Turin論文はこのページlinkで読める

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いや、難しくてわからんです。嗅細胞にはNAD(P)H-diaphorase活性が強くみられる(Zhao et al.,1994)。NAD(P)H-diaphoraseとは以下の反応を触媒する酵素である。
NAD(P)H とH(+)とAcceptor (酸化状態) <<<--->>>>NAD(P)(+)とAcceptor(還元状態;2H受取る)

NO合成酵素にはdiaphorase活性がある。diaphorase活性があればNO合成酵素があるというわけではない。また乳酸脱水素酵素もdiaphorase?

NAD(P)Hから高エネルギー電子がOrに伝達され、例えばOrとGタンパクをつないでいるS-S結合が亜鉛イオン系を介して還元、Gタンパク遊離という経路があるとする。エネルギー障壁があるため、この経路は動いていないが、Orに適切な嗅物質が結合すると、NAD(P)H由来の電子のもつエネルギーが、嗅物質の分子振動に一部使われエネルギーロスし、それを経由して電子が流れるのにちょうどよいエネルギーになり、量子力学的に電子が流れる(トンネル効果)。そして亜鉛イオン系を介して還元、Gタンパク遊離という経路が動く。ということか?

受容体を基礎とした分子振動嗅物質受容モデルである。Orには亜鉛イオン結合アミノ酸配列がある(C?GSHL)

生理学的証拠:サンショウウオ嗅細胞をパッチクランプ法で調べたFirestein et al.(1993)は、イソアミル酢酸とアセトフェノン(ベンゼン環に-CO-CH3が1つついている)の2つに応じる細胞、cineoleにのみ応じる細胞、上記3種全てに応じる細胞を見い出した。これは1嗅細胞1受容体と,この理論で説明できる(そう)。これらの結果はCHYPREと名付けた生物学的非弾性電子トンネルスペクトルを計算によって求め、3物質の振動吸収が見られる波長を感じる受容体を細胞が持てば3種物質全てに応答する、2物質の振動吸収が見られる波長を感じる受容体を細胞が持てば2種物質に応答する、1つの物質にのみ振動吸収が見られる波長を感じる受容体を細胞が持てば1種物質のみに応答する、というわけである。

構造の似ていない物質が同じ匂いに感じられることがあるが、これは各物質の分子振動が同じであるからだと説明する。また逆に構造が似ているのに違う匂いとして感じられる物質はその分子振動が違うからと説明する。例えばCH2-CH2のアルカンの途中にCO(ケトン)がはいっている物質で2-undecanone,4-,6-はそれぞれ匂いが異なり、分子振動にも違う吸収波長を示す領域がある。

振動方向は電子が伝わる方向でなければ、伝わらない場合がある。「受容体をもとにした分子振動説」では、従来の分子振動説では説明できなかった鏡像異性体間の匂いの違いを説明できる。受容体タンパクは程度の差はあれ、嗅物質受容サイトには分子形状に応じた凹み(ポケット)があり、これにはまったときにS型carvoneはCO部分が電子が伝わる方向に配位せず、トンネル効果はみられない。R型carvoneはCO部分が電子が伝わる方向に配位して、トンネル効果により電子が流れる。R-carvoneはミント臭がし、S-carvoneはキャラウエー臭がするが、RーcarvoneにC=O吸収をもつ2-pentanoneを3:2の割合で加えるとキャラウエー臭になること(BBC放送ホライズン時では60%ブタノンとしている)、vanilinと官能基が一部同じ2物質、ベンズアルデヒドベンゼン環に-CHOがついている)とベンゼン環に-OHと-OCH3がついている物質を混ぜるとヴァニラ臭がするが、非弾性トンネルスペクトルもvanilinに似ているというわけである。

vanillinとisovanillin(ベンゼン環に-CHOがついているがそのメタ位とパラ位にOHと-OCH3がつくがOHがパラ位なのがvanillinである。Vanillinはバニラ臭があり、iso-は弱いフェノール臭がする。アルデヒド基とベンゼン環の回転はvanillinでは容易だが、iso-では難しい。

直鎖のaliphatic aldehydeではC-8からC-12の範囲において、炭素数が偶数なら果実臭、奇数なら花の香りがするが、アルデヒド基のC-C結合に対する変角回転で説明できる。

他に、S−Hは2500cm−1であるが、これに近い2600cm−1のIRを示すB−H振動を示すボランは硫黄がないのに硫黄臭がするそうである(常温気体のジボランB2H6,液体のペンタボランB5H9が手にはいらず、固体のデカボランB10H14を使っている)

他にメタロセン(金属カルボニル)は中にはいっている金属が違うが、空間充填模型はほとんど同じで、常温での熱振動を考えれば同じ立体構造といえるが、フェロセンとニッケセンは匂いが違う、違うのは非弾性トンネルスペクトルであり、立体構造ではない。

この分子振動説で説明でき、分子構造(形状)説では説明できないと思われるのが、Hを重水素化(D化)した時に、分子構造は変わらないにもかかわらず、分子振動と匂いが変わるという点である。アセトフェノン(ベンゼン環に-CO-CH3が1つついている)の8個のHをすべて重水素にかえる。これをアセトフェノン-d8と称する。重水素化により、C-H stretchが3000cm-1から2200cm-1(C−D stretch)に変化する。希釈せずに用いた場合,匂いは,匂いは大体同じではあるが,重水素化により果実臭がより強く

  • 重水素は「水素が陽子1個と電子1個」なのに対し、陽子1個と電子1個、中性子1個加わったもの原子量が約2倍になる。水素分子(H2)では、分子量が倍になるため、沸点融点もわずかに10度ほど高くなるが、アセトフェノンとしての蒸気圧(揮発性)については何も記述はない。もっともわずかな差であろう。
  • ただ上記flexitral社HP上の

http://www.flexitral.com/index.html

文中articleをクリックして見れる15ページにわたるPDFファイル中Turinはアセトフェノンとアセトフェノン-d8の匂いの差をsmall differenceと書いている。おい,small differenceなのかよ?

以上、よくわからない。Natureには載らなかったにせよ、悪く無い(トンデモではない)仮説,いい仮説ではないか?といったらだめかな?少なくとも説を打ち立てたTurin氏は尊敬に値する。
もっとも良く理解できてないので批評できる「立場に無い」。
だが,受容体の嗅物質との鍵と鍵穴構造が比較的ゆるく,かなりの分子が受容サイトに入り込み,その時分子振動による特定の吸収波長を示す一連の物質が応答を引き起こす。ということでだめでしょうか?