Hatena::ブログ(Diary)

TRUST NO ONE.

2011-03-05

ドラえもん のび太と新・鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜 感想

ガンダムUC第3巻のついでに劇場で鑑賞。

これまでのリメイク作品の中でも一番良い出来だった。

…だったのだが、良く出来ていないこともないだけに悔いが残る結果に。

なのでここに色々と。

基本的には旧作とおおまかな筋書きは同じだが、一応ネタバレ注意。

以下ネタバレ含む。




1. あらすじ

遥か外宇宙より飛来したロボットの軍団”鉄人兵団”に立ち向かう少年少女の戦いを描く。監督・寺本幸代。(2011年・日本)




2. 感想

アバンでメカトピアの創世と、鉄人兵団の先遣隊としてリルルが派兵される様子が描かれ、重厚な劇伴と相まって全体通してわりとシリアスな方向性でまとめた印象。

かと言ってそこは子供向けアニメ映画なのでコメディも忘れず、序盤のギャグはなかなか冴えていて大人の目から見ても笑えるものになっていた。


『新ドラ』のキャラクターデザインは原作にかなり近いのに加えて、手描き風味のタッチがよりそれらしさを演出していて良い。

ゲストヒロインのリルルには特に気合が入っていて、沢城みゆきの演技力共に旧作に負けないヒロインぶり。

作画・動画も大変良好で、ザンダクロスのアクションはミサイル板野サーカスしていたりと見所が満載。

構図や演出にも凝っているのが窺えて、終盤で夕日をバックにキャラクターを影のみで描写するシーンなんかは、かなり効果的な演出

これだけでも観る価値はあったと思う。


が、新キャラというかマスコットのピッポ(ザンダクロスの頭脳のボールだった奴)、こいつがどうも納得が行かない。

今作で追加されたエピソードとして、

  • メカトピアでは歌は貴族だけのもので労働階級には禁じられている
  • ジュド(ピッポ)は歌が好きだったが、労働階級だったので見つかり廃棄された
  • それをリルルが拾い、自らのパーツを使って修理した
  • 以上のことから、二人は強い絆で結ばれている

というもの。これは、違うんじゃないかなと。

『鉄人兵団』の筋書きとして「のび太たちとの交流を通してリルルが思いやる心を学んだ末に世界は救われる」というのがあるのに、これじゃあリルルには元から”思いやる心”があって、単にそれがのび太たちとの交流で明確に発現したというだけの話になってしまう。


更にこの「ピッポが歌が好き」という設定のお陰でやたらに劇中で挿入歌が流れ、随分と散漫な印象を与えられた。

ピッポの登場によって、ロボットと人間の交流が「のび太(ドラ、スネ、ジャイ)とピッポ」「しずかとリルル」という二つに分断されてしまっていて、必然的にピッポとリルルそれぞれの交流が薄く見え、果たしてそれで”思いやりの心”を学ぶか?(リメイク版『地球が静止する日』みたいだ)という疑問と、これもまたシナリオが散漫に見える原因になってしまっている。(だからこそ、リルルとピッポが元々”思いやりの心”を潜在的に持っていた、という描写が成されたのかもしれないが。)


先に挙げた演出についても、演出自体は実に効果的なのだが、ピッポのび太の交流を中心にやたらと「泣かせ」を意識した作りになっているのも非常に鼻に付く。

公式でも「公開前に(試写会で)1万人が泣いた」だの、まるでその辺のTV局映画みたいな宣伝が成されているし、かつてのドラえもんは安易に感動を煽るような作品ではなかった筈だ。

これには激しい違和感を覚えた。


今までのリメイク作品の中では良く出来ていた部類だとは思うのだが、どうにもこう、何故そこをそうするのかという欠点が目立ってしまい全体的に惜しい作品。(先日『人魚大海戦』を観たばかりだった為、予想していたほどひどいものでは無かったのではあるが。)




3. まとめ

良かったところ

駄目だったところ

  • シナリオの根幹に関わる改変 というかピッポ
  • リルルとジュド(ピッポ)の出会いに関するエピソード というかピッポ
  • 挿入歌の多用(マクロスじゃねーんだから)
  • 「泣かせ」を意識しすぎたシナリオの作りと演出
  • ミクロスの出番が序盤ののび太に自慢するとこだけってどうよ?
  • 『〜はばたけ天使たち〜』というサブタイが死ぬほど寒い。

と言ったところ。

作画目当てでも沢城みゆき目当てでも観る価値はあるとは思う。




4. 余談

原作からの疑問だったのだが、

  • 神はロボットの進化を促す為に”闘争心”を与えた
  • それが悪い具合に作用して人間と同じような道を辿った
  • じゃあ”闘争心”を”思いやる心”に書き換えればよくね?
  • そしたらメカトピアは本当の理想郷になるしリルルも天使みたいなロボットに生まれ変わるよね
  • めでたしめでたし

