分裂勘違い君劇場 by ふろむだ since 2005 2020-10-28T05:06:55+09:00 fromdusktildawn Hatena::Blog hatenablog://blog/8454420450071235770 最新研究からわかる 学習効率の高め方 hatenablog://entry/26006613636243675 2023-11-25T15:29:31+09:00 2023-11-25T15:29:32+09:00 本書は、Amazon総合1位(無料)となった科学的学習法の本のWeb版です。 12万部のベストセラーとなった前著と同様、図とイラストを使って分かりやすく解説しています。 英語学習者・教師・受験生・小学生~高校生の親御さんに読んでいただきたいです。 全5巻(派生巻も含めると全8巻)構成で、これは第1巻です。 それでは、さっそく、サイエンス誌に掲載された論文を解説します。 (サイエンス誌は、ネイチャー誌と双璧をなす、世界最高峰の学術誌です) この論文からは、学習効率に関する重要ポイントをいくつも学べます。 本書は、基本的には中学生でも読めるように書いてあります。 実際、本書をある中学3年生の女の子… <BR><BR> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201009/20201009061709.png" style=""></div> <BR> <P> 本書は、Amazon総合1位(無料)となった科学的学習法の本のWeb版です。<BR> 12万部のベストセラーとなった前著と同様、図とイラストを使って分かりやすく解説しています。<BR> 英語学習者・教師・受験生・小学生~高校生の親御さんに読んでいただきたいです。<BR> </P> <P> 全5巻(派生巻も含めると全8巻)構成で、これは第1巻です。<BR> </P> <BR> <P> それでは、さっそく、サイエンス誌に掲載された論文を解説します。<BR> (サイエンス誌は、ネイチャー誌と双璧をなす、世界最高峰の学術誌です)<BR> </P> <P> この論文からは、学習効率に関する重要ポイントをいくつも学べます。<BR> </P> <P> 本書は、基本的には中学生でも読めるように書いてあります。<BR> 実際、本書をある中学3年生の女の子に読んでいただいたところ、たいへん好評でした。<BR> 実際に期末試験の成績も上がり、志望校にも合格し、ご両親も喜んでおられました。<BR> </P> <BR> <P> では、以下、論文の解説をどうぞ。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><h2 id="カーピキー2008実験" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■カーピキー2008実験</h2><P> たとえば、英語を学習するとき、多くの人は、次の2つをやる。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> <b>【勉強】</b>……参考書・文法書・単語集などを読んで理解する。<BR> </P> <P> <b>【テスト】</b>…問題集を解く。<BR> </P></div> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 2em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002074902.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; ;; color: #0000ff;"> いや、テストも勉強に含まれるだろ。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 一般的な言葉の定義だと、そうなる。<BR> ただ、本書では、説明しやすいように、本書独自の用語を使って説明する。<BR> (本書独自の用語は【】でくくってある)<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062539.png" style=""></div> <BR> <P> 【勉強】と【テスト】を、ひとまとめにして扱う時は、「学習」と表記する。<BR> たとえば、【勉強】を10分、【テスト】を10分やったら、学習時間は20分である。<BR> </P> <BR><BR> <P> この<b>【勉強】と【テスト】は、どちらを、どんな順序で、何回ずつ繰り返すのが、一番学習効率が高いと思う?</b><BR> </P> <BR> <P> それについて考えるために、まずは、認知心理学者のカーピキーとロディガーの行った実験( <a href="https://science.sciencemag.org/content/319/5865/966"> Karpicke & Roediger, 2008 </a> )を見てみよう。<BR> </P> <P> 本書ではこれを<b>カーピキー2008実験</b>と呼ぶ。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="被験者" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■被験者</h3><P> アメリカの大学生40人。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習素材" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習素材</h3><P> 被験者が【勉強】と【テスト】を行ったのは、次の「スワヒリ単語 ー 英単語」の40ペアである。<BR> </P> <BR> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062924.png" style=""></div> <BR> <P> たとえば、このリストから、スワヒリ語では、トマトのことを「ニャニャ(nyanya)」、食べ物のことを「チャクラ(chakula)」と言うことがわかる。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習方法" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習方法</h3><P> 【勉強】では、コンピュータスクリーンに、次のように表示された。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062614.png" style=""></div> <P> 左側がスワヒリ語の単語で、右側がその意味を説明する英語である。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062619.png" style=""></div> <P> 被験者は、これを見て、『スワヒリ語のmashuaは、boatという意味なんだな』ということを【勉強】する。<BR> </P> <BR> <P> 一方、【テスト】では、コンピュータスクリーンに、次のように表示された。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062623.png" style=""></div> <BR> <P> そして、被験者は、キーボードから、左側に表示されたスワヒリ語の意味を入力することが求められた。<BR> この例の場合、「boat」と入力するのが正解である。<BR> </P> <P> 入力後に、フィードバック(答え合わせをして、正解を伝えること)が被験者に与えられることはなかった。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 2em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002074937.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; ;; color: #0000ff;"> 「問題だけ解いて、答え合わせはしない」ってこと?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> うん。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習スケジュールと実験条件" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習スケジュールと実験条件</h3><P> 被験者は、「スワヒリ単語 - 英語単語」のペア40個について、【勉強】と【テスト】を、次のスケジュールで行った。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062536.png" style=""></div> <P> つまり、「【勉強】→【テスト】」のサイクルが、合計4回繰り返された。<BR> </P> <P> ただし、被験者は次の4つのグループに分けられ、それぞれ、【勉強】と【テスト】の条件が異なっている。<BR> </P> <BR> <P> ※ この記事では、実験条件は《》でくくって表記する。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><h4 id="弱点勉強弱点テストグループ" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■《弱点勉強・弱点テスト》グループ</h4><P> 【テスト】が行われるたびに、【テスト】で正解した単語はリストから取り除かれ、以降の【勉強】と【テスト】では、残った単語の【勉強】と【テスト】だけが行われた。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062445.png" style=""></div> <BR> <P> 我々日本人が、単語カードで英単語を学習する時、もう覚えた単語のカードは取り除いていき、まだ覚えていない単語だけを集中して学習したりするが、それと同じことをやるわけである。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062302.jpg" style=""></div> <BR> <P> スマホの英単語学習アプリの多くは、この方式で学習が行われるように作られている。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062812.jpg" style=""></div> <BR><SPAN style=" font-size: 80%;;">(スマホアプリ『mikan』の画面より引用)</SPAN><BR> <P> また、参考書で【勉強】するときも、すでに覚えた章は飛ばして、まだよく覚えていない章を集中して【勉強】するのも、よくやる方法だ。<BR> その時、その章の末尾の確認テストや対応する問題集をやったりするから、これと似たパターンになることが多い。<BR> </P> <P> この惑星上で、最も広く行われている学習方法の1つだろう。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h4 id="全勉強全テストグループ" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■《全勉強・全テスト》グループ</h4><P> 【テスト】で正解したかどうかに関係なく、全ての【勉強】と【テスト】において、40個全ての単語の【勉強】と【テスト】を行った。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062933.png" style=""></div> <BR> <P> これも、この惑星上で、最もポピュラーな学習法の1つだ。<BR> 一般に、「私は、この参考書を4周やった」などと、よく言ったりする。<BR> つまり、最初から最後まで全部を、4回【勉強】するわけである。<BR> その際に、各章の末尾のテストや対応する問題集も毎回律儀にやるなら、これと似たパターンになる。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h4 id="全勉強弱点テストグループ" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■《全勉強・弱点テスト》グループ</h4><P> 【テスト】が行われるたびに、【テスト】で正解した単語はリストから取り除かれ、以降の【テスト】では、残った単語の【テスト】だけが行われた。ただし、【勉強】では常に40個全部の単語が【勉強】され続けた。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062930.png" style=""></div> <BR> <P> こういう学習方法をする人は、あまりいないかもしれない。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><h4 id="弱点勉強全テストグループ" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■《弱点勉強・全テスト》グループ</h4><P> 【テスト】が行われるたびに、【テスト】で正解した単語はリストから取り除かれ、以降の【勉強】では、残った単語の【勉強】だけが行われた。ただし、【テスト】では常に40個全部の単語が【テスト】され続けた。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062453.png" style=""></div> <BR> <P> これも、一般には、あまり見られない学習方法ではないだろうか。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="実験結果" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■実験結果</h3><P> 1週間後に、どれだけの単語を覚えているか、計測テストを行った。<BR> </P> <P> それぞれのグループの被験者は、40個の単語のうち何%を覚えていたと思う?<BR> </P> <P> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> </P> <P> 結果は、こう。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062200.png" style=""></div> <BR><BR> <P> この実験結果から、以下の3つのことがわかる。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (1)【勉強】の反復回数を増やしても、記憶の定着率はほとんど上がらない。<BR> </P> <P> (2)【テスト】の反復回数を増やすと、記憶の定着率は劇的に上がる。<BR> </P> <P> (3)既に【テスト】で正解できた問題でも、その後、繰り返し【テスト】をすると、記憶の定着率は大きく上がる。<BR> </P></div><BR> <P> よく、反復の重要性を強調する人がいるが、重要なのは、「何」を反復するかだ。<BR> </P> <P> <b>既に覚えたことの【勉強】を反復するのは、めちゃくちゃ非効率</b>である。<BR> <b>既に覚えたことの【テスト】を反復するのは、ものすごく効率が良い</b>のである。<BR> </P> <BR> <P> また、学習内容の確認テストをやって満点をとると、「よし、この部分は全部覚えたぞ」と安心してしまって、まだ覚えていない部分ばかり集中して覚えようとする人も多い。<BR> しかし、<b>すでに覚えてしまった内容でも、繰り返し【テスト】すると、【忘れにくさ】が向上する</b>のだ。<BR> </P> <BR> <P> それから、【テスト】の直後、<b>フィードバック(答え合わせをして、正解を伝えること)をしていない</b>、という点は、とくに重要である。<BR> 我々が問題集を使って学習する時、「問題を解いた後に、答えを見るからこそ、学習効果があるのだ」と、我々は信じているし、実際、フィードバックには学習効果がある。<BR> このため、《全勉強・全テスト》の記憶定着率が高いのは、【テスト】の後に行われた【勉強】がフィードバックの役割をしていて、それによって記憶の定着率が上がったのだと考えたくなる。<BR> ところが、《弱点勉強・全テスト》では、<b>後半、大部分の単語は、【勉強】もせず、答え合わせもせず、ひたすら【テスト】だけが繰り返されたにもかかわらず、《全勉強・全テスト》と記憶定着率は同じだった</b>のだ。<BR> </P> <P> このことから、<b>答え合わせをしなかったとしても、問題を解くこと自体に、劇的な記憶の定着効果がある</b>ことが分かるのである。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="主観的な知識習得量" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■主観的な知識習得量</h3><P> 実は、この実験で、「【勉強】→【テスト】」の4サイクルをやった直後、被験者に、1週間後に自分が覚えている単語の個数を予測してもらってあった。<BR> </P> <P> それぞれのグループの被験者は、40個の単語のうち何%を、1週間後に自分が覚えていると予測したと思う?<BR> </P> <P> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> ↓<BR> </P> <P> 被験者の予想は、こうだった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062731.png" style=""></div> <BR><BR><BR><BR> <P> この事実から、次2つのことが分かる。<BR> </P> <BR> <P> (A)反復【テスト】によって記憶の定着率が上がっている被験者は、自分自身ではそのことを自覚できていなかった。<BR> つまり<b>「うわっ。今の【テスト】によって、めちゃめちゃ脳内に記憶が定着されていっている!」という自覚症状はなかった</b>。<BR> このため、実際よりも低い記憶定着量を予想してしまった。<BR> 結果、実際の記憶定着量は、《弱点勉強・全テスト》の被験者が直感的に感じる記憶の予想定着量よりも、ずっと多くなった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062458.png" style=""></div> <BR><BR><BR> <P> ようは、<b>反復【テスト】による記憶の定着効果は、やってる本人は自覚できない</b>のである。<BR> </P> <P> 少年漫画でよく見かける、「自分がすごく強くなっていることに気づいていない主人公」みたいで、いかにも、物語が始まりそうである。<BR> </P> <BR><BR><BR> <P> (B)《弱点勉強・弱点テスト》のように、「既に【テスト】で正解できた問題は、それ以上【勉強】も【テスト】もしなかった被験者」は、既に覚えた単語を、「せっかく覚えたけど、この単語、半分くらいは忘れちゃうだろうな」と考えていたが、<b>その見積もりは甘すぎた</b>。<BR> <b>被験者が思っているよりも、かなり速いスピードで、被験者は【勉強】したものを忘れてしまった</b>のだ。<BR> このため、実際よりも高い記憶定着量を予想してしまった。<BR> 結果、《弱点勉強・弱点テスト》の被験者は、直感的に感じる定着量より、実際の記憶の定着量の方が、かなり少なくなってしまったのだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062449.png" style=""></div> <BR><BR><BR> <P> <b>ちょっと恥ずかしいほど自信過剰</b>なことが分かる。<BR> </P> <P> 自信過剰で、やられ役の敵キャラみたいである。<BR> </P> <BR> <P> 人間には、覚えた学習内容の忘れやすさを過小評価する認知バイアス(思考の錯覚)があるので、自分が覚えたものに対して、自信過剰になってしまうのである。<BR> <b>実際には、あなたが今までに反復【勉強】したものは、あなたが自覚しているよりも、だいぶ少なくしか、あなたは覚えていない</b>のである。<BR> </P> <BR><BR> <P> ちなみに、「認知バイアス(思考の錯覚)」という概念をご存じない方は、 <a href="https://www.furomuda.com/entry/2018/08/04/011000"> この記事 </a> をどうぞ。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習効果が高ければそれでいいのか" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習効果が高ければ、それでいいのか?</h3><P> では、「効果の高い学習方法」さえ続けていれば、それで十分なのだろうか?<BR> </P> <P> たとえば、前述したように、一週間後のテストでは、《全勉強・全テスト》グループは《弱点勉強・全テスト》グループと同じ81%の正解率だった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062937.png" style=""></div> <BR> <P> この2つのやり方は、同じだけ「効果」はあった。<BR> しかし、「効率」は異なる。<BR> なぜなら、それぞれの被験者グループで、学習にかかった時間が異なるからだ。<BR> 学習効率とは、<b>「時間あたりに獲得できた『知識とスキルの質×量』」</b>のことなのだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062522.png" style=""></div> <BR> <P> そもそも、多くの人が、弱点だけを集中して勉強するのは、その方法は学習時間が最小限で済むために、学習効率が高いと思っているからである。<BR> </P> <P> 実際のところは、どうなのだろうか?<BR> ほんとうに「弱点集中学習」は効率が良いのか?<BR> それとも、これはただの信仰に過ぎないのだろうか?<BR> </P> <P> 確かめてみよう。<BR> </P> <P> この実験の【勉強】セッションでは、被験者は、1単語ペアにつき、5秒間の【勉強】時間が与えられた。<BR> </P> <P> 【テスト】セッションでは、1単語ペアにつき、8秒以内に回答できなかったら、不正解とみなされた。<BR> すでにすっかり覚えてしまった単語は即座に答えを思いついただろうから、2~3秒もあれば回答できただろうが、まだ覚えていない単語は8秒で時間切れになるまで考えただろう。<BR> したがって、平均して5秒回答にかかったとみなして計算してみる。<BR> すると、学習に要した時間は、【勉強】と【テスト】の試行回数の合計に比例することになる。<BR> なので、《弱点勉強・弱点テスト》条件を100とすると、かかった総学習時間は、それぞれ、次のようになる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062543.png" style=""></div> <BR> <P> 「1週間後に記憶していた単語量」を「総学習時間」で割ると、「時間あたりの学習量」=「学習効率」が出てくる。<BR> </P> <P> そうやって計算した場合、《弱点勉強・弱点テスト》の学習効率を100とすると、それぞれ被験者グループの学習<b>効率</b>は、以下のようになる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062513.png" style=""></div> <BR> <P> 一般に、最も効率が良いと信じられている《弱点勉強・弱点テスト》を100とした場合、《弱点勉強・全テスト》の学習効率は160にもなる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062517.png" style=""></div> <BR> <P> 一見、最も効率が良さそうな《弱点勉強・弱点テスト》よりも、《弱点勉強・全テスト》の方が、遙かに効率が良いのは、なぜだろうか?<BR> </P> <P> 原因は、2つある。<BR> </P> <P> 1つ目。<BR> 《弱点勉強・全テスト》では、既に覚えた単語を学習し続けたため、「オーバーラーニング(overlearning)」による学習効果が発生したからだ。<BR> オーバーラーニングははるか昔から知られている心理現象で、「既に覚えた知識をさらに学習すると、【忘れにくさ】が上がる」というものだ。<BR> 地面に打ち込んで、すっかり埋まった杭を、さらにしつこく叩き続けると、より引っこ抜きにくくなるようなイメージだ。<BR> これにより、《弱点勉強・全テスト》の学習効率が劇的に良くなるのだ。<BR> </P> <P> 我々は、「既に覚えた単語を、しつこく学習し続けることは、効率が悪い」という認知バイアス(思考の錯覚)を持っている。<BR> しかし、現実には、オーバーラーニングの効果によって知識の定着率が上がるため、それは、効率的な学習法なのである。<BR> つまり、我々は、<b>認知バイアスのせいで、オーバーラーニングという効率的な学習法を、非効率だと錯覚している</b>わけである。<BR> </P> <P> この実験が特に秀逸なのは、《全勉強・全テスト》、《全勉強・弱点テスト》、《弱点勉強・全テスト》、《弱点勉強・弱点テスト》の4つの条件を比較対象に並べたことで、<b>オーバーラーニング(over learning)の正体がオーバーテスティング(over testing)であることを、見事に暴き出した</b>点だ。<BR> 既に覚えた単語の【勉強】を反復するオーバースタディング(over studying)にはほとんど学習効果はなく、既に覚えた単語の【テスト】を反復するオーバーテスティングだけに劇的な学習効果があることが、一目瞭然となったのである。<BR> 惚れ惚れするほど鮮やかな実験デザインである。<BR> </P> <BR> <P> 2つ目。<BR> 《弱点勉強・弱点テスト》では、「なかなか覚えられない単語」だけを集中して覚えたが、実は、「なかなか覚えられない単語」というのは、「定着しにくい単語」なのだ。<BR> 本書では、これを<b>【難定着知識】</b>と呼んでいる。<BR> <b>【難定着知識】は、脳と相性が悪い。まるで水と油みたいに反発し合っていて、なかなか脳に入らず、入ったとしても、すぐに抜けてしまうのである</b>。<BR> このため、「定着しにくい単語」を覚えようとしつこく頑張っても、その努力の多くは実らないし、一時的に覚えたとしても、すぐに忘れてしまうのだ。<BR> それに比べると、《弱点勉強・全テスト》では、「記憶に定着しやすい単語」を反復【テスト】によって確実に記憶に定着させていった。その努力の多くは実り、結果的に、高い学習効率になったのだ。<BR> </P> <P> この実験では、それを分析するためのデータをとっていないので、データによってそれを可視化することができないが、本書で解説している別の実験では、ちゃんとデータをとって可視化し、この現象の分析を行っている。<BR> </P> <P> 実は、この【難定着知識】というものの存在も、はっきり認識できていない人をよく見かける。<BR> たいていの人は、どの単語も、記憶への定着しやすさは、そんなに大きくは変わらないと錯覚しているのである。