イメージのあれこれ 13 <「生きる力」>

中学生の職業体験はいつ頃から始まったのだろうと検索してみたのですが、Wikipediaを読んでもよくわかりませんでした。


文部科学省の「中学校 職場体験ガイド」(平成17年1月)には「平成16年度現在、公立中学校の約90%で職場体験が実施されています」とあるのですが、何年から始まったかという経緯は見つけられなかったのですが、2000年代に入ってからのような印象です。


その「中学校 職場体験ガイド」の「まえがき」に、「生きる力」という表現が使われていました。

近年の産業・経済の構造的変化や、雇用の多様化・流動化を背景として、就職・進学を問わず児童生徒の進路をめぐる環境は大きく変化しています。このような背景の中、児童生徒が「生きる力」を身に付け、社会の激しい変化に流されることなく、それぞれが直面するであろう様々な課題を柔軟にかつ、たくましく対応し、社会人・職業人として自立してくことができるようにするキャリア経験が強く求められています

このことから、平成15年6月、文部科学大臣厚生労働大臣経済産業大臣、経済財政対策として取りまとめた「若者自立・挑戦プラン」から、その後の内閣官房長官農林水産大臣を加えた、本年10月の「『若者の自立・挑戦のためのアクションプラン』の強化」にいたるまで、若者の働く意欲を喚起しつつ、その職業的自立を促進し、ニート・フリーター等の増加傾向を反転させることなど、若者をめぐる諸課題に対応するため、児童生徒等の勤労観、職業観を育成するキャリア教育を一層推進することとされています。


「ナントカの『力』」という表現が出てくると、ちょっと身構えてしまいますね。


こういう文章を承認した文部科学省の幹部の人たちは、おそらく私と同年代ぐらいではないかと推測するのですが、私たち世代に「生きる力」なんてあったのだろうか、あったとすればどんなことだったのでしょうか。


1970年代は高校受験から大学受験あたりが「受験戦争」と言われていた時代でしたが、その後、中学受験、小学校受験、はては幼稚園受験という言葉まで作られて、私の子どもの頃とは比べ物にならないほど「どんな仕事をしたいのか」よりは「何番目にいるのか」を低学年の頃から意識させられているのではないか心配になります。


たしかに、私たち世代の「大人になったらなりたい職業」に比べると、最近の子どもたちの答えの方がバリエーションが多くて驚きますが。


でも、おそらく子どもというのは、世の中の「仕事に貴賎はない」の建前と本音を敏感に感じていて、社会に不可欠な仕事でも下に見られることを漠然と感じてもがいているのではないか、と昔の自分を思い返しています。


本当は、大人になっても仕事とは何かということをまっすぐ考えることを避けている人が多いから、「生きる力」という大人の方便を使いたくなるのではないかと思います。
子どもたちが求めているのはそれではないと、声にすることができない抵抗は大人の方便の前には無力ですからね。




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