新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

176: オハグロベラ

スズキ目ベラ亜目ベラ科カンムリベラ亜科オハグロベラ
学名:Pteragogus aurigarius (Richardson)
英名:FishBaseにも英名のエントリーなし, Malachite Secretive Wrasse(恐らくaquaristによる呼称)

「第1回熱海産シリーズ」は、このエントリーが第4弾にしてラスト。体長約8cmのメス個体から摘出。「御歯黒倍良のオハグロベラ」の肩甲骨の先端部は丸くなり、肩甲骨孔は大きめ。烏口骨の『背鰭』に当たる部分が非常に美しく立派で、また上方に向かい鋭角的に突き出した部分には小孔が存在する。ところがこの『背鰭』部分がなかったら、、、と想像すると、実は一部のカレイ目の「魚のサカナ」に良く似た印象(オタマジャクシのよう)になるのが面白い。ただしカレイ目/ベラ亜目間に直接の類縁関係は当然ないので念のため。とはいえ、少なくともより近縁であるはずの、これまでに摘出してきたベラ亜目ベラ科の「魚のサカナ」には全体的に余り似ていない。

今回の魚の特徴/形質を何時も通りに「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」で辿ると「オハグロベラ」に行き着く。しかしながら、この魚の胸鰭の軟条数はどう数えても「12」しかなく(写真右)、オハグロベラ胸鰭の軟条数を「13」とする同書の記述とは明らかに矛盾する。少し調べてみたところ、この魚では体色のバリエーションが非常に多いことが知られており、また「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」のP.1582にも少なくとも3魚種、もしかしたら4魚種が「オハグロベラ属」に含まれるらしいとの記述がある(ちなみに同書の出版時点では、オハグロベラ属は1属1種となっている)。このような現状から、本稿ではこの魚を「オハグロベラ」であるとしたが、ベラ科の分類に詳しい方からの情報を心からお待ちしています。

サイズ&鮮度的なこともあって今回は食していないため、食味に関するコメントはできない。

注:1)側線が体側後部で中断せず、体側後部で急激に下降する(写真1)、2)背鰭棘数が「9」(写真2)/軟条数は「11」、3)上顎前部に著しく前方に向かう門歯状歯がない(写真3)、4)吻は著しく突出しない(写真3)、5)両唇は肥厚せず、目の下縁は上唇上端と同じ位置(写真3)、6)下顎に切れ込みがない(写真4)、7)口は短い筒状ではない(写真3)、8)側線有孔鱗数は30以下(一部剥がれてしまっており正確な数値が測定不能だったが、明らかに50以上ではない)、9)前鰓蓋骨後縁が鋸歯状(ギザギザ)である(写真5)ことなど。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5