<BR> また、習得するのに時間がかかった単語も、忘れやすさは他の単語とたいして変わらないと思っているのである。<BR> </P> <P> 以下は、知識習得のROI(投資効果)を表した表だ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062555.png" style=""></div> <BR> <P> ROIというのは、要は、「どれだけお得か?」の指標だ。<BR> </P> <P> 「重要でかつ定着しやすい知識」は、抜群にROIが高い(=お得)。こういう知識は最優先で学習しなければいけない。<BR> さして重要ではないが、簡単に定着させられる知識は、まあ、学習コストが低いし、覚えちゃっていいだろう。<BR> 定着しにくいけど、重要度が高い知識は、まあ、頑張って覚えるしかない。<BR> </P> <P> 問題は、「重要度が低いのに、定着しにくい知識」だ。<BR> これは、【不採算知識】だ。<BR> 【不採算知識】は、たいして重要でないのに、学習コストだけはやたらと消費するのである。<BR> その知識を得ることによるメリットが、その知識を得るのにかかるコストと見合ってないのである。<BR> 会社で言えば、赤字垂れ流しで、リストラ対象の事業や人員である。<BR> </P> <P> 【定着容易性】をろくに考えずに学習していると、知らず識らずのうちに【不採算知識】に大量の学習時間を使ってしまい、「重要で、かつ、定着しやすい知識」を学習する時間が足りなくなり、学習効率が下がってしまうのである。<BR> </P> <P> これもまた、典型的な、学習を非効率にする認知バイアスの一つだ。<BR> </P> <P> 《弱点勉強・弱点テスト》は、【難定着知識】に学習時間を集中投資する。<BR> だから、計測テストの成績が悪くなるのは当たり前なのだ。<BR> </P> <P> もちろん、実際には、【難定着知識】であっても、重要度の高い知識の学習に時間をかけるのは、必要なことである。<BR> </P> <P> したがって、本書では、「重要度の高い【難定着知識】」には学習時間をかけ、【不採算知識】には学習時間をあまりかけないようにする方法について、書かれている。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習曲線" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習曲線</h3><P> ここで、被験者たちの学習曲線を見てみよう。<BR> 一回でもテストで正解すると、その単語を「学習済み」とカウントする。そして、学習済みの単語数が、どのように増えていったのかを、計測したのだ。<BR> </P> <P> その結果が、以下のグラフだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201004/20201004221603.png" style=""></div> <BR><SPAN style=" font-size: 80%;;">(Karpicke & Roediger, 2008のデータを元に作成)</SPAN><BR><BR><BR> <P> どの被験者グループも、学習曲線自体は、ほとんど同じであることが分かる。<BR> </P> <P> つまり、<b>知識【習得】率は、全ての実験条件で、違いがない</b>のだ。<BR> <b>違っているのは、忘却率</b>なのである。<BR> </P> <P> 穴の空いたバケツにいくら水を入れても、バケツに水はたまらない。<BR> (我々サービス運営者の例で言えば、入会率がいくら高くても、解約率が高いと、ユーザ数は増えていかない)<BR> </P> <P> それと同じように、知識【習得】率がいくら高くても、忘却率が高いと、知識は増えていかないのである。<BR> </P> <BR> <P> 中長期的な学習効率は、以下の式で決まる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062744.png" style=""></div> <BR><BR> <P> 学習曲線を見て分かるように、実験直後は、「学習で習得した知識量」については、「実際に習得した知識量」と「直感的に習得したと感じられる知識量」は一致していた。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062337.png" style=""></div> <BR> <P> 実験直後には、どの被験者グループも100%の単語を【習得】していたし、直感的にも、そのように感じられていただろう。<BR> </P> <P> また、「実際に学習にかかった時間」と「学習にかかったと直感的に感じられる時間」も一致していただろう。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062843.png" style=""></div> <BR> <P> しかし、知識の【保持】率については、「現実の知識【保持】率」と「我々が直感的に予想する知識【保持】率」が大きくズレているのである。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062755.png" style=""></div> <BR> <P> つまり、<b>我々の直感は、知識の【保持】率を誤って認識している</b>。<BR> このため、学習効率を誤って認識してしまうのだ。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="学習錯覚" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■学習錯覚</h3><P> 筆者が <a href="https://www.furomuda.com/entry/2018/08/04/011000"> 錯覚資産本 </a> に書いたように、ほとんどの人間は、<b>「直感的に正しいと思える間違ったこと」を正しいとしか思えない</b>。<BR> たいていの人間は、「直感的に正しいと感じられること」を疑ったりはしないし、比較実験をしたり、論文を読んだりして、「自分が正しいと思っていること」が本当に正しいかどうか、いちいち検証したりはしないのである。<BR> <b>「自分が正しいと感じていること」の正しさを疑うことは不快なので、ほとんどの人は、やろうとしない</b>のだ。<BR> </P> <P> このため、<b>我々は、「直感」が正しく機能していない物事に関しては、凄まじく無能になる</b>。<BR> <b>その一つが、「学習法」なのである</b>。<BR> </P> <P> だから我々は、<b>「直感的に効率が良いと思える、非効率な学習方法」で学習してしまう</b>のだ。<BR> </P> <P> 本書では、このような、「効率的な学習を非効率だと感じる認知バイアス」及び「非効率な学習を効率的だと感じる認知バイアス」のことを総称して<b>【学習錯覚】</b>と呼ぶ。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="もう一つの実験条件" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■もう一つの実験条件</h3><P> この実験に、もう一つ実験条件が加えてあれば、最高だったのにと思う。<BR> それは、《全勉強・ノーテスト》という実験条件だ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062611.png" style=""></div> <BR><BR> <P> 実際、これは、非常にポピュラーな勉強法だ。<BR> こういう風に、反復【テスト】をろくにやらず、反復【勉強】ばかりやっている人は、たくさんいる。<BR> これも、この惑星でもっとも人気のある学習方法の1つだろう。<BR> </P> <BR> <P> 《全勉強・全テスト》と《弱点勉強・全テスト》では、【勉強】時間が倍ぐらい違うのに、1週間後の記憶【保持】量は同じだった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062937.png" style=""></div> <BR> <P> また、《全勉強・弱点テスト》の【勉強】時間は、《弱点勉強・弱点テスト》の2倍くらいあるのに、1週間後の記憶【保持】量は3%しか増えてない。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062441.png" style=""></div> <BR> <P> このことから、反復【勉強】が知識【保持】率を増やす効果は、<span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">ものすごく小さい</span>と予想される。<BR> </P> <P> したがって、実験結果は、次のようになっていた可能性もありそうである。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062606.png" style=""></div> <BR> <P> 反復【勉強】を中心に学習してきた人は、学習スタイルを「弱点【勉強】全【テスト】」に切り替えれば、それこそ、学習効率が2~3倍になっても不思議はなさそうに見える。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="結言" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■結言</h3><P> これは、語学の学習に限った話ではない。<BR> 数学やスポーツを含めたさまざまな分野の学習において、同様の現象が、実験で確かめられている。<BR> これは、人間の脳神経システムの基本的な性質なのだ。<BR> </P> <P> そして、<b>このように学習効率を左右する要因が、少なくとも、35個ある</b>。<BR> </P> <P> やっかいなことに、そのうち、<b>たちの悪い【学習錯覚】を伴う</b>ものがけっこうある。<BR> このため、それらの認知バイアスのせいで非効率な学習をしているのに気が付かない人が、たくさんいる。<BR> </P> <P> 中学高校大学のとき、人によって、テストの点数に、大きな違いがあった。<BR> もちろん、「才能」や「勉強時間」の違いも大きかった。<BR> 才能がある人は、良い成績をとっただろう。<BR> 勉強時間が長い人も、良い成績をとっただろう。<BR> </P> <P> しかし、カーピキー2008実験から分かる通り、それ以上に、「自宅での学習方法」の違いが、成績を大きく左右した可能性が高い。<BR> 問題集や暗記ペンを使って「弱点【勉強】・全【テスト】」を行った人と、「反復【勉強】」を行った人では、記憶の定着率は劇的に違うからだ。<BR> </P> <P> <b>「弱点【勉強】・全【テスト】」の自宅学習をやっていた人は、「自分は生まれつき頭がいいから、成績がいいのだ」と思っていただろうし、「反復【勉強】」の自宅学習をやっていた人は、「自分は生まれつき頭が悪いから、成績が悪いのだ」と思っていただろうが、実際には、かなりの部分、単に、たまたま選んだ学習法の違いに過ぎなかったというわけである</b>。<BR> </P> <P> 中学高校大学のとき、我々は、このことを知らなかった。<BR> 効率の良い学習法で学習した人も、それが効率が良いということを知っていてそうしたわけではない。<BR> なぜなら、我々には【学習錯覚】という認知バイアスがあるために、効率の良い学習をしていても、していなくても、そのことを実感できないからだ。<BR> </P> <P> つまり、たまたま効率の良い学習法で自宅学習した人は、単に、<b>宝くじにあたっただけ</b>なのである。<BR> </P> <P> しかも、そういう差を産む重大要因が、35個もあるのである。<BR> </P> <P> 「この35個の要因全てにおいて、たまたま効率の良い学習法で勉強していた」などという確率は、かなーり低くなる。<BR> </P> <P> しかし、今や我々は、「学習法」が大きな違いをもたらすということを知っている。<BR> 何より、「ほんとうに」効率の良い学習法を簡単に知ることができる。<BR> </P> <P> つまり、<b>100%当たる宝くじを手に入れられる</b>のだ。<BR> </P> <P> 「私はもう中年で、若い人のような学習能力はないから。。」<BR> と思って、新しいことを学ぼうとしない人をよく見かける。<BR> </P> <P> しかし実際は、<b>「普通の宝くじ」しか引けなかった若い頃より、</b><BR> <b>「100%当たる宝くじ」を引ける今のほうが、はるかに学習能力は高いのである</b>。<BR> </P> <P> あなたが今何歳であれ、今こそ、勉強を始めるチャンスなのではないだろうか。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="具体的な学習方法への落とし込み" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■具体的な学習方法への落とし込み</h3><P> この第1巻で紹介したカーピキー2008実験の《弱点勉強・全テスト》のパターンをそのまま実践しても、かなり学習効率が上がると思います。<BR> </P> <P> しかし、複数の論文の知見を組み合わせると、さらにもっと効率が良くなります。<BR> </P> <P> その具体的な方法は、本書の2巻以降で詳しく解説しています。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="まとめについて" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■「まとめ」について</h3><P> この論文から得られた知見の「まとめ」は書きません。<BR> なぜかというと、この論文から得られた知見を、そのまま箇条書きにまとめると、それがウソになってしまうからです。<BR> </P> <P> たとえば、この論文だけを読むと、「反復【勉強】は効率が悪い」ということが事実であるかのように見えます。<BR> しかし、それは、この実験条件ではそう見えるというだけの話です。<BR> 第2巻以降の論文の実験データと突き合わせると、話はそんなに簡単じゃなく、一行で説明できるような現象ではないことが分かります。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="著者プロフィール" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■著者プロフィール</h2><P> ペンネーム:ふろむだ。<BR> 複数の企業を創業。そのうち一社は上場。<BR> 数百万人に読まれた分裂勘違い君劇場というブログ(since 2005)の著者。<BR> 前著『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』はAmazon1位(心理学)、12万部のベストセラーとなった。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="本書について" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■本書について</h2><BR><BR><h3 id="本書の特徴" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■本書の特徴</h3><P> 本書は、単に論文の解説をしているだけではありません。<BR> 巻が進むにつれ、論文の知見を、<b>即座に実践できる具体的な学習方法</b>に落とし込んでいきます。<BR> </P> <P> また、第1巻では、「『知識』の時間あたり習得量を上げる方法」のことしか書かれていませんが、本書全体では、『<b>スキル</b>』の時間あたり習得量を上げる方法についても書かれています。<BR> たとえば、数学の問題を解くスキル、英文法の問題を解くスキル、英語の発音、スポーツの技、音楽の演奏テクニックなどのスキルです。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="本書のコンセプト" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■本書のコンセプト</h3><P> 仮に、50時間かけて学習するなら、あなたは、次のうち、どちらの方が多くの知識・スキルを身につけられると思いますか?<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (1)読むのに2時間しかかからない学習法の本で、そこそこ学習効率を高めて、48時間学習する。<BR> </P> <P> (2)読むのに10時間かかる学習法の本で、極限まで学習効率を高めて、40時間学習する。<BR> </P></div><BR> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062531.png" style=""></div> <BR> <P> 本書は、(2)のコンセプトで書かれました。<BR> </P> <P> すなわち、「読むのにけっこう時間がかかるけど、残りの人生でそれなりに学習する機会があるのなら、圧倒的に投資効果のいい本」です。<BR> </P> <P> <b>高い学習効率は、一生モノの財産です。<BR> 一度、学習効率を高める方法を覚えてしまえば、一生、高い学習効率で学習できます。</b><BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="全巻読まないと意味ないの" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■全巻読まないと意味ないの?</h3><P> 本書は、必ずしも5巻全部読まなくても、十分に役立つように書かれています。<BR> 1巻だけ読んだ人は1巻分だけ、<BR> 1~2巻を読んだ人は2巻分だけ、<BR> 1~3巻を読んだ人は3巻分だけの、学習効率に関する知見を得られます。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="対象読者" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■対象読者</h3><P> 本書の対象読者は、以下の方になります。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (1)小学生~大学生の子供を持つ親御さん<BR> </P> <P> (2)中学生~大学生<BR> </P> <P> (3)語学や資格試験などの学習をしたい社会人<BR> </P> <P> (4)看護学校生、薬学部性、獣医学部生、歯学部生、医学部生、鍼灸学校生など、医療系の勉強をされている方<BR> </P> <P> (5)仕事でのスキルアップの効率を上げたい人<BR> </P> <P> (6)その他、効率よく学習したい人<BR> </P></div><P> 本書に大量の図が使われているのは、親御さんがお子さんに本書の内容を解説するときに、使えるようにするためです。<BR> 医療系の学習をしている方に向いているのは、解剖学、生理学、病理学などは、記憶の定着効率が上がると勉強が劇的に楽になるからです。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="一般学習法と英語学習法" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■一般学習法と英語学習法</h3><P> 本書は以下の2つから構成されます。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (1)全ての科目に共通する一般的な学習法<BR> </P> <P> (2)英語の学習法<BR> </P></div><P> 英語の学習に興味のない方は、(1)の部分だけを読んで、(2)の部分を飛ばしても、十分に役立ちます。<BR> </P> <P> 英語の学習効率を上げたい方の場合、この両方の知識が必要です。<BR> </P> <P> また、本書の(2)は(1)の知識を前提として書かれています。<BR> したがって、英語の学習にしか興味のない方が、本書の(1)を読まずに(2)だけ読んでも、本書は理解できません。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="本書の英語学習法の特徴" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■本書の英語学習法の特徴</h3><P> 今どき、英文ライティングはDeepLを使ってやるのが普通です。<BR> そんな時代に「DeepLを使わずに英文ライティングするスキル」を身に着けてなんの意味があるのでしょうか?<BR> エクセルでデータ集計する時代に、そろばんを習うようなものじゃないでしょうか?<BR> </P> <P> 機械通訳ソフトの性能もどんどん上がってきています。<BR> このペースで進化し続ければ、英会話スキルなんてなくても、世界中の人と母国語で自由に会話できるのも時間の問題じゃないでしょうか?<BR> そんな時代に英会話スキルを身につけて何の意味があるんでしょうか?<BR> </P> <P> しかし、そういう時代においてなお必要とされる英語力もあります。<BR> むしろ、そういう時代にこそますます必要とされる英語力もあります。<BR> </P> <P> 問題は、それが具体的にどのような英語力なのかということです。<BR> 具体的にどうやれば、そういう英語力が身につくのかということです。<BR> 逆に、どんな英語学習をすると、AIの進化で簡単に陳腐化してしまう英語力しか身につかないのでしょうか?<BR> </P> <P> 本書の英語部分は、これらの問いに答えるために書かれました。<BR> </P> <BR> <P> また、ここ数年で英語の学習環境が激変しました。<BR> DeepLを始めとする様々な言語ツールの急激な進化によって。<BR> </P> <P> その結果、以下も大きく変わりました。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> ●最速で英語をスムーズに話せるようになる方法<BR> </P> <P> ●最速で英語を楽に聞き取れるようになる方法<BR> </P> <P> ●最速で英語をすらすら読めるようになる方法<BR> </P> <P> ●最速で英語をどんどん書けるようになる方法<BR> </P></div><P> また、以下もだいぶ見えてきました。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> ●DeepLなどのツール類が進化するに従って無価値になっていく英語力<BR> </P> <P> ●DeepLなどのツール類が進化するとますます価値が高まる英語力<BR> </P></div><BR> <P> たとえば、DeepLの性能がどんどん上がってきていますが、DeepLを単なる翻訳ツールとしてではなく、英語の学習ツールとして十分に使いこなしていますか?<BR> DeepLを使った学習法は、従来の様々な語学学習方法と比較して、効率が悪いのか、同程度なのか、高いのか、高いとすればなぜ高いのか、どれくらい高くなるのか、腰を据えて是々非々で吟味しましたか?<BR> 今後さらにDeepLが進化すると、どのような英語力が陳腐化し、どのような英語力がますます重要になるのか、十分に検討しましたか?<BR> DeepLを具体的にどのように使って学習するのが最も効率よく英語学習できるか、あるいは逆に、DeepLをどのように使って学習すると非効率になるのか、十分に吟味しましたか?<BR> DeepLを他の学習ツール(ELSA、オンライン英会話、物書堂、Mouse Dictionary、英辞郎Pro、Weblio、コーパス、etc.)とどう組み合わせるのが最も学習効率が高くなるのか、十分に検討しましたか?<BR> それらを、さまざまな論文・実験から得られた知見や、認知心理学の知見と照らし合わせて、実際の学習効率がどの程度になるのか、十分に吟味しましたか?<BR> </P> <P> これらは、DeepLに限った話じゃありません。<BR> </P> <BR> <P> いや、そんなこと言われなくても分かってるし、最新ツールの使い方などいちいちおまえに解説してもらわなくても、SNSに流れてくるネット記事を読んでるから、とっくに知っている。<BR> という方もいらっしゃると思います。<BR> </P> <P> しかし、それだけでは足りないのです。<BR> その理由を説明します。<BR> </P> <P> 大砲が登場してしばらくは、それはさほど怖い兵器ではありませんでした。<BR> 「こうすれば当たる」という<b>専門家の長年の経験と勘</b>だけで運用していたため、<b>命中率が悪かった</b>からです。<BR> どんなに破壊力が大きくても、当たらなければ怖くありません。<BR> テクノロジーは、人間の経験則だけで運用しているうちは、その本来の威力を十分に発揮できないのです。<BR> </P> <P> ところが、繰り返し大砲を発射してデータを取り、それを元に微分でモデルを作って運用することで、大砲の命中率が飛躍的に上がりました。<BR> それによって、大砲は恐るべき兵器へと進化を遂げました。<BR> <b>テクノロジーはサイエンスに基づいて運用することで、桁外れの威力を発揮する</b>のです。<BR> </P> <P> 英語学習ツールというテクノロジーも同じです。<BR> 「こうすれば学習効率が高くなる」という人間の経験則だけで運用していると、なかなか学習効率は上がりません。<BR> 論文・実験から得られたデータに基づいてモデルを構築したり、認知心理学のさまざまなモデルを駆使してそれらを運用することで、高い学習効率を実現できるのです。<BR> 最新の学習ツールを紹介する記事で、この点を十分に考慮しているものはほとんどありません。<BR> </P> <P> 本書の英語学習部分は、その点を考慮して書いてあります。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="本書の構成" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■本書の構成</h3><P> 本書は本編と派生編からなります。<BR> 本編は学習法について書かれています。<BR> 派生編は、本編に登場した重要なソフトウェアツールなどについて書かれています。<BR> </P> <P> 本編は全5巻より構成されます。<BR> </P> <P> <span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">第2巻は第1巻の9倍のボリュームです。<BR> 第3巻も第1巻の9倍のボリュームです。<BR> 第4巻は第1巻の27倍のボリュームです。<BR> 第5巻は第1巻の19倍のボリュームです。</span><BR> </P> <BR><BR> <P> 以下に、それぞれの巻の概要を示します。<BR> </P> <P> 文字数は、±5%程度の誤差がある場合があります。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><h4 id="第1巻" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■第1巻</h4><P> <b>はじめに</b><BR> </P> <P> <b>カーピキー2008実験(0.9万字)</b><BR> </P> <BR><BR><BR><BR><h4 id="第2巻78万字" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■第2巻(7.8万字)</h4><P> <b>導入編</b><BR> 本書を読むための前提知識等を理解します。