これが納得が行かない。

「たまご…!? 清浄な世界にもどった時の人間の卵か?」

「自分の罪深さにおののきます。私達のように凶暴でなくおだやかでかしこい人間となるはずの卵です」

「そんなものは人間とはいえん」

宮崎駿風の谷のナウシカ』第7巻 P.211より

まあメカトピアの神は人間に絶望して理想郷を創ろうと思ったのだから、ロボット文明の末路を知ってまずその闘争心を無くすことを思いついたというのは納得が行く話ではあるのだが、果たしてそれが理想郷と言えるのか?という疑問がつきまとう。

作品内での思想と作者の思想を混同するのは間違いと思いつつも、藤子・F・不二雄がこういう世界を理想郷として描くのかなぁと。



反論反論 2011/03/06 15:19 新作が気に入らなかったようですが、私はオリジナルを上回る素晴らしい出来だったと思いますよ。
そもそも、昔からドラえもんの映画は感動を誘う作品でしたが・・・。

foxnumber6foxnumber6 2011/03/06 15:36 迫力のあるアクションや序盤のテンポの良さなど、良いところは沢山あったと思いますし、私も駄作だったとまでは思っていません。
しかし「感動を誘う」程度の演出は今まで(どこからどこまでと言われるとはっきりとは言えませんが)の映画ドラえもんでもされていましたが、今作では明らかに「泣かせ」を念頭においた演出が成されていたのに私は激しい違和感を覚えました。どうも一様に大仰すぎた感があったなぁと。

まあ今のドラえもんと昔のドラえもんは全く別の作品だし比べるのはおかしいと言えば、それまでの話ではありますが。

tacttact 2011/03/06 19:26 やっぱり、ピッポはおかしいと思います。
完全にピッポが主役になってしまっています。
ピッポにやさしい部分を担当させて、リルルがあまりにも
冷たい印象になってしまっていました。
のび太の「いけばうつぞ」のシーンががっかりでした。
リルルが怖い、任務遂行キャラに改変されていて、ピッポの心の葛藤を描きすぎた分、リルルの心が揺れていく部分が薄くなりすぎています。

ピッポがいい描写奪いすぎ。
まったく別のドラえもん作品としての完成度なら
高かったのかもしれません。

laskalaska 2011/03/09 20:06 大山ドラファンが、旧版劇場アニメが持つ「端正な絵」にはなかった、表情豊かな彼らの描き方に違和感を持たれることはあると思いますが、僕はそれが「泣かせを念頭に置いた」「大仰な表現」だとは思いませんでした。
どちらかと言えば、「大魔境」におけるジャイアンが見せた男っぽさ、心意気の表現に近い、キャラクターの心情描写としては素晴らしいレベルのものだったと思います。丹念に積み重ねて最後に観客の感情をも巻き込んで爆発させるあのテクニックは相当なモノです。
今回の映画は、たしかに旧版とは「別」の作品ではありますが、「昔」と「今」という区別が必要であるとは思いません。同じ「ドラえもん」という地平に立った、素晴らしい二本の作品だと思います。
原作コミックとアニメはまったく別のモノだとは思いますが。
突然の書き込み申し訳ありませんでした。失礼します。

foxnumber6foxnumber6 2011/03/09 21:27 tactさん
私もそこが気になりました。
ロボット側にリルルの他にピッポを配したことで、どうにものび太たちとの交流が分散されてしまってやや散漫だなぁと。


laskaさん
コメントありがとうございます。
『新』を観てから改めて『旧』を観直してみたのですが、『旧』はかなり淡々としていて「静」に終始していたのに対し、『新』は「動」をかなり意識した作りになっていることに気付きました。
その点で『新』は『旧』に比べてより映画的に作られていたと思います。
私はそこがどうにも「大仰」に感じたのかもしれません。
藤子F先生の作風には『旧』の持つ「静」の空気の方が近いのではないのかなぁと。
laskaさんの仰る通り『新』の映像の爆発力は素晴らしかったですし、私も観て良かったと思っていますよ。

田中田中 2011/04/03 21:52 「リルルには元から”思いやる心”があって、単にそれがのび太たちとの交流で明確に発現したというだけの話になってしまう」とありますが、そうだとしたらそれの何がいけないのかが分かりません。
「元々無感情だったが、のび太達との出会いで思いやりを学ぶ」のと、「朧げながらも持っていた感情が、のび太達との出会いで明確になる」、例えどっちの展開になろうがストーリー的には何も問題は無いはずです。
むしろ前者の場合、完全無感情のロボが僅かな人間達との触れ合いだけで、祖国に反発するまでに至るのは不自然な気がします。本家『鉄人兵団』でも、リルルは完全無感情だったとは一言も言われてませんし。

「泣かせを意識しすぎ」や「散漫な印象」「サブタイトルが寒い」に関してですが、これは完全に個人によって感じ方は違うので、何とも言えないですね。
ただ仮に泣かせを意識していたとしても、きちんとキャラ毎のストーリーが描かれていて、その結果大勢の方が実際に感動を受けた訳ですから、全く問題は無いし「駄目な点」とは言えない気がします。むしろ小説にしろ映画にしろ、それらは見る者を意識してなんぼですから、泣かせを意識する事の何が駄目なのか気になります。

