域の近代化や度重なる洪水などの被害を受け、明治末頃よりその影響で草木に枯死するものがあり、一時は園地も荒廃したが、のちに東京市譲渡されて1939年明治14年)には公営の公園として出発した。


1945年昭和20年)3月の東京大空襲により全焼し、それまで遺っていた往時の建物も消失してしまった。戦後は跡地を少年向けの野球場にしようという声も出るなか、「百花園」として復興されることとなり、1949年昭和24年)再開された。


幾度か変転を経ながらも、園内の景観は今なお旧時のおもむきを保っており、文人庭の遺構としても貴重なものである。江戸時代の花園として僅かに今日に遺るものであり、その景観遺跡ともに再び名勝に指定され、保護措置がとられることとなった。




あの荒川放水路がなかったら、たとえ土地が遺っても植物が育つのは難しかったのかもしれませんね。
歴史を残すというのは、なかなか大変なことだと思いました。



暖かな早春の日差しの中で、甘酒をいただき、梅と水仙香りを楽しんだお散歩でした。





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