富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2013-05-26

農暦四月十七日。不安定な天気続く。日曜日で陋宅の簡単な修理など済ませ午後まで机に凭る。ずっと、書いておこう、でそのまゝになつてゐたのが香港の小巴大王、馬亞木先生について。60路線の専有権有し600輛のミニバスで資産価値HK$80億だとか。不思議なのは、このミニバスのドアの見慣れた標識「紅磡大環山新邨二座地下11-13」なる登記住所。大環山新邨は10数年前に取り壊され今は紅磡邨紅日樓がそこに。馬先生の会社(冠榮車行)も現住所は深水埗青山道327-331號。何故、ミニバスの標識は昔の登記住所のまゝでいゝのか……このへんに專線小巴の奥深い事情あるゆゑ。簡単に纏めれば、專線小巴、香港が反英暴動などストライキ盛んなころに路線バス動かず、どさくさで通勤者相手に生まれたトラックなど使つた運輸手段。法整備されぬまゝミニバスとして交通網広がり政府は特定路線を公認(緑バス)。非公認の紅バスは今でも公共の乗降場使へず。それぞれバラ/\だったミニバスルートを一つずつ買収し続け一大ミニバス網成立させたのが馬先生。資産価値80億ドルといはれるが地味。会社も当然、個人経営で非上場。営業独占権ゆゑ定期的な入札など望ましいが政府(運輸署)も積極的に介入できず。この登記住所が昔のまゝなのも、おそらく営業権をとつた時のもので、その後の更新がされてゐないから鴨。更新するとなると入札などかなり裏事情で面倒なことに? といふわけで馬先生のミニバスで陋宅から出かけZ嬢とMTR尖沙咀。九龍公園。HK Heritage Discovery CentreでLe French Mayの一環でVoyage en Bourgogne - Le guide des arômes des vins de Bourgogneなる催事。ブルゴーニュワインの「香り」を、それが他のワイン生産地と何が違ふのか、だがチーズとか柑橘、ドライフルーツ、土臭さといつたワインの香り語る上での符丁となる様々な香りを実際にその原材料並べて嗅がせるといふ面白い試み。当然、その原材料も全てブルゴーニュのもの。なるほどねぇ、と感心。だが肝心のブルゴーニュの葡萄酒ないのが残念。本当に一杯だけでいゝから試飲したい。スターフェリー埠頭まで歩く途中に話題の「アヒルちゃん」。芋を洗ふが如き人出。中環。市大会堂。Le French Mayでジャン=コクトー展。見慣れたコクトーの作風だが、このモダニズムの展覧場にいかにもコクトーな見事なレイアウトで素敵。ゆつくり見たいが時間なく「また今度」で路線バスで湾仔の演芸学院。バス迂回で(結果的に早く演芸学院に着けたが)何か、と思へば六四デモの由。演芸学院では香港のエイジアンソサエティ主催で五嶋みどりのリサイタル。招待客ベースで港大T氏からお誘ひだつたが入場券配布もかなり混雑、混乱しており「取り置きのチケットありません」客少なからず。ワタシらもその一人。座席指定でなくブロック指定なので「待つてゐてくれゝば開演前にお席用意できますから」だが何だか興ざめてしまひZ嬢と「ご縁が無かったことで」と演芸学院向かひのFleet Arcade(海軍商場)へ。昔、香港一眺め良いマクドナルドが今はバー&ダインになつてゐるはず、とZ嬢。確かにQuarter Deck Clubなるなか/\素敵な食肆でバルコニーはハーバーサイド。天気も少し好転して気分よく麦酒一杯。でご機嫌になりハーバー岸を中環まで歩きコクトー展に戻りませう、といふことになつたが途中、香港政府総部で六四の追悼集会。こゝに参加してゐる學連の若者たちが1989年の天安門事件のとき未だ生まれてゐなかつた、と思ふと感慨深いものあり。市大会堂に戻りコクトー展じつくり眺める。Statue Squareの噴水池には、これもLe French MayでPentateuque by Fabien Mérelleの作品あり。これも実に面白い。フランス、凄いなぁ。日本はダメだなぁ。何だかずつと今日はワインが飲みたくてFCCで夕食。メインダインはそこ/\の葡萄酒揃えるがカジュアルにはHK$100くらいの価格帯なのも嬉しいかぎり。Baron De Venzac Bordeaux 2010をがぶ/\。楽しい週末となつた。
▼日経の連載「経済史を歩く」で一昨日の「福祉元年(1973年)医療・年金大盤振る舞い 田中首相、革新の施策後追い」は産経も驚く反共記事。岩手県沢内村で厚生省の圧力に抗して始まつた医療無料化、それが美濃部都政や横浜飛鳥田ら革新自治体が実行、そして自民党がかうした社会民主主義的福祉政策取り入れ……は今更この編集委員の大林某に言はれなくても昭和の経済史の常識だが、この大林某、沢内村の話から

