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成毛眞ブログ RSSフィード

2009-09-18

食糧自給率を上げるのは無理だ

| 06:28

ボクは自給率について「自給率を上げるべきか否か」という疑問はもっていない。「自給率を意図的に上げることは無理だ」が答えである。

まずはカロリーベースの自給率の中身を平成20年のデータで見てよう。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0316.html

計算の大前提である総供給熱量は2551kcal、最大の熱源は米で597kcal(自給率は95.6%)、次に大きい熱源は畜産物で399kcal(自給率は15.8%)、第3位は油脂で363kcal(自給率はなんと3.3%)第4位は小麦で324kcal(自給率は13.9%)、第5位は砂糖で207kcal(自給率は33.3%)。この5品目でカロリーベースの74%を占める。

このことからカロリーベースでの自給率を効率的に上げるためには

1.肉と油や砂糖の消費を劇的に下げる

2.とうもろこしなどの飼料と油脂を自給する

の2択になりそうだ。2つともまず無理だ。1についての政策があるとすると、肉、食用油、砂糖への個別消費税、または関税の大幅引き上げなどの輸入制限などであろうか。双方とも自給率を上げるために行うべき政策とはとても思われない。2については以下のごとく完全に無理だ。よって「自給率を意図的に上げることは無理」なのだ。

鶏卵の96%は国内生産である。しかし鶏卵をつくるための飼料の自給率が9.7%であるため、鶏卵そのものの自給率は9%と計算されてしまう。もっとも国内生産率の低い主要畜産品は牛肉で39%、しかし牛肉用飼料の自給率は案外高く26%だから、牛肉の自給率は10%となる。

http://www.e-shokuiku.com/jyukyu/13_1.html

ところで、飼料養鶏飼料の主原料はとうもろこしで50−60%、それに大豆かす、ふすまなどを添加している。つまり、とうもろこしだけでも自給できれば、すくなくとも鶏卵自給率は一気に50%近くにまで跳ね上がる。他の畜産品も同様だ。

アメリカのとうもろこし作付け面積は日本の国土をほぼ同じ面積である。年間生産量は3億トン。日本は1500万トン輸入している。つまり、とうもろこしの自給率を100%にするためには、アメリカと同じ生産効率をもってして、日本は国土の5%をとうもろこし畑にしなければならない。しかもとうもろこしは飼料の50−60%でしかないので、ほかの大豆や小麦、菜種などの作物も自給率を100%にするためには、おそらく日本の国土の15−20%を再開発しなければならなくなるはずだ。ちなみに日本の沖積平野は国土の10%である。この10%に人口の49%、資産の75%が詰まっている。食生活を変えずに自給率を100%にするためには、たとえば国土の22%を占める北海道を完全に切り崩して大平原にする必要がある。どうみても無理なのだ。

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/bouekikouzou.pdf

第5位の砂糖を自給しようとしたら、もはや侵略的に国土を広げるしか手がないかもしれない。いくらなんでも、さとうきび畑ほしさに戦争を仕掛ける国は過去にも例がない。

さて、多くのひとが懸念する「有事の際の自給率」だが、これもあまり心配はいらないかもしれない。もし、アメリカとの関係が家畜飼料を売ってくれないほどの政治的な状況になったとすると、にわとりのエサの心配をしているヒマなどない。株価も為替も暴落しているはずで、日本人は肉を買ったり、ポテトチップスを食べたりする金銭的な余裕はなくなる。自動的に自給率はあがる。同時に総供給熱源は下がり、メタボは減り、医療費は下がるであろう。つまり単に1950年あたりの食生活の戻るだけのことだ。水資源や地球温暖化などによる世界的凶作に対する恐怖についても同様だ。結果的に肉価格などが高騰して均衡に向かうだけだ。

結局は人間は何百万年も手に入るものを食べているだけのことだ。たまたま、いまの日本人は肉や油が簡単に手に入るだけであり、手に入らなくなったらちゃんと別のものを生産して食べていくであろう。そしてそれがやがて固有の食文化と呼ばれることになる。ちなみに餓死が起こるのは「戦争」よりも「内乱」のときだ。




必要耕作面積を再計算してみた。使用した資料は

米国農務省2016年までの農業予測

http://www.afc.jfc.go.jp/information/investigate/international/pdf/04-01s.pdf

農水省の貿易構造のまとめ

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/bouekikouzou.pdf

だけだ。

アメリカにおける作物別の作付け面積、収穫量、日本の世界からの輸入量はそれぞれ

とうもろこし 9000万エーカー、3億トン、1500万トン

大豆 7000万エーカー、7000万トン、440万トン

小麦 6000万エーカー、6000万トン、540万トン

つまり日本が輸入しているとうもろこしの耕作面積は

9000万エーカーX(1500万トン÷3億トン)だから450万エーカー

おなじく大豆は440万エーカー、小麦は540万エーカーだ。

3つの合計は1430万エーカーである。

ところで日本の国土は377,835平方kmであり、1平方kmは247.1エーカーだから日本の面積は約9300万エーカーである。

つまり3つの作物を100%自給するためには、日本の国土の15%を必要とすることになる。ちなみに日本最大の関東平野は国土の4.5%、約420万エーカーである。やっぱり、北海道を真っ平らにしなくてはならなくなってしまった。