<BR> 重要な論文1本を読み解きます。<BR> </P> <P> <b>入門編</b><BR> 最重要論文を読み解きながら、科学的学習法の基礎の基礎を理解します。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><h4 id="第3巻82万字" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■第3巻(8.2万字)</h4><P> <b>リサーチ編第一部</b><BR> 学習効率の鍵を握る知見が書かれている重要論文を読み解きながら、学習効率の理解を深めていきます。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><h4 id="第4巻246万字" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■第4巻(24.6万字)</h4><P> <b>リサーチ編第二部</b><BR> 第一部の続きです。<BR> </P> <P> <b>英語リサーチ編</b><BR> 英語学習の効率を上げる鍵となる論文を読み解いていきます。<BR> </P> <P> <b>英語ツール編</b><BR> 英語力を増強するソフトウェア&ハードウェアを丁寧に分析します。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><h4 id="第5巻167万字" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 150%; color: #555; background-color:#FFF; border: none;;">■第5巻(16.7万字)</h4><P> <b>整理編</b><BR> リサーチ編で説明された、学習効率を決定する要因を整理します。<BR> </P> <P> <b>実践編</b><BR> 論文等から得られた知見を、今すぐに実行可能な、具体的な学習方法に落とし込みます。<BR> </P> <P> <b>英語実践編</b><BR> 論文等から得られた知見を、今すぐに実行可能な、具体的な英語学習方法に落とし込みます。<BR> </P> <P> <b>おわりに</b><BR> 結言です。<BR> </P> <BR><BR><BR> <P> 派生編の概要については、本編の文中で適宜紹介されていますので、ここでは割愛します。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="目次付きPDF" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■目次付きPDF</h3><P> 本書の第2巻以降はPDFで提供されています。<BR> PDFファイルは、パソコンでも、タブレット端末でも、読むことができます。<BR> </P> <P> 本書のPDFファイルは、どの巻も、以下のように、サイドバーに目次を表示させることができるように作ってあります。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062714.png" style=""></div> <BR> <P> PDFファイルの目次の表示のさせ方は、ググればでてきます。<BR> </P> <P> パソコンでも、タブレット端末でも、PDFの目次を出せます。<BR> </P> <P> キーワード検索をすることもできます。<BR> </P> <P> また、PDFリーダーアプリによっては、好きなページをブックマークしたり、マーカーを引きながら読むこともできます。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="本書の利用規約" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■本書の利用規約</h3><P> 本書は、ひとり親家庭、障碍者手帳保持者、生活保護家庭などの、特定の条件を満たした方には、一定の条件をもとに、無料でご利用いただけます。<BR> 詳しくは、 <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2020/10/14/034311"> 本書の利用規約とその解説 </a> をご覧ください。<BR> </P> <BR> <P> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2020/10/14/034311">https://fromd.hateblo.jp/entry/2020/10/14/034311</a> に書かれている利用規約だけが、本書の唯一の正しい利用規約です。<BR> </P> <P> 本書の第1巻は、KindleやPDFでも配布されており、それらの中にも利用規約は書かれていることがありますが、それらは、内容が古くなっており、正しい利用規約ではないことがあります。<BR> </P> <P> 本書の利用規約は、予告なく変更されることがあります。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="たくさんスクロールするのが嫌な人は本書を買わないで下さい" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■たくさんスクロールするのが嫌な人は、本書を買わないで下さい</h3><P> 本書では、以下のキャラクターたちが、論文データを元に、学習ツール・学習アプリ・学習法等の学習効率について、さまざまな議論を行います。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062233.png" style=""></div> <BR> <P> キャラクターの画像サイズを小さくすると、行間を狭くすることができ、文章密度を上げることができます。<BR> しかし、そうすると、<b>キャラクターの画像が見づらくなり、キャラクターの区別がつきにくくなってしまいます</b>。<BR> </P> <P> このため、どうしても、<b>キャラクターの画像サイズをある程度大きくせざるを得ず、そのため、行間が大きく空いてしまっています</b>。<BR> </P> <BR> <P> また、本書では、論文のデータについて議論が行われます。<BR> このとき、<b>データのどの部分についての発言なのかを直感的にわかりやすくするため</b>に、以下のような表現が多用されています。<BR> (これは、第3巻からの抜粋です。見た目を確認することが目的なので、内容は理解しなくていいです)<BR> </P> <hr> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062919.png" style=""></div> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062902.png" style=""></div> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 2em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002074937.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; ;; color: #0000ff;"> 要は、<b>高ガイドだとスキルが定着せず、フェイドガイドだとスキルが定着する</b>ってことね。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062907.png" style=""></div> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062913.png" style=""></div> <hr> <BR> <P> この表現方法だと、大きな図(マンガのコマのようなもの)が、大量に文の中に埋め込まれます。<BR> Kindle版やPDF版では、大きな図が複数連続すると、「1ページに2つの図が入り切らず、1ページに1つの図しか入らない」ということがよく発生します。<BR> その場合、<b>図の前または後に大きな空白が入ってしまうことが多い</b>です。<BR> </P> <P> これらの理由により、<b>1ページあたりの文字数は少なくなっています</b>。<BR> </P> <P> <b>一方で、文章量が少ないわけではないので、ページ数が非常に多くなっています</b>。<BR> このため、<b>スクロールするのが、とても大変です</b>。<BR> </P> <P> 申し訳ありませんが、<span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">「そんなにたくさんスクロールしなきゃいけない本は、読みづらいから、読みたくない」という方は、本書を買わないで下さい</span>。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="2つの学習効率向上方法" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■2つの学習効率向上方法</h3><P> 最近では公教育でも取り入れられ始めている学習方法なので、すでにご存じの方も多いと思いますが、従来の学習方法に比べ、「専門家が対象を研究するのと類似した学習活動」は、質の高い学習ができることが分かっています。<BR> ちょうど、最近読書猿氏が書いた『独学大全』という本で、そのことが簡潔にまとめられているので、以下にご紹介します。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> 学習科学という学問は、生徒が教室で学んだことがなぜ教室の外では使われないのか、どうすれば学校を出た後も役に立つ形で知識を学ぶことができるのか、という問いの答えを探してきた。そうして得られた知見の一つは、正解をただ記憶するよりも、専門家が対象を研究するのと類似した学習活動の方が、学習者はより深い知識を学ぶことである。そしてもう一つ、こうして得られた深い知識は、暗記された表面的な知識のように試験の後に忘れられることなく保持され、また現実世界で活用されやすいことも明らかにされた。(出典: John D.Bransford, Ann L.Brown, Rodney R.Cocking (2000) How People Learn: Brain, Mind, Experience, and School (Expanded Edition), USA: National Academy Press.)<BR> 例えば歴史を学ぶ時、出来事の年号や順序を暗記するより、歴史家がするように、史料に当たり仮説を立て議論を戦わせて妥当な推論を組み立てた方が、より深い知識が学べる。(出典: National Center for History in the Schools (1996) National Standards for History in the school (Basic Edition), USA: UCLA Public History Initiative.) <BR> </P></div><BR><SPAN style=" font-size: 80%;;">(読書猿『独学大全』P.451より引用)</SPAN><BR> <P> まさにここが、「学習」の核心です。<BR> </P> <P> <b>現実世界で活用されにくい知識をいくら効率よく身に着けても、そんなものは、本当の意味で効率の良い学習ではありません</b>。<BR> 現実世界で活用されやすい知識を効率よく身に着けられる学習こそが、本当に効率の良い学習なのです。<BR> </P> <P> ただし、ここで言う「専門家が対象を研究するのと類似した学習活動」は、水泳や空手と同じで、<b>頭でわかっているだけでは、なかなかちゃんと実践できない</b>学習方法です。<BR> </P> <P> そこで、本書は、読者が「専門家が対象を研究するのと類似した学習活動」を疑似体験できるように作ってあります。<BR> </P> <P> つまり、本書は、次の2つの方法で学習効率を向上させる方法を学習できるように書かれています。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (1)論文を読み解きながら「効率の良い学習法」を学習する。<BR> </P> <P> (2)「「論文を読み解いて、本当に効率の良い学習法を見出す」という効率のいい学習法」を学習する。<BR> </P></div><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h3 id="答えだけ知りたい人は本書を読まないで下さい" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 220%; color: #888; border: none;;">■「答えだけ知りたい人」は本書を読まないで下さい</h3><P> 世の中には、次の2つのタイプの人がいます。<BR> </P> <BR><div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0 5em 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;"><P> (A)答えだけ知りたい人<BR> </P> <P> (B)自分で答えを出せるようになりたい人<BR> </P></div><BR> <P> 本書の対象読者は、(B)の人です。<BR> </P> <BR> <P> 「答えだけ知りたい人」は、本書の対象読者ではありません。<BR> </P> <P> 「なぜ」その学習法の効率がいいかの説明は、手短に済ませてほしい。<BR> その学習法が「本当に」効率がいいかの検証など、いちいちやらないでほしい。<BR> さっさと「効率のいい学習法」の答えだけ、教えてほしい。<BR> </P> <P> <span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">そういう人は、本書ではなく、答えだけが書いてある科学的な学習法の本を読んでください</span>。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 2em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002074902.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; ;; color: #0000ff;"> 「答え」以外のことを知るのなんて、時間の無駄だろ。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> いいえ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 2em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002074902.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; ;; color: #0000ff;"> なんで?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 学習法は、薬に似ています。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201002/20201002062246.png" style=""></div> <P> もし、無条件に「この薬は健康にいい」などというものがあったら、それはニセ医療です。<BR> それと同じように、無条件に「この学習法は効率がいい」というのも、多くの場合、ニセ科学です。<BR> </P> <P> ある特定の薬が健康にいいかどうかは、ケースバイケースで異なります。<BR> 睡眠に問題のない人が睡眠を改善する薬を飲むと、逆に調子が悪くなったりします。<BR> 量が多すぎると翌日の頭の働きが鈍くなりますし、少なすぎると効きません。<BR> 昼間に飲んでもダメですし、連続して飲み続けると、効かなくなったり、副作用で逆に眠りを妨げられたりすることもあります。<BR> </P> <P> ある特定の学習法の効率がいいかどうかも、ケースバイケースで異なります。<BR> 同じ学習法でも、その学習法を行うタイミング次第で、効率が劇的に良くなったり、劇的に悪くなったりします。<BR> 人によっても違います。社会人にとって効率的な学習方法が、中高生にとっては、すごく非効率になることがあります。<BR> 中高生が中間・期末試験で高得点をとるのに効率的な学習法と、社会人が数年かけて英語を身につけるのに効率的な学習法も、しばしば異なります。<BR> </P> <P> <b>「健康にいい薬」があるのではありません。<BR> 「健康を改善する薬の処方の仕方」があるだけです。</b><BR> </P> <P> それと同じように、<BR> <b>「効率のいい学習法」があるのではありません。<BR> 「学習効率を上げる、学習法の処方の仕方」があるだけなのです。</b><BR> </P> <P> 本書の第3巻以降で議論しているように、学習効率を最大化する学習法の処方箋は、人によって、ライフスタイルによって、時期によって、タイミングによって、習熟度によって、異なります。<BR> だから、処方箋は、その都度、自分で書くしかないのです。<BR> </P> <P> 医者からもらった薬を、素人判断で飲むのをやめたり、勝手に量を増やしたりすると、酷いことになることが、よくあります。<BR> 学習法も同じです。<BR> 本書の第3巻以降で明らかになるように、<span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">浅い知識で学習法の処方箋を書くと、学習効率を改善したつもりが、逆に悪化することがよくあります</span>。<BR> </P> <P> <span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">本書は、「自分や自分の子供のための学習法の正しい処方箋」を自分で書けるようにするための本です。<BR> これは、本質的に、難しいことです。<BR> 本質的に難しいことを、本質を損なわずに説明すると、どんなにわかりやすく説明したとしても、読者は、理解するのに、かなりの時間とエネルギーを要します</span>。<BR> </P> <P> <span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">このため、本書を読むのには、かなりの時間とエネルギーを要します</span>。<BR> </P> <P> <span style="font-weight: bold; font-size: 140%;">それでも構わないから、読みたい、という人だけ、本書を買って下さい。<BR> その覚悟がない人は、本書を買わないで下さい</span>。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="本書の入手方法" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■本書の入手方法</h2><P> 本書は <a href="https://furomuda.booth.pm/"> ふろむだのBOOTH </a> で入手できます。<BR> URLは、以下の通りです。<BR> </P> <P> <a href="https://furomuda.booth.pm/">https://furomuda.booth.pm/</a><BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="筆者のその他のコンテンツ" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■筆者のその他のコンテンツ</h2><P> 筆者の書いた記事は、筆者のツイッターアカウント( <a href='https://twitter.com/fromdusktildawn'> @fromdusktildawn </a>)で告知されます。<BR> </P> <P> 筆者の雑多なつぶやきはサブアカウント(<a href='https://twitter.com/fromdawn'> @fromdawn </a>)で行います。<BR> </P> <P> 筆者のnoteは <a href="https://note.com/fromdusktildawn"> こちら </a> 。<BR> </P> <P> 筆者のはてなブログの本館は <a href="https://www.furomuda.com/"> こちら </a> 。<BR> 別館は <a href="https://fromdusktildawn.hatenablog.com/"> こちら </a> 。<BR> </P> <P> 筆者が管理人をしているオンラインコミュニティは <a href="https://community.camp-fire.jp/projects/view/126877"> こちら </a> 。<BR> </P> <P> 筆者の前著は <a href="https://www.furomuda.com/entry/2018/08/04/011000"> こちら </a> 。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="参考文献" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■参考文献</h2><P> Karpicke, J.D., & Roediger, H.L. (2008) The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science 319, 966<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="イラスト等" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■イラスト等</h2><P> キャラアイコンと表紙のイラストは、しらたさん(<a href='https://twitter.com/shiratamadng'> @shiratamadng </a>)の作品です。<BR> それ以外のいらすとやさん調の挿絵は、いらすとやさん(<a href='https://twitter.com/irasutoya'> @irasutoya </a>)の作品です。<BR> それ以外のグラフ、図、イラストは、ふろむだの作品です。<BR> 表紙デザインの原案は、永田ゆかりさん(<a href='https://twitter.com/DataVizLabsPath'> @DataVizLabsPath </a>)からいただきました。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><h2 id="スペシャルサンクス" style=" margin: 1em 0em; padding: 0; line-height: 1.3; font-size: 400%; color: #AAA; border: none;;">■スペシャルサンクス</h2><BR><BR> <P> 本書は、構成、エビデンスの用い方、表現方法から、誤字脱字に至るまで、 <a href="https://community.camp-fire.jp/projects/view/126877"> 面白文章力クラブ </a> のみなさんに、非常にたくさんのレビューと添削をしていただいて、出来上がりました。<BR> みなさんのアドバイスにしたがって、何度も構成ごと作り変え、巻数自体が変わってしまっているほどなので、本書は、ある意味、クラブのみなさんとの合作です。<BR> 中でも、作家のスゴ本さん(<a href='https://twitter.com/Dain_sugohon'> @Dain_sugohon </a>)、科学者のまつむらけいさん(<a href='https://twitter.com/hjk_sci'> @hjk_sci </a>)、鍼灸学校副校長の内原拓宗さん(<a href='https://twitter.com/kanshinko'> @kanshinko </a>)とそのご家族のみなさん、ゲームクリエーターのこよみゆうかさん(<a href='https://twitter.com/koyomi_yuuka'> @koyomi_yuuka </a>)、コンサルティング会社データビズラボ代表の永田ゆかりさん(<a href='https://twitter.com/DataVizLabsPath'> @DataVizLabsPath </a>)、正体不明のさとうしおさん、ライターのマチコマキさん、理学療法士の水口翔平さん、起業家で作家の石井遼介さん(<a href='https://twitter.com/ryouen'> @ryouen </a>)、動画クリエイターの星森香さん(<a href='https://twitter.com/sfmasala'> @sfmasala </a>)、元アクセンチュアで社長修行中の下山宜昭さん(<a href='https://twitter.com/NORI_ASSY'> @NORI_ASSY </a>)、長谷龍一さん(<a href='https://twitter.com/Rhasese'> @Rhasese </a>)、本当にありがとうございました。<BR> </P> <P> 本書内で、けんすうさん(<a href='https://twitter.com/kensuu'> @kensuu </a>)のアイデアを使わせていただきました。ありがとうございます。<BR> </P> <P> さくさん(<a href='https://twitter.com/saku420En'> @saku420En </a>)には、物書堂の辞書アプリや発音学習アプリに関する素晴らしい情報を教えていただきました。ありがとうございます。<BR> 西練馬さん(<a href='https://twitter.com/nishinerima'> @nishinerima </a>)には、物書堂やその他の電子辞書に関する重要な知見を教えていただきました。ありがとうございます。<BR> </P> <BR> <P> また、ダイヤモンド社の書籍の編集長(第2編集部)の横田大樹さん(<a href='https://twitter.com/editoryokota'> @editoryokota </a>)にも、的確なアドバイスをいただき、本書を改良することができました。<BR> 本当にありがとうございました。<BR> </P> <P> 最後に、本書で引用させていただいた数々の実験を行い、論文を執筆してくださった研究者方々、及び、その実験の前提となる膨大な数の実験と考察を、何十年、何百年と積み重ねてきた数多の科学者の方々に、心からの感謝を捧げます。<BR> 本当に、本当に、ありがとうございました。<BR> </P> <P> もちろん、文責はすべて筆者のふろむだにありますので、本書に関してなにか問題があれば、すべてふろむだ(<a href='https://twitter.com/fromdusktildawn'> @fromdusktildawn </a>)の責任です。