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2008年07月09日

続・私たちが社会に貢献しなければならない理由

| 01:08 | 続・私たちが社会に貢献しなければならない理由を含むブックマーク 続・私たちが社会に貢献しなければならない理由のブックマークコメント


私たちが社会に貢献しなければならない理由についてshowgotchさんから素敵なトラックバックを頂いたので、お答えしたいと思います。


BUILDING AND DEBUG ERROR:僕が働くのはあなたのためだけど、僕らが働くのはあなたのためではないより色々と引用しながら。


1.起業家の廃業率


まず最初に、僕は積極的に起業を進めているわけではありません。もちろん否定するものではありません。

私たちが社会に貢献しなければならない理由で言いたかったことはいくつかありますが、ざっとまとめるとこんな感じになります。


  • 社会の維持にはコストがかかるが、学生はそのコストを働き始めるまでは支払わずにいるのだから、働き始めてから、特に能力のある人は社会に還元するという意識を持たねばならない
  • 今の日本で成功した者に、社会に貢献することが当たり前という風潮がないことが問題
  • 今の格差社会はかなり危険。危機感を持って対応しないといけない
  • もし社会貢献事業をするのなら、ビジネスとしてやった方が範囲も効果も圧倒的に広がる

この中でビジネスと言っているのは、もちろん起業するということも含みますが、就職して今後企業の中核を担っていく若者は企業の中で社会に貢献する度合いの高そうな行動を取っていくべきということです。

社会起業家という言葉については、5.言い訳としての起業家で。


・廃業率について


「開業率」と「廃業率」で検索してもらえばわかるが、ここ数年では情報系企業ベンチャーインターネット付随サービスが双方ともトップである。

確実な統計は時間がなくて見つけられなかったが、100社起業したら3年後に残るのは10社とも3社とも言われる厳しい世界である。


中小企業白書を見てみましたが、廃業率というのは期首には存在を確認できたが、期末には存在を確認できない事業所の数を基準に出す*1ものです。すなわち、支店の移転や閉鎖も廃業数に含まれます。例えばローソンの支店がつぶれてもローソンはつぶれませんが、廃業率は上がります。

これは倒産*2とは全く違う概念であり、この廃業率という指標はいまいち使えないという印象を受けます。


この廃業率という指標を採用するとします。

インターネット付随サービスが開業率・廃業率ともにトップということですが、

開業率→52.6%

廃業率→19.3%*3

この数字からは事業所の開業数は全体の半分を占めるのに、1年以内に閉鎖したのは全体の2割しかない、ともいえます。ITベンチャーは初期投資が少なくてすむものが多いですから結構気軽に立ち上げられますが、存続するものも割と多い(ただし企業数が多い分つぶれるものも多い)といえるんじゃないでしょうか。


ただ確かに10年後まで残り続ける企業というのは1割前後(根拠は不明)でしょうから、見通しも立てずに安易に起業をすべきではないと思います。


2.大企業の貢献


一方、高いモチベーションがあったとしても、世の中を一人で変えることは難しい。世の中を変えようと思う多くの人間は他人と協力するし、ぶっちゃけ力のあるものの近くに着いたほうがチャンスは多いのではないだろうか?


世の中を一人で変えるのは難しいからこそ、組織の力を頼るべきと考えます。そしてこれから組織の中心となる若者には、その組織の利益も考えつつ、社会全体に何かできないかを考えてほしいということです。


3.生活規模と能力


社会のために働くといっても、満足する規模と言うものが人には少なからず存在する。この部分で微妙な違和感を感じた。

 自分ひとりが満足すればいい人、自分の半径5メートル圏の人:例えば家族や友達などかかわりがある人を幸せにしたい人もいれば、まったくかかわりのない人まで幸せにしたい人もいる。しかもこの家族や友達の規模も一人ひとり違えば能力も違う。


エントリーで書いたのは、能力がある人は自分の幸せだけを追求してはならず、何らかの働きかけを社会に対してしなければならない、すなわち自分の身の回りだけで満足するのはダメだよ、ということです。


ならば、結論から言うと、社会的に影響力のある大企業に入って、ひたすら雑用をこなし、能力のある上司たちを説得し、上司たちが自分の願いどおりに貢献してくれるよう働きかけたほうが効率的ではないだろうか。


この考えに賛成なのは上述の通りです。


現在、弁護士は今過剰供給の状態にあるという。


これはある意味正しく、ある意味間違いです。

現在減っていると弁護士がいっているのは「金になる仕事」です。また、弁護士の増加により平均の報酬も減っているようです。しかし金にはならないけれども解決すべき問題というのは、社会にはまだまだあります。

つい昨日ローの講師をしている弁護士さんに聞きましたが、少なくとも京都では仕事がないということはなく、あまりに多いので断っているという状態だそうです。

あと、過剰供給というのは「司法修習所を出た新人弁護士を受け入れられるだけのキャパが既存の事務所にない」という文脈で語られることが多いようです。


だが、あなたが医者にならないのはなぜなのか?


僕が医者ではなく法律系の仕事を目指した理由は、


  • 身内に裁判官が2人いたりするので、幼い頃から法曹が身近だった
  • 医者不足は、僕の高校時代にはあまり問題になっていなかった(知らなかっただけかも)
  • 数学が壊滅的に苦手
  • 法律的思考が性に合っていた

まあ、こんなところでしょうか。


4.ヒーローになりたいだけなじゃないのか?


