助産師教育ニュースレター 7 <ああ、びっくり!>

久しぶりに助産師教育ニュースレターを思い出し、最近はどんな内容なのだろうと見に行ってみました。
以前に比べて発行回数が減っているようですし、今年はまだ未発行なのでしょうか。


さて、ニュースレターNo.84(2015年1月25日)の巻頭の内容に、ああ助産師の世界はまだこんなことをやっているのかと思いました。


助産師の役割拡大を見据えた助産師教育の将来ビジョンを!」(東京医療保健大学看護研究科 高度実践助産コース 大石時子氏)の全文を紹介します。


保助看法改正による看護師の役割拡大


 平成26年6月、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立した。この中には保助看法第37条の改正が含まれており、看護師が指定研修期間において、当該特定行為の研修を受ければ特定の行為を包括的支持に基づいて行えることとなった。これらの特定行為は経口・経鼻気管挿管の実施等41項目あり、平成27年10月1日から施行される。厚労省は2025年までに研修終了者を10万人越を目指すと発言したとも報道されている。


助産師の役割拡大はどうなっているのか


 一方、助産師に関しては、「チーム医療の推進に関する検討会」の報告書(平成22年3月)を受けた特定看護師(仮称)の制度化が急速に検討された折り、日本看護系学会協議会が各学会の見解を取りまとめ提言しようとした際、日本助産学会が"助産師が行う特定の医行為"を提言している。その中には、超音波検査、膣スメア検査、裂傷縫合、GBS陽性の場合の抗生剤静脈注射が挙げられている。
 しかし、その後看護師の特定行為とは別途に検討すべきという意見もあったようで、助産学会が挙げた上記の項目はそれ以降、厚生労働省での検討に挙がっていない。
 裂傷縫合については平成22年度から厚生労働省科研費による「チーム医療の推進における看護師の役割拡大・専門性向上に関する研究」の中に「会陰裂傷縫合ワーキンググループ」が組織され、医師を助産師によって研究が行われた。その結果、助産師が研修を受け、医師との緊密な連携が取られる状況下では裂傷2度までで母子が安定していれば「助産師が会陰裂傷を縫合できるものと思われた」と報告されている。
 しかし、実際には、産婦人科医師団体から、助産師の縫合研修に強い反対が示されたようで、今日まで研究の成果は発展を見ていない



明治から変わらない助産師の業務に当然付随する行為の解釈


 助産師のチーム医療の中で果たす役割を考えるとき、保助看法37条と38条に規定されている、助産師の業務に当然付随する行為と臨時応急の手当ては非常に重要な規定である。
 「助産師の業務に当然付随する行為」は「へその緒を切り、浣腸を施し、その他」とされるものであるが、「臍帯切断と浣腸は、明治32年の産婆規則以来、全く変わっていない。昭和26年に「血圧の使用」「児心音の聴取」「骨盤計」について、厚生省がこれらを認めたのが唯一の変化である。
 「助産師の業務に当然付随する行為」が何であるのかは時代によって当然違うはずである。今日では超音波は産科医療に欠かすことができなくなっており、「助産師の業務に当然付随する」ようにも思われるが、法的整備が必要である。



助産師教育の将来ビジョンに役割拡大を


 助産師の卒業時の到達目標は、助産師の役割、つまり業務範囲と密接に関連していることは言うまでもない。現在、会陰裂傷縫合は「演習できる」が卒業時目標であり、超音波に関する目標は特定されていない。救急処置としては「正常範囲を越える出血への処置」が最新の改正で「知識としてわかる」から「演習できる」へアップされた。
 ICMの必須能力では、助産師は超音波、縫合はもちろん、ショックの特定と管理、胎盤用手剥離の救急処置、そのほかに膣スメアも必須能力の1つである。
 ICMは助産師を、ICMの定めた必須能力を持つものと定義している。しかし日本の助産では必須能力は卒業時の到達目標となっていない能力が多々含まれている。
 日本で始まっている看護師の役割拡大の動きの中で、助産師は今後どのような役割を果たしていくべきなのかー卒業時の到達目標を考えるとき、今後の日本の将来を見据えつつ、助産師の役割拡大をもう一度真剣に考える時に来ている。約150年間、ほとんど変わっていない「助産師の業務に当然付随する行為」を日本の将来の母子保健システムのために今こそ発展させるべきである。

いやはや、なんだか、明治以来変わっていない演説を聞かされている気分ですね。



明治以来の産婆や助産婦と大きく変化したことに、1948年(昭和23年)の保健婦助産婦看護婦法があり、私たち助産師も看護師の資格を持つことで診療介助にあたる医行為の範囲が広がりました。


「役割拡大を」と声を荒げなくても、必要な医療であれば診療の介助として私たちの業務にも含まれていきます。
いえ、現在は「療養上の世話」の部分よりもこの「診療の介助」の比重が増え過ぎて、現場はご飯も食べられないほど多忙を極めているのですよ。
もう少し、お母さんと赤ちゃんの世話をしたい、退院までにこんなことをしてあげたいという時間がとれないことのほうが問題。


そして私たち産科の看護スタッフだけでなく、産科医の先生たちもまともに食事も休息も、そして休みもない状況の施設も多いことでしょう。
助産師が会陰裂傷縫合までする」ような状況というのは産科医の先生たちが限界まで減った状況になることでしょう。
そうなってはいけないと思いますね。



今のように、出産時に産科医の先生が丁寧に縫合や診察をしてくださって、そのそばで私たち助産師や看護師がお母さん、赤ちゃん、そして御家族となごやかにおしゃべりできる。
いい時代だとおもいますけれど。




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