<BR> </P> <BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR> <P> ©2020 - 2021 ふろむだ<BR> </P> <BR><BR><BR> fromdusktildawn もし爆速プログラマーが大企業経営者になったら hatenablog://entry/26006613646127497 2020-10-28T11:47:36+09:00 2020-10-28T20:47:37+09:00 と思っていたら、「もし」が現実になっていた。 彼の名は小野和俊。 かつて日本中からスーパープログラマーたちの集まった「未踏ソフトウェア創造事業」で、プログラミング速度で他のプログラマーたちを驚かせたほどの爆速プログラマーである。 『諸君 私はプログラミングが好きだ』という記事 を書いちゃうほどプログラミングを愛してやまない彼は、アプレッソというITベンチャーを起業して成功させた後、今は、3700万人の顧客基盤を持ち、年間5兆円近い取引高のクレジットカード会社、クレディセゾンの常務執行役員CTOをやっている。 その彼が仕事論の本を書いた、という話を聞いて、「私なら、普通の人が読み取れないことも、… <BR><BR><P> と思っていたら、「もし」が現実になっていた。<BR> </P> <P> 彼の名は小野和俊。<BR> かつて日本中からスーパープログラマーたちの集まった「未踏ソフトウェア創造事業」で、プログラミング速度で他のプログラマーたちを驚かせたほどの爆速プログラマーである。<BR> </P> <P> <a href="http://blog.livedoor.jp/lalha/archives/50105281.html"> 『諸君 私はプログラミングが好きだ』という記事 </a> を書いちゃうほどプログラミングを愛してやまない彼は、アプレッソというITベンチャーを起業して成功させた後、今は、3700万人の顧客基盤を持ち、年間5兆円近い取引高のクレジットカード会社、クレディセゾンの常務執行役員CTOをやっている。<BR> </P> <P> その彼が仕事論の本を書いた、という話を聞いて、「私なら、普通の人が読み取れないことも、その本から読み取れるだろうな」と思った。<BR> </P> <P> なぜなら、私は、学生時代から含めて10年ほどプログラマーをやった後、起業して経営者になった経験があるからだ。<BR> </P> <P> プログラマーが経営者になると、世界がどのように見えるか、ご存じだろうか?<BR> </P> <P> 私の場合、会社組織の様々な機能や業務が、プログラムに見えた。<BR> 法務、営業、人事、広報、企画、デザインなどなど、マネージメントの対象が、プログラムに見えるのだ。<BR> </P> <P> たとえば、法務が上げてきた契約書をレビューするとき。<BR> 受託開発したソフトウェアのどの部分に対して、どのような権利を自社が保持することになるのかを記述している契約書の文言が、プログラムに見えた。<BR> 法的文書特有の文言で組み立てられたロジックを追いかけて、バグを見つけ、「この文言だと、開発したソフトウェアのライブラリを使って、別の製品を作れないことになってしまう。ライブラリの再利用ができるように、こういう風に修正してみては?」などと法務担当者と議論した。<BR> </P> <P> 広報も同じだ。<BR> たとえば、プレスリリースを打つときは、どんな人がそれを読み、読んだ人がどのようなメッセージを受け取り、どのような感情が惹起され、どのようなアクションを行い、それがどのような作用を引き起こすかを計算しながら、プレスリリースの文章のロジックを組み立てていく。<BR> ああ、これは、プログラミングと同じだな、と思った。<BR> </P> <P> デザインも同じだ。<BR> アプリやWebサイトのUIや、パンフレットの色、形、サイズ、配置、余白などの画面要素に、どのような意味や機能を割り当て、導線やUXをどのように組み上げ、最適化していくか。<BR> イケてないデザインのUIやUXは、どこにバグやボトルネックがあるのか。<BR> </P> <P> 同様に、企画、ブランディング、マーケティング、営業、人事、総務、経理、財務、どれも、ロジックによって組み立てられた構造に見えるので、それらをプログラムのように組み上げ、リファクタリングし、バグを潰し、ボトルネックを解析してチューニングしていく感覚で、マネージメントしていく。<BR> </P> <P> 学習科学においては、「ある文脈で学習した知識・スキルを、別の新しい文脈でも活かすこと」を「転移」と呼ぶが、私の場合、プログラミングで獲得したスキルが、全く別の分野へと転移しまくったのだ。<BR> </P> <P> たぶん、小野さんも、同じだったんじゃないだろうか、と思いながら、彼の本のページをめくると、「やっぱりな」と思うところと、「あ、そうか」と思うところがあった。<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> まず、「やっぱりな」と思ったところ。<BR> </P> <P> たとえば、彼が管掌することになった部署で、それぞれの社員が、妙に多くのプロジェクトを抱えていた。<BR> そして、成果が出ていない。<BR> 成果が出ていないということは、何かがバグってるということだ。<BR> で、社員にヒアリングして、すぐに彼は、「抱えているプロジェクト数がKPIになっている」ことがバグであることに感づいて、将来性のなさそうなプロジェクトをばっさりリストラして、有望そうなプロジェクトに集中してもらうように、KPIを変更した。<BR> </P> <P> もちろん、こういう組織設計バグや人事評価バグは、大企業でよくある話だが、これを実名で本に書くのは、それなりの覚悟がいる。<BR> なぜかというと、こんなことが本に書かれてしまうと、「抱えているプロジェクト数」などというアホなKPIを設定した前任者は、メンツを潰される形になりかねないからだ。<BR> メンツを潰された前任者は、口では何も言わないが、内心は逆恨みしていて、小野さんの過去の失敗や問題発言をほじくりだして、社内の様々な人間に、それとなく言いふらして、印象付けて回るというような、陰湿なことをしはじめるかもしれない。<BR> </P> <P> 実際、一見、過激でアナーキーな発言を繰り返しているかのように見えるインフルエンサーも、自分の所属組織内の権力者のメンツをつぶしかねないツイートをほとんどやっていないが、これが理由の一つだろう。<BR> </P> <P> 私の知人に、かつていくつかの企業の経営陣として仕事をしていて、今でも、大勢の経営者に対してコンサルティングをしている男がいる。<BR> 彼は、ベストセラーのビジネス書をたくさん書いているが、彼の書いた本より、彼自身と直接会って話した方が、100倍面白いし、100倍役に立つ。<BR> なぜかというと、本に書くことができない、生々しくリアルな話がたくさん聞けるからだ。<BR> </P> <P> 小野さんの本も、事情は同じはずで、「彼が本に書けることは、当たり障りのないことでしかないだろう」と思っていた。<BR> ところが、いきなり本の冒頭で、こういう前任者批判ともとられかねない話がいきなりでてきたので、「え? いいの?」と驚いた。<BR> </P> <P> 実は、ここに、大企業経営者が本を書く時のジレンマがある。<BR> たしかに、彼らは、読者にとって有益なエピソードをたくさん持っている。<BR> しかし、そのほとんどは、立場上、本に書くわけにはいかないのだ。<BR> </P> <P> そう言う事情を鑑みたうえで、小野さんの本を読むと、その踏み込みの深さが、よく分かる。<BR> ただ、それでも、彼が本に書いたことより、書けなかったことの方が、はるかに多いのは、間違いない。<BR> だから、彼の本を読むとき、「彼が書けなかったこと」を、行間から読み取りながら読むと、この本を、さらに楽しめると思う。<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> 次に、彼の本を読んで、「あ、そうか」と思ったところ。<BR> </P> <P> 実は、優秀な爆速プログラマーというのは、ほぼ例外なく、単にロジカルなだけではなく、ロジックを超えたセンスを持っている。<BR> たとえば、原因不明のバグに遭遇したとする。<BR> その場合、論理的に問題を切り分け、さまざまな可能性を一つ一つ潰していくことで、原因を特定し、バグを修正することができる。<BR> しかしながら、それをやると、膨大な時間がかかってしまう、やっかいなバグが、ときどきある。<BR> バグの原因の可能性の範囲が広すぎて、探索コストが莫大になってしまうケースだ。<BR> </P> <P> そういう場合でも、センスのいいプログラマーは、バグの原因を、ほんの数分で見つけたりする。<BR> 「どうやって見つけたのか?」と問い詰めても、「いや、この辺が怪しそうだと思ったから」という説明になってない回答しか引き出せない。<BR> いくら論理的に考えても、そこを真っ先に疑った理由がわからない。<BR> </P> <P> 一見、長年のプログラミングで培われた職人的な勘のようにも見えるが、それだけでは、とうてい説明できない。<BR> なぜなら、同じだけのキャリアのあるプログラマーのほとんどは、そんなに早くバグの原因を特定できないからだ。<BR> </P> <P> じゃあ、この能力はなんなのか?<BR> いろいろ考えてみたのだが、結局分からず、何か超能力のようなものだと思うしかなかった。<BR> </P> <P> じつは、プログラミングの時間の、けっこうな割合が、この手のやっかいなバグの原因特定に費やされている。<BR> そして、私の知る限り、爆速プログラマーのほとんどは、論理を超えた、超能力じみた直感で、バグを高速に特定する能力を持っている。<BR> 彼らの桁違いのプログラミングスピードは、その超能力なしには成立しえないと言ってもいいほどだ。<BR> しかも、彼らは、呼吸をするように自然にそれをやっているので、ほとんどの場合、自分が超能力を使っていることを自覚してない。<BR> </P> <P> そういうエスパーが経営者になったのだから、その超能力を経営にも使うのは、自然な成り行きというものだろう。<BR> </P> <P> たとえば、小野さんは、業務命令でビットコインを配布した。<BR> そして、社員にビットコインを使ってもらった。<BR> </P> <P> そこが事業のボトルネックだと、直感的に気づいたからだ。<BR> </P> <P> もちろん、プログラムのボトルネックと同じように、事業のボトルネックも、要素分解して、ロジカルに突き詰めていけば、特定できる。<BR> しかし、多くの場合、要素数が大きすぎ、探索範囲が広すぎて、ボトルネックを検出するのに、えらく時間がかかる。<BR> というか、ボトルネックに気が付かないまま、非効率な経営をしている経営者は多い。<BR> </P> <P> しかし、彼のことだ、そのボトルネックを検出した速度は、他の経営者よりも、だいぶ速かったんじゃないかだろうか。<BR> </P> <P> ところで、なぜ、ビットコインを配ることが、会社組織のバグ修正になるのだろうか?<BR> いったい、バグの原因は、なんだったのだろうか?<BR> </P> <P> 小野さんは、最初はセゾン情報システムズのCTOになり、その後、クレディセゾンのCTOになった。<BR> 彼がビットコインを配ったのは、セゾン情報システムズのCTOをしていた時の話だ。<BR> </P> <P> 以下、小野さんの本より引用する:<BR> </P> <P> <div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;">セゾン情報システムズでは、金融関連の事業部でクレジットカードのシステムを作っていたので、FinTechやビットコイン、ブロックチェーンなどは見て見ぬふりはできない領域だった。だが、「本を読んでブロックチェーンの勉強をしておくように」と指示を出したところで、すぐ理解できるものではない。実際に本を読んでみたが「暗号通貨が……」と冒頭に書いてあり挫折した、という声もあった。<BR> だから私は、事業部180人全員に、ビットコインを〝体験〟する場を作ることにした。具体的には、30 人ずつに分けて体験会を6回実施した。</div> </P> <SPAN style=" font-size: 100%;;">(小野和俊『その仕事、全部やめてみよう』P.36-37より引用)</SPAN> <P> <BR> </P> <P> バグの原因を調べるとき、「これが原因じゃないかな」と思っていても、それを調べるコストが大きいとき、それを調べるのを後回しにして、調べやすいところから先に調べてしまうことが多い。<BR> </P> <P> このビットコインの体験会の話も、それと同じなのではないかと思う。<BR> 「これ、もしかして、このテクノロジーを体験していないから、食わず嫌いになってるだけじゃないの?」と、役員同士の雑談で話すことはあっても、たいていは、雑談だけで終わってしまう。<BR> なぜなら、実際に社員に体験させるのは、それなりにコストがかかるからだ。<BR> </P> <P> ここが、優秀な人と、凡庸な人を分ける分水嶺なのだと思う。<BR> 凡人が「ここがバグの原因じゃないのか」とぼんやりと思うだけでなにもしないところを、優秀な人は「ここがバグの原因である可能性は、かなり高い」と、より敏感に感じとり、「体験会をやってでも、たしかめてみる価値はある」と判断し、実行に移せるのだ。<BR> </P> <P> 凡人にとっては、バグの広大な探索範囲の他の部分と変わらない一項目にしか見えないものが、優秀な人には、「広大な探索範囲の中でも、特に怪しいポイント」に見えるのだ。<BR> </P> <P> プログラミングにおけるデバッグと、問題の構造は同じなのである。<BR> </P> <P> 「なぜ、凡庸な人はアイデアを思いつくだけで実行しないのに、優秀な人は、思いついたアイデアを実行するのだろうか?」<BR> という問いに対する答えの一つが、ここにある。<BR> </P> <P> 多くの人は、これを「やったもの勝ち」理論で説明する。<BR> 「成功しない人は行動しないから成功せず、成功する人は行動するから成功するのだ」という理論だ。<BR> 「ようは、やるか、やらないかの違い」だと、彼らは説明するのだ。<BR> </P> <P> しかし、本当に、そうなのだろうか?<BR> </P> <P> 優秀な人が、思いついたアイデアをすぐに実行するのは、行動力があるからというより、「そのアイデアに、すぐ実行するだけの価値があること」を見抜く能力が高いからだ。<BR> </P> <P> 多くの人が、思いついたアイデアを実行しないのは、そのアイデアが、本当に実行するだけの価値があるかどうかの判断がつかないからだ。<BR> </P> <P> <b>アイデアを思いつくことと、そのアイデアにどれだけ価値があるかを見抜くことは、全く別のことだ</b>。<BR> 優秀な人材は、アイデアを思いつく能力も高いが、それ以上に、思いついたアイデアに、どれだけの価値があるかを見積る能力が高いのだ。<BR> それが価値のあるアイデアであることが分かっているなら、そのアイデアを実行する決断を下すのは、簡単だ。<BR> 当たることが分かっている宝くじなら、誰だって、買うのに躊躇したりはしない。<BR> だから、彼らは、アイデアを実行に移す能力が高いように見えるのだ。<BR> </P> <P> これを、「単に、やるか、やらないかの違いだけだ」と解釈すると、しばしば、悲惨なことになる。<BR> アイデアの価値を見抜けないまま、思いついたアイデアを片端から実行しても、アイデアの価値を見抜いて実行する人と同じように成功できるわけではないからだ。<BR> </P> <P> もちろん、「やるか、やらないかの違い」も大きいので、やらないよりはやった方がマシだが、アイデアを思いついたら、そのアイデアの価値をよく見極めながら実行するようにした方が、はるかに成功率は高くなる。<BR> </P> <BR><BR><P> 話を元に戻す。<BR> </P> <P> よく、企業のDXを推し進めるためにITに強い人材を経営陣に迎える企業があるが、それによって実現されるのは、単に業務オペレーションやビジネスのデジタルトランスフォーメーションではない。<BR> </P> <P> それは、コンピューターサイエンスの知見が、コンピューターがなくても活用できることに似ている。<BR> 小学生がランドセルにその日に使う教科書を詰め込んで登校するのは、コンピューターサイエンスにおける「プリフェッチ」である。<BR> 財布を落としたら、落とした場所を最短時間で特定するためのアルゴリズムは、コンピューターがなくても実行できる。<BR> </P> <P> それと同じように、小野さんのような優秀なIT人材が大企業や政府の中枢に入り込むと、単なるDXをはるかに超えることが起きる。<BR> デジタル化できない部分も含めた、組織全体が、プログラミングの対象として、最適化されていくからだ。<BR> </P> <P> よく、天才プログラマーがIT担当相の台湾のことが話題になるが、優秀なITエンジニアを権力中枢に迎えるというのは、そういうことなのだ。<BR> </P> <P> その意味で、小野さんの肩書が、ただのCTOでなく、「常務執行役員CTO」であるのは、象徴的である。<BR> 「常務」とは、「経営幹部として社長を補佐する役割を行う」役職だ。<BR> </P> <P> 逆に言うと、大企業や政府の中枢にIT人材を迎え入れる側は、これを念頭に置いた上で、役職と権限を与える必要がある。<BR> デジタル庁を創設するのはいいが、「お前はデジタルが担当なのだから、デジタルだけやってろ。他の省庁の本業には口を出すな」というやり方では、せっかくのIT人材のポテンシャルを引き出すことはできないし、肝心のデジタル化すら、雲行きが怪しくなる。<BR> </P> <P> なぜなら、それぞれの省庁の「本業」のデジタル化をしない限り、本質的なデジタル化など、できやしないからだ。<BR> </P> <P> 本業のデジタル化は、トレードオフとの戦いだ。<BR> どんなデジタル化をすれば、何が得られて、何を失うか、得られるものと失うものを天秤にかけて、ぎりぎりのトレードオフを解決しながらでないと、本質的なデジタル改革など、できやしないのだ。<BR> そのトレードオフのつじつまを合わせる責任は、それぞれの部署の責任者にあるのだから、外部のデジタル化担当がいくら正論を唱えても、現場は動かない。<BR> </P> <P> 結局のところ、デジタル化を担当する別部署を設けるより、実業務を行っているそれぞれの部署のトップにIT人材を据えた方が、はるかに深く、本質的なDXができるし、DX以上のことができるようになる。<BR> </P> <P> この意味で、小野さんよりもむしろ、小野さんのような優れたIT人材を経営陣に迎え入れ、大きな裁量権を与えたクレディセゾンの経営陣の英断が際立つ。<BR> 不足しているのは、千里の馬よりも、伯楽の方なのだ。<BR> </P> <P> もちろん、「IT人材だけが唯一の優秀な人材で、それ以外は優秀な人材たりえない」などということは全くないし、そんなことを主張するつもりも全くない。<BR> そうではなく、<b>「優秀なIT人材」なるものが、具体的にどのような特質を持った人材なのか</b>、案外、その実態が知られていないし、IT人材を活用するつもりなら、それをよく把握した上で活用した方が、はるかに物事が上手くいくということを、知ってほしいのだ。<BR> </P> <P> 日本の未来は、ある面では、各自治体や政府のトップが、そこまでふまえた上で、クレディセゾンの経営陣のような英断をしてくれるかどうかにかかっている。<BR> </P> <P> つまり、我々有権者が、そういう英断をしてくれる政治家に投票するかどうかで、日本の未来は変わる。<BR> 未来は、我らの手の中にある。<BR> </P> <P> さあ、みなで、よりよい未来を選ぼうではないか。<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <BR><BR><P> この記事は、 <a href="https://community.camp-fire.jp/projects/view/126877"> 面白文章力クラブ </a> のみなさんに添削していただきながら、書きました。<BR> </P> <P> 筆者(ふろむだ)のツイッターは <a href="https://twitter.com/fromdusktildawn"> こちら </a> 。<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> ちなみに、小野さんの本は、Amazon1位(投資・金融・会社経営の参考図書・白書)になりました。<BR> </P> <a href="https://amzn.to/3os6Kai"> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201028/20201028134512.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> </a> <P> <BR> </P> <BR><BR><P> また、偶然ですが、私も、最近、本を書きました。<BR> 以下の科学的学習法の本で、おかげさまで、Amazon総合1位(無料)になりました。<BR> </P> <a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B08KQ1GRSD/"> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201028/20201028134509.png" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> </a> <BR><BR><P> 英語学習者、教師、受験生、小学生~大学生の親御さんが対象です。<BR> さまざまな科学研究の知見を駆使して、学習効率をチューニングしていく方法が書いてあります。<BR> </P> <P> これは、いわば、プログラマが書いた科学的学習法の本です。<BR> 私には、論文がプログラムに見えるので、プログラムを読むように論文のロジックを追いかけ、さまざまな学習法もプログラムに見えるので、プログラムをチューニングするのと同じ要領で学習効率をチューニングしています。<BR> その結果、出来上がったのが、本書です。<BR> </P> <P> 平易に書かれており、中学生や高校生にも好評です。<BR> 第1巻は、Kindleで無料で読めますので、ご興味のある方はどうぞ。<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20201028/20201028140605.png" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> <BR> </P> <P> ©2020 ふろむだ<BR> </P> <P> <BR> </P> <P> <BR> </P> fromdusktildawn 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている - 第一章 hatenablog://entry/10257846132608992944 2020-09-28T00:49:25+09:00 2020-09-28T09:49:26+09:00 Amazonで1位 (心理学) この記事は、 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」できまっている』という本 の最初の5章をWeb化したものです。挿絵イラストは(c) ヤギワタルさん 、キャラアイコンは しらたさん の作です。書籍版と若干異なる部分があります(書籍版はモノクロ)。書籍版の 正誤表はこちら 。 本で読む(Amazon) 本で読む(楽天) はじめに 1974年、カナダで選挙があった。 その選挙を調査したところ、イケメンの政治家は、そうでない政治家の2.5倍もの票を獲得していた。(註1) イケメンたちの圧勝だったのだ。 そりゃそうだろ。 どんな世界だって、美人とイケメンに人気… <BR><BR> <a href="https://amzn.to/2ngJHkt"> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120348.png" style="width:98.5%;"><div style="font-size:80%;"></div></div> </a> <P><DIV style='text-align:center; font-size:140%;font-weight:bold;margin: 0em 0;line-height:1em; color:black;'> Amazonで<span style='font-size:400%;font-weight:bold;color:#afa46d;'>1</span>位 (心理学)</P> </DIV> <div style=" margin: 3% 0.8%; padding: 1em; font-size: 80%; color: #000; background-color: #eee;;margin-bottom: 0;">この記事は、 <a href="https://amzn.to/2nhDc0T"> 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」できまっている』という本 </a> の最初の5章をWeb化したものです。挿絵イラストは(c) <a href="http://www.yagiwataru.com/"> ヤギワタルさん </a> 、キャラアイコンは <a href="https://coconala.com/users/381694"> しらたさん </a> の作です。書籍版と若干異なる部分があります(書籍版はモノクロ)。書籍版の <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/05/071317"> 正誤表はこちら </a> 。</div> <div style="display: table; table-layout: fixed; width:100%; margin-top:1.5em; margin-bottom:0px;font-size: 125%; "> <div style="display: table-cell;" align="center"> <a href="https://amzn.to/2APHSVm" style= "display:block; width: 92.5%; border-radius: 3px; padding:10px; text-align: center; margin: 0 1.5%; background-color:#fc9902; color: black; font-weight:bold;"> 本で読む(Amazon) </a> </div> <div style="display: table-cell; width:2%;" align="center"> </div> <div style="display: table-cell; " align="center"> <a href="https://a.r10.to/hryBpm" style= "display:block; border-radius: 3px; padding:10px; text-align: center; margin: 0 1.5%; background-color:#be0000; color: white; "> 本で読む(楽天) </a> </div> </div> <div class='fd_SimpleViralButtons'></div> <BR> <h2 style=" margin: 1em 0 0.5em 0; padding: 0 0 0 0.5em; border-left: solid 0.3em #000; border-bottom: none; font-size: 220%;;">はじめに</h2> <BR><BR><P> 1974年、カナダで選挙があった。