木魂を彫る−砂澤ビッキ展

神奈川県立近代美術館葉山、2017年4月8日〜6月18日
現代物故作家回顧展、公立美術館自主企画単独開催
鑑賞日:4月30日(日)

風が吹きすさぶ荒野のなかで、ひとりで生きることの気配を探り続ける。誰もいない深夜に生き物が動く。その微かな音を言葉とし、その微かな言葉をかたちにし、生きる気配を確認する。気配は今生きているものからのみ発せられるのではない。死者からもこれから生まれいづるものからも、気配は現れる。その気配にかたちを与えなければならない。時には言葉として、時には音として。かたちとなるものは、気配の近くにあるものが良い。近くにあるものは、すでに無数の気配を宿している。そのすでに宿された気配を言葉として音として探しだす。それは気配の姿であり、かつ、新たな気配を察知するための装置となる。しかし、気配はいずれ無くなる。気配を残していった生き物たちが、その場から離れていくからだ。気配が無くなった後も言葉と音とかたちは残る。その言葉と音とかたちもいずれ消えていくことを、自覚している。