  • だが時を経て、その名を過度に美化し、政治利用する勢力が頭角を現す。60年代後半、地方自治体に根を張りだした革新系の首長らだ。

って往年の『諸君』でも、も少し上品だつただらう、と驚くほどの反共ぶり(笑)。まだこんな感覚のがゐるのだな、と驚く。さすが日経さんだ。日本代表する経済紙だが経済紙といふのはFTでも香港の信報でも、保守的でもかなり体制に批判的なリベラリズムもあり(WSJはそれほどではないが「べったり」では無い)。それが日経さんはほんとご都合主義といふかホント「中外商業新報」以来の「所詮、株屋、相場師の新聞」でしかない。不思議なのは今でも「日経を読んでゐる」ことがビジネスマンのステータス的なのも可笑しな話。
▼昨日の朝日の社説共通番号制度―公正な社会への道具に」(こちら)は、いろ/\懸念もある、としつゝ「公平・公正な社会を担保するシステムとして、共通番号を機能させたい」から「これまで私たちは社説で、様々な注文をつけつつも、共通番号の必要性を認めてきた」って、結局のところTPPでも何でも基本的には容認で、たゞあれこれ配慮は必要……といふ最近の朝日らしさ。結局のところ、その配慮が蔑ろにされてゐるのだが。ちなみに福島の矢祭町も日本で唯一、住基接続拒んできたが共通番号法成立受け容認。わが国にとつてかけがへのない山奥の良心も遂に暴挙に陥落。惜しい。
▼昨日だつたかな?の信報社説「日股暴瀉降火 債務危機堪憂」より。

  • 如今日本政府決意推行稅制改革,明年提高消費稅以増加歳入,但在當前工人薪金増長放緩趨勢之下,無可避免會壓抑家庭消費開支。可以看到,安倍政府「三箭並用」的鴻圖大計──以財政投入加上黒田的激烈貨幣量?對經濟進行刺激,但缺乏關鍵的結構性改革措施支撐,恐怕最終功虧一簣。(略)日經指數昨天急瀉逾千點,暴露出來的問題,溢出了走勢調整的範疇,更多觸及安倍經濟學的「死穴」──政府不突破阻力推行結構性改革,無論央行貨幣量?的力度有多大,日本經濟沉疴恐怕也難以起死回生。

また今日の蘋果日報では盧峯氏が

  • 日股大地震的真正原因也許是日本金融市場已成了炒家樂園,不管是日債、日股、日圓都交投活躍,政府又不斷推出新政策救市,跟其他死氣沉沉的金融市場如中國、歐洲好玩得多,基金經理、專業投資者近半年來已大舉進駐日本,視為全球亮點,積極進場炒賣。在資金爭逐廝殺下,日股波幅自然比其他市場更厲害,更驚人。

とこちらもかなり怖い話。日本がいちばん楽観的か。
▼今日の都新聞の社説(週のはじめに考える)で「世論は外交を動かすか」(こちら)は社説とはかうあるべき、の立派な主張。

  • グローバル化時代、ネット時代の外交とは、世論が政治に動かされるのではなく、世論は外交を動かしもすると考えるべきではないでしょうか。つまり私たちには、それだけの重みも未来もかかっているのです。

と。たゞ政府や与党に迎合のご都合主義が並ぶなか、輿論の源泉たるべき新聞はかうでなくちゃ。
改憲論者の小林節先生が熱い。護憲派多き憲法学者のなかで一貫して改憲派だつた小林先生はかつて自民党憲法改正指南役だつたが近年、自民党立憲主義思想の欠如に苦言呈すること多く自民党から疎んじられ研究会などにも呼ばれなくなつた、といふ。だが自説曲げる気もなくわが道を往く小林先生は自民党の変節も介さず。で「96条改正が大問題になったおかげで国民は憲法問題を真剣に考え『憲法は国民が護ものではなくて権力者に守らせるものだ』と知った。あるじ意識を持った。この意識は止まらないよ。今こそ、さあ正面から改憲の議論を始めよう」と前向き。自民党の小手先での改憲に比べると本当に立派な方だ。