脱獄犯逃走に広島カープ厳戒!オーナー「今までないこと」警備強化指令

広島市中区の広島刑務所から受刑者が脱走した事件で、警察庁は11日夜、広島県警が逃走容疑で逮捕状を取った中国籍の受刑者・李国林容疑者(40)について、社会的危険性が高いと判断、同庁の「特別手配要綱」に基づき特別手配した。特別手配は1995年のオウム真理教元信者以来。県警は12日も、800人態勢で聞き込み捜査などを行い、行方を追跡。地元のプロ野球・広島カープは警備態勢の強化を打ち出すなど緊迫感に包まれた。

 12日の県警による捜索では、広島刑務所から北西に約1キロ離れた民家に警察犬が反応。県警は同日午後に李容疑者が付近に立ち寄った可能性があるとみて調べている。

 広島カープの本拠地、マツダスタジアム広島市南区)は、刑務所から北東約5キロ。脱走した李容疑者は、球場とは反対の方向に逃げた可能性が出てきたが、それだけでは不安は消えない。広島の松田元オーナー(60)は「戸締まりはしっかりしようと社内的には言った。球場に逃げ隠れる可能性は私も気になっている。こんなこと今までなかった」と警備態勢の強化を指令した。

 球場外周は防災カメラ77台によって監視しているが、球団警備担当者は「映像を集約する防災センターのモニター画面が切り替わる頻度を上げた。李容疑者の写真が手に入り次第、センター内に掲示します」と説明。侵入防止と同時に、殺人未遂などで懲役23年の判決を受けて服役していた“極悪犯”の早期発見・身柄確保にも協力する姿勢だ。

 広島刑務所から約22キロ離れた廿日市市内の2軍の大野寮でも、門限の午後10時30分に施錠することを徹底。道原裕幸寮長(62)は「ここに入ってきたらやっつけられるけどね」と屈強なアスリートの集団とあって侵入されても返り討ちにする構えだが、警察官に発砲した前歴がある男だけに警戒心を緩めるわけにはいかず「確かに嫌な感じはします。選手にも呼びかけようと思います」。球団は、11日に職員に対して「暗いところに行かない」など回覧メールを配信した。11日に入寮したドラフト1位の野村祐輔投手(22)も「気をつけます」と表情をこわばらせた。

 この日、県警は刑務所付近の聞き込みのほか、海上保安庁の協力を受け中国船など船舶への捜索を続けた。12日夕方の段階で57件の目撃情報が寄せられたが、有力な手掛かりはないという。

 捜査関係者によると、李容疑者は少なくとも15年以上前に入国。日本語を流暢(ちょう)に話し、複数の名前を使っていた。中国残留孤児2世や3世が中心の窃盗グループの関係者とみられ、05年頃には川崎市に住所があった。

 県警は脱走時に李容疑者が着ていた上下白色の肌着と白色の運動靴の写真を公開、さらに情報提供を呼びかける。また173センチと公表していた身長を174センチと訂正した。