僕らは仕事を通してヒーローになりたい。いつか自分らしい仕事をする、自分の好きな仕事をする事が理想である。それが社会的に貢献できれば、それ程すばらしい事はない。そういう教育を受けてきた。


まあ、これは誰しも否定はできないでしょう。他人に認められたいという承認欲求がなければ、ブログを書く人もいないと思います。

しかし「ヒーローになりたい」というのは悪いのでしょうか?このような根源に近い欲求というのは、強力です。「社会に貢献したい」なんていう動機付けよりよっぽど説得的です。そして、このような単純で強力な欲求というのは大事にすべきなんじゃないかと思います。

僕が言いたいのは、最終目的はヒーローになりたいとしても、それを実現する過程で社会に貢献になりたいことをし、そして社会もそのような行為を賞賛することで正のスパイラルが生じるようにすべき、ということです。


確かにふと考えればそう思える。僕もそう考えていた。ただ、先ほど伝えた起業家のうち中90%は廃業に追い込まれる。その裏には、ベンチャーと言う情熱を食い物にされていると言う現状があるのだ。大人は大半の開業家、起業家に対し「がんばってるね、でも放置。」なのである。少なくとも現状は。

まさにこれが僕がどんな弁護士を目指すかという将来像を考えることになった動機です。

現在僕が考えている将来像は、社会貢献度の高い、応援したいと思える企業と顧問契約を結び、その企業が何かにつまづいたときにはそれを取り除き、順調に成長する手助けをするというものです。

僕自身会社の経営に関わっていて思ったことですが、純粋な法務サービスっていうのは大会社でない限りいらないんですね。たまに専門家が必要になることもあって、僕が内容証明郵便を出したことがありますが、そんなことは数ヶ月から半年に一度くらいです。それより会計だとか節税のほうがよっぽど必要です。

しかし中小企業の社長にもっと必要なのは、対等に話せてかつ信頼できる相談相手です。中小企業では大抵社長がその会社の中で最も優秀な人材です。たとえ悩みがあってもなかなか社員には相談できませんし、もし相談したとしてもたいした答えは返ってきません。

僕はエンジニアコンサルタント公認会計士といった様々な業種と提携し、日本の95%を占める中小企業に寄り添い、食い物にされるのを防ぎ、その成長を陰で支える法律事務所を作ろうと考えています。


5.言い訳としての起業家


別に僕が大企業を信頼していないというわけではないことは、上述の通りです。


人と関わろう。起業家はたかだか数人〜十数人程度の規模からのスタート。だが、大企業はすでに何百人、何千人の人がいて、それぞれに能力に見合う仕事を通して理想を追い求めようとしている。どちらが効率的か、どちらがチャンスが多いか、もしくは最初から起業するよりノウハウを会得してからでも遅くないはずだ。


少なくともid:iammgさんは来年から某コンサルに入社し、そこでいろんなことを学ぶつもりです。彼女もいきなり起業しろ、といっているわけではないんじゃないでしょうか。


普通の企業に熱い想いはないの?ビジョンはないの?生きがいは求められないの?


こないだid:iammgさんとお話ししたときに初めて社会起業家という言葉を知ったのですが、そういうものは別に今までもあったんじゃないか?という印象です。

たとえば、これは今年の春に松下政経塾の塾長・関淳氏の講演で聴いた松下翁の言葉ですが、


「松下のためにプラスになることを考えるな。社会のためになることをしろ。」

社会貢献の度合いが数字になったものが利益」

「自分のためではなく、人のために仕事をすればいずれ自分に返ってくる。それを喜ぶ」


これらはすべて僕が目指すものであり、また、いわゆる社会起業家理念とも合致するものであるように思います。

現在でもこういう熱い思いをもっている企業はたくさんあるでしょう。(社会起業家については引き続きid:iammgさんが書いてくれるようなので、それを楽しみにすることにします)



しかし、社員レベルまでそれが浸透しているかは別問題です。


「あなたの会社の経営理念またはビジョンは何ですか?」

「それはなぜか知っていますか?」

「その理念を実現するためにあなたは何をしていますか?」


この問いに即答できる会社員はどれほどいるでしょうか。おそらくほとんどいないんじゃないかと思います。

showgotchさんはいかがですか?



猛進(妄信)しないでほしい。情熱だけで生き急がないでほしい。もっと話をしよう。くねくねしよう。


その通りだと思います。


こないだid:iammgさんと会って彼女から社会起業家について話を聞いたとき、僕は彼女にこう尋ねました。


「具体的にどんな事業をする会社を作ろうと思っているの?」


彼女はまだ具体的には考えていない、と答えました。


「卒業するまでにざっとした事業計画は作った方がいいよ。そしてコンサルで働きながら、その計画がうまくいくのか検討してごらん。」



僕自身、上に書いた僕の作ろうとする法律事務所は、少なくともあと7年くらいかけて、実務の中で練り上げていくつもりです。



何もやろうと思わないのは最悪。

とりあえず何かやろうと具体的に考えてみる。思いついたことを友達に聞いてもらってダメ出ししてもらい、試行錯誤する。見込みがなさそうならあきらめて、また別なものを探してみる。


ただ漫然と働いてるだけじゃダメです。自分が社会に対してできることはないかを、とりあえず考えてみる。まずはこれが大事なんです。

*1http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h20/h20/index.html

*2:銀行取引停止・破産・特別清算・会社更生法の適用・民事再生法の適用・商法整理・内整理に該当するものが倒産です。倒産しても廃業はしていない(会社更生法の適用)場合や、廃業したが倒産していない(自主的にたたんだ)場合などもあります。企業倒産調査年報平成11年版←古っ!20頁くらい

*3http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h20/h20/html/k7316000.html