新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

371: スマ

スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族スマ属
学名:Euthynnus affinis (Cantor)
英名:Yaito tuna [原], Kawakawa, Black skipjack, Eastern little tuna, Mackerel tuna, Yaito bonito, Dwarf bonito

地方名/流通名やいと(『新訂原色魚類大圖鑑』では別名扱い)、ほしがつお、うぶすかつ、おぼそ、あせかつ、ひらがつお、わたなべ(胸鰭の下の小黒斑を、渡辺家の家紋である「三ツ星一文字・通称『渡辺星』」に準えたものなのだとか)など。韓国済州島産の全長約51cmの雌個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本から射出骨を外す前に、反対側から撮影しておいたもの。

「須万/須萬のスマ」は、細長い肩甲骨、立派に突き出した烏口骨上方の『背鰭』部、烏口骨本体と『嘴』部の間の湾入部などの形状的な特徴から、一見してスズキ目サバ亜目の「魚のサカナ」であることが推察できるもの。特に肩甲骨は非常に細長く、これまでに紹介したものの中では体色の良く似たソウダガツオの仲間(マルソウダヒラソウダ)のものに良く似た印象。ただし「須万のスマ」は、ソウダガツオの仲間のものと比べて 1)烏口骨本体と『嘴』部の間の湾入部がかなり深く、2)『嘴』部がより直線状である。

また「須万のスマ」の烏口骨『嘴』部の根元近くには比較的大きめの孔が開いている(写真上赤丸)。



胸鰭下に特徴的な小黒斑があることからスマであると判断できたが、一応「日本産魚類検索 第2版」のサバ科の同定の鍵を辿り、1)体は紡錘型であまり側扁しない、2)両顎歯は微小(写真中段右)、3)腹鰭の大きさは普通(写真下左)、4)第1背鰭と第2背鰭はよく接近する(写真下段左)、5)側線は1本(写真下段左)、6)体は胸甲部を除いて無鱗、7)第1背鰭は前端で高くなる(写真下段左)、8)腹鰭間突起は2尖頭、9)側線は著しく波打たない(写真下段左)、10)胸鰭体側下部に数個の小黒斑がある(写真下段右)、11)口蓋骨に歯がある(写真中段右の緑丸)などの形質を確認した。また体側上部後半には多くの暗色斜帯がある(写真下段左)。ちなみにこの個体の小離鰭数は、背側が8/腹側が7であった。

2012年12月に福岡市の渡辺通にある「たべごろ百旬館ふくや」の鮮魚コーナーで購入(当日は1本2,000円)。店頭表示は「済州島産ヤイト」。厳密には「輸入魚」ではあるものの、地理的には福岡県から至近と言える韓国済州島産であることから鮮度的には全く問題なし。まず3枚に下ろし刺身に。少々柔らかめだが、繊維はしっかり結合している(故にハガツオほど身崩れしない)ために、歯で噛み切る時にはシコッとした食感がある。身の色はハガツオ同様に薄い(写真上右)が、血合いはハガツオよりも大きめ。ただしカツオほど血の味は感じない。また酸味も余りない。脂は皮目を中心にかなり乗っているが、嫌みは全くない。身に含まれる旨味は多く、非常に美味い。次いで「あら」と身の一部を煮付けに。口の中では繊維質の身が崩れるのを感じるが、パサつく感じはない。旨味は文句なし。また皮目の脂の乗った部分がとろっとして美味い。一部は「なまり節」に。カツオの「なまり節」を更に上品にしたような印象。やはり旨味は多い。最後に冷凍しておいた「柵」をブツ切りにし、塩コショウを振った後に片栗粉をまぶして唐揚げに。しっとりとした食感で非常に美味い。