2011-08-14
凶鳥 ”フッケバイン” ヒトラー最終指令 / 佐藤大輔
これは王道も王道、勇者が悪魔を成敗するヒロイック・ファンタジーです。
”フッケバイン””フー・ファイター”と呼ばれ各国が血眼で手に入れようとしている未確認飛行物体をドイツ空軍が撃墜した。
それを手に入れれば世界の軍事バランスは一転すると言われる”フッケバイン”を手に入れる為、ヒトラーはその回収を親衛隊に命じる。
というところから始まるこのお話。
ナチスが!UFOが!ゾンビが!E-100が!V2ロケットが!ペーパークリップ作戦で!
そんな感じです。
”フッケバイン”が生み出す”異形者”、その未知なる脅威と戦い生存する為に、プロイセン軍人がユダヤ人、敵国のアメリカ人やイギリス人とまで手を取り合い立ち向かうというこの構図の熱さ!
そして何より主人公のグロスマイスター大尉の格好良さ!
彼は真の英雄たる証・騎士鉄十字章を授与された数少ないプロイセン軍人であり、国家社会主義への忠誠ではなく故国と民衆・戦友を守ることに命を捧げる正義の男なのだ。
彼に付き従う優秀な副官オスターや、ナチスの人種政策が生み出した少女ペピ、敵国人である美しい英国女性レイラ、ユダヤ人科学者ゲルトマン教授、そしてかつて毒ガスで負傷したアドルフ・ヒトラー伍長を救い出した経験を持つ修道僧ブライエルなど、実に魅力的なキャラクターが彼に力を与える。
グロスマイスターが修道院のテラスに向けて小さく手を振った。オスターはそこを見上げた。そこに立っていたのはペピを抱いたレイラ、ブライエル師、ゲルトマン教授。
姫君と王女、枢機卿、大錬金術師の見送りを受け、アメリカからやってきた盗賊を連れた勇者が旅立つ。悪魔の本拠へ。勇者の手には伝説の剣。足りないのは喇叭の響きだけか。
オスターは首を振り、思った。
狂ってやがる。なにもかも狂ってやがる。
彼は立ち向かうのだ、宇宙からの脅威に!
申し訳ないがこのシーンで熱くならない人間がこの地球上に存在するなどとは到底思えない。
ナチス、UFO、ゾンビといったB級オカルト定番の素材を、ここまで王道の冒険活劇として成立させているのは実に見事。
軍事オタク的要素は控えめではあるが、そこは佐藤大輔、E-100が登場したところで思わず噴き出してしまった。
なのにこんなにも面白い。
「レッドサン ブラッククロス」「遙かなる星」「皇国の守護者」などの未完結シリーズを多く抱え未だ続きも新作も見られぬ佐藤大輔でありますが、この「フッケバイン」をもって自分の中で「彼は完結した」と定義してしまっても問題無いような、そんな気さえする。
ううん。
2011-05-27
巌窟王 第23幕 「エドモン・ダンテス」の演出
クライマックスの第23幕における演出・レイアウトが実に見事なのでメモ的に。
「どうか生きてほしい」と願うエデに対し、
「お前の声はもう届かない」と伯爵はキスで別れを告げる。
引き留めようとしたエデとは対象的に、
アルベールはただ友情(あるいは愛)の為に伯爵へキスをする。
伯爵→エデのキスは、「人としての生への決別」を現すものだが、
アルベール→伯爵のキスは、「人としての生への回帰」を訴えるものだ。
王道的な構図の反復だが、大変美しい。
父フェルナンとアルベールに注目。
「生きよう」と言うアルベールと、残ろうとするフェルナンの間を石が隔てている。
結局フェルナンは死を選び、アルベールは生を選ぶわけだが…
アルベールは二人を隔てていた石を越えてフェルナンの方へ駆け出し、
フェルナンとすれ違い、画面の外へ消える。
「父さんも伯爵も理解出来ない」と叫んだアルベールが父を理解し、
「別れ」ではあるが「決別」ではない、というのを視覚的に見せている。
この作品、全体を通して「目」の表情がとても豊かだが、第23幕はそれが特に顕著。
エドモンが怒りや憎しみ、悲しみをないまぜにした涙を流すシーンや、
アルベールの命を握られ正気に戻ったフェルナンの動揺の表情。
第22幕と第23幕では小杉十郎太の演技も相まって、狂気に満ちたフェルナンを堪能出来る。
アルベールの舞台劇めいた動きも必見。
それと気になったのがこの第23幕、やたらと十字架のモチーフが出て来る。
冒頭、フェルナンは十字架を背負い伯爵のもとへやってくる。
互いに斬り合う剣はやはり十字架だし、
胸に突き立てられた剣もまた十字架、
伯爵の前に十字架として立ちはだかるアルベール、
エドモンの死によって地に十字架が刻まれ、
その遺骸に添えられた短剣は墓標としての十字架だ。
ここまでそれほど宗教的なモチーフが出て来なかった気がするので妙に意味深である。
うーん。
8月に出るBD-BOX、絶対欲しいけどキスダムRがあるので先送りだなぁ。

















