9巻発売時に書かれた自分の日記を今になって読んでみると、なんだかこいつ一人で盛り上がっているなぁ……、と遠い目になってしまう。
というわけで、世間では「良い時期にきちんと幕引きが出来た」と概ね好評を持って受け入れられているようなハチクロ最終巻ですが、私はけっこう食い足りなかったです。
ていうか、廃人化→自殺確定コースと思っていた森田兄の心理的ダメージからの回復の速さは何事?
兄・馨の死の影から逃れられず創作に背を向けた森田と、明らかな凡人に過ぎない竹本(もちろん彼は根岸のおじさんの暗黒面を受け継いでいる)が、大怪我という肉体的ハンデによって生まれてはじめて表現することを封殺されたはぐみと、いかにして係わり合い、いかにして再び〈光〉を取り戻すようになるのかまでを描くものと勝手に想像していたのだけれど、それって単なる強すぎる思い込みってヤツでしたね。ま、私の場合、実生活でもえてしてこんな具合なんで、別に驚きはしないですが。
とはいえ、ラストではしっかり泣きました。ええもう、ランチ食ってるタイ料理屋で人の目もはばからず。
(↑だったら貶すなよ〜)
例え、報われぬ恋であっても、何も残さない人生であっても、その中からなにかを見つけ出すことはできるし、結局のところそれは、自分次第だということ。
って、こりゃあ口にすると物凄いベタなんだが、おそらくハチクロがここまでのヒット作に成りおおせたのは、そのへんのベタさにこそあるのだろう。
はぐの選んだ結論というのは、女性にとって生涯のパートナーを決定する条件が、才能でも顔の良さでも、ましてや恋愛感情でもなんでもなく〈どれだけ自分にとって好ましい環境を提供することができるか〉にかかっているということを結果的に裏書した感もあり、物凄い説得力があった。
実はこの物語、はぐみを中心に考えると、1)純朴な好青年 2)天才肌のアーティスト 3)包容力のあるおじさま という3タイプの魅力的な男性から一方的に想いを寄せられるという、絵に描いたようにハーレクインロマンスな構成だと言うことがわかる。物語的な要請からすれば山田なんてあくまでも当て馬に過ぎず、巻が進むごとにどんどん知能指数が下がってゆくと言う指摘は、まさに正鵠を射ているといえるだろう。
自分的には同時掲載のプチ番外編(将棋の話)が一番面白かった。結局のところ、自分がこの作品を好きだったのは「ネットで対局時計購入」とか「東へ向かうユニコーン軍団」とかいった類の妙にオタクっぽいギャグセンスと、観覧車に代表される切ないエピソードが、平気な顔をして共存しているアンバランス感覚だったような気がする。
ところで、これは自分の読みの浅いせいもあるんですが、春に生まれる赤ちゃんっていうのを、はぐみの子供だとばかり思っていたんですけど、これは〈新しいお義母さん〉の子供ってことなんですよね?!
うーん、実はこれ〈あの夜〉に森田との間に出来た子供で、花本先生もそのことは知っていて……。ていう展開かと思っていたんですが、それはハチクロ的にはありえねぇか?
>春に生まれる赤ちゃんっていうのを、はぐみの子供だとばかり思っていたんですけど
ええっ?!全然そういう読み方してませんでした・・・お義母さんの子供だから父親とモメてたんじゃなかったの?!それとも私の思考回路がお子ちゃまなの?!
・・・だって森田との間って、果てしなく何も起きなさそうだったから・・・
いや全くおっしゃる通りです。だいたい相手は怪我人だし!
とりあえず初読の時、今度ははぐ自身が新しい家族を作るんだな、って思い込みがあって、それがどっかでおかしな方向に転んだ臭いです。
今回の番外編では、真山のコンパでの〈お持ち帰り〉も単なる誤解という展開になっていましたし、ハチクロ世界には元々性愛の要素は相性が悪いというか、それをからめると成立しなくなってしまう物語であったとは思います。
森田、良いですよね。彼氏にして良いのはもちろん、あの経済力と放浪癖は〈元気で留守が良い〉亭主としてもお勧めだと思います。
くらさん。こんばんは。
あ〜、鋭いっすねぇ。確かにその通りです。一方的に保護されたいっていう欲求を持つ女性と同じくらいは、相手を保護する立場に無類の喜びを見出す男性もいるので、そこはフィフティって気もします。
でもリカさんやはぐみの場合は「私を保護する栄誉を与えよう」ってな態度にも見えますが。山田の場合は保護というよりむしろ操縦されている感じ。〈良いも悪いもリモコン次第〉的な。一刻も早く自立した大人になって欲しいと思います。
いいえ、くらさんがお子ちゃまなのではなく、私が下劣なだけです。
はぐみ一家の過去の因縁を良く覚えていないので、本当は読み直しをしなくちゃいけないところです。ていうか、自分で思いいれがあるって言っておきながら〈根岸のおじさん〉を〈綾瀬のおじさん〉とか書いてるし……。(もう直したけど)自分のいい加減さに顔から火が出る思いです。
何も起きないのは、森田とはぐみの組み合わせだからなのか、もともと森田にはそういう要素が欠けているからなのか、どっちなんでしょうね?
そうそう、花本先生の愛情はそっち方面と違ったんじゃないの? とは私も思いました。本当にいつからなのか問いただしてみたい。ていうか、本当になにも起こさずにずっと一緒に暮らせてしまいそうな気がする当たりも先生の人徳(?)でしょうか。
たとえば真山がリカさんちのバスルームで悶々としていようと、野宮が山田の寝姿を見て「拷問だ」と嘆息しようと、そこから先まで欲望が突っ走るところは想像できない。ていうか、ある意味ハチクロの男性陣は精神的に去勢されちゃってるような部分もあって、確かに女性的には、そういう要素をいっそとっぱらって純粋に好意のみで成立する関係性の方が気が楽だって部分もあるのかな、なんて思ったりもします。
あ、倉持くん! ダークホースですね。うん、彼は良いですね。ていうか、こういうキャラを脇でフラッと投入できるあたりが羽海野の巧さだなぁ、と思います。