2010-07-26
■[野郎映画感想] プロレスラーをリスペクトする、という話

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『レスラー』という映画を観ました。
ミッキー・ロークが萎びれた老レスラーに扮し、昔の思い出話を周囲の知人たちに語りながらリングに上がる。 周囲は「お前、もう年なんだし、引退したら?」と思いつつ、彼に言えないでいる。 彼もまた、引退したほうがいいのは分かっているが、決してリングを降りようとしない。
凄まじい内容でした。 何せ老レスラーは老いた体にムチならぬ薬物(ステロイド)を打ちながらリングに上がります。 これ事態は決してフィクションの話ではない。
プロレスラーは極めて死亡率の高い職業ですが、特に多い死因は「心臓麻痺」です。 彼らは心臓に負荷をかけるほどのトレーニングで試合に臨みますが、それほどまでに肉体を鍛える理由はご存知のとおり、「観客に誇示する」ためです。 それがプロレスという職業の義務と言っても過言ではない。
ましてや本場のアメリカン・プロレスの場合、レスラーは売れる・売れないに関わらずにステロイドを打ちます。 ドーピングは、鬱病を始め、様々な形で本人を蝕んでいく。 当人もそのことぐらいは十分、自覚している。 しかし、それでも止めないわけです。
そこまでする必要が何故あるのか? 私はそう考えながら本作を見ました。 『ロッキーザ・ファイナル』という映画がありましたが、この『レスラー』に比べて、余り「悲壮感」を感じなかった理由は、結局ボクサーとレスラーという、同じ肉体職業でもタイプが違うからという理由だけでなく、イマイチ「命を削っている感じがしなかった」からです。
ボクシングが極めて過酷なスポーツなのは言うまでもありません。 彼らは正に肉体(命)を切り詰めてリングに上がり、殴りあう。 冷静に見れば、これほど惨い職業も無い。 事に、人間の最大の急所を叩き合うのですから、親がやらせたくないスポーツの筆頭と言えるでしょう。
そういう意味ではプロレスラーだって負けてはいない。 日本では特に、「プロレスは八百長だし、つまらない。 シュート(リアルファイト)の方が観ていて楽しい」みたいな言説が、未だに多いです。 猪木の時代から、格闘技ファンの言説はあまり変わっておらず、極めて無責任だと思います。
プロレスラーは観客に「面白がってもらうために」、正にありとあらゆる手段を投じて肉体を鍛え上げ、それを観客に「披露」します。 それだけではなく、対戦相手と常に因果関係*1を作って、「ストーリー的な展開」を客に提供する。 そう、観客も試合に参加し、レスラーと一緒に試合を盛り上げていく。
云わば、観客参加型の「ライヴ・パフォーマンス」なのがプロレスだと心得ています。 私は自戒しなければなりませんが、もっとプロレスラーという人種に敬意を表するべきでした。
大分前、TBSの報道特集だったと思いますが、そこで「鬱病に罹った若手レスラー」の特集がありました。
真面目なレスラーの彼は、ある日「突然鬱病を発生」したと言いますが、私に言わせると真面目な人ほど鬱病に陥りやすいので、「突然」というのは適切な表現ではないと思います。 兎に角、彼は何度も襲ってくる「自殺願望」を何とか振り切り、最後はリングに復帰。 その席で観客全員に「鬱病から立ち直り、またこのリングに復帰できたのは皆様のおかげです、感謝してもしきれません。 有難うございました」と、涙ながらに叫び、声援の中、イチレスラーとして返り咲いた・・・というものでした。
何とも情緒に訴える、いい話だと思いますが、個人的には彼がまたあの病に陥らなければいいが・・・・と心配でもあります。 何れにせよ、私がそれまでの大雑把な「プロレス感」から認識を変えるきっかけになった特集でした。
私はかつて、K−1とか大好きで、「格闘技ファン」だったこともあるのですが、今は総合格闘技とか、そういうのに余り興味を持ちません。 アメリカンプロレス(面白いですよ! you tubeとかで観れるので、是非お試し下さい)とかを観ていると、何となく相手を完膚なきまで叩きのめしてどちらかが倒れるまで・・・・というのは、何だか後味悪くなってきたからです。 変わりに古武術とか整体とか、そういうのに興味を持ち始めています。
勿論、ここで格闘技ファンとか或いは格闘家を「否定」しているわけでは無いし、ましてや「格闘家はレスラーを見習って、もっと命をかけるべきだ」などとは仮初にも思いません。 ただ、少なくとも私個人は、プロレスであれ格闘技であれ、「命がけの試合」は見たくない。 というだけです。
ローマ時代でもあるまいし、もっと明るい「試合」を、私は尊敬する彼らに望むし、「ムリしないで欲しい」と願うだけです。
注1 因果関係とはプロレス界における約束事のこと。 「善役」と「悪役」を明確に観客に印象付けて、その上で試合の流れを決めていく。
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