<BR> </P> <P> その選挙を調査したところ、イケメンの政治家は、そうでない政治家の<span style="font-size: 170%;">2.5倍</span>もの票を獲得していた。<a href='https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/05/035524#chuu-1' style='font-size:80%;'>(註1)</a><BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123031.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> イケメンたちの圧勝だったのだ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062546.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> そりゃそうだろ。<BR> どんな世界だって、美人とイケメンに人気があるのは、当たり前だよ。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> いや、ここで重要なのは、「イケメンに投票した<span style="font-size: 170%;">理由</span>」なんだ。<BR> </P> <P> 調査の対象となった投票者の<span style="font-size: 170%;">73%</span>は、「私が彼に投票したのは、<span style="font-size: 170%;">彼がイケメンだからではない</span>」と思っていたのだ。<BR> </P> <P> 「イケメンだから、投票しちゃった部分もあるかな」と思っていたのは、<span style="font-size: 170%;">14%</span>にすぎない。<BR> </P> <P> 人々は、<span style="font-size: 170%;">「イケメンだから投票した」という自覚なしにイケメンに投票しただけでなく、「人柄が信頼できるから」</span>とか<span style="font-size: 170%;">「経済政策に期待できるから」</span>とか<span style="font-size: 170%;">「実績があるから」</span>とか、<span style="font-size: 170%;">容姿とは別の理由で、投票したのだと思いこんでいた</span>のだ。<a href='https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/05/035524#chuu-2' style='font-size:80%;'>(註2)</a><BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062545.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> たまたまそういう結果になっただけだろ。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> いや、同様の研究は、山ほどあるよ。<BR> </P> <P> たとえば、「採用面接で、身だしなみが、どのような影響を与えるか」という研究がある。<BR> </P> <P> その結果、「仕事に必要な資格よりも、身だしなみのよさのほうが、採用決定に大きな影響を与えていた」ということがわかった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123032.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> そして、ここでも、面接官自身は、「外見は、ほとんど採用決定には影響しなかった」と考えていたのだ。<BR> </P> <P> つまり、<span style="font-size: 170%;">面接官は、「外見で採用したわけじゃない」と、自分では思っていたが、実際は、外見で採用していた</span>ということだ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062544.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> どうしてそうなるの?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> これは、図にすることはできないものだが、あえて、むりやり図にしてみる。<BR> </P> <P> たとえば、次のように、容姿の優れた政治家がいたとする。<BR> </P> <BR><BR><div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120319.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> この場合、直感は、この政治家に、次のようなイメージを抱く。<BR> </P> <BR><BR><div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120320.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> つまり、「容姿が優れている」という特徴が、漠然と「その人間が全体的に優れている」というイメージに変換されてしまう。<BR> </P> <P> 「全体的に優れている」という印象を持ってしまうと、その政治家の、政治手腕も、人柄も、政策も、なにもかも優れているように見えてしまうわけだ。<BR> </P> <P> そして、本人は、次のように<span style="font-size: 170%;">自覚</span>している。<BR> </P> <BR><BR><div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120321.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> ここで重要なのは、「イケメン政治家の容姿に影響されて、イケメン政治家に投票してしまったのに、『イケメンだから投票したわけではない』と言う人」は<span style="font-size: 170%;">ウソつきでもバカでもない</span>ということだ。<BR> </P> <P> 彼らの<span style="font-size: 170%;">「意識」</span>は、たしかに、容姿ではなく、政治手腕・人柄・政策を見て、投票したのだ。<BR> しかし、まるで夢遊病者のように、彼らの<span style="font-size: 170%;">「無意識」</span>が、彼らの意識が知らないところで、政治手腕・人柄・政策の評価値を書きかえてしまっていたのだ。<a href='https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/05/035524#chuu-3' style='font-size:80%;'>(註3)</a><BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123033.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> 彼らの「意識」は、いわば<span style="font-size: 170%;">善意の第三者であって、ウソをついているわけではない</span>のだ。<BR> </P> <P> また、彼らはバカだから、そんな愚かなことをしたわけじゃない。<BR> <span style="font-size: 170%;">知能が高く、有能な人であっても、自分の無意識が、自分の知らないところで、勝手に脳内の評価値を書きかえるのを、防ぐことはできない</span>からだ。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">これは、脳のセキュリティホール</span>なのだ。<BR> どんなに超高機能かつ超高性能のシステムであっても、セキュリティホールから侵入されたら、やられてしまう。<BR> <span style="font-size: 170%;">「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど、危ない。</span><BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062550.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> 「人は見た目が9割」ってこと?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> そうじゃない。<BR> この現象は、<span style="font-size: 170%;">容姿に限った話ではない</span>んだ。<BR> </P> <P> たとえば、2001年、9・11テロが勃発したとき、ブッシュ大統領への支持率が急上昇した。<a href='https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/05/035524#chuu-4' style='font-size:80%;'>(註4)</a><BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180824/20180824121018.jpg" style=""><div style="font-size:80%;">写真提供:ロイター=共同</div></div> <BR><BR><P> 注目すべきは、このとき、ブッシュ大統領の<span style="font-size: 170%;">経済政策</span>への支持率まで、<span style="font-size: 170%;">47%</span>から<span style="font-size: 170%;">60%</span>に上昇したということだ。<BR> </P> <P> つまり、こういうことだ。<BR> </P> <P> まず、テロが起きる前は、こうだった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120323.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> テロが勃発したら、大統領のテロ対策の支持率が上がった。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120325.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> すると、経済政策への支持率まで上がったんだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120326.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062550.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> 有権者の脳内で、こういうことが起きたってこと?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120324.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> そういうこと。<BR> </P> <P> これは、<span style="font-size: 170%;">「思考の錯覚」</span>なんだ。<BR> </P> <P> 「目の錯覚」の場合、自分が錯覚をしていると、わりとすぐに気がつくことができる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120315.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> しかし、「思考の錯覚」の場合、<span style="font-size: 170%;">錯覚をしていること自体に、本人は、ほぼ気づけない</span>のだ。<BR> </P> <P> この世界は、思考の錯覚に満ち溢れている。<BR> </P> <P> なぜなら、「プラスのイメージを引き起こすもの」であれば、<BR> なんでも「全体的に優秀」という思考の錯覚を引き起こしてしまうからだ。<BR> </P> <P> たとえば、<BR> 「売り上げを半期で73%増やしました」<BR> 「DAU500万人のアプリのサーバを運用していました」<BR> 「株式会社凸凹商事の営業部長をやっていました」<BR> 「月間300万PVのブロガーです」<BR> 「あの有名人のベストセラー本を担当した編集者です」<BR> なんていうわかりやすい実績は、どれも「思考の錯覚」を作り出す。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">たとえそれが実力によるものではなく、上司や同僚や部下や顧客のおかげで達成できた実績だったとしても、強烈な思考の錯覚を生み出すのだ。</span><BR> </P> <P> もちろん、麻雀の強さでも、絶妙なタイミングのつっこみでも、しゃれたジョークでも、住んでるマンションでも、学歴でも、経歴でも、あなたの想像もしなかったような、実にさまざまなものが思考の錯覚を作り出す。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">ここで重要なのは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」は、一種の資産として機能するということだ。</span><BR> </P> <P> 本書では、これを<span style="font-size: 170%;">「錯覚資産」</span>と呼ぶ。<BR> </P> <P> また、もう1つのポイントは、<BR> 「全体的に優秀」は、「思考の錯覚」の、ほんの一例に過ぎず、<BR> さまざまな種類の思考の錯覚があるということだ。<BR> <span style="font-size: 170%;">複数種類の思考の錯覚が掛け算されることで、とんでもない威力の錯覚資産が作り出されるのだ。</span><BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120351.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> さらに重要なのは、錯覚資産は、うまく運用することで、<span style="font-size: 170%;">複利</span>で増やしていけるということだ。錯覚資産の運用がうまい人間と下手な人間では、時間とともに、どんどん差が開いていくのだ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062547.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> 錯覚って、要は、勘違いでしょ?<BR> そんなのを増やしてどうするの?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> ポイントは、これは人間の<span style="font-size: 170%;">利害を左右する勘違い</span>だということだ。<BR> <span style="font-size: 170%;">「自分の得になるような、他人の勘違い」(=錯覚資産)は、生涯賃金に換算して、何千万円、何億円ものお金を生む。</span><BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062547.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> それって、ただの詐欺じゃん。<BR> 人を騙してまで生涯賃金を増やしたいとは思わないな。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> いや、むしろ、あなたのような人こそ、思考の錯覚を理解したほうがいい。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062547.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> なんで?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 理由は、4つある。<BR> </P> <P> 第一に、<span style="font-size: 170%;">詐欺に引っかからないようにするには、詐欺の手口を知っておく必要がある</span>からだ。<BR> </P> <P> 錯覚資産を使って人を騙す人は、たくさんいる。<BR> </P> <P> 錯覚資産を使えば、<BR> 自分が有能な人間であるかのように見せかけて、<BR> 昇進したり、転職に成功したり、年収を上げたりすることができる。<BR> ブログにアクセスを集めて、アフィリエイトで稼ぐこともできる。<BR> ツイッターでフォロワーを大量に増やすこともできる。<BR> 顧客にものを買わせることもできる。<BR> 起業して、投資家から出資金を集めることも、優秀な人材を集めることもできる。<BR> </P> <P> しかし、カモにされる側にとっては、たまったものではない。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">たいして有能じゃない人間を、騙されて採用してしまったり、<BR> たいして有能じゃない起業家に、騙されて投資してしまうことになる。</span><BR> </P> <P> だから、彼らのカモにされないように、彼らの手口を知っておく必要があるのだ。<BR> </P> <BR><BR><P> 第二に、<span style="font-size: 170%;">自分の周囲の人たちを、詐欺から守るため</span>だ。<BR> </P> <P> 会社の経営者や管理職が、錯覚資産に騙されて、無能な人を昇進させていると、職場がどんどん非効率になり、労働環境が悪化し、働きにくくなる。<BR> サービスの質も低くなるから、お客さんにも、いい迷惑だ。<BR> 利益が出なくなるから、経営者も、株主も不幸になる。<BR> </P> <P> だから、彼らが錯覚資産に騙されて道を誤りそうになったとき、少しでもマシなほうに軌道修正させるために、錯覚資産の性質を、よく理解しておく必要があるのだ。<BR> </P> <BR><BR><P> 第三に、誰に騙されたわけでもないのに、知らず知らずのうちに、有害な思考の錯覚に陥ってしまうことがあるからだ。<BR> </P> <P> これは一種の<span style="font-size: 170%;">病気</span>のようなもので、この思考の錯覚に思考を汚染されると、誤った判断を繰り返し、どんどん人生が悪くなっていく。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123034.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> なぜなら、有害な思考の錯覚に思考を蝕まれていても、<span style="font-size: 170%;">本人は、それを自覚できない</span>からだ。<BR> </P> <BR><BR><P> 第四に、錯覚資産がないと、実力をなかなか伸ばせないからだ。<BR> </P> <P> 「実力」というのは、よい上司、よい同僚、よい部下、よいポジションという、よい「環境」に恵まれてはじめて、効率よく伸びていく。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123035.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> そういうよい環境を手に入れられるかどうかは、実力よりもむしろ、錯覚資産によるところが大きいのだ。<BR> </P> <P> なぜなら、企業は、実力のある人間を採用し、いいポジションにつけているつもりになっているが、実際には、ほとんどの場合、錯覚資産の大きい人間を採用し、いいポジションにつけているからだ。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">「実力がある」から、よいポジションを手に入れられるのではなく、「実力があると周囲が錯覚する」から、よいポジションを手に入れられているという部分が大きいのだ。</span><BR> </P> <P> これが意味するところは、あなたが思っている以上に、重大だ。<BR> </P> <P> たとえば、ここに、次の2人の人がいたとする。<BR> <div style=" padding: 0.5em 1em; margin: 0 0; color: #000; background: #e4fcff; border-left: solid 10px #1dc1d6; box-shadow: 0 3px 4px rgba(0, 0, 0, 0.32); font-size: ;;">・【実力タイプ】本当に実力がある人。<BR> ・【錯覚力タイプ】実力はないが、実力があるように見せかける能力のある人。</div> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123036.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <P> 会社は、実力タイプよりも、錯覚力タイプのほうが有能だと認識するので、錯覚力タイプは、実力タイプよりも、よりよいポジションや成長のチャンスを手に入れられる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120313.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> 錯覚力タイプは、エリートコースに乗り、いい先輩の丁寧な指導を受け、重要な仕事を任され、みんなに助けられ、実力アップの機会に恵まれる。<BR> </P> <P> 実力タイプは、数年後に廃棄が決まっている老朽化したシステムのお守りや雑用ばかりさせられ、ろくな経験を積めず、実力が伸び悩む。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180906/20180906123037.jpg" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> 結果として、数年後には、実力においても、錯覚力タイプが、実力タイプを追い抜いているのだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120312.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> こうなると、錯覚力タイプは、さらにもっとよい成長機会を与えられることになる。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120314.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> この繰り返しで、錯覚力タイプと実力タイプの差は、残酷なほど開いていく。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120311.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR><P> つまり、<BR> 「錯覚資産によってよい環境が手に入り、よい環境によって実力が育ち、実力があるからそれが成果を生み、その成果を利用してさらに錯覚資産を手に入れる」というループが回ることで、錯覚資産と実力が雪だるま式に増えていくという構造があるのだ。<BR> </P> <div style="text-align:center; "><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807120350.gif" style=""><div style="font-size:80%;"></div></div> <BR><BR> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062550.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> 結局、これは、どういう本なの?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 第一に、これは、「実力主義」の欺瞞(ぎまん)を暴く本だ。<BR> </P> <P> 年功序列が崩壊し、男女平等が実現し、インターネットによって、誰にでも平等にチャンスが与えられるようになり、誰もが、本当の価値、本当の実力で評価される世の中になってきている。<BR> </P> <P> そんなことを言う人たちが、どんどん増えてきている。<BR> </P> <P> それが本当なら、まったくけっこうなことだ。<BR> </P> <P> しかし、現実は異なる。<BR> </P> <P> 自分よりも実力のない人たちが、自分よりも評価されているなんてことは、いくらでもあるのだ。<BR> </P> <P> <span style="font-size: 170%;">おかしいじゃないか。<BR> 世の中、実力主義のはずじゃなかったのか?</span><BR> なぜ、自分よりも実力のない奴らが、自分よりも評価されてしまうんだ?<BR> </P> <P> 本書は、それを明らかにする本なのだ。<BR> </P> <BR><BR><P> 第二に、本書は、成功法の本だ。<BR> </P> <P> ただし、そこで語られるのは、<BR> <span style="font-size: 170%;">「世の中、実力主義になんてなってない」という身も蓋もない現実を踏まえたうえでの、リアルな成功法だ。</span><BR> </P> <P> 具体的には、思考の錯覚を理解し、錯覚資産の生成・操作・運用方法を理解し、有害な思考の錯覚を取り除くことで、仕事や人生においての成功確率を、飛躍的に上げる方法を書いた本だ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062545.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> そういうあんたは誰なの?<BR> どこの馬の骨とも知れない奴がそんなことを言っても、説得力ないよ。<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> やっぱり、そう言われちゃうよね。<BR> <span style="font-size: 170%;">錯覚資産を持たない人間には、発言の機会さえ与えられない</span>のが、世の中というものなんだ。<BR> </P> <P> 筆者は、複数の企業を創業した経験がある。そのうち1社は上場した。