新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

361: アヤメカサゴ

スズキ目カサゴ亜目メバルカサゴ
学名:Sebastiscus albofasciatus (Lacepède)
英名:Yellowbarred red rockfish [原]

地方名アカガシラ(和歌山)、アカゲ(茨城)、オキアラカブ(長崎)、マダラホゴ(鹿児島)など。神奈川県小田原市産の全長約30cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。「綾目笠子/文目笠子のアヤメカサゴ」は、すっかり見慣れたフサカサゴ科の「魚のサカナ」の基本形で、その中でも筆者が『カサゴ型』と呼んでいる、烏口骨の上方の『背鰭』部の高さが低いタイプ。同じカサゴ属のカサゴウッカリカサゴのものとほぼ同じ形で、相違点を挙げることが困難なほどである。

「綾目笠子のアヤメカサゴ」を下側から見ると途中で折れ曲がっていることが分かる。また第4射出骨の後端も少々湾曲している。



フサカサゴ科の魚は種類が非常に多い上に、似たような外見/体色のものも多いため、魚種の「同定」に困難が伴うことも少なくないが、アヤメカサゴに関しては体色があまりに独特なので比較的容易に同定可能。また日本近海に生息するメバル亜科カサゴ属の魚自体がカサゴウッカリカサゴ/アヤメカサゴの3種のみである。今回の個体に関しても店頭で独特の「虫食い状斑紋」を見た瞬間にアヤメカサゴであることを確信したが、念のため「日本産魚類検索 第2版」のフサカサゴ科の検索キーを辿り、1)側線は溝状でない、2)胸鰭に遊離軟条も欠刻もない(写真下段左)、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)眼下骨系(頬)に棘がない(写真中段左)、5)背鰭は12棘12軟条(写真下左)、6)胸鰭上半部の後縁は浅く湾入する(写真下段左)、7)尾鰭後縁は丸い(写真下右)、8)胸鰭腋部に皮弁がない(写真下段右)、9)胸鰭は17軟条(写真下段右)、10)体に赤色の地色に黄色の虫食い状斑紋がある(写真中段左右)などの形質を確認し、最終的にアヤメカサゴであると判断。

『新訂原色魚類大圖鑑』にも記載されているように、アヤメカサゴの上顎は下顎よりわずかに長い(写真下)。

2012年10月に八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ2,000円/0.45kg)。店頭表示は単に「カサゴ」。鰓は粘り気も全くない鮮紅色で、眼色や体の張りからも非常に新鮮な個体であることは明らかであったので、2枚に下ろし、半身は刺身、骨付きの半身は塩焼きに。刺身にした半身は更に半分に分け、皮を引いた普通の刺身と、皮付きで表面を炙り「焼き霜」にしたものの2種類を試食したが、個人的には「焼き霜」のほうが好み。皮目の香ばしさが加わって風味が格段に良くなる。口に入れた時に旨味が溢れるという訳ではないが、噛んでいると上品な旨味甘味が出てくるタイプの身。美味。また塩焼きにすると、しっとりとした身質で身離れも悪くない。上記した通り皮目の香ばしさは素晴らしい。生よりも旨味は立ち、咀嚼する毎に上品な旨味が広がる。とても美味い。

「釣魚1400種図鑑」(小西英人著)では、カサゴウッカリカサゴの食味を「良」、アヤメカサゴの食味を「極」としている。これを見てしばらく探していたアヤメカサゴを今回ようやく食べることが出来た訳だが、個人的には「そこまで差があるかな?」というのが正直な感想。もちろんアヤメカサゴは美味い魚であることに異論はないし、今回は3種を並べて食べ比べた訳ではないので念のため。