dotcomdotcom 2009/09/18 13:52 成毛様

お忙しいところ貴重なご投稿を頂き誠に有難う御座います。

後ほどゆっくり読ませていただき、思うところがあればコメントさせていただきます。

本当に有難う御座います。

founderfounder 2009/09/18 17:31 dotcomさん、本文はfuture_bookさんのコメントに対してのレスポンスのエントリーです。

dotcomdotcom 2009/09/19 11:59 成毛様へ

失礼しました。

個人的に参考にさせていただきます。
いつも有難う御座います。

dotcomdotcom 2009/09/19 12:10 成毛様のご投稿を読ませていただき、チャールズ・ダーウィンが残したとされる言葉が脳裏をよぎりました。

It is not the strongest
of the species that survives,
nor the most intelligent that survives.
It is the one
that is the most adaptable to change.
               Charles Darwin

(生き残る種というのは、
 最も強いものでもなければ、
 最も知的なものでもない。
 最も変化に適応できる種が生き残るのだ。
             チャールズ・ダーウィン)

出展 : http://www.e-avanti.com/mitemite/bineko/item/3357

founderfounder 2009/09/19 22:56 ちなみに、ボクにとって資源にまつわる最大の関心事は、アメリカのオガララ帯水帯に代表される化石水汲み上げ問題です。原油よりもはるかに早く枯渇する可能性があります。本文でも言及したように、その結果として飼料価格は跳ね上がり、肉類の価格は高い水準でも、結果的に均衡するでしょう。しかし、問題はアメリカの政治情勢の変化です。将来のコロラド川の水利も含めて考えると不安はつのります。フェニックス市などはあと50年もつのでしょうか・・・

dotcomdotcom 2009/09/20 15:22 成毛様へ

貴重なコメント有難う御座います。

約2年前にコロラドのクレストン在住の人から、別の意味での化石水汲み上げ問題で協力の署名をもとめられたことがあります。

オガララ帯水層の枯渇が進んでいる影響からか(当時の)米国政府は地下湖があるとされる土地の掘削したがってるとのことでした。

ただ特に原住民のみなさんには、それが環境破壊につながるということで政府を相手に掘削を阻止するためにいろいろと活動されてました。

バーチャルウォーターは農業用水、とくに畜産が大きいウェイトを占めると記憶しています。肉食は特に腸の長い日本人には向きません。要するに牛豚の肉食をやめれば、必要なバーチャルウォーターもかなり減ると思っています。

dotcomdotcom 2009/09/20 16:04 一部訂正です。すいません。

オガララ帯水層の枯渇が進んでいる影響からか(当時の)米国政府は地下湖があるとされる土地 「を」 掘削したがってるとのことでした。

founderfounder 2009/09/20 19:56 dotcomさん、日本人が肉食をやめれば、化石水濫用も減るとのことですが、それはかなり難しいかもしれません。もし、日本人の肉食を強制的に現在の半分にすると、マクドナルドや吉野家はおそらく倒産します。それはそれで化石水を保護するという至高の目的にための犠牲だとしても、結果的に世界のとうもろこしの需要は2.5%下がるだけです。2.5%の需要変動に対しての国際価格の応答は期待できるほどではありません。じつのところ2.5%は気候などの外的要因による変動よりも小さいのです。それでも日本の食肉需要が半分になると、世界的にバーチャルウォーター利用も2.5%減るように見えます。結果的に10%ほど食肉価格が下がる可能性があります。しかし、その結果は安くなった価格に対応して、中国などにおける食肉が増えるだけです。つまり経済学的には需給は価格を下げて均衡すると思われるのです。本当の解決のためには、きちんとした国際交渉プロセスを含めた考察が必要なのです。

肉食が日本人に向いていないか否かについて、議論するつもりはないのですが、単位あたりの肉を消化するために必要なエネルギーは人種的にはそれほど違いはないかもしれません。肉を消化するための時間や使う酵素構成は人種によってかなりことなるのですが、必要エネルギー量があまり違わないようであれば、結果的に個体差の範囲かもしれません。

dotcomdotcom 2009/09/23 14:31 成毛さまへ

お返事有難う御座います。先ほど気づきました。すいません。

日本人は明治以降肉食をはじめてから腸癌の発生比率が増えてます。腸が長いので肉食に不向きです。

また、女子プロゴルファーの古閑美保さんが「さんまのまんま」に出られたときにもいわれてましたが、肉は消化に9時間かかる、野菜よりも消化時間が長く体に負担かかるので肉は週一しかたべない、とのことでした。個人的な感覚からも肉食は菜食よりも体に負担がかかると思っています。

