“名勝負数え歌”18番目の調べ PART2

PART1から続き

 ミスター高橋が言うには、この試合は当初60分フルタイムの予定だったという。

長州「高橋さん、今日は60分やるのは自信がないよ」
高橋「どうしてだい」
長州「俺はジャンボとだったら必ず60分できる。だけど、タッツアン相手ではな……」
高橋「難しいか」
長州「一応行くつもりでやりますけど、もし難しいと思ったら途中で相手しますんで止めてください」

ミスター高橋新日本プロレス黄金時代「伝説の40番」完全解明』別冊宝島1557号(宝島社、2008) P.96

 これについても、直接長々と意見を言うのは控えたい。
 ただ永島のコメントを引用させていただく。

試合は60分ドローだったけど、いまでも藤原なんかが言うのは「あれは藤波がうまく引っ張ったからあそこまで猪木さんが持ったんです」って。

「藤波を語れ! 永島勝司新日本プロレス>」『永久保存版 デビュー40周年記念 藤波辰巳☆炎の飛龍40年』(ベースボールマガジン、2011) P.86

 わたしには長州は60分闘うつもりでいるようには見えない。
 もっともそれが悪いわけではい。かつての名勝負数え歌とも鶴田vs長州とも違う緊張感と熱さがある。

 2度にわたる延長戦は、「もうやめよう」「もうちょっと、がんばれ」という長州と高橋の駆け引きではなかろうか。藤波と長州、長州と高橋、そして観客、いびつな四角形が生み出した偶然の名作。