Hatena::ブログ(Diary)

ふぃっしゅ in the water

2016-09-16

カンガルーケアを考える 15 <こんさんのコメントをまとめていきます>

これまでも、<こんさんの話を聞いてください><再び、こんさんのコメントより>で、こんさんのコメントをご紹介しました。


初めてコメントをいただいたとき、こんさんはおそらく起こった状況を受け止めるだけでいっぱいで、病院と話し合いをすることさえまだ戸惑われていらっしゃったようでした。
そして今年8月に入って、こんさんの息子さんがご自宅に戻っていらっしゃり、自宅での介護生活が始まりました。


その間の状況やお気持ちの変化を、こちらに何度もかき込んでくださいました。
そのいくつかは、記事本文中でご紹介させてもらいましたが、まだまだ私のブログのコメント欄にそのままになってしまっていて申し訳ない想いでした。


こんさんからのコメントは全てプリントアウトしてあって、時々読み返しているのですが、読み返すたびにこんな想いが強くなっていきます。
「助産院は安全?」と声をあげた琴子ちゃんのお母さんと同じような状況を、また周産期医療はつくり出してしまった、と。


そしてその声はなかなか社会に届けられることがないのも、似ています。


こんさんからいただいたコメントに、私の方で見だしを勝手につけさせてもらいながら、すべてこちらに整理していこうと思います。
時系列が少し変わることもありますが、ご了承ください。

☆初めていただいたコメント
☆生後2ヶ月、病院との話し合いをすることになった
☆赤ちゃんを渡した状態では母親に責任があると言われた
☆母子同室に対する脅迫観念があるのかもしれない
☆息子さんの呼吸が止まった時の状況
☆安全対策と付加価値の優先度が逆転しているのではないか
☆赤ちゃんの生存以上に何を求めるのか
☆同じ思いをしているお母さんへ
☆再発防止策話し合いのすれ違い
☆「産後の母親は短い時間でも休養が取れる」と言われた
☆事故情報より神話のほうは信頼されてしまう
☆なぜそのスタッフは自分のしたことに恐怖を感じないのか
☆安全管理が目に入らなくなるほどの自信、母乳への熱意、母性の過信、BFHに対する昂揚感や陶酔感
☆こんさんに、驚くほど他人事のようなひと言をかけられるのは何故なのだろう
☆事故について理解してもらうことの難しさ
☆事故についての病院側からの説明
☆病院側の医療事故ではないという根拠になっているもの
☆「健康な新生児の母子同室での死亡と仮死」のインシデントレポートは未だ義務づけられていない
☆The skeptical OBについて
☆話し合いの過程での気持ちや考え方の変化
☆医療行為でもケアでもなく、ただのイベントだったのではないか
☆「事故は起きていない」という病院側と、「そんなことは自分たちには起こらない」といって安心したい家族側のニーズの両輪
☆再発防止ではなく母乳推進のための母乳推進に
☆NICU勤務の看護師さんはどんな産院で産むか
☆「普通は問題は起こらない。あなたは例外だった」
☆母乳育児成功の10か条を引き合いに正当性を主張される
☆助産師の自己効力感に息子は犠牲になったのではないか
☆帝王切開術後19時間で寝返りもままならないこんさんが、どのような状況だったか
☆もどかしい言い訳
☆人間の命を扱うのにこの軽薄さは一体なんだろう
☆「赤ちゃんに優しい病院」の方針を変えることに何の効果もなかった事故の資料
☆医療とは全く別の価値観を求めているエクストリームな助産師
☆個人の意思や行動で回避できるリスクの範囲を超えて危険が放置されているのではないか
☆危険を予測しなければいけない立場で危機を隠蔽したり、責任転嫁をしている
☆過去の事故を事故として認めない限り、ガイドラインなど作ったところで事故は防げない
☆自分の信条にそぐわないことが現実で起こった場合、その認知不協和を解消するために事実誤認を起こす
☆母乳が万能と考えている人には何を言っても無駄であることを学んだ
☆母子同室そのものや母乳推進の問題点や病院の管理責任まで議論がなかなか及ばない
☆母乳権のためなら生存権すら犯してよいのか
☆事故調査制度の不完全さをいいことに、事故やクレームを母子個人に原因があったかのように片付ける
☆こんさんの息子さんの自宅での介護生活が始まった
☆産科医療補償制度の対象になったー「『疲労困憊中の母親に預けた』ことの責任は無過失になる」矛盾
☆母子同室中に急変した事例
☆2歳になりました。事故調査報告書を提出
☆母子同室は「溺れた人は自分で助けを呼びに来てください」のようなもの