dotcomdotcom 2009/09/23 14:36 成毛さまへ

お世話になっております。いつも有難う御座います。
勝手ながら要望がございます。

成毛様のblogの右の欄の「最近のコメント」に関しまして、できれば6件以上UPされるようにしていただけると有難いです。

はてなさんのシステム的な問題もあるかもしれません。

勝手ながら宜しくお願い申し上げます。

dotcomdotcom 2009/09/23 15:58 成毛様へ

blogの右の欄の「最近のコメント」に関しまして、早速のご対応誠に有難う御座います。

founderfounder 2009/09/23 22:11 dotcomさん、反論するつもりはないのですが、文中「腸癌」は「大腸がん」のことだと思います。日本で「大腸がん」といわれている多くは、日本以外では「がん」と認識されていないと思われます。

dotcomdotcom 2009/09/25 22:50 成毛様へ

お返事有難う御座います。今きづきました。

成毛様的には肉食に関してどのような見解をお持ちでしょうか?

特に良し悪しに関して、その理由も含めて教えていただけると有難いです。

お忙しいところ誠に恐縮ですが、宜しければご返答の程宜しくお願い申し上げます。

dotcomdotcom 2009/09/25 22:58 成毛様へ

勝手ながらご検討頂けると有難いことがございます。

blogの投稿に関して、日割りではなく、エントリー毎に管理されるようにしていただけると、コメント読者としては後からのチェックが確実かつ楽です。

テンプレートの右側の「最近のコメント」も結果的にそういう形にしていたけると有難いです。

はてなさんのシステムの問題もあるかと思われます。

宜しければご検討の程宜しくお願い申し上げます。

founderfounder 2009/09/25 23:33 dotcomさん、ご質問の意図がよくわからないのですが、人類は発生以来500万年ほど補助エネルギー源として肉食をしていたと考えられます。逆にそのことこそが人類たりえる発達を促した可能性があります。

ところで、すくなくともに食文化は100年程度の短い歴史時間で変化します。したがって日本人が肉食に不向きであるとはとても考えられません。入門書として『ヨーロッパの舌はどう変化したか』などの書籍を読まれることをお勧めします。19世紀までのヨーロッパ人は肉食を常食にしていないので、さほど身長は高くなかったのです。ブローデルなどもお読みになることをお勧めします。

ともあれ、生物学的に肉食が日本人に向いていないとはとても考えれらません。肉食は日本人の平均身長を伸ばすことだけは確実です。

一方で、肉食はエネルギーベースの食糧自給率を下げます。逆にいうと、日本人が貧乏になったら自動的に肉食が減り自給率はあがります。因果関係はこの逆はあり得ません。

どう考えても、雑食で五百万年も生き延びた人類にとって(つまりあらゆる人種にとって)おいしさは肉>魚>穀物の順です。これはタンパク質と脂肪の合計値です。理由はほとんどの期間を飢餓で過ごしていたからです。思想で肉食の制限ができるくらいなら、核兵器などとっくに廃絶しているでしょう。

founderfounder 2009/09/25 23:40 dotcomさん、みなさんが読んで面白そうなコメントに対して、お答えしているだけです。つまりコメントを自立的なコンテンツにするつもりなどありません。

founderfounder 2009/09/26 00:14 個人的な肉料理についてお話しておきます。

牛肉はほとんど食べません。とりわけ、柔らかいサシの入った(つまり脂肪の多いだけの)日本の超高級肉はただただ気持ち悪いので食べません。ただし、穀物だけで育てられたアメリカ産のブラックアンガスという牛のランプなどで、きちんと1週間以上低温熟成したステーキであれば大好物です。オーストラリアのグラスフェッド牛とか日本の多脂肪牛とかは、よほどの義理がないと食べません。アメリカ牛にこだわる吉野家はその意味で本当に感服しています。

したがって、我が家では(黒沢監督ごとく)しゃぶしゃぶもすき焼きも豚です。いっぽう、焼いてたべる肉は圧倒的に羊です。ただただフライパンで塩コショウで羊を焼いて食うわけです。羊はオーストラリアのグラスフェッドがよいと思います。食べる量は豚(ハムなどを含む)>羊>鶏>牛=合鴨=ジビエでしょうか。

dotcomdotcom 2009/09/26 13:44 成毛様へ

追加分のレスコメントも含めまして、本当に有難う御座います。
『ヨーロッパの舌はどう変化したか』も今度読んでみたいと思います。

大変な雑学の量をお持ちなことに改めて感服いたしました。

dotcomdotcom 2009/09/26 13:51 成毛様へ

お勧めの本は以下の本のことかとと思います。

ヨーロッパの舌はどう変わったか―十九世紀食卓革命 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406258123X

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