富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰翳礼讃再読

七月三日(日)快晴酷暑。朝から九龍湾に出仕事。午後、旺角。午後遅く中環でFCCに早酒。独酌。人生このかたお初ってことが時々ある。ハイボール頼んだらロックと別にソーダが供された。iPadで雑誌など眺めてゐるのはバーで品がよろしくない、とアタシは思ふが暗いバーでは雑誌の小さな文字が覚つかず、今になつてようやく先週のThe Economistの中国特集号をバックナンバーがバーに置いてあるのにiPadでダウンロードで読んでゐる。下品だが活字は少し大きいしバックライトで何より明るく読み易い。サッポロの黒、大瓶購ひ帰宅。ドライマティーニ二杯。ピンクフロイドの1980〜81年のThe Wallの頃の実況録音盤(恐ろしく音が良い)聴きながら捥ぎたての枝豆と麦酒。肉骨茶の夕餉。常温で紹興酒飲む。涼青瓜、オクラ、湾仔街市のピータン、煮豆も美味。肉骨茶に入つてゐた冬瓜で、この夏が盛りの瓜をなぜ冬瓜といふのか、とふと気になつたがZ嬢に夏にとれた瓜でも風通し良い日陰に置けば日持ちするので冬でもいたヾだけるから冬瓜といふのよ、と教へられる。食後の記憶あまり無し。昨日からふと気になるところあり何十年ぶりに谷崎の「陰翳礼讃」読んでゐる。アタシはあまりかうした洋の東西で比較文化論的な思考は好まない。和辻哲郎の「風土」も苦手。さすが大谷崎で上手に書いてゐるし先日の中谷先生の東西文明論もあんなに多言を要すまひ、とこの陰翳礼讃を読んでさう思ふ。がそれほど東洋の日本が陰を愛おしむ文化で西洋は闇がないとは言ひ切れまひ。なぜ「陰翳礼讃」を再読することになつたか、といふと中環T嬢と渋谷ジャンジャンで昭和の昔に淡谷先生のライブをアタシが見たといふ話から淡谷先生のあの化粧、あの衣装がテレビの照明の明るさでは異様だが暗いライブハウスだとあれくらゐの派手さがちょうど落ち着くのよ、とさういふ話から、さういへばそんな話は谷崎が書いてゐたわ、と思ひ出した次第。谷崎再読で能役者の能の美しさを語る文章は多いのだらうが能の役者の美しさを谷崎が書いてゐたのね。このへんのことは村上湛君にでもいろ/\お聞きしたいところ。

陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)

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