気持ちの問題 35 <何か気になるなあ>

液状乳児用ミルクが日本でも実現するというニュースには、その唐突さに驚きました。


もちろん、阪神大震災後からさまざまな方が液状乳児用ミルクを日本でも使えるように働きかけてくださったことがようやく結果になったのだと思います。
でも、都知事の一声であっさり実現するのは、喜びを超えて大丈夫なのかなという警戒感のほうが先に感じました。


というのも、以前くださったMeekさんのコメントがずっと気になっていたからです。


今まで乳児用粉ミルクに関連した産業に携わっていた方々は、どう受け止めたのだろうと。
産業の構造が大きく変わってしまうことについて、どのような長期的な見通しができて実現されることになったのだろう。
その影響を受けて、むしろ乳児用ミルクから手を引かざるをえない状況になる方々も出てくるのではないか。


そういう全体が何も見えないまま、「災害時に役に立つ」というイメージだけで広がることは大丈夫なのだろうか、と。


<公約に掲げられていたらしい>


「妊括・妊娠・出産・育児のことならmamano」というサイトに、「小池百合子東京都知事が『日本でも液体ミルクを普及させる』と語る」(2016年9月4日)という記事がありました。

小池百合子氏は東京都知事になる前から、日本フィンランド友好議員連盟の会長を務め、液体ミルクの普及を公約に掲げていました、そしてついに!国内でも生産ラインを確保すると方針を提示しました☆

東京都知事となった小池百合子氏。
小池都知事は、都知事になる前から液体ミルクを日本にも普及させようと活動されていました。


日本フィンランド友好議員連盟の会長を務めていて、2016年4月に熊本地震が発生した際には、同連盟の働きかけで、フィンランドから無償で液体ミルクが熊本に提供されました。

この支援がきっかけとなり、小池百合子氏は液体ミルクの普及を公約に掲げていました。そして2016年8月9日の毎日新聞のインタビューで、このような方針を提示しました。
『液体ミルクを都立の保育施設で購入し、企業の生産ラインを確保する』というものです。

「女性知事ならではの視点」として、清潔な水が不足したり、お湯を沸かすことができなかったりする災害時に利用できる乳児用液体ミルクを、都立の保育施設で購入し企業の生産ラインを確保する方針を提示した。液体ミルクの普及は公約にも掲げていたが、方法に言及するのは初めて
via小池都知事:「保育園に液体ミルク」災害時に備え普及対策ー毎日新聞

本当に女性ならでは視点ですよね。
管理職に女性を登用することで、ママの目線に立って進めてくれそうですね。

海外ではどの国でも作っている。国内でも製造してもらえるように、都立の保育施設が買い上げるのも方策だ。民間企業なので、経営的に成り立つ生産ラインを確保しなければならない。粉ミルクは有事に使い勝手が悪く、哺乳瓶も煮沸できない。液体ミルクは常温で150日程度保存できる。都が(普及の)火付け役になれば。
via小池都知事:「保育施設に液体ミルク」災害時に備え普及策ー毎日新聞


先の都知事選は正直うんざりした気分でしたが、しっかりと選挙公報は隅から隅まで読んだつもりでしたが、この公約は見落としていました。
もう一度、公約を検索してみると、たしかに「もっと安心、もっと安全、もっと元気な首都・東京」の中に「(8)災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る」とありました。


いつ頃から、フィンランドとつながりがあって液状ミルクについて公約に入れようと思われたのか検索してみると、神奈川県から選出された参議院議員のブログにこんな記事がありました。

2015年2月26日
「日本フィンランド友好議員連盟」活動再開」


日本フィンランド友好議員連盟の活動が再開された。歴史ある議員連盟であったが、前会長であったツルネンマルテイ参議院議員民主党)が、議員を辞められた以降、会長職が不在となり、事務局体制も不備になり、活動が停止状態にありました。昨年夏に、サイバーセキュリティの視察にフィンランドに行った際に、駐フィンランド大使から「日本フィンランド友好議員連盟の活動が止まっているので、再開できないか」と相談を持ちかけられました。その時に「わかりました」と約束してきたこともあり、有言実行ということになりました。


2月19日に総会を開き新会長に小池百合子衆議院議員が選任され、主な自由民主党の役員としては、森雅子参議院議員が副会長、平井卓也衆議院議員が幹事長、僕が事務局長となりました。(以下略)


Wikipedia活動の年譜ではフィンランドや液状ミルクについては見つからないのですが、もしかすると、ここ1〜2年の間に新たにつけ加えられた公約かもしれません。


液状ミルクは本当に必要だと思うし、特に災害時非常物品として自治体で確保されたら助かる人は多いと思います。


でも今まで粉ミルクだけを使っていた社会が液状ミルクを使い始めるのは、タイプライターの時代からパソコンへ一気に変化するようなもの。


使う人だけが「便利」「助かった」では済まない、大きな社会の変化をもたらすものであるからこそ、もう少し時間と話し合いが必要なことではないかと思っています。
ところが、「都の保育園で災害用に備蓄」という話がひとっ飛びに「日本で」「生産ラインを確保」になり、「災害時」のはずが「有事に」となっているあたりが、なんだか気になるのです。
現実の問題解決ではないような。


育児中の方々の声も「現場の声」ですし、それ以外に病院や保育園などでミルクを使っている現場の声も多様にあることでしょう。
そして粉ミルクを安定供給してくて下さってきた、産業側の現場の声も大事だと思います。
その話し合いの中で、すぐに取り入れられること、長期的に実現していくことなどが初めて見えてくるのではないかと思います。


そして乳児用ミルクの話題は本当にデリケートな話題なので、「母乳VSミルク」の話にすり替わりやすいことも要注意。


というわけで、液状ミルクのニュースはまだ私自身の中で読みこなせていないままでいます。




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