富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2013-04-21

農暦三月十二日。ようやく雨あがる。薄曇り。ハルキムラカミには興味ないが小説刊行のたびに物語に出てくるクラシック音楽が脚光浴び以前にはヤナーチェクとか、で今回の「色彩をもたないナントカ」ではリストの「巡礼の年」がベルマンらの演奏で引用された由。ハルキムラカミの選曲はさすがでそれなりにクラシック聴きますといふ人でも意外と聴いていない、だけど遠いところにあるわけぢゃない、手の届くところにあるのだけどなかなか手を出さない、そんななかから僕は自分の好みだけで曲を好きになっていくのだけど世間は、あえて世間という言葉を使うけど、それと社会という言葉の違いはちょっと置いといて……止めよう、文字の無駄遣ひ、で成る程ね、リストでも「巡礼の年」か、といふわけでナクソスのネット音曲でも1970年代のベルマンのCDが紹介されてゐて、それを聴く。モノラルだが十分にベルマンの力量伝はつて来る演奏だつたが「巡礼の年」もいゝが秀逸はスペイン狂詩曲、さらにシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」も美しい。ハルキムラカミについては石原壮一郎が面白いことを言つてゐた。

「読んだ?」と聞かれて、何の引け目も感じずに堂々と「読んでない」と言えるのも、村上春樹のありがたいところ。「初期の頃は、けっこう好きで読んでたんだけどね。『ダンス・ダンス・ダンス』あたりからは、何となく読む気がしなくて」といった調子で自分の村上春樹歴を話せば、こだわりを持った奥行きの深い人間のように見えるでしょう。じつは一冊も読んでいなくても大丈夫。面倒くさいので、誰も詳しく突っ込んではきません。

言ひ得て妙。晝すぎNHKプレミアムで「三国連太郎さん偲んで」見る。NHKの「……さんを偲んで」は八十年代末に未だバブルの神南で当時は「音芸」が造つてゐたが当時、丁稚で仕事してゐたことも懐かしい。三国が突き詰めた親鸞。「白い道」。都新聞の大波小波(黒痩子)が評す

山間に住まう非農耕民の群れに加わり過酷な体験を通して一切の差別撤廃を説く教養を生み出した

存在としての親鸞。連太郎さんが惹かれないわけがない。午後かなり久々に走る。Nike+のデータで見たら一ヶ月近く前のトレイルランレース以来。突然走つて身体驚くのが怖いので5kmのみ。走ってゐてiTunesピンクフロイドが流れる。このバンドのあの印象的なのジャケットデザインされてきたStom Thorgerson師(こちら)ご逝去。享年六十九。哀悼。もっとずっと年上だと思つてゐた。日曜は夕方になるにつけ憂鬱になるのは典型的なサザエさん症候群……小学生の時からずっと。解決は出来ないが「明日は仕事だ」と思ふと憂鬱になるがアタシが一つ日曜に努めてすることは仕事に行く鞄の中身をきちんと用意すること。それに憂鬱になる前に飲み始めること。昨晩の残りの白葡萄酒、ナパのAsti WineryのCellar No.8シャルドネ2010年を飲み野菜澤山の夕食でCh. Lascombesのセコンド、06年飲む。晩にビデオニュースドットコム見る。宮本悟氏(聖学院大学基礎総合教育部准教授)の「北朝鮮は世界から孤立しているわけではない」が面白い。「世界から孤立する北朝鮮」はアタシもつい信じてゐたがアフリアで国連加盟国54カ国だか全てが北朝鮮と国境あり北朝鮮が国交保つのは実に170カ国。西欧で北朝鮮と国交ないのはフランスとアンゴラくらゐ、北朝鮮君主制とる国嫌ふといふのが興味深い。共産主義的には教条上その通りだが自ら世襲制なのに。
▼昨日日剰で晋三の悪筆嗤つたが自民党の政治家らしい立派な悪筆だとしても安倍晋三の「以和為貴」につき浄瑠璃研究専門の畏友K君から「貴の草書体としてはごく一般的な姿(を下手に写したもの)とみえます」と教示あり。具体的に『国性爺合戦』再板(七行百三丁本)二段目ノ口「もろこしぶね」といふ本を提示され(こちら)確かに「楊貴妃(やうきひ)の幽霊(ゆうれい)」の部分の貴のくづしは底本(写真左)と晋三の(写真右)は同様では?と。確かに、と言へることは晋三が「以和成貴」の誰かの草書体揮毫を模したことかしら。だが国性爺の「貴」はかなりくずしてはゐるが冠の「中」が中だとわかる運筆、それに対して晋三は火(「光」の上部)に見えるわけで下部の「貝」も国性爺は簡体字「贝」に近いバランスが立派。やはり書法はさう簡単に真似できるわけもなく先ずは楷書から。国政もきちんと基本が出来るかだうか、も不安なうちにアベノミクスだ、TPPだ、と燥ぐことの怖さ。その首相の運筆をば見事と誉めてゐるのが国民なのだが。この「貴」の字が気になり久々に祖父遺品の『五體字類』開く。昭和十一年の定番とされてゐる増補版。この版発売の新聞広告の切り抜き頁間に押し花の如く閉じられてゐて、これは見たことあつたが裏をふと見ると永田町の星岡茶寮が夏なのだらう、納涼園つまり今ならビアガーデンか本日より開幕と広告あり、その上の記事は時節柄「対支関係団体招待」と政府が対支那対策で関係団体招き協力求め東洋協会、同仁会、日華学会、東亜同文会、等が政府政策に同調。星岡茶寮の左の記事は「宗教行政刷新文部首脳協議」ってこりゃ大本や大黒教など弾圧のあれ、かしら。

五體字類 増補机上版

五體字類 増補机上版