ミクロスの出番削減は私も残念ですが、元々コメディ担当だったミクロスの出番は減らしたところでストーリーに影響は無く、「原作ファンにとっては残念」であっても「駄目な点」というのはやはり不適切かと。リメイクと言ったって、元からある作品を土台にした「新作」な訳ですから、一部キャラの出番削減に関しては甘んじて受け入れるべきです。特にミクロスの様なコメディ担当などは特に。

以上、長文で申し訳ありませんでした。

foxnumber6foxnumber6 2011/04/03 22:38 田中さん
コメントありがとうございます。

1つめについて
これに関しては最近原作を読み込んだ上で考えが変わりました。
リルルただ一人が人間を模して作られていることを考えれば、彼女が人間の心まで持って生まれたとしても、不思議では無いなと。
むしろSF的にはこちらの方がしっくり来る感じもしますし、『新』ではそれをより意識したシナリオ作りがされていたのかもしれません。

2つめについて
エントリーで書いておくべきでしたが、私は藤子F氏の「原作の映像化」としてこれらを観ています。
その上で『新』の大仰な演出がどうにも藤子F氏の原作と齟齬があるように感じました。
表現方法の違いと言えばそれまでの話ではありますが。

3つめ
まあこれも解釈・表現の違いと言えばそれまでですね。
「駄目な点」というのは確かに不適切だったかもしれませんが、別に私は評論家でもないので個人的な立場としてこの個人の場で感想を書いているわけですから、私は駄目だと思った、ということでは駄目でしょうか。

エントリーで書いたことは「媒体が違う」と言えばそれまでですが、あくまで藤子F氏の原作が大本として存在する前提での感想なので、そのところを理解していただければ幸いです。
少々感情的すぎるエントリーになってしまったのはお詫び申し上げます。

ごっつんこごっつんこ 2011/04/14 14:45 初コメントです。
私も新・鉄人にはおおむね同様の感想を抱きました。
映像的に高い技術と愛情が注がれた作品であることは頷くものの、F氏が描くある種の冷酷さが薄まり、ドラえもんをリメイクしたというより、何か他の「泣ける話」をドラえもんというパッケージで描いた感がありました。
鉄人といえばリルル、というほど彼女の物語は印象に残っていましたが、それは無人の世界で鉄人兵団という圧倒的物量と敗北必死の状況で戦うという「ゾンビ」や「地球最後の男」のようなホラー的緊迫感のなかで際立った結果であり、リルルの泣きを主題におくのはむしろ違うのではないかと。

それからコメント欄を掲示板扱いしてしまうのは無節操で申し訳ないのですが、田中さんに私はいいたいことがあります。
まず「例えどっちの展開になろうがストーリー的には何も問題は無いはずです」というのは間違いです。映像は全てのカットが繋がっており、削ったり増やしたりすれば内容は同じでも、感じる印象は全く異なります。
極端な例えはよくありませんが、話が変わらないなら映画が3時間でも3分でも筋は変わりません。変えたけど何も影響がない、ということは絶対にありません。
作品を擁護してるきでも、どっちでもいいというのは、作る行為を軽んじてる印象さえ受けます。その意図がないのは承知していますが。
もう一つ、「反論として[大勢のひとが楽しんだからアリ]」というのは論説として成立していません。それは興行側の考えであり、1人の感情を、多数と異なるから間違っているというのはまさに鉄人兵団の考えです。
加えてその考えに立って反論すれば、100万人が泣いた映画でも地球人口残り68億幾らは知りもしない、何の影響もないものです。かれらが「私たちが生涯見もしない作品など無くても問題ない」といえば正にその通りです。
作品の感想はあくまで個人に立脚しており、いってしまえば世の中のどこに求められていなくても、それを理由に否定されるいわれは全くありません。

お目汚し、失礼しました。

JJ 2013/07/31 21:09 このサイトが違和感を言語化してくれてすっきりした

そうなんだよ、「無機質な心のロボット少女が、のび太やしずかちゃんとかかわって人間にもやさしくなれた」というのが元のリルル。

新しいリルルは最初からロボット社会の価値観にけっこうしばられないややこしい感じに優しいやつじゃねえか。
完全に別。

新リルルのほうが「いいやつ」っぽいけど実は倫理の線引きが入り組んでいて共感しにくい。
悪のロボット連中に比べたら話がわかるキャラということになってるが
逆にむしろサイコパス的な人物によくある設定みたいでもあるよ、
人間的なやさしさを理解しながら人間を奴隷にしてこようとするんだから。
クレヨンしんちゃん映画「宇宙のプリンセス」の敵どもに近い。




あと、ただの個人的好みだけどみゆきちが声優というのは「またこいつかよ」って感じで自分は楽しめなかった
「エヴァにだけは乗らんでくださいよ ほんま勘弁してほしいわ」
↑おまえこそそこかしこに出んといてくださいよ ほんま勘弁してほしいわ

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/foxnumber6/20110305/1299333707