性暴力加害者の心理

 性犯罪をおかして、逮捕され服役した人の手記が掲載されています。加害者として経験を話す人は多くないので、参考に挙げておきます。(加害についても触れられているので、リンク先の閲覧にご注意ください)

「【追記あり】元露出狂が綴る防犯対策」
http://anond.hatelabo.jp/20140103224112

 この加害者は匿名で、被害者または被害者になりやすい女性に対して、防犯対策と称して「自衛」の方法を綴っています。この記事が「有用だ」「参考になる」と思う人がいるかもしれませんが、私は「加害者が、被害者に自衛を求める」という発想にある種の奇妙さを感じました。その奇妙さは、性暴力加害者に(直接・間接的に)接したり、調査報告を読んだりするたびに感じるものと同じです。
 加害者が「自分がどうすれば加害をやめられるのか」ではなく、「あなたがこうすれば、自分は加害をせずにすむ」と述べること。その背景には、「相手に隙があったから、自分が加害を行った」「悪いのは被害者である」という自己正当化の論理があるように思います。
 上記の記事を書いた加害者は「自分は病気であり、周囲が加害をたいしたことがないと言えば、またやろうと思ってしまう」という内容のことを述べています。「病気」が何であるのかは書いていませんが、性暴力を繰り返すかが者の場合は加害することが嗜癖化していることが多いので、依存症だと言いたいのかもしれません。だとすれば、この加害者に必要なのは回復することであり、周囲が発言を変えることではありません。(言うまでもなく、加害行為を矮小化するのは被害者に対する二次加害であり、慎むべきです。加害者のためではなく、被害者のために)
 当たり前ですが、加害者には被害者の心情はわかりません。後ろをつけられていると思うだけで、苦しく辛い思いをし、被害に遭うことでその後の日常生活がどれほど困難になるのかを、経験したことはありません。深い心の傷を負わせているのかすら、加害者にはわかりません。加害者は、自分の妄想の中での、「被害者の恐怖や怒り」を勝手に性的に消費するだけです。だから、加害者には、なぜ被害者が警察を呼ばない/呼べないのかわからないでしょうし、アドバイスするような立場にはありません。(これは、被害者や被害を警戒している人が、加害者の発言を参考にして自衛策を練ることとは違います。実用性があるとしても、「加害者が被害者にアドバイスする」という形式について批判をしています)
 だから、加害者に本来できることは、自分の経験した加害行為や、逮捕を通して、「どうすれば、加害をやめることができるのか」です。私がそのようにブックマークでコメントをつけると、以下のように返答がかえってきました。

Q辞めるにはどうしたらいいの?
A 捕まるまで無理です。捕まっても再犯率高いです。しかし、人生を充実させたらいいかもしれません。僕は人生でうまくいかないことがあれば、露出の頻度が高まる傾向にありました。

 では、この加害者に防犯としてできることは、今も性暴力の加害を行っている人たちに、自首を勧めることでしょう。また、人生がうまくいかないために、加害を行っている人にこそ、呼びかけてみてはいかがでしょう。いつまでも被害者のせいにせず、同じ加害を行う人とどうすればやめていけるのかを考えて欲しいと、私はこの記事を読んで思いました。
 参考に以下の本を挙げます。刑事裁判の立件過程で、男性の司法関係者と性暴力加害者の共犯関係により、現実とは関係なく「男の本能」によって性暴力加害が起きたことにされていく様子が明らかにされています。

刑事司法とジェンダー

刑事司法とジェンダー

先日も取り上げました。

今年の十冊
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20131230/1388398260

 私は「自衛」に批判的です。下記に詳しく書いた記事をあげておきます。

「性暴力は自衛可能か?」
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20091208/1260272432