<BR> それなりに有名な本の監訳、翻訳、執筆をしたし、海外講演もした。<BR> それは、私の実名を知る本書の編集者が保証してくれる。<BR> </P> <P> 今まで書いたブログ記事の累計読者数も、少なくとも数百万人にはなる。<BR> </P> <P> もちろん、いわゆる「成功者」の知り合いも、普通の人よりは、はるかに多い。<BR> 資産が数億円、数十億円になった元同僚もけっこういる。<BR> 彼らとは、のべ千時間以上、同じ経営会議・人事評価会議・戦略会議・役員合宿・役員飲み会などに出席して、さまざまな議論を重ねてきた。<BR> 彼らの情熱と向上心、行動力、抜群のマーケット感覚、洞察力も、肌感覚でわかっている。<BR> それと同時に、彼らがどういう種類の偏見や思いこみを持ち、どういう種類の間違いを犯しがちかも、身に染みてよくわかっている。<BR> </P> <P> 本書を執筆するうえで、これらのことは、重要な意味を持つ。<BR> なぜそうなのかは、本書を読めば、わかる。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062550.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> なんで、この本を書こうと思ったんだ?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 大学での専攻が、心理学だったんだ。そこで思考の錯覚の面白さを知ってね。<BR> 卒業後も、仕事をしながら、心理学の勉強を続けていたんだ。<BR> 日々の仕事の現場で、あまりにも思考の錯覚に基づいて意思決定する人が多いので、いつか、こういう本を書いてやろうと思っていたのさ。<BR> </P> <TABLE style=" table-layout: fixed;width:100%; border: 0; border-collapse: collapse; margin: 4em 0;"> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; width:90px; min-width:90px; height:auto;;vertical-align: top;"> <img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20180807/20180807062544.png" style="padding: 0.5em 0 0 0; margin-right: 0.1em; width:90px; min-width:90px; height:auto;"> </TD> <TD style="border: 0; vertical-align: middle; font-size:132%;; color: #0000ff;"> なんで、ペンネームで本を書いているの?<BR> </TD> </TR> </TABLE> <P> 実名で書くと、どんなに正直に書いているつもりでも、<BR> 無意識のうちに体面や人間関係に配慮してしまって、<BR> ウソをついている自覚なしに、文章の中にたくさんのウソが混じるからだ。<BR> </P> <P> ウソつきだからウソを書くのではなく、実名に絡みついている関係性がウソをつかせるのだ。<BR> </P> <P> 私は、人間関係に縛られず、「本当のこと」を書きたかった。<BR> 立場上、書けないことも、誠実に書きたかった。<BR> </P> <P> だから匿名で書いたのだ。<BR> </P> <BR><div id="fd_pretend" title="人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている" url="https://www.furomuda.com/entry/2018/08/04/011000"></div> <BR><BR><div style="display: table; table-layout: fixed; width:100%; margin-top:1.5em; margin-bottom:0px;font-size: 125%; "> <div style="display: table-cell;" align="center"> <a href="https://amzn.to/2vrxH3X" style= "display:block; width: 92.5%; border-radius: 3px; padding:10px; text-align: center; margin: 0 1.5%; background-color:#fc9902; color: black; font-weight:bold;"> 続きを本で読む(Amazon) </a> </div> <div style="display: table-cell; width:2%;" align="center"> </div> <div style="display: table-cell; " align="center"> <a href="https://a.r10.to/hryBpm" style= "display:block; border-radius: 3px; padding:10px; text-align: center; margin: 0 1.5%; background-color:#be0000; color: white; "> 続きを本で読む(楽天) </a> </div> </div> <div class='fd_SimpleViralButtons'></div> <div style="" align="center"> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/04/203742" style= "display:block; width: 95%; border-radius: 3px; padding:0.5em; text-align: center; background-color:#55F; color: white; font-size: 125%; font-weight:normal; margin: 1em 0;"> 続きをWebで読む </a> </div> <P><TABLE style="table-layout: fixed; width:100%; word-break: break-word; border: 0; border-collapse: collapse; margin-top:0.1em; margin-bottom:0; font-size: 125%; "> <TR style="border: 0;"> <TD style="border: 0; padding:0 0.3em;" align="center"> <a href="https://www.furomuda.com/entry/2018/08/04/011000" style= "display:block; border-radius: 3px; padding: 0 0.3em; text-align: center; margin: 0 0; background-color:#ccc; color: black; font-weight:bold;"> 1章 </a> </TD> <TD style="border: 0; padding:0 0.3em;" align="center"> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/04/203742" style= "display:block; border-radius: 3px; padding: 0 0.3em; text-align: center; margin: 0 0; background-color:#ccc; color: black; font-weight:bold;"> 2章 </a> </TD> <TD style="border: 0; padding:0 0.3em;" align="center"> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/04/203742_1" style= "display:block; border-radius: 3px; padding: 0 0.3em; text-align: center; margin: 0 0; background-color:#ccc; color: black; font-weight:bold;"> 3章 </a> </TD> <TD style="border: 0; padding:0 0.3em;" align="center"> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/04/203742_3" style= "display:block; border-radius: 3px; padding: 0 0.3em; text-align: center; margin: 0 0; background-color:#ccc; color: black; font-weight:bold;"> 4章 </a> </TD> <TD style="border: 0; padding:0 0.3em;" align="center"> <a href="https://fromd.hateblo.jp/entry/2018/08/04/203742_2" style= "display:block; border-radius: 3px; padding: 0 0.3em; text-align: center; margin: 0 0; background-color:#ccc; color: black; font-weight:bold;"> 5章 </a> </TD> </TR> </TABLE></P> <BR><BR><P> <BR> </P> fromdusktildawn 「好きを仕事に」という欺瞞に騙されず、心の底から気持ちよく好きなことをやる方法 hatenablog://entry/10257846132601979718 2017-11-14T00:00:00+09:00 2023-01-12T12:16:25+09:00 「自分の『好き』を極めれば、それで生活できるようになります」 って言う人は、たいてい、「好き」と「稼げる」の積集合が大きい。 (これを「一致タイプ」と呼ぶことにする) 一致タイプの人には、 「なんで、みんな、やりたくもない仕事をやってるの? 好きなことを仕事にすればいいじゃないか!」 って、思ってる人が多い。 太古の昔から、一致タイプの成功者は、佃煮にするほど生息数が多い。 それほどまでに、一致タイプは、成功しやすい。 けれど、「好き」と「稼げる」の積集合が、空集合になってる人もたくさんいる。 (これを不一致タイプと呼ぶことにする) 不一致タイプの人たちにとっては、 「自分の『好き』を極めれば… <div class="seemore"> <p><br /> <span style='font-size:170%;'>「自分の『好き』を極めれば、それで生活できるようになります」</span><br /> って言う人は、たいてい、「好き」と「稼げる」の積集合が大きい。</p><p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115050" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115050.jpg" width="388" height="196" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> (これを「一致タイプ」と呼ぶことにする)</p><br /> <p>一致タイプの人には、<br /> <span style='font-size:170%;'>「なんで、みんな、やりたくもない仕事をやってるの?</span><br /> <span style='font-size:170%;'>好きなことを仕事にすればいいじゃないか!」</span><br /> って、思ってる人が多い。<br /> 太古の昔から、一致タイプの成功者は、佃煮にするほど生息数が多い。<br /> それほどまでに、一致タイプは、成功しやすい。</p><br /> <br /> <p>けれど、「好き」と「稼げる」の積集合が、空集合になってる人もたくさんいる。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115101" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115101.jpg" width="631" height="212" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> (これを不一致タイプと呼ぶことにする)</p><br /> <p>不一致タイプの人たちにとっては、<br /> 「自分の『好き』を極めれば、それで生活できるようになります」<br /> という一致タイプの人たちが唱える言説は、<span style='font-size:170%;'>人生を蝕む呪い</span>となる。</p><br /> <br /> <p>経営者や上司が一致タイプで、部下が不一致タイプだと、悲惨だ。<br /> 経営者や上司は、仕事が好きなのは当然だと思っているし、部下は「仕事が嫌いだ」と言うと人事評価に響くから、仕事が好きなふりをし続けなきゃならならず、いやーな職場になる。</p><br /> <p>もっと酷いのは、一致タイプの言説を、不一致タイプの人が鵜呑みにして、散々好きを仕事にしようとした挙句、結局できなくて、世界がどす黒い絶望に染まっていくパターンだ。<br /> 最初から自分は不一致タイプなのだと認識していれば、後述するように、はるかに豊かな人生を送る方法もあったのに。</p><br /> <p>もちろん、昔は、この逆のタイプの『呪い』が日本社会を跋扈していた。<br /> それは、一致タイプの若者たちの未来を摘み取ろうとする、不一致タイプの大人たちだ。<br /> 一致タイプの子どもが漫画家になりたいとか、ゲームクリエイターになりたいとか言い出すが、不一致タイプの親や教師が、「世の中はそんなに甘くない」と言って、楽しく生きられたかもしれない子どもの未来を破壊してしまう。<br /> これは、少年漫画の典型的な物語類型を形作る、わかりやすい『呪い』で、<br /> むしろ、昭和的とすら言える。</p><br /> <p>この2種類の呪いは、実は、同じところから出ている。<br /> どちらのタイプであっても、多くの大人は、自分の生き方を肯定するために、無神経に若者たちに呪いをかけ、人生を破壊しようとする。</p><br /> <p>不一致タイプの大人は、好きを仕事にできなかった自分の人生を肯定するために、一致タイプの若者たちに呪いをかけて、その未来を潰そうとする。<br /> 一致タイプの若者に、好きを仕事にされたら、自分の人生が否定されたような気になってしまうから、そんなものは許せないのだ。</p><br /> <p>一方で、一致タイプの大人は、好きを仕事にできた自分の人生を肯定するために、不一致タイプの若者たちに呪いをかけて、その未来を押しつぶす。<br /> 不一致タイプの若者が、やりたくもない仕事で金を稼ごうとしているのを見ると、退屈でつまらないやつらだと思う。<br /> これは、一見、悪気はないかのようにも見える。しかし申し訳ないが、実際には、微妙なラインだと言わざるをえない。<br /> 実は、一致タイプの人は、不一致タイプの人がたくさんいることを、薄々感づいている。しかし、それを直視すると自分の世界観もしくはビジネスにとって都合が悪いので、それらを認めず、『未必の故意』で押しつぶすのだ。</p><br /> <br /> <p>ただ、この問題は、そんな簡単な話ではない。</p><br /> <p>問題をややこしくしていることの一つは、<br /> 「好きなことを根気強く育てていけば、それで生活できるようになる可能性が、ほんの少しだけある人」<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115047" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115047.jpg" width="502" height="197" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> という「ギリ一致タイプ」と、<br /> 「好きなことを根気強く育てていけば、それで生活できるようになる可能性が、ありそうに見えるけど、実はない人」<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115054" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115054.jpg" width="512" height="200" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> という「ギリ不一致タイプ」の存在だ。</p><br /> <p>この2つのタイプは、非常に見分けにくい上に、時代によっても変動していて、<br /> 観測するまでその状態が確定しない、シュレディンガーの猫みたいになってる。</p><br /> <p>なので、現実には、「ギリ一致タイプ」と「ギリ不一致タイプ」は、<br /> まとめて、「不確定タイプ」として観測される。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115057" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115057.jpg" width="509" height="191" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>実は、この「不確定タイプ」こそが、<br /> 一致タイプの成功者による「一致するする詐欺」のカモとなる。</p><br /> <p>「効果がある可能性がほんの少しだけある」<br /> という欺瞞的な健康食品が巨大市場を形成しているように、<br /> 不確定タイプに、<br /> 「ギリ一致タイプである可能性がほんの少しだけある」<br /> ということを利用して、不確定タイプを食い物にして、自分のプレゼンスを増大させる欺瞞が、昔からまかり通り続けている。</p><br /> <p>一般に、不確定タイプに対して、<br /> 「自分の好きを極めて、仕事にしよう」<br /> と言う大人は、ポジティブで、未来志向で、善良で、若者に理解のある大人だと見なされる。<br /> そういう人だと認識されれば、人脈が広がるし、ビジネスは格段にやりやすくなる。</p><br /> <p>一方で、不確定タイプに対して、<br /> 「好きなことを仕事にするとか、夢みたいなことを言うのはやめて、現実を見ろ。<br /> 好きなことは趣味だと割り切れ」<br /> という人は、ネガティブで、後ろ向きで、残念な大人だと見なされる。</p><br /> <p>しかし、実際は、どちらも、同じくらい無責任で、有害な大人だ。</p><br /> <p>「自分がギリ一致タイプか、ギリ不一致タイプか」<br /> という見極めは、自分の人生を賭けて行うものだ。<br /> 一致タイプの成功者たちや、不一致タイプの大人たちが、ポジショントークで口を挟んでいいようなものじゃない。</p><br /> <p>「自分がギリ不一致タイプであることに賭けて、カネのためと割り切って仕事を選ぶ」<br /> という人生の方向性を決める重大な決断も、<br /> 責任を取ってくれるわけでもない他人が、つまらない決断だなどと言うのは、傲慢にもほどがある。</p><br /> <p>「ギリ一致タイプか、ギリ不一致タイプか」<br /> のどちらに賭けるかは、あくまで、当事者の、神聖な決断なのだ。<br /> 一致タイプの成功者たちや、不一致タイプの大人たちの、自己正当化のための道具にしていいようなものでは、決してない。</p><br /> <br /> <p>ただ、これらは、所詮、少数派同士の、コップの中の揉め事に過ぎない可能性がある。<br /> そもそも、圧倒的多数派は、「好きな事」自体がない、「不在タイプ」かもしれない。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115033" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115033.jpg" width="265" height="199" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> いわゆる、無趣味な人だ。</p><br /> <p>こういう人は、実は、不一致タイプよりも、はるかに幸せかもしれない。<br /> たとえば、僕の知り合いに、趣味でアプリを開発している人がいる。<br /> とうてい金にはなりそうにないアプリだ。<br /> その人は、いつも「本当は、自分のアプリを開発したいのに」と思いながら、会社のアプリを開発している。<br /> プログラミングそれ自体はそんなに嫌いじゃないのに、<br /> 「オレが書きたいのは、ほんとうはこんなプログラムじゃない」<br /> といつも思っていて、<br /> 「やりたいことがやれないまま人生が過ぎていく」<br /> という苦痛に苛まれながら、仕事をし続けているのだ。</p><br /> <br /> <p>これに比べると、とりたててやりたいことがない「不在タイプ」は、<br /> とくに好きでもない仕事をし続けていても、そういう苦しみはない。</p><br /> <p>とくに苦しみもなく、なんとなく生きて、なんとなく年をとって、なんとなく死ぬ人生。<br /> すばらしいじゃないですか。</p><br /> <p>しかしながら、現実はそう甘くはない。</p><br /> <p>ほとんどの人にとっては、「好きな事」なんてものはないが、<br /> 「嫌な事」はたくさんあるからだ。<br /> しかも、「嫌なこと」と「稼げること」は、かなり重なっている。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115037" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115037.jpg" width="388" height="151" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>したがって、多くの人にとって、真に重要な人生の課題は、<br /> 「好きな事」と「稼げること」の積集合を見つけることなんかではなく、<br /> 「稼げること」と「嫌な事」の差集合を見つけることだ。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115040" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115040.jpg" width="394" height="232" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>このことは、どんなに強調しても、強調しすぎることはないくらいだ。</p><br /> <p>しかし、こういうことは、テレビのコメンテーターは言わないし、アマゾンで人気の本などにも、書いていない。<br /> なぜなら、これは、公言できない本音の部分だからだ。</p><br /> <p>なぜ公言できないかというと、<br /> 「好きな事」「嫌な事」「稼げること」<br /> というのは、結局、全部、自分の都合でしかないからだ。</p><br /> <p>自分のことしか考えていない人とビジネスしたい人なんていない。<br /> だから、こんなものを公言すると、人々に受け入れてもらえない。</p><br /> <p>なので、結局、建前として、以下のような『政治的に正しい』図が描かれることになる。<a href="#f-6900504e" name="fn-6900504e" title="これは4集合のベン図としては数学的に正しくない。そもそも、真円では4集合のベン図は書けない。ここでは、数学的正確さよりも、言わんとしていることのイメージを伝えることを優先して、敢えて「数学的には」不正確な図にしてある。">*1</a></p><p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230112115044" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230112/20230112115044.jpg" width="525" height="357" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> この4つの円が重なる部分こそが、政治的に正しい「生きがい」だ。</p><br /> <p>もちろん、現実には、<br /> 「世の中から必要とされてない仕事だよな」と思いながら仕事をしていると、<br /> モチベーションは上がらないし、<br /> 「得意なこと」の方が、快適に、お金を稼ぎやすい。</p><br /> <p>しかしながら、所詮、それらは、「好きな事」「嫌いな事」「稼げる事」の<br /> 従属変数でしかない。</p><br /> <p>「世の中から必要とされてない仕事」だと好きになれない上に儲からないし、<br /> 「得意な仕事」でないと稼げない、<br /> というだけの話だ。</p><br /> <p>だから、本当の本当は、<br /> 「好きな事」「嫌いな事」「稼げる事」だけで事足りるし、<br /> そのメトリクスだけに思考を集中させた方が、<br /> はるかに思考がクリアになり、正解に近づく。</p><br /> <br /> <p>こういう本音の部分が公言されない、<br /> もう一つの理由は、ネガティブだからだ。</p><br /> <p>「この仕事、好きじゃないけど、そんなに嫌いじゃないし、お金のためにやります」<br /> などと、醒めてて、消極的なことを言う人は、好かれないからだ。<br /> 人気のビジネス書を書くような人は、ネガティブな人だと思われたくないから、<br /> そんな本は、書かないのだ。</p><br /> <p>正直に言うと、私も、実名でネットにこれを書くなんてことはしない。<br /> 当然、facebookには、書かない。</p><br /> <p>これは、匿名ブログでしか書けない、<br /> 本音の部分なのだ。</p><br /> <p>前提を整理して、見通しが良くなったので、<br /> ようやく本題の、もっともっとヤバイ、本音の本音の部分に入ることにする。</p><br /> <p>人生の大きな問題の一つは、<br /> 「好きな事」というのが、年とともに変化する、<br /> ということだ。<br /> 好きな事がとくになかった人が、<br /> 突然、やりたいことができるパターンもある。</p><br /> <p>たとえば、プログラミングが好きでITエンジニアになったのだけど、<br /> 子どもが生まれたら、子育てがめっちゃ楽しくなることがある。<br /> システム開発なんかの100倍ぐらい楽しい。<br /> なので、保育士になりたくなったのだが、<br /> そうなると、年収が3分の1になってしまう。<br /> それでは家族を養えない。