Hatena::ブログ(Diary)

本は食べ物です このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-11-07 『パーフェクトフレンド』野崎まど

[][][][]パーフェクトフレンド/野崎まど/MW文庫 00:06 パーフェクトフレンド/野崎まど/MW文庫を含むブックマーク

目次 
. Preamble of fable
I. Proceedings of fate
II. Passion fruit
III. Percussion flaking
IV. Potential fee
V. Page fault
VI. Paschal flower
VII. Perfect friend
. Perfect fabulist

★★★★★
『他人に勧められるレベルの本』

もうすっかり野崎まどさんの小説に魅せられているようです。
この作品に4点を付けようか5点を付けようか迷ってしまっている時点で、自分の中でのラノベのハードルが上がってしまっているのがわかる。
「小説家の作り方」「[映]アムリタ」に続いてこの作品を読んだわけですが、期待を裏切らない面白さでした。この人の作品には「期待通りに期待を裏切ってくれる」という評価がピッタリかも知れない。
今回はネタバレするかしないかで書ける内容がかなり変わってくるので、ネタバレを含む感想を後半の方に隔離しておいときました。未読の方は絶対に読まない方が良いかと思われます。

今回の題材は、「小学生」!最高だぜ!
……じゃなくて、今回の題材は「友達」です。同時にテーマでもあります。
友達(友情)をテーマにした作品は数あれど、友達という概念を題材にした作品というのは面白い着想。斬新とまではいかないまでも、物語の筋とは別に興味深く感じました。

主人公は、同級生より少しだけ大人っぽくて仕切り屋さんな小学四年生の女の子、「理桜」。
担任に頼まれるままに、友達二人と一緒に不登校の同級生「さなか」の元を訪ねたところ、彼女は遙かに高度な勉強まで終わらせてしまった天才少女だった。
初めは登校の必要性を感じていなかった「さなか」は、学校は友達を作る上でも大事であり友達は重要なものだ、との理桜の説得によって、「友達」という概念に興味を持ち登校を決める。
「友達はなぜ必要なのか。友達とは何なのか。私も、貴方も、それを説明できる言葉をまだ持っていない」と語る「さなか」は、友達という概念をあくまでロジカルに分析することを試みる。
自分が小学生だった頃を思い出すような、毎日学校が終わっては近所に友達と探検に行く日々。そんな小学生の日常に小気味の良い会話を練り込みつつ、物語が進行していきます。

流石は野崎まどさんと言うべきか、ストーリーの完成度の高さは言わずもがな。
巧妙で美しい伏線。ストーリーを綺麗にまとめてくれるオチ。
そしてこの作品では、キャラクターの掛け合いが非常に好みでした。ボケとツッコミの駆け引きがこれほどに熱いとは……!(※そういう趣旨の小説ではありません)
理に秀でたさなかと、同級生の中での経験だけは人一倍の理桜とが、「友達」というもののありかたを探って話し合うところが随所に出てきます。さなかのロジカルなアプローチがなかなかに面白い。

ストーリー・伏線・キャラクター・掛け合い、どれを取っても最後まで飽きさせない逸品でした。
最後に一つ、この本を勧めてくれた人が言っていたことを私も書こうと思います。先に『[映]アムリタ』を読んでおくことを強くオススメします。この断り自体がある意味でネタバレになってしまうとも思いつつ……。

















以下からはネタバレを含む感想です。未読の方は見てしまうと後悔するかと思います。

























今回は「どんでん返し」という程の大がかりな急展開は無かったけども、最後の最後のタネを封じながらすっきりとまとめたこの完結は見事でした。
いやはや、まさか今回までも「既に○○○○の手のひらの上」だったとは。
しかし個人的には[映]アムリタであんなだったあの人が、家庭を持って娘を大事にしている姿を見て何とも言えない温かさを感じてしまった自分がいる。
これは流石に考えすぎな希望的観測ですが、あの後に再び○○君との関係を全てやり直したんだったら素敵だな、とさえ思ってしまいます。でも元々○○さんに似てたってことなんだし、あり得なくはない……よね?

アムリタの話はともかく、母親譲りのつっこまれ体質を持つさなかちゃんは流石でした。つっこまれることさえも駆け引きに使うあたりは、ともすると最早さんより天才的なボケの才能を持つのでは。
理桜ちゃんとさなかちゃんのつっこみをめぐる攻防は常に笑わせてもらいましたwあとトムww
そしてボケ役かと思いきや魔法使いをひたすら言葉攻めにするさなかちゃんもたまらなく素敵。ジト目で「ぶひぃぶひぃと鳴いてください」って言われたいくらいの素敵少女ですね……待って通報しないで。

ストーリーは良いテンポで進んでいてとても良かった。「[映]アムリタ」や「小説家の作り方」より予定調和感が少なく、日常パートでもそれなりの起伏を楽しめる。
理桜が溺死して、というくだりは、あまりの超展開っぷりに悲しむとかじゃなくて唖然としてしまったけれど、あの「作り物的な唐突さ」さえ「御都合的な予定調和」を違和感として読者に埋め込むためのギミックだったと後から気づかされる。まさに痛快というほかない。
そして御都合的だなぁと思いながらもさなかに感情移入して一瞬でもぐっと来てしまったのがちょっと悔しい。

各々の友達論も面白いところでした。さなかの語る友達ネットワークのモデリングは、実際にやれば出来るんじゃないかと思えてくるほど。ジャンル分けの難しい小説だけど、なんだかんだでミステリーだけでなく実はSF的要素も強いですね。
そしてそれを詭弁を弄して論破した吉祥寺の魔法使いは見事。
憶測ですが、「吉祥寺の魔法使い」自体は最中さんのテコ入れの前から「奇術と詭弁を得意とするおじさん」として元々存在していて、それを最中さんは駒として利用した、と言うような気がします。

最後についでですが、各チャプターの英語を邦訳(意訳)した一例を書いておこうと思います。
解釈は色々あるかと思いますが、一応チャプターの内容を示すと思われる訳語を当ててみました。

Preamble of fable:おはなしの前置き
Proceedings of fate:運命は動き出す
Passion fruit:パッション・フルーツ
 (Passionは「熱心な」の意もあるので、知的探求心を燃やすさなかの暗喩?)
Percussion flaking:衝突、剥離。
Potential fee:隠されたお礼
Page fault:欠けたページ
Paschal flower:セイヨウオキナグサ
 (Paschalは「復活祭の」の意があるので、これも植物の固有名詞としてではなく暗喩として使われていると思われる。)
Perfect friend:本当の友達
Perfect fabulist:完璧な脚本家