横文字のあれこれ 1 <ストレス>

さくらトラムから横文字の魔法について考えていたら、新たなタイトルを思いつきました。


外来語という意味での横文字ですが、真っ先に思い浮かぶのが「ストレス」という言葉です。
老若男女、この言葉の存在を知らない人や「その言葉を使ったことがない」という人は、今の日本にはいないのではないかと思うほどですが、実際はどうかはわかりません。
ただ、子どもとか10代ぐらいの世代が使っているのをみると、私にはめまいのような感覚があります。


私が初めてこの言葉を知ったのは、1970年代末の看護学生の時でした。
医学用語としてストレスを学んだ時に、そういう概念があるのかととても新鮮に聞こえたので印象に残ったのです。
Wikipediaの「緊急反応」と「一般適応症候群」に書かれているあたりが、用語は当時とは異なるのですが、授業で学んだ内容だったように記憶しています。

(前略)交感神経系によって副腎髄質から分泌されるアドレナリンの効果と一致して心拍数増加、心拍出量増加、筋肉血管拡張、呼吸数増加、気管支拡張、筋収縮力増大、血糖値増加などの緊急事態に有効なストレス反応が生じることが分かった。

一般適応症候群(全身的適応症候群、汎適応症候群)とは下垂体から副腎皮質ホルモン系への反応が生じるというストレス反応についての代表的な考え方である。まずストレッサーの刺激が視床下部、下垂体に伝達し前葉副腎皮質刺激ホルモンが分泌され活性化した身体にエネルギーが供給されるように働き警告反応期(ショック相、反ショック相)、抵抗期、症憊期と段階的に発展する。


ストレス障害」という言葉は、まだ当時聞いたことがありませんでした。
「フラッシュバック」とか「心的外傷後ストレス障害PTSD)」といった表現を医療現場で耳にするようになったのは、もう少し後の90年代に入った頃だったと思います。
この頃には、まるで何かの符号のように「ストレス」といえば、パッと通じ合う言葉になっていました。



この言葉が印象に残った理由は、日本語の訳がなかったことです。
今も、この不思議な感覚が残っていて、時々「ストレス」を検索するのですが、相応する日本語はなさそうです。
看護学生の時にこの言葉を聞いて、なんとなくわかるこの言葉だけれど、それまでその状況を表現する言葉を持たなかったことが不思議に思えたことが印象に強く残って、冒頭のめまいのような感覚に陥る理由です。


それからじきに知ったリスクという言葉も、40年ほどたった今、日本語よりは横文字の方が伝わりやすい言葉のひとつかもしれません。



ストレスとかリスクといった言葉を生まれたときから空気のように感じている世代と、その言葉がない時代を経験している世代では、同じ時代を生きていても見えているものが違うかもしれない。
「横文字」というのは、単に外来語という意味ではない何かがありそうです。




「横文字のあれこれ」まとめ。

<2018年>
2. コンプレックス
3. バースレビュー
4. バズる
<2024年>
5. 「スタートアップ」と「起業」