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キリンが逆立ちしたピアス このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-12-01

[][]性暴力に関する各政党の方針(衆議院選挙

 「性暴力禁止法をつくろうネットワーク*1が、衆議院選挙に向けて、各政党について性暴力被害者支援についての公開質問状を送った。

「性暴力を根絶し被害者を支援するための施策について」

http://www.stop-sexual-violence-jp.org/modules/pico2/index.php?content_id=6

その回答が出て、PDFで色分けして見やすく整理されて、アップロードされている。

(回答)

http://www.againstgfb.com/11_26answers.pdf

(PDFでないバージョンはこちら↓)

http://www.stop-sexual-violence-jp.org/modules/pico2/index.php?content_id=8

上記を見れば、一目瞭然だが、共産党社民党はかなり熱心に回答しており、自民党は一括回答で丁寧に答えるつもりがない。維新の会は記述回答なしである。維新の会・自民党にとっては興味ない領域なのだろうか。民主党は、調査報告をもとに実効力のある政策を行うというが、「何の政策か」「どうしたいのか」がはっきりしない。公明党みんなの党は具体的だが、子どもに対する性教育については消極的だ。


 というわけで、この回答を読む限りは、性暴力被害者支援についての取り組みが期待できるのは、共産党社民党だと私は思った。それでも引っかかる点があるので書いておく。

 それは、共産党が「非親告罪化」「性交同意年齢」について言及している点である。私は、この点についてはかなり慎重に議論したほうがいいと思っている。

 まず、「親告罪」とは、被害者本人が望まない限りは、検察側が起訴しないという制度である。これについては、被害経験のある人から、「自分で起訴する/しない」を決めなくてはならないという重圧が、苦しいという声がある。現実的には、性暴力事件の裁判は非常に厳しい。特に、親密な関係における事件については、被害者当人が、起訴を迷うこともある*2。「加害者を罰したい」「真実を明らかにしたい」「加害者を収監することで、身の安全を確保したい」という被害者の率直な想いが、裁判という「証拠主義」や「法廷での駆け引き」によって踏みにじられることもある。被害者保護の観点から、裁判制度も改革がなされているが、十分とは言えない。私としては、「非親告罪化」を推進することが、被害者支援に結びつくかどうかは、明言できないところがある。私としては、(1)裁判制度の改善を求めたいし、(2)法廷外での紛争解決制度の可能性を模索したいと考えている*3。なので、「非親告罪化」を進めることが、共産党で優先順位の高くなっているのならば、もう少し、司法制度改革の議論とセットでどう考えているのか知りたい。

 次に、性交同意年齢だが、これについては「援助交際」という用語が流行した時にも盛んに議論された。そのときには、子どもに「性交同意能力があるかどうか」が大きな論点であった。最初に、現実として、「援助交際」をすることで生き延びてきた子どもたちがいるということを認識しなければならない。参考になるルポルタージュとして、鈴木大介「家のない少女たち」が挙げられる。

この本の中では、親からの虐待から逃れるために、家出をして援助交際をすることで生計をたてる少女が登場する。食べるものもないから、援助交際をして、お金を手に入れるのである。さらに、障害を持った姉と妹で、援助交際で身を立てている話も出てくる。そして、その背景にあるのは、日本の児童福祉の貧弱さである。著者の鈴木さんは、あとがきで、児童福祉の問題点を概説している。児童買春は法律で禁じられているが、かれらは違法行為をすることで、ようやく生きることができる。性交同意年齢を引き上げ、子どもとのセックスを違法化すれば、性虐待の被害者は裁判によって救済しやすくなるかもしれない。しかし、自ら、大人と性交を望む子どもたちのニーズ*4を十分にくみ取るだけの、制度や取り組みは今の社会にはない。

 また、今回は、性暴力被害についての議論の文脈で取り上げられているので、大人が子どもと性交すること自体が、性虐待であるかどうかが問題となる。一点目として問題になるのが、子どもを性の対象とする人たちの存在である*5子どもと性交することについて、慣習的な忌避感で「よくない」として、犯罪化しても、今の社会にある問題を解決するとは思えない。子どもの頃から、性教育を受ける機会もなく、性的なことについて考えるツールがないまま断罪しても、性暴力を減らす方向にいくとは私は思えない。

 私は「性交同意年齢」について考えるのならば、「子どもの性」や「子どもと大人の性」について考える必要があると思う。これらの議論は、まったく十分ではないし、純潔思想のように性を忌避する方向に重なりかねないので、共産党がこの論点を出してきたことには、危機感を抱いている。

 

 以上、長くなったが、共産党の政策について、引っかかる点を述べた。それでも、問題外の維新の会・自民党や、子ども性教育を忌避しようとする公明党みんなの党、それに、具体案が出ていない民主党よりは、私は高く評価したいと思う。それだけに、慎重に考えたいとも思う。

 なお、各党のマニフェスト障害者分野について、lessorさんが比較を行っている。大変参考になった。

衆院選マニフェスト比較2012(障害者分野)

http://d.hatena.ne.jp/lessor/20121130/1354295042

*1http://www.stop-sexual-violence-jp.org/

*2:親密な関係における性暴力の難しさについては、以前の記事でも述べている→ http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091208/1260272432

*3:これについては、「修復的司法」を取り上げ、自分の専門として研究しています。ただし、世界的に修復的司法が実践されるのは、少年司法軽犯罪の領域であって、性暴力は長年、禁忌とされてきました。その事情もわかっているので、私としては二次被害を起こさない制度作りのために、かなり慎重に議論を進めたいと思っています

*4:お金かもしれないし、他人と触れ合うあたたかさかもしれないし、性について挑戦的な実験をしたいという欲求かもしれないし、自分を傷つける手段の一つかもしれないし、ほかにもいろんなニーズがあるだろう

*5子どもを性の対象にする人については、本を取り上げて紹介した→ http://d.hatena.ne.jp/font-da/20100323/1269340431

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