</p><br /> <p>あるいは、おっさんになってから、<br /> 試しに小説を書いてみたら、どんどんスキルが上がっていって、<br /> それなりに固定ファンも増えてきたんだけど、<br /> どうみてもベストセラー作家にはなれそうもなく、<br /> プロ作家になったら、年収が10分の1ぐらいになりそうだったりする。</p><br /> <p>そういう場合に、好きな事ができるかどうかは、<br /> 結局、金の問題に帰着する。</p><br /> <p>実際、医師をしながら、<br /> 小説の売上が年200万円なんていうプロ作家がいる。</p><br /> <p>また、働かなくても家族を養えるだけの十分な貯金があれば、<br /> 保育士になることだってできる。</p><br /> <p>一致タイプの人は、金に関係なく「好きな事」をやることができるが、<br /> 不一致タイプの場合、好きな事をやれるかどうかは、金次第になってしまうのだ。</p><br /> <p>一致タイプになるか、不一致タイプになるかは、運次第だ。<br /> 運良く一致タイプになったなら、金のことなんか気にせず、好きな事を一直線にやればいい。</p><br /> <p>しかし、運悪く不一致タイプになってしまった場合は、<br /> それよりも、はるかに高度な戦略思考で、カネという兵站を、長い時間をかけて、確保しておかなければならない。</p><br /> <p>そして、現在一致タイプの人も、今後、「好きな事」が変化して、不一致タイプになってしまうリスクがある。<br /> あるいは、「不在タイプ」の人も、いつ何時、「好きな事」が出来て、不一致タイプになってしまうか、分からない。</p><br /> <p>そして、いざ、不一致タイプになったときに、兵站が用意されてなければ、結局、やりたいことをやれないまま、一生を終えることになる。<br /> それは、<span style='font-size:170%;'>本当に、本当に、本当に、哀しいこと</span>だ。</p><br /> <p>もし、不一致タイプの人が、<br /> 一致タイプの成功者の唱える「一致するする教」をうっかり信じてしまうと、<br /> 『好き』を仕事にしようとして、低収入でお金が貯まらず、<br /> 結局、好きなことができないまま、一生を終えることになりかねない。</p><br /> <p>これは、本当に、恐ろしいことだし、<br /> 一致タイプの成功者の唱える「一致するする教」は、<br /> それほどまでに、罪深く、有害なのだ。</p><br /> <p>そして、これは本当に、匿名ブログでしか書けないことだが、<br /> 不一致タイプの人になるリスクの大きい人がやるべきことは、以下のとおりだ。</p> <blockquote> <p>(1)できるだけ多く稼ぐ。<br /> (2)出来る限り低支出で暮らす。<br /> (3)扶養家族は作らない。<br /> (4)少ない労働時間で多く稼げる資格、実績、ブランド、ネットワークを育てる。</p> </blockquote> <p><br /> もちろん、こんな人ばかり増えたら、世の中はデフレになるし、少子化になってしまう。<br /> しかし、安心して欲しい。<br /> このブログを読んで、こんなことを実行する人間は、全人口の0.01%もいない。<br /> このブログが原因でデフレになるなんてことは、100%あり得ないので、<br /> 心置きなく、「好きな事」を思う存分にするための、備えをすればいいと思う。</p><br /> <p>何しろ、自分の人生がかかっているのだ。<br /> こんな局面でまで日本経済がどうたらという理由で人の人生に口出してくる人間の寝言など、聞いている場合ではない。</p><br /> <p>それでも、こんな考えを抱いているのは「政治的に正しくない」ので、<br /> 批判どころか、非難されるであろうことは、十分に承知している。</p><br /> <p>敢えて、これの「政治的に正しい」部分を、無理やり見つけて弁護するとすれば、<br /> そうやって、「好きな事」をやった人が1万人いれば、<br /> その中の1人2人は、世の中を変えるような、すごいイノベーションを<br /> 生みだすかもしれないってことだ。</p><br /> <br /> <p>こうして、呪いを砕き、かつ、十分な備えをしておけば、「その時」が来ても、呪いに精神を蝕まれることもなく、本当に、心から好きな事を、心の底から気持ちよくやることができる。</p><br /> <br /> <p>まとめると、以下のようになる。</p> <blockquote> <p>●不一致タイプにとっては、「好きを仕事に」というのは、呪いであり、人生を蝕む毒である。<br /> ●一致タイプも、不在タイプも、将来的に、自分が不一致タイプになってしまうリスクがある。<br /> ●この呪いが、あなたの人生を腐らせる前に、この呪いの正体を突き止めて、粉砕し、自分を解放しよう。<br /> ●不一致タイプになたときに、「好きな事」をやる自由があるかどうかを決めるのは、カネである。<br /> ●不一致タイプになるリスクの大きい人は、多く稼ぎ、少なく支出し、固定費を最小限にし、不一致タイプ・ショックに備えよう。<br /> ●呪いを砕き、備えがあれば、たとえ不一致タイプになっても、それは不幸どころか、この上ない幸福となる。</p> </blockquote> <p></p><p>最後に、ニーチェとかいうおっさんの言ってたことを引用して終わりとする。</p> <blockquote> <p>あらゆる人間は、いかなる時代におけるのと同じく、現在でも奴隷と自由人に分かれる。自分の一日の三分の二を自己のために持っていない者は奴隷である。(著作:人間的な、あまりにも人間的な)</p> </blockquote> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-6900504e" name="f-6900504e" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text"><a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Venn%27s_four_ellipse_construction.svg">これは4集合のベン図としては数学的に正しくない。</a>そもそも、真円では4集合のベン図は書けない。ここでは、数学的正確さよりも、言わんとしていることのイメージを伝えることを優先して、敢えて「数学的には」不正確な図にしてある。</span></p> </div> fromdusktildawn 意外と知られてない、自分を飛躍的に成長させる読書テクニック hatenablog://entry/10257846132601979721 2009-11-01T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:16:55+09:00 間違った方法でいくらハードトレーニングをしても、スポーツ選手としての成長はないように、 間違った方法で何千冊読書しても、思考も見識も洞察もたいして深まらない。 最小の努力で最大の筋力を得られる筋力トレーニングがあるのと同じように、 最小の努力で最大の見識を得られる読書スタイルというものがある。 <p><br /> 間違った方法でいくらハードトレーニングをしても、スポーツ選手としての成長はないように、<br /> 間違った方法で何千冊読書しても、思考も見識も洞察もたいして深まらない。<br /> 最小の努力で最大の筋力を得られる筋力トレーニングがあるのと同じように、<br /> 最小の努力で最大の見識を得られる読書スタイルというものがある。</p><br /> <p>実際、たくさん本を読んでいるのに空回りばかりしている人はよくいるし、<br /> ほんの数冊の本を読んだだけで、驚くべき成長をする人もいる。<br /> <b>その違いは、具体的にはどこ</b>にあるのだろうか?</p><br /> <br /> <p>よく「文章の論理構造の理解が一番大切だ」と言う人がいるが、文章の種類によっては、この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C7%C4%EA%B4%D1%C7%B0">固定観念</a>が癌になる。<br /> 論理構造の理解は確かに必要なのだが、それを優先して文章を読解しようとすると空回りして不毛な誤読をして、結局、一番肝心な部分が分からないままになってしまうことが多い。</p><br /> <p>最優先でやるべきは、作者や登場人物の情動回路を自分の脳内で動かすことだと思う。<br /> 作者や登場人物になりきって作者や登場人物の目から見える世界を思い浮かべ、<br /> 作者や登場人物が感じた息苦しさ、悔しさ、理不尽さ、憤りを自分も味わってみることだ。</p><br /> <p>それも、作者や登場人物の背の高さ、体の重さ、姿勢の歪みからくるにぶい苦痛、自分の筋肉や骨や間接や胃や腸やさまざまな内臓が蠢いたり痛んだりする生々しい感覚、汗で服が皮膚に貼り付く不快感、まさぐられ、押さえつけられる苦痛、抵抗できない悔しさ、視界から見えたり触っているさまざまなもののディテールを、リアルに生々しく、自分がいままさに体験しているかのように、作者や登場人物の中に「入り込み」そこでわき起こる様々な感情を<b>自分の感情として</b>味わうことだ。</p><br /> <p>ここで重要なのは、文章に出てきた<b>全て</b>の登場人物や作者の情動を、並列に、あるいは、切り換えながら自分の脳内で<b>血が出るほど誠実に</b>シミュレートすることだ。自分の好きな登場人物や作者の情動の、感情移入しやすい部分だけシミュレートするのは、ただの精神的自慰行為にすぎない。自分がむかついたり反発を感じる作者や登場人物の身体、立場、気持ちになりきって、そこから見える世界を味あわなければならない。</p><br /> <p>このような情動シミュレーションさえしっかりできれば、文章の論理構造など、さして努力しなくても自然に浮かび上がってくる。<br /> それも、単に論理骨格を追いかけるより、はるかに精密に論理構造が見えるようになる。</p><br /> <p>たとえば、税務申告や税務調査対策の本を読むときも、著者、税理士、税務官、税務署長、法律や税制を作った官僚、政治家の情動シミュレーションをしながら読めばぐっと読みやすくなる。税制というものが作られた背後には人間の情動が蠢いているし、税制を運営する税務署や税理士にも情動の蠢きや人間ドラマはあるのだ。哲学書を読むときだって、その哲学書を書いた哲学者の情動シミュレーションをやりながらの方が、はるかに直感的にロジックを理解できる。哲学者とは、自分の情動に突き動かされて、極めて個人的な感情で論理を突き詰めた結果、哲学を打ち立てた人達だからだ。<br /> 経済学の教科書ですら、比較優位や限界生産性の解説の例題で登場する人物の情動シミュレーションをやりながらだと、すっと頭に入ってくるし、理解も深くなる。それどころか、経済理論の限界も肌で感じられる。経済現象というのは、そもそも人間の情動が作り出しているのだから。</p><br /> <br /> <p>そもそも、文章の論理構造の把握に、情動シミュレーションが重要であることの、<br /> 根本的な理由はなんだろうか?</p><br /> <p>それは、一切の意味と価値が、究極的には論理ではなく、情動から生じているから、という理由だ。<br /> 情動を一切無視した論理というのは、文字通り無意味な論理だからだ。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060412/1144833374">「おまえも空気の奴隷になれ」って?「空気読め」の扱い方次第で人生台無し</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060412/1144833374" alt=""><br /> <div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-left:10px;padding-right:10px;'><br /> 人間が生きる理由、人間が働く理由、いや、人間の利害と感情に関わる一切の行為の理由は、論理的な正しさなどからは生じない。一切は、利害と感情の構造から生じているのである。</div></p><br /> <p>そして、情動シミュレーションの能力とは、空気を読む能力とほとんど同じものだ。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060412/1144833374">「おまえも空気の奴隷になれ」って?「空気読め」の扱い方次第で人生台無し</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060412/1144833374" alt=""><br /> <div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-left:10px;padding-right:10px;'><br /> まずそもそも「空気を読む」とはどういう行為なのか?<br /> それは、人々の複雑に絡み合った「利害と感情の構造」を読むということだ。<br /> <略><br /> そして、人間の本質とは、「論理の機械」ではなく、「利害と感情の機械」だと思う。もしすべての人間が、一切の損得を気にかけなくなり、一切の感情をなくしたら、人間のあらゆる行動の理由がなくなる。仕事をする理由も、恋愛をする理由も、人を殺してはいけない理由も、生きる理由すらなくなる。人間世界とは、複雑に絡み合った利害と感情の網の目で形作られたものなのじゃないかと思う。<br /> そこにそのビルが存在し、そういう形になっているのは、それによって得する人間と損する人間とむかつく人間と喜ぶ人間がいるからだ。<br /> あまり高いビルを建てると、景色が悪くなって気分が悪いという人、できるだけ高いビルを建てた方が、儲かるという人、この場所に住みたいという欲求を持つ家族たち、ここに人が引っ越してくれると、客が増えると考えるスーパー、都市計画上、ここにビルがあると都合の良いお役所の人たち。<br /> そういう複雑な利害と感情が織り込まれた結果、それがそうして存在する。都市において人間が目にするほとんどすべての景色は、そうやって形成されたものだ。決して、そこにビルを建てるのが、「論理的に正しい」からではないのだ。<b>人間は、青ざめた正しい論理でできているのではなく、赤く燃え立つダイナミックな喜怒哀楽と損得でできている。</b><br /> </div></p><br /> <p>だから、<br /> 空気の読めない人の読書は、空虚で不毛になりがちだ。<br /> 本を読むときこそ、その本の中に漂う空気を読まなきゃならない。<br /> 本の中の空気を読まなければ、ほんとうにその本を読んだことにはならない。<br /> そんな本の読み方をしているかぎり、何千冊の本を読んでも知識と情報ばかりが脳内に増えていくだけで、思考、見識、洞察は深まらない。自分は変化しない。</p><br /> <p>また、他人の情動シミュレーションを自分の脳内で行うのは、<b>自我を守ろうとする力と逆の力が働く</b>ことも多いため、しばしば自分を破壊し、出血させる。他人の情動シミュレーションは、それに慣れていない人にとっては、しばしば不快で苦痛だ。だから、無意識のうちにこれを避けてしまう人が多いのも不思議ではない。</p><br /> <p>しかし、自分を破壊することを恐れている限り、大きな成長も見込めなくなる。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20081118/p1">ネットに時間を使いすぎると人生が破壊される</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20081118/p1" alt=""></p> <blockquote> <p>それから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AE%BB%F4%C3%C6">小飼弾</a>氏の本の読み方は、単に本を精読・咀嚼しない、というだけでなく、自分を破壊しない、出血しない読み方なのではないかと想像します。だから、小飼氏は、いくら本を読んでも、小飼氏のままなのではないでしょうか。ひたすら知識が増え、視野が広がるだけの読み方です。ひたすら、土台の構造はそのまま直線的に進歩発展していくだけの読み方です。本の内容が自分の内臓に突き刺さり、大出血を起こしながら、死闘を行うような読み方をしないのです。土台からぶっ壊され、建物の根本構造が変形してしまうような読み方をしないのです。だから、多くの場合、本は、小飼氏の精神世界をすっと通り過ぎ、いくつかのインスピレーションをもたらすだけのものに過ぎなくなってしまうのではないでしょうか。</p> </blockquote> <p><br /> そもそも、他人の異質な情動を自分の情動の中に食い込ませるから異種混交が起きて自分の精神が豊饒になって成長していくのであって、過去の自分の情動の自動再生ばかりやっていては、自分の精神は単線化し、貧しいままになってしまう。遺伝子プールの多様性が重要なように、自分の脳内の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A1%BC%A5%E0">ミーム</a>プールの多様性が重要だが、情動シミュレーションをおろそかにしたまま大量の本を読むと、情動という肉を伴わない<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A1%BC%A5%E0">ミーム</a>の骨格部分(≒単なる知識や情報)だけが頭の中でガチャガチャ骸骨ダンスを踊っているような状態になる。</p><br /> <p>また、情動シミュレーションをしながら本を読むということは、決して作者の情動に押し流されて洗脳されてしまうことを意味しない。むしろ、情動シミュレーションによってより精密に作者の情動を捕まえるからこそ、その情動に逆らって思考することができる。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060222/1140570225">デザイン能力を身につける方法</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060222/1140570225" alt=""><br /> <div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-left:10px;padding-right:10px;'><br /> ほんとうに「思考する」というのは、「過去の自分の思考」や「他人の思考」に「逆らって」思考する、すなわち、新しい脳神経回路に通電し、新しい脳神経パターンを開墾することであって、単にすでに踏み固めた道をなぞることではない。単に他人の発言をリピートするのが発言でなく、過去に自分が何度も発言していることを繰り返すのが発言でもないことと同じだ。</div>相手の身体を押し返すには、相手の重心をしっかり捕まえなければならない。<br /> 相手の情動が分からないと、自分が相手と同じ思考をしているのか、相手と関係ない思考をしているのか、相手と反対の思考をしているのか、そもそもそれが分からないから、無意識のうちに同じような思考をリピートして堂々巡りをしてしまい、「新しい脳神経パターンを開墾する」ことができなくなってしまう。<br /> 情動シミュレーションによって、相手の情動までしっかりと把握するからこそ、相手の情動に逆らって思考する、すなわち、「ちゃんと思考する」ことができるようになるのだ。</p><br /> <p>そして、お察しの通り、情動シミュレーションは単に読書だけでなく、仕事、生活、遊びのさまざまな局面で決定的に重要になる。<br /> 情動シミュレーションをしながら作り上げた企画と、そうでない企画には、そのクオリティに雲泥の差が出てくることが多い。<br /> 営業でも、交渉でも、情動シミュレーションが得意な人間は、優秀な成績をたたき出すし、出世も速い。<br /> リアルでビビッドな情動シミュレーションができれば、セックスもオナニーもクオリティーがぐっと上がる。</p><br /> <p>あと、情動シミュレーションは一見コストがかかるように見えるが、実際にはそうでもない。<br /> 文章を読むとき、情動シミュレーションをやるクセをつけると、やがて条件反射的に情動シミュレーションが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%C6%B0%B5%AF%C6%B0">自動起動</a>されるようになり、普通に文章を読むのと、さほどコストは変わらない。むしろ、小説やマンガを読むときは、ものすごく中に入り込み、ガラスの冷たく固い質感が生々しく感じられ、リアルにガラスの割れる音が聞こえ、手にガラスの破片が刺さる痛みが走り、ずきんずきんという痛みと共に血がボタボタとしたたり落ち、助けがやってきたときの安堵感でへたり込み、安堵の涙が出てくるようになり、楽しみも深くなる。とくに読む速度が遅くなっている感じはしない。<br /> 情動シミュレーションは、やればやるほど、回路が強化され、スピードが上がり、イメージが鮮明になっていく。ときどき、現実に自分が体験した記憶だったか、本を読んだときに情動シミュレーションで自分が疑似体験した記憶だったか、混乱してしまうことすらある。脳の別の部分を並行動作させているような感じで、おそらくは脳全体の活動量は増えているのだろうが、単位時間当たりの精神成長量はあきらかに上昇する。</p><br /> <p>それと、読書は、必ずしも成長するためにするわけじゃない。単に楽しみのために、興味の赴くままにいろんな本を読むのが普通だろう。ただ、そういう場合でも、読みながら無意識のうちに並行して情動シミュレーションをしてしまうクセをつけておくと、より深く豊かに味わえるようになる。読書という楽しみの時間そのもののクオリティーが上がる。それに加えて、意図しない副作用として、自分の精神の成長にもつながるのだから、それにこしたことはないのではないだろうか。</p><br /> <p>情動シミュレーションを意識的にやりながら、読書、仕事、生活、遊びをやり続けながら十年もたつと、情動シミュレーションをおろそかにしながら同じ十年を過ごした人間との、力量の差は、決定的になる。<br /> 時として、生まれ持った素質の違いすらもはるかに凌駕するほどの逆転も可能だ。</p><br /> <p>情動シミュレーションというのは、これほどシンプルにもかかわらず、長い年月のうちに、人間を根本から作りかえるほど凄まじいパワーを秘めた、究極の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%D5%A5%CF%A5%C3%A5%AF">ライフハック</a>なのだ。</p> fromdusktildawn やがてくる大増税時代に豊かに生活するために準備すべきこと hatenablog://entry/10257846132601979727 2009-10-12T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:39:55+09:00 現在の日本の置かれた状況をよく考えてみると、数年〜十数年後に大増税を行わざるを得なくなる可能性がけっこう高い。 大増税時代になっても豊かに暮らせるようにするには、今のうちから準備しておかないと、あとで後悔することになることがある。 この記事では、それについてまとめてみた。 <p>現在の日本の置かれた状況をよく考えてみると、数年〜十数年後に大増税を行わざるを得なくなる可能性がけっこう高い。<br /> <span style='font-size:170%;'>大増税時代になっても豊かに暮らせるようにするには、今のうちから準備しておかないと、<span style='color:red'>あとで後悔する</span>ことになることがある。</span><br /> この記事では、それについてまとめてみた。<br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>トピックハイライト</h4> <ul> <li>大増税を回避する政策はあるが、それが実行される可能性が低い理由。</li> <li>中所得者と高所得者のどちらに大増税されるかは不透明。</li> <li><b>高所得者を搾取して遊んで暮らす</b>戦略。</li> <li><b style='color:red'>具体的にどの税金を、どのように回避するために、今からどのような準備が必要か。</b></li> <li>重い所得税を払わずに逃げ切る合法的な方法</li> <li>重い消費税を合法的に回避する方法</li> <li>高収入で贅沢をしても消費税も所得税もかからないようにする方法</li> <li><b style='color:red'>税金を全く取られずに生産、流通、消費を行うさまざまなテクニック。</b></li> <li><b>「高所得者に重税をかけると海外へ出て行く」というのは金持ちのポジショントークに過ぎない</b>側面がある。</li> <li>今は<b>消費したら負け</b>の時代。<b>自分の未来を捨ててまで社会に貢献したい人だけ消費すればよい。</b></li> <li>これからやってくる<b>大増税時代は働いたら負けの時代</b>。</li> <li>重税国家が持続可能かどうかはまだ不透明。重税国家スウェーデンでは国民の稼ぎの7割を国家が徴収しているのに税収が不足してきている。福祉に寄生する人が増え、若手の優秀な人材が流出し、財源不足で福祉サービスはどんどん劣化してきている。</li> <li>日本は条件が違うので、<b>スウェーデンなみに重税にしても、スウェーデンほどの福祉にはならない</b>可能性がある。</li> <li>共産主義体制ですら破綻までに数十年かかった。日本の富が寄生者に食いつぶされ、人材が流出し、やがて破綻するとしても、破綻までには数十年の歳月がかかる。<b>重税高福祉体制が破綻するとしても、それが自分が死んだ後なら、あとは野となれ山となれ</b>と考える人も多いだろう。</li> <li>インフレから貯金を守る方法。</li> </ul> </div> <div class="section"> <h4>はじめに</h4> <p>「この先、大増税が行われる可能性が高い理由」については、話が長くなるので、後述する。<br /> ここではまず、「この先、大増税が行われる可能性が高い」ということを前提として話を進める。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>大増税時代には、外食するとバカみたいに税金をむしられまくる</h4> <p><br /> レストランで出される料理の値段には、そのレストランを運営している役員や従業員が受け取る給与にかかる所得税の一部が転嫁されている。<a href="#f-9e940a89" name="fn-9e940a89" title="これは、ミクロ経済学の教科書に載っている「税の帰着(tax incidence)」と言われる問題だ。税金は、それを直接支払う人が全額負担するわけではない。価格メカニズムを通して、市場の他のプレーヤーに転嫁される。わかりやすい例が消費税と売上税の違いだ。「消費者が消費をしたらその5%を消費者が税金として支払う(ただし徴収は企業がやる)」場合、その税金は「消費者」が「支払って」いる。一方で、「企業が売上を上げたら企業はその5%を税金として支払う」場合、その税金は「企業」が「支払って」いる。しかし、消費税が上がればその分だけ税込み価格が上がって買い控えが起き、売上が落ち込んでしまうので、企業は税抜き価格を下げるという形で税込み価格を元の値段に近づけなければならず、結果として消費税の一部を「企業」が「負担」せざるをえなくなる。