カンガルーケアを考える」まとめはこちら

こんこん 2016/11/14 00:24 ふぃっしゅさん、コメントをまとめてくださってありがとうございます。お礼と返事をしようしようと思いながらこんなに時間が経ってしまいました。
息子は少し前に体調を崩して入院し一時的に危機的な状態になったものの、病院スタッフの方々のおかげで皆が驚くほどの回復を見せて、また無事に家に帰ってくることができました。

その入院中に、NICU時代の主治医の先生が作成した、息子のケースを含む類似事例の6件についてまとめた地方学会の発表資料をいただきました。
Brief Resolved Unexpected Events のために新生児病棟に入院した症例の特徴というタイトルです。(BRUEとはApparent Life-Threatening Eventを臨床現場に即した形に改善されたもの、だそうです)
Apgar >=8/5min. 在胎週数37週〜42週3日、出生体重2,682〜4304g、母親年齢22〜35歳、考えうる病歴や身体所見がないにも関わらず、母子同室中に急変して緊急搬送されてきた例がまとめられています。
唯一、生後90時間でベビーセンサーが鳴って院内の産科から新生児科に搬送されたが脳低温療法も不要、予後が正常であったという軽度な一例を除くと、予後が脳性麻痺という重症例はすべて赤ちゃんに優しい病院から搬送されてきています。
BFHで発生した5件の発生状況を引用します。
•生後7時間、発見時刻5時
母と同じベットで添い寝をさせ、母も眠ってしまった
•生後2時間、発見時刻20時
母から「赤ちゃんが寝た」とコール
•生後28時間、発見時刻16時
母が部屋を離れた間にベビーセンサーが鳴っていた
• 生後16時間、発見時刻5時
カンガルーケア中に母親が眠ってしまった
• 生後41時間、発見時刻5時
直母した後に呼吸停止に気がついた
----------------///
これ以上の症例の詳細についてのスライドもあるのですが、自分のケース以外は私が顔見知りのお母さんのケースが含まれるためか、おそらく先生の配慮でほとんどページが飛ばされています。が1つだけ、今回初めて知るケースがありました。
-------------///

>発症状況17:50出生
母親は分娩時に興奮状態になったため、ジアゼパムを使用されていた。
自然分娩で出生、Apg8/1min.9/5min.同日20時ごろ、赤ちゃんが眠ったとコールがあり、助産師が見に行くとベッドの上で児の呼吸が停止していることに気がついた。蘇生処置の上、当院に搬送。
予後など
気管切開、喉頭気管分離を施行、在宅管理

•母子ケアの注意点
1 母の認識
初産の場合、新生児ケアの説明は受けるものの、何が何が「正常」かはわからない
2 時間帯
褥婦は、分娩後疲労が強い。深夜〜明け方は、看護体制も手薄となりやすい
3 ケア
疲労度や到達度に合わせた方針は立てにくい?
オーダーメイドの対応策が必要
EPDSのような指標の作成

•まとめ
- 新生児期病棟に入院したBRUEは6例(high risk群)で、予後不良のケースがほとんどであった
- 発症時期は、出生早期や深夜帯など母親や看護者の目が届きにくい時間帯であった
- BRUE発症には、新生児期の病態だけでなく、母親の疲労度や育児経験なども関与している事を認識し、ケア方針を構築すべきである
---------------///

