テーマの難易度は果たして適正だった? 新海誠監督「星を追う子ども」

はじめに言っておくが、ぼくは映画監督のなかではいちばん新海誠監督に金を掛けている。「雲のむこう、約束の場所」DVD-BOXも「秒速五センチメートル」DVDも持っている。今回だって見終わったあとにパンフとポスター買おうって思ってたのだ。本当に。もっと時間に余裕があったなら上映前に買っていたかもしれないin新宿バルト9。

ある程度の期待をもって入場した。はたして脚本は向上しているのかと。



淡い期待はもろくも打ち砕かれた――。
開始数十秒、丘の上の秘密基地のようなところで猫のような生き物に語りかけながら父の形見の飛行石(仮)が埋め込まれた自作ラジオをいじりはじめるあたりでいやな予感がした。
歌が聞こえて一気に数ヶ月経過。



ある日鉄橋を歩いているとタタリ神(仮)が現れ主人公に襲いかかるが颯爽と美少年が現れ、ぶち殺し鉄橋からたたき落とす。ここで主人公惚れる。
次の日美少年自殺。主人公動揺。悶々とし秘密基地に向かうとそっくりの美少年が登場。美少年の弟だったのだ!



この一連の流れには全部(突然)と付け加えるのが正しいのか。とにかくぼくとid:oosato君はずっと肩を震わせて笑いを堪えるのに必死であった。
展開だけならともかくところどころに真顔でみているには辛い台詞が入ってくるわけで。祝福をあげる、じゃねーよ!



そんなこんなでよくわからんまま異世界での旅が始まってよくわからんまま主人公ノリノリで進んでったりするんだけど割愛。
ただいえるのは、旅は冗長で、出てくる主要なキャラクターの行動原理はほとんどわからないことだ。
これまでの新海作品の特徴だったモノローグが一気になりを潜めたことで描写される機会自体が減ってしまったのだ(そもそもことばにしないで表現するのは不得手な監督である)。救いだったのは唯一モリサキだけはそういったところがはっきりしていたことだろう。おかげで壮大なテーマは、テーマの概念だけは伝わった。感情移入はほとんどできなかったが。



やはり新海監督は身の丈にあった題材を選ぶべきであった。雲のむこう〜、でぎりぎりの成立具合だったものを、もっと巨大な世界を題材にしたらそりゃもう破綻は免れない。



シーンごとにみていったら動きも悪くないしいいのにな……。フラクタルとかブレイブストーリーよりはマシ、という評価はまさに的を射ている。今回はDVDの購入を見送ることにする。余談だが、今作はこれまでよりもスポンサーが多くついている。それが制作上で妨げになったのではないか(上映館も多いし)。一般に向けて作ることになった要因がそうであるなら、同情を禁じ得ない。




追記:ツイッターでの感想をみると、それほど悪評がなく、それどころか泣いたというものがあるから信じられない。どこで泣けばいいのか、飛び降り自殺を決めたとこなのか。それとも妻が死んだところか。世界は広い。




一緒に見に行ったoosato君のレビュー