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小鹿

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2007-11-25

U Don't Cry



第一章
あたしはヒロ。
見てのとおり平凡な女子高生


「ヒロー!!」


後ろから追いかけてきたあの子はヒロコ。
あたしのクラスメイトソウルメイト
ヒロコが死んだらあたしも死ぬ。


「ヒロー!!」


もう一人追いかけてきたあいつはヒロト
ヒロコとヒロトとあたしでよくつるんでる。
ヒロトは誰が見てもイケメンだ。


今日もまたあたしの一日がはじまる。



第二章
いつもどおり放課後はシブヤに集合。
シブヤはいつも、すさんだあたしの心を受け止めてくれる。


「ヒロ、今日は元気ないじゃん!」
「そんなことないよ」
「そうかなー」


ヒロコが気づいてくれた。
あたしは確かに元気がなかったんだ。
寒くて体の節々が痛む。


「おう、今日はどうする?」


イケメンヒロトがなにか言った。


その瞬間キュピーンときた。
あたし、ヒロトが好き!


あたしはヒロトの手を取って走り出す。


「おう! オレも前からヒロのこと好きだった!」


やった! あたしの想いがヒロトに通じたんだ!
シブヤの冷たい風が気持ちいい!



第三章
そのままヒロトと走り続けて、夜になった。
あたしたちは、ホテル街にいた。


「おう、これから、どうする?」
「あたし、いいよ…」
「おう! オレもいい!」


ふたりだけの部屋。
あたしとヒロトの初めての夜。


ヒロトはあたしの目を見て、きつく抱きしめてくれた。
そして、ヒロトはバッグから白っぽい粉を取り出して、あたしに見せた。


「オレ、これがないとだめなんだ」
「それ、なに?」
「打てばわかるって」



第四章
ヒロトは手慣れた様子で、なにかしているみたいだった。
これってひょっとしてアレ?
テレビ雑誌でしか見たことないアレ?


「ヒロもこっち来いよ」
「ねえ、ヒロト。これって…」
「いいから来なって」


あたしはゆっくりヒロトのそばに近づいた。


「これは、オレがヒロのために打った手打ちうどんだ!」


あたしは、その瞬間こらえきれず泣き崩れてしまった!
ヒロトはあたしが手打ちうどんを食べたがってることを知ってたんだ!


ヒロト! 愛してる!」
「おう! オレも愛してる!」
「おいしい! 生でもおいしいね!」
「おう、うまい! オレ、生でもうまい!」


このときはまだ、このあと、あんな恐ろしいことが起こると思ってなかったんだ。



第五章
ふたりだけの特別な夜を過ごして、あたしとヒロトは特別な仲になった。
それなのに!


「ヒロ!」


それはヒロコだった。
あたしは女の勘で、すぐ、ヒロコもヒロトのことが好きだってわかった。
でも、しかたなかったんだ。
あたしのほうが、ヒロトを好きだったんだ!


「ひどいよ、ヒロ!」
「ごめん、ヒロコ!」
「あたしのおなかにはヒロト赤ちゃんが…」


そのときだった。
ヒロトは転んで頭を打ってしまったんだ!


ヒロト!」
ヒロト!」


冬の寒い空にヒロコとあたしの声が響き渡った。



第六章
病院でお医者さんは言った。


「命に別状はありません。ただ…」
「なんですか!」
ヒロトくんは、もう二度とうどんを打つことはできないでしょう…」
「わー!」


あたしは泣いた。
あたしはもう、ヒロトうどんなしでは生きていけない体になっていたんだ…。


「ひとつだけ、方法がないこともないのですが…」
「なんですか!」
ヒロトくんを機械の体にするのです」
「機械の体!」
「しかし、その場合、ヒロトくんは人間の心を失ってしまうでしょう…」


あたしは悩んだ。
ヒロトの愛と、ヒロトうどん
ついさっきまで、あたしはどちらも手に入れたと思っていたんだ。
でも、いまはどちらかを選ばなければならない。
あたしは決心した。


ヒロトを機械の体にしてやってください!」
「いいのですか? ヒロトくんの愛を失ってしまうんですよ」
「かまいません!」
「わかりました! メス!」


すぐに手術が始まった。
あたしはヒロトの無事を祈った。



最終章
あれから1年。


「ヒロー!!」


ヒロコが来た。
ヒロコはヒロト赤ちゃんを産んだ。
赤ちゃんの名前はヒロトからヒロを取ってヒロシという名前にした。
ヒロコとあたしで考えた名前だ。
ヒロコはシングルマザーになったけど、石油王の娘なので生活は安泰だそうだ。


ヒロトはすっかり元気になった。
シブヤで毎日うどんを打っている。
みんなおいしいと言って、ヒロトうどんを食べてくれる。


医者さんは、ヒロト人間の心がなくなると言っていたけど、それは間違っていると思う。
だって、ヒロトの手打ちうどんは、どうしようもなくあたしへの愛でいっぱいなんだ。


今日もシブヤにヒロトの作動音が響き渡る。
ヒロトの愛が響き渡る。

(完)

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