以上が発表資料からの転載です。
息子のケースが、地方学会といえど新生児科医の間で認知され、赤ちゃんに優しい病院の危険性の啓蒙に少しでも役立てば幸いです。

少し前なら、赤ちゃんに優しい病院のスタッフにこそ事故を認識してほしいと思っていましたが、赤ちゃんに優しい病院のスタッフからすれば、息子を産んだ病院の助産師長のように「ほら、母親がちゃんと赤ちゃんを見ていないからだ。母乳育児に知識と理解が足りないからこのような事故を起きるのだ。事故防止のためにはさらなる母乳推進運動が必要だ」と言われかねない懸念もあります。
このような事故報告の論文が、発表者の意図しない方向に解釈され逆に間違った方向で母乳推進に利用されるケースは完全母乳、早期皮膚接触、カンガルーケア、母子同室などほとんどの関連事例で目にしてきました。

赤ちゃんに優しい病院や、母乳育児成功の十ヶ条によって健康被害を受ける赤ちゃんはどうしたら減るのだろうと思いながら何もできないままでいます。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2016/11/15 03:46 こんさん、お久しぶりです!!!お礼なんてとんでもない。私こそ、こんさんの大事なコメントをそのままにしてしまっていたことを申し訳なく思って、なんとかまとめるまでにこぎつけた感じです。
息子さんの入退院で、こんさんもお疲れになったことでしょう。ご自宅で過ごす日常の生活が戻ってこられた感じでしょうか。



事例報告を教えてくださってありがとうございます。
医師向けの地方学会での発表ということなので、こんさんがこちらに書いてくださらなかったら、私のように一診療所で働く看護スタッフが知ることはできない内容です。ありがとうございます。


たしかに6例中(「例」と表現することをお許しください)5例がBFHからの搬送なのですが、内容を読むとBFHでなくてもどこの産院でも起こりうるだろうなというのが私の印象でした。
生後数時間ぐらいまでの2例、そのうち1例はジアゼパムを使ったということなので特例的ではあるのですが、生後数時間ぐらいは一番、新生児の体温が下がる時期なので、もしかしたらそれも一因ではないかと思いました。
私の勤務して来た施設では、だいたい2時間ぐらいまで授乳や抱っこ以外はインファントウオマーの上で保温するのですが、時にお母さんや御家族が長く抱っこされていたり、あるいは分娩が重なってウオマーからコットへ早めに移すだけでも、けっこうヒヤリとするぐらい赤ちゃんの体温が下がっていることがあります。
やはり生後数時間ぐらいは、スタッフの目が届きやすい状況で保温に気をつけたいと常々思っているので、そのあたりの体温管理はどうなのだろうと。


新生児の保温は、新生児看護の基本中の基本ですが、体温がどんな状況で下がったか、そして児がどんな状況で発見されたのかなどのヒヤリハット報告やインシデント報告さえまとめられていないのが日本国内の新生児看護の現状なので、どのような保温の方法が良いのか、何に気をつけるのかも標準化されたものがないのですね。「自明すぎる」という感覚なのでしょうが、だからこそこういう症例報告が看護スタッフからも出てこないのかもしれません。


>赤ちゃんに優しい病院や、母乳育児成功の十か条によって健康被害を受ける赤ちゃんはどうしたら減るのだろう
やはりヒヤリとしたその状況をしっかりと観察、記録して、報告書として全国の施設で共有できるシステムが何よりも必要だと思いますね。そのためには自分たちの信条は脇におかなければならないのだと思いますが、そこが一番難しいところなのかもしれません。


報告書の内容からまた少し考えたことも合わせて、書き溜めてあるカンガルーケアについての記事を二つ程、近々アップしようと思います。
こんさん、いつも本当にありがとうございます。