小劇場【1984】新国立劇場主催開場20周年記念 2017/2018シーズン


  • 原作
    ジョージ・オーウェル
  • 脚本
    ロバート・アイク、ダンカン・マクミラン
    • 翻訳 平川大作
  • 演出
    小川絵梨子
  • 出演
    井上芳雄 ともさかりえ 森下能幸 宮地雅子 山口翔悟 神農直隆 武子太郎 曽我部洋士 堀元宗一朗
    子役(トリプル・キャスト):青沼くるみ 下澤実礼 本多明鈴日
    映像出演:野坂弘
    声の出演:浅野雅博 大澤遊
  • スタッフ
    ・美術:二村周作 ・照明:佐藤啓 ・音響:加藤温 ・映像:栗山聡之 ・衣裳:郄木阿友子 ・ヘアメイク:川端富生 ・演出助手:渡邊千穂 ・舞台監督:澁谷壽久 ・音楽:坂本弘道 ・稽古場代役:岩澤侑生子 加茂智里 ・プロンプ:竹内香織 ・制作助手:原佳乃子 ・制作:田中晶子 ・プロデューサー:茂木令子 ・芸術監督:宮田慶子

1984』は数少ない読み返す小説で
上演情報を入手したときからとにかく楽しみにしていたところ
先行販売、先行抽選やらがどうにも売れ行きが良く手に入らず
新国立劇場の『2017/2018シーズン 春の3作品通し券』をボックスオフィスに電話で申し込んで入手
電話口でも開口一番に「『1984』のお取りできる日が限られていますので…」ということで
まず『1984』の日程から決めていったのですが
幸運なことにシアタートークのある日のチケットを購入
1984』が目当てだったので
件の戯曲のブロードウェイでの公演で
「気絶したり嘔吐する人が続出したのに加え、熱狂した観客が逮捕される」
事態であったことは全く予備知識なく挑み
あれ、なんか、本と違う???
となりつつ過激な描写てんこ盛りで慄きながら
休憩なしの120分
シアタートークは司会は中井美穂さん
主演の井上芳雄さんとともさかりえさん
芸術監督の宮田慶子さん、今回の演出をされ次期芸術監督の小川絵梨子さん
5人たっぷりの50分
この芝居の稽古期間は1ヵ月半ぐらいだったとかで(たしか)
それはなかなか厳しかっただろう
(そもそのも本は演者と作り上げていったというのだから)
驚いたのは最近人気の小川さんがどの演者ともはじめての仕事だったということ
稽古のほかに「人狼」というゲームや『1984』の裁判をやったりとしていたと
また、数本宮田さんから提示された戯曲の中から『1984』を選んだのは
トランプ氏が大統領選で勝利する前だったようで
トランプ氏が大統領になりアメリカで『1984』の売り上げが伸びたニュースを知り
「やった」と思ったということや
宮田さんが『1984』を選んだ小川さんに「また、面倒くさいの…」と言ったり等々
司会の中井さんもたぶんあまり公では発することがないと思われる政治情勢について言及したりして
大満足のシアタートーク
何より一番『1984』の恐ろしいところは
読み返すにつれ受け取る私の心情が変わっていっていること
最初に手にとったのは大学生時分の1990年代初頭
高校の国語教師に「おもしろいよ」と薦められた(私個人ではなくクラス全体にだったと思う)のを思い出して読みはじめ
「うわーうわー」となりながらあっという間に読み終え(通学時間が電車で片道1時間半もあったので)
当時は「ビックブラザー怖えー」だったのに
(少し訂正:ちょっと反芻していてなんとなく思い出してきた
1984年がつい最近だったので、ちょっとコミカルにも思えていた
ソ連を揶揄してるんだろうなぁなんて思いながら)
読み返すにつれ描かれている社会を受け入れつつある自分が超怖い
また、ソ連じゃなくて日本を想起させることも

以下瑣末な感想

    • 小川さんは普段使わないというけれど戯曲の指示ということで使われていた「テレスコープ」。あの画質、映し方、私は好き。
    • 2012年に書きあがった脚本で、2013年に上演。それを2018年の春に日本上演する為に2014〜5年頃に小川さんにオファーしたという流れなのか?相当なスピード感なのでは?
    • 別の役でキャスティングされていた神農直隆さんが大杉さんの代役となったというけれど(凄くよかった)、もともとは誰をやる予定だったのだろうか?
    • 子役が3人とも9歳らしい。こんな芝居に出てて凄い。親はこんな芝居だと思ってオーデション?オファー?を受けたのだろうか。
    • ブロードウェイの演出は光源を客席に向けていたというプラン。ならば失神する人がいるやもしれない。
    • 井上さんが「『助けて』って言うのに誰も助けてくれないって」言った後に「助けにこられても…」って、そうよねぇ。
    • 小川さんの演出プランが「客は安心なところから観てほしい」というのが以外だった。客席の通路を役者が歩くような演出はしないし、客いじりも好きじゃないらしい。
    • 演者もすっかり『1984』に侵食されていている。井上さんはうたコン本番舞台の底でセリに乗って待機していところ、真っ暗なスペースで赤いランプだけがチカチカと点っているのに「ここは101か!!」というエピソードを披露。なるほど。ともさかさんもオンエアーをみていたらしい。
    • なんかもったりした井上芳雄さんが新鮮。でも数節歌ったマザーグースの美しいこと。
    • 演出の小川さんを生で見るのは初めてだったけれど、写真でお見受けするよりずっと華奢でシャイな印象。絶対劇場ですれ違っても私わからないと思う。
    • 二村さんの舞台美術が美しい。上手のほうが楽しめるかな。
    • 画面が2面で映されることがあるので、乱視が進んだ気になる。
    • 1948年にこれを書いたジョージ・オーウェル。ホント凄い。