富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十二日(水)晴。Boseのヘッドフォン Quiet Comfort 2の入荷が今月中旬と言われており「そろそろか」と気になりBoseの直営店に電話すると正式の入荷は12月にずれ込むが米国より初回入荷がいくつかあり視聴用だのお得意への販売のみ済ませたが数台在庫ありもし所望であれば、と。そりゃ当然ご所望にてさっそく店にて支払い済ませHung HomにあるBoseの倉庫訪れる。倉庫には垂涎のアイテム整然と並び壮観。このヘッドフォン持ち歩くには大きすぎて難儀だが早く飛行機にて試したきところ。晩にA氏誘われ北角の寿司加藤。酒は澤の泉と峰の白梅の瑞。小鰭と烏賊、つぶ貝。コップ酒で7勺として5杯なら2合ほどだがすっかり酔ひ我ながら2合程度でこれでは老いを感じざるを得ず。競馬は沙田にて馬券のみ購入するが複勝で擦する程度。
▼昨日の朝日夕刊にアナール派の歴史家アラン・コルバンの文言あり。
特に危惧しているのは、歴史を知らない社会は知的に貧しい社会になりかねないことだ。たとえば、少しも新しくはないのに、たまたま目の前にある現象を新しいことだと勘違いする無邪気な心理が生まれてしまう。過去の体験や知識を正しく受け継いでいれば避けられるのに、それを知らないために社会全体が幼稚な錯覚にとらわれることになりかねない。
……とわざわざこれを言いに来日か。日本への警鐘。だがあまりにアナール学派らしい遠回しな言い方、これじゃ幼稚な日本人にはわからぬ、と築地のH君。小泉三世などまさか自分が批判されているとは気づかず「ほう、なるほど、感激した!」とか言いそう(笑)。文相呼んで「だから歴史教育では、子どもたちをひきつけるような生き生きした物語が必要なんだよ!」とかすごい勘違いしたりとか。それにしてもH君と同意したのはこの記事の見出しの拙さ。「歴史感覚が平面化して 軽視される遺産や体験」って意味がわかる読者はいるだろうか。H君は「歴史を知らない社会は 知的に貧しい社会に」「歴史を知らない社会は幼稚な錯覚にとらわれる」くらいならまだわかるが、と。いまだに抽象的で難解なのが哲学とでも勘違いか、朝日。コルバン先生の文言も確かに抽象的ではあるが、これは具体的に「日本の政府首脳はアホか?」といふのが失礼だからの文雅。意図するものが異なる。
▼朝日といへば阪神支局での記者殺害事件について「朝日の論調が偏っていたからあんな事件を招いた」と、これを言ったのが東京都知事なら驚かぬが、コトもあろうに朝日新聞の××がそう宣った、と信頼できる筋より。朝日といへば朝日の特ダネとなったリクルート事件だが、コトもあろうにリクルートの江副君の本を、一応自費出版らしいが、朝日新聞出版局より出版。この出版局といへば朝日が新聞協会賞を授かった9-11のルポも阪神支局襲撃事件の本も出さぬほど、まさか江副先生の著作を出版とは。ワシントンポストニクソン回顧録、とか、文藝春秋から田中角栄の自伝出すようなもの、と業界では評判(笑)。社内では「自主出版だから」が言い訳になっているらしいが、本屋に並ぶこの本、凄い恥ずかしいタイトルの『カモメが翔んだ日』には「この本は自主出版です」と帯に書かれているわけでもなく誰が見ても朝日の刊行なり。阪神支局襲撃事件については時効迎えたが社長が時効にあわせコメント出すわけでもなし、それだけならまだしもあの襲撃の原因が朝日の偏向にあると××が苦言するとは。あの襲撃事件は阪神支局だから狙われたのでもなければ小尻記者を特定したものでなし。偶然に阪神支局の小尻記者で、ヘタしたら、といふかかなりの確率で朝日の××が狙われてもおかしくはなかった事件。社内には××が狙われたら「朝日の××として日本の言論の自由のために命を捨て貢献したかも」といふ声もあるとかないとか。だが敵もバカぢゃないからそこまでしない。あの事件は朝日の論調が偏向といふような狭義的なとらえ方をすることより言論が銃で撃たれたことの深刻さ。朝日が赤いだの讀賣が白いだのといふ次元の話でなし。都知事などこの美談聞いたら「朝日もようやくマトモになった」と思うか(最近の都知事は毎日がお嫌いだし)。