一方で、売上税が上がればその分だけ企業のコストが上がるので、商品の値上げという形で売上税の一部を「消費者」が「負担」することになる。このように、価格メカニズムが作用することにより、「税金を誰が支払うか」に関係なく、消費税と売上税は中長期的には同じものであり、どちらも消費者と企業の両方が負担することになるので、「売上税を払うのは、企業なんだから、結局、株主や経営者の負担が増えるだけで、俺には関係ないな。企業からお金をとるのは良いことだよ」と安心していると、知らず知らずのうちに消費者の負担がどんどん増えていくことになる(ちなみに、この説明で使った消費税や売上税は、いわゆる「付加価値税」のことであり、厳密には付加価値に対する課税であって売上そのものにかかる課税のことではない)。もっと単純な例だと、化石燃料税が上がれば、それを石油会社だけが負担するのではなく、価格メカニズムが連鎖的に機能して、風が吹けば桶屋が儲かる式に、結局は各種の商品やサービスに転嫁され、ガソリンを直接買うことがない多くの一般消費者もそれを負担するようになる。つまり、「自分以外の人間や企業が払う税金ならば、値上げされても自分は困らない」と単純に考えてしまうと結果的に「肉屋を支持するブタ」になるはめになる。ついでに、個人所得税の負担転嫁がどのように起こるかの例を挙げると、たとえば、多業態戦略で美味しい飲食店を次々とプロデュースする企業の、高給取りの腕利き売れっ子フードプロデューサーにかかる所得税率が上がり、追加的に100万稼いだときにかかる税金(限界税率)が50万円→70万円に上がったとすると、100人のフードプロデューサのうち10人ぐらいは労働量を減らしたり、引退の時期を早めたりするかもしれない。追加的な労働に見合った追加的な手取りが目減りするので、割に合わないと考える人が10人に1人ぐらいは出てくるからだ。そうすると、企業では腕利きフードプロデューサの労働力が不足することになる。その場合、企業は他社の腕利きプロデューサーをヘッドハンティングしてくることになったりする。こうして引き抜き合戦がおこると、腕利きプロデューサーの年収は上がり、値上げされた所得税を支払ってでも、割に合う手取りになり、労働量を増やしたり引退の時期を少し伸ばしたりするプロデューサーが増えて、プロデューサ不足は解消されることになる。しかし、引き上げられたプロデューサの年収分は、商品価格の値上げという形で消費者から回収されることになったりするので、結局は消費者も負担することになる。もちろん、複雑な価格メカニズムが作用するので、中長期的には、消費者だけでなく、他の従業員、経営者、株主など、そのお店の利害関係者全てに、負担が分散される。ただし、中長期では弾力的な価格も短期で見ると弾力性が低かったり、短期では価格硬直性があったりするので、短期的には利害関係者のうちの特定セクターだけが負担する形もある。この辺の説明は、マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 の解説が丁寧で分かりやすいので、詳しくはそちらに譲る。">*1</a><br /> それに加えて消費税までかかるので、レストランで食べる料理の値段にはかなり税金がかかってしまうことになる。</p><br /> <p>それだけではない。レストランで支払いをするお金は、自分で働いて稼いで、所得税をむしられた後のお金だ。</p><br /> <p>今は税率が低いのでこれらの問題が顕在化していないが、税率がぐんぐん上がって大増税時代になると、外食するのは税務署のカモにされにいくようなものになる。</p><br /> <p>これはお総菜でもコンビニ弁当でも同じだ。<br /> それらは会社組織によって組織的に作られるのでその会社組織で働く人にかかる所得税の一部がが商品価格に転嫁され、さらに消費税もかかる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>重税国家でサバイブするコツは、貨幣システムが介在しない生産と消費を心がけること</h4> <p><br /> 一方で、自炊をすると材料費と光熱費にしか税金はかからないから、むしられる税金はずっと低くなる。</p><br /> <p>要するに、重税社会というのは貨幣システムの利用料がバカみたいに高くなる社会だ。<br /> だから、大増税時代には、貨幣システムを使わずに生産と消費をするのが基本戦略の一つになる。<a href="#f-fad97c28" name="fn-fad97c28" title="厳密に言うと、貨幣を介在しない売買であっても税法上定義される「所得」が発生すれば税金がかかることになっているので、貨幣システムの利用というより売買に対して課税されるわけだが、制度上や運用上の制約もあって、実質的にはそれは「貨幣システムの利用料」という概念で近似できる。さらに言うと、税金にはストックに対する課税とフローに対する課税があり、「貨幣システムの利用料」に相当するのは、フローに対する課税となる。ストックに対する課税の例としては固定資産税や相続税がある。フローに対する課税としては消費税、所得税、法人税などがある。">*2</a></p><br /> <p>自炊というのは、ようは、自分で商品を生産し、自分で商品を消費するということだ。<br /> 自分で生産したものを自分で消費するのだから、そこに貨幣取引は介在せず、所得税も消費税も一切かからないわけだ。</p><br /> <p>もっと正確な言い方をすると、「出来上がった料理の価値」と「原材料の価値」の差分が付加価値で、自炊するということは、この付加価値を生産し、消費するということになる。外食をすると、この付加価値の生産と消費の両方にさまざまな形で課税されるが、自炊の場合は付加価値の生産にも消費にも課税されない。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>より美味しいモノを食べるのに取るべき戦略が変化する</h4> <p><br /> いままでは、より美味しいモノを食べるには、「より多くお金を稼ぎ、高いレストランに行く」のが正しい戦略だった。<br /> しかし、大増税時代においては、この戦略では、税負担が重すぎて疲弊してしまう。</p><br /> <p>大増税時代においては、より美味しいモノを食べるには、自分で自炊の腕を磨き、自分で美味しい料理を作れるようにすることに時間とエネルギーを注ぎ込むことが正しい戦略となる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>大増税時代に適した自己完結型の生産と消費の方法にはどんなものがあるか</h4> <ul> <li>家庭菜園を借りて自分で育てたものを食べる。</li> <li>自分で食事を作る。自分の好みの料理を、好みの味付けにできるので外食よりも美味しいことが多い。</li> <li>作り置きのお総菜も、自分で作って冷蔵庫や冷凍庫に保存しておく。</li> <li>服は自分で作る。体型が変わったときのサイズ調整もできるし。</li> <li>子供は塾へ通わせるより、極力自分で教える。</li> <li>部屋にぴったりサイズの本棚を自分で作る。</li> <li>飲み会は居酒屋ではなく、誰かの自宅で行う。</li> </ul><p><br /> これらは、どれも自分で生産し、消費しているため、所得税も消費税もほとんどかからない。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>稼げば稼ぐほどむしられるだけ。稼ぐことではなく、生産消費スキルの獲得に時間とエネルギーを使う</h4> <p><br /> 所得税の税率が高くなると、働いても働いても、国家にむしり取られるだけだ。<br /> だから、仕事時間を減らし、自己完結型の生産消費に必要な知識とスキルを身につけることに、時間とエネルギーをより多く割り当てるのが正しい戦略となる。<br /> 具体的には、たとえば以下のようなことをする。</p> <ul> <li>ためしてガッテンの料理系の番組のような料理スキルをアップさせる番組を録画して見る。</li> <li>料理の本をよく読んで、勉強する。</li> <li>クックパッドを使いこなす。</li> <li>SNSやtwitterで、料理の得意な人と友達になって、いろいろ教えてもらう。</li> <li>時間があれば、料理教室に通う</li> <li>シャトルシェフ、ビタクラフト、チタンの中華鍋、マーブル加工のフライパンなどを使いこなす技術をいろいろ研究する。</li> <li>冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジの使いこなしスキルをアップさせる。</li> <li>おいしい珈琲や紅茶の入れ方も、本やネットで勉強する。</li> <li>家賃の高い快適な部屋に住むよりも、安い部屋をいろいろ工夫して広く快適に使うスキルを磨く(つっぱり棚を上手に使うとか、収納を工夫するとか、ものを捨てる技術を磨くとか)</li> <li>家庭菜園で、手間なく美味しい野菜を育てる方法を学ぶ。</li> <li>子供に効率よく学習させるための教え方のコツを、本、ネット、ビデオ教材などで学習する。</li> <li>服に興味があるなら、自分で作れるように、その手の学校に通う。</li> </ul> </div> <div class="section"> <h4>重い所得税を払わずに逃げ切る方法</h4> <p><br /> 日本は中所得者の所得税が異様に低いので、<br /> 中所得者と高所得者の両方に大増税されるシナリオや、<br /> 主に中所得者に大増税されるシナリオもありうる。</p><br /> <p>高所得者や中所得者に重税がかけられるようになったら、<br /> 中高所得者は、単に働く量を減らして低所得者になれば所得税はあまり取られない。<br /> 低所得者でも貯金がたくさんあれば十分に豊かに暮らせる。<br /> だから所得税の低い今のうちにできるだけ貯金し、所得税が高くなったら、たとえば1年のうち4ヶ月だけ働くようにすればいい。<br /> そうすれば、大増税時代においても、あまり所得税を払わず、短い労働時間で、貯金を取り崩しながら豊かに暮らせる。<br /> 今後税制と福祉がどうなっていくかは不透明だが、たとえば民主党の唱える「負の所得税」が実現すれば、低所得者は所得税を支払うどころか、逆に給付を受け取ることになる。<br /> すると、たとえば、年に4ヶ月だけ働いて年収200万円稼ぎ、負の所得税を20万円受取り、資産運用や貯金取り崩しから年180万円補填すれば、手取りで年400万円の生活費になる。<br /> 金のかかる趣味があるとかでない限り、年4ヶ月労働で生活費400万円なら、かなりのんびり快適に暮らせるのではないだろうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>大増税時代にそなえて貯金しても、インフレで貯金が目減りしては元も子もない</h4> <p><br /> せっかく貯金しても、インフレが起きたら貯金が目減りしてしまう。<br /> なので、インフレが問題になり始めたら、日本円の現金以外の形(貴金属、土地、株式、外国の通貨や株式)で資産を保有するようにする。そうすれば、たとえば日本円の価値がインフレで1/10になったら、相対的に保有している貴金属の価値が10倍になるだけなので、資産は増えも減りもしない。<br /> 手持ちの日本円の現金は最小限にしておき、日本円の現金が少なくなったら、外貨建てor貴金属建ての貯金を少しずつ日本円に換えて使うようにする。<br /> また、インフレが問題になりはじめたら、そもそも銀行の金利はインフレ率よりも高くなるだろうし、インフレヘッジ用の金融商品や金融サービスも多く出回るだろう。</p><br /> <p>それらのインフレヘッジ対策にまで税金がかかるようになったら、インフレの懸念の少ない外国の通貨を現金で所持するか、金、銀、プラチナなどの貴金属の小片の現物で資産を保有するようにする。それらを日本円に現金化するときに税金がかかるのが問題なら、直接外国通貨や貴金属の小片で個人間取引を済ませるようにする。<br /> たとえば、銀1g片は50円、金1g片は3000円と数える。冷凍ミニトマト200gを銀1g片と交換する、など。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>重い消費税を払わない方法</h4> <p><br /> 重税高福祉国家において、重い消費税がかけられるとしても、全ての品物に一律にかけられるとは限らない。<br /> 高福祉国家においては、貧困層には重税がかからないように、生活必需品などには消費税がかからなくなる可能性が高い。</p><br /> <p>そして、贅沢な生活必需品にだけ重税をかけることは、現実には困難だ。<br /> 畑で完熟した1個300円の贅沢トマトには重税をかけて、効率重視で未熟なまま収穫された1個50円の大量生産トマトには税金をかけないようにするのは、現実的ではない。季節による値段の違いもあるだろうし、大きさの違いもあるだろう。</p><br /> <p>だから、生活必需品というカテゴリの範囲内なら、それなりに質の良い商品を買っていても、それほど重税はかからない。<br /> ルイヴィトンやシャネルやベンツや100インチの大型テレビや非常識に家賃の高い部屋に住むなど、昭和の金持ちのような「分かりやすい」贅沢をすれば、贅沢品税がかけられる可能性はあるが。</p><br /> <p>なので、年400万円程度の生活においては、実質的な消費税はそれほど重くならないようなライフスタイルが送れる可能性が高いと思われる。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>高収入で贅沢をしても消費税も所得税もかからないようにする方法</h4> <p><br /> さらに、実質的には年500万円の所得があっても、300万円を経費として落とし、税務署からは年200万円の所得にしか見えないようにすることは、それほど難しくない。<br /> だから、年500万円の所得を得ても、あまり税金を払わず、実質的に年500〜700万円の生活費のそこそこ贅沢な暮らしをすることもできる。<br /> 重税高福祉国家になって、徴税体制がどんなに厳しくなっても、これは原理的に十分可能だ。</p><br /> <p>基本は、自分で法人を設立し、仕事場と自宅を一体化してしまうことだ。<br /> 本棚、パソコン、プリンタ、ドキュメントスキャナ、デジカメ、電話、FAX、データ通信カード、携帯電話、ソファー、家賃の一部、光熱費通信費の一部など、実にたくさんの支出項目が、生活と仕事の両用にできる。<br /> それらにかなり贅沢なものを買ったとしても、それらには所得税も消費税もかからない。(払った消費税は還付される)</p><br /> <p>なぜなら、税務署は、徴税のコストパフォーマンスが高いところだけ厳しく審査し、税金を取り立てるしかないからだ。<br /> 年商5000万円の法人の財務諸表の中の、額の大きな支出項目を吟味して、経費として認めるかどうかを厳しく審査すれば、場合によっては税金を追加的に取ることができるかもしれない。<br /> しかし、いちいち年商500万円しかない超零細法人の経費で落とされている10万円のやや贅沢なドキュメントスキャナの使用状況を隠密調査してなんとか見つけ出し、「半分以上はマンガ本をPDF化するのに使っていますね。仕事の書類は半分しかない。だから、半分しか経費で落ちません。」「いえ。そのマンガ本のスキャンは、ある個人の顧客から仕事を受注するための営業活動として行ったのであって、仕事の一環です。」などという押し問答をやっていたら、徴税の手間の方が大きくなってしまい、採算割れしてしまうのだ。</p><br /> <p>ようするに、各項目が経費でないことを証明する義務が税務署にあるため、その証明コストが大きく、額の小さいものは、プライベートで使われる割合が大きかったとしても、実際には課税することが難しいことが多いのだ。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>現在は「消費したら負け」の時代</h4> <p><br /> 時間リッチな人と、時間プアな人では、お金の価値がまるで違う。</p><br /> <p>たとえば、予算20万円を使った旅行でも、<br /> 半年の休みをとれる時間リッチな人は、<br /> あらかじめじっくりと時間をかけて旅行先の国の地理や歴史や文化の本を読み、<br /> 片言ぐらいには言語を話せるようにし、<br /> ネットで十分な情報を集め、シーズンオフに格安の航空券を使い、<br /> 現地の味のある安宿をぶらぶらと泊まり歩いたり、<br /> 現地の露店マーケットの売り子さんや宿の人と片言で交流したりしながら、<br /> 気に入った小都市に長期滞在したり、現地で友達を作ったりしながら、<br /> ゆったりとバカンスを楽しむことが出来る。</p><br /> <p>一方で、時間プアな人は、予算20万円の旅行でも、<br /> 連続して休みが取れるのはたった7日間で、実質現地で過ごせるのは5日間に過ぎず、<br /> 仕事の疲れもあまりとれないうちに、<br /> 都市や遺跡の歴史的背景も、現地の人々の文化や置かれた政治的立場もろくにわからぬまま<br /> 現地の人との交流もろくにないまま、観光名所をあわただしくまわり、<br /> 高級ホテルにとまって贅沢気分を味わうのが関の山だったりする。<br /> いかにも貧しい旅行だ。</p><br /> <p>また、美味しい料理を作るのでも、<br /> 時間リッチな人は、本やネットでじっくりと時間をかけて、<br /> 最高にオイシイ調理方法を試行錯誤を重ねて研究しながら料理を作れるので、<br /> 同じ材料費でも格段に美味しく食べられる。</p><br /> <p>時間プアな人は、忙しいのでたいして調査もできず、<br /> 加熱時間を絶妙にコントロールして最高にオイシイ野菜炒めを作る方法などを<br /> 極めている余裕などないから、<br /> せっかく高いお金で高級食材を買ってきても、<br /> 味も香りも飛んでしまって、台無しにしてしまったりする。</p><br /> <p>さらに、仕事が忙しくて、食事中まで仕事のことが頭から離れない人は、<br /> 美味しいものを食べても、その価値は半減だ。<br /> ゲームを買っても、それをじっくり楽しむ時間もない。</p><br /> <p>要するに、仕事で忙しいときにはお金を使うのは損なのだ。</p><br /> <p>一方で、いくら時間リッチでも、お金がないと海外旅行もできないし、<br /> 美味しい食材も買えないので、美味しい料理を作るのにも不自由してしまう。</p><br /> <p>だから、仕事でバリバリ稼いでいるときには消費を控えて貯金をし、<br /> あとで時間的な余裕ができてから、貯金を取り崩してじっくりと消費を楽しむのが、<br /> トータルでは、もっとも豊かな生活を楽しむことができる。</p><br /> <p>そして、集中して働いて貯金を積み上げるなら、<br /> 所得税の低いいまのうちであり、<br /> 大増税時代が到来して所得税がバカ高くなったら、仕事をぐっと減らして時間リッチにして、<br /> 貯め込んだお金をじっくり味わって使うのが、<br /> とられる税金を最小化し、得られる楽しみを最大化する方法となる。</p><br /> <p>そうしてみると、いまは、<br /> 「稼ぐが勝ち、消費したら負け」の時代と言える。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>個人間の物々交換は徴税が困難</h4> <p><br /> 法人を介在した取引と異なり、個人間の取引は徴税が難しい。</p><p>個人が年末のお掃除の手伝いとお米10kgを交換したことや、お米1kgとキャベツ5個を交換したことを、税務署が把握するのはとても困難だ。<br /> インターネットで取引相手を探すならともかく、普段からつきあいのあるご近所や、クローズドなSNSで付き合いのある人達と仲間内だけで、現物手渡しで物々交換する分には、税務署がそれを把握するのは、たいてい徴税コスト割れしてしまうので、現実的ではない。</p><p>この手の個人間取引には、以下のようなものが考えられる。</p> <ul> <li>作り置きのお料理を3日分まとめて作り、キッチンとトイレの掃除もやります。</li> <li>ワードとエクセルの使い方を家庭教師します。</li> <li>犬小屋を造ってあげます。</li> <li>ベビーシッターします。</li> <li>写真の撮り方を家庭教師します。</li> <li>庭でとれたジャガイモを一箱。</li> <li>庭でとれたでっかいカボチャ4つ。</li> <li>冷凍ミニトマトと冷凍モロヘイヤおひたしのセット</li> </ul> </div> <div class="section"> <h4>重税国家における負け組は、高所得サラリーマン</h4> <p><br /> 高所得サラリーマンは、会社勤めのため、実際に仕事で使っているものであっても経費で落とせず、本来なら課税されるべきでない必要経費にまで重税をかけられまくることも多く、税負担は実際の税率以上に過酷なものになる。</p><br /> <p>また、高所得サラリーマンは、部署の責任者であることも多く、年に4ヶ月だけ働くような働き方が許されず、労働時間を減らすことで低所得者になって税額を減らすこともできないケースも多いだろう。</p><br /> <p>高所得サラリーマンは、その高所得と引き替えに、プロジェクト全体の責任を負うなど、ストレスも大きいことを考えると、どんどん割に合わない労働になっていく可能性がある。<br /> そして、割に合わないとしても、多くの中高年の高所得サラリーマンは逃げ場がないので、搾取され続けるしかないだろう。</p><br /> <p>もちろん、将来ビッグになろうという野心あふれる若い学生は、重税国家になったら海外留学→海外就職が増えていくだろうが、それによって日本の人材市場が空洞化して国力が衰退するのは何十年も先の話になると思われる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>大増税が行われる可能性がけっこう高い理由</h4> <p><br /> 「税金の無駄遣いを無くせば増税しなくて済む」というのはウソだ。<br /> 無駄な公共工事や天下り法人を無くして捻出できる額はそれなりに大きいけど、それだけで増税を回避できるほど大きくはない。</p><br /> <p>今後高齢化が進むと、高齢者の医療、介護、年金の費用がどんどん増大していく一方、税金を払う労働人口は減っていく。<br /> <b>税金を使う人が増えて税金を払う人が減るのだから、財政が厳しくなるのも不思議はない。</b></p><br /> <p>「経済成長すれば、それほど酷い増税にはならない」というのは、理屈の上では正しいかもしれない。<br /> 「国の抱える借金も、経済成長が続くなら、それほど大きな問題ではない」というのも正しいし、<br /> 「経済成長を促す政策はある」というのも、理屈の上では正しいだろう。<br /> しかし、それらの政策が実行される可能性は低い。<br /> なぜなら、20年続いた長期経済停滞で国民が経済成長を信じなくなったからだ。</p><br /> <p><b>「努力すれば成功する」が、概ね本当か概ねウソかは、状況による。</b><br /> 景気のいい時代が長く続くと、努力が報われない経験が多い人よりも努力が報われる経験が多い人の方が多くなる。<br /> だから、「努力して成功しよう」を正当化しようとする人が多数派になる。<br /> 一方で、不況が長く続くと努力が報われない経験が多い人のほうが、努力が報われる経験が多い人よりも多くなる。<br /> だから、「努力しても成功しない」ことを正当化しようとする人が多数派になる。<br /> なので、20年にわたって経済が低迷した日本では、<br /> <b style='color:red'>「努力しても成功しない」ことを正当化したくてたまらない人が多数派になった</b>。<br /> そして、<br /> <b>経済成長を信じない人は、不況で困窮したら、経済成長よりも福祉の充実による解決を望む。</b><br /> <b style='color:red'>自分以外の人間から重税をとりたて、福祉で自分の実質所得を増やすことを望む。</b></p><br /> <p>それに加え、日本の不幸な人間には、幸福な人間が転落して苦しむのがメシウマだという人が多い。<br /> 高所得者が重税に苦しむようになるのは、まさに他人の不幸は蜜の味だろう。</p><br /> <p><b style='color:red'>「セイフティネットを充実すれば、起業が増え、経済成長が起きる」というのもウソだ。</b><br /> セイフティネットは必要だが、それを整備したからといって起業が増えたりはしない。<br /> そもそも起業してビジネスを創り出せるような人達の多くは、起業に失敗しても転職先を自力で見つけられる人達だ。<br /> 「セイフティネットがないと、起業に失敗したら路頭に迷うから怖くて起業できない」なんてウソっぱちもいいところだ。</p><br /> <p><b style='color:red'>「セイフティネットを充実すれば、消費が増え、景気が良くなる」というのも根拠の怪しい議論だ。</b><br /> いくらセイフティネットができても、政治が流動的な間は、そのセイフティネットがいつまで続くか分からない不安がある。<br /> 後期高齢者医療制度ではないが、政治に振り回されてセイフティネットがぐらついているようでは、安心してセイフティネットによりかかって、手持ちの金を景気よく使ってしまう気にならないだろう。<br /> 「低所得者は消費性向が高いから、低所得者に所得を再分配すれば消費が増えて景気が良くなる」というのもウソだ。<br /> 所得の再分配は必要だが、それは経済成長とは別の話だ。地域振興券の例が示すように、いくら低所得者にお金を配っても、将来に不安があるかぎり、彼らはたいして消費を増やさない。そして、充実したセイフティネットが覆されるリスクが全く感じられなくなるほど政治が安定するのは、いったいどれくらい先のことになるか、まるで見通しが立っていない。<br /> また、<b style='color:red'>年金制度が確実に保証されれば、老人達が貯め込んだお金を安心して使うなんてこともない。</b><br /> 年金が保証されているからといって貯金を使ってしまうと、「何年か後に大きな買い物をしたくなったとき、まとまったお金がないのでそれを買えない悔しい思いをしながら墓の中に入らなければならない」というリスクを抱える。若い人は、どうしても別荘が欲しくなったら、一生懸命働いてお金を稼ぎまくって貯金して夢を実現できるが、老人達は、手持ちの貯金を使ってしまうと、後から欲しいモノができても、若者のように激しく働いて新たに貯金を創り出すことができない。<br /> だから、老人達にとっては、貯金は希望そのものであり、貯金を使ってしまうことは今後生まれる全ての夢を諦めることであり、年金が確実に保証されているかどうかに関係なく、希望=貯金のない余生を送るのはいやなのだ。<br /> だから、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>「セイフティネットが充実すれば、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>老人達が貯め込んだお金を使うようになって、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>景気が良くなる」というのは大嘘なのだ。</span></p><br /> <p>また、「まともな金融政策を行えば、そこまで酷い増税は必要ない」というのも、理屈の上では正しいかも知れない。<br /> しかし、国民の大多数はまともな金融政策を実行する政治家や政党に投票してこなかったし、これからもそれは変わりそうにない。</p><br /> <p>なので、経済学上の正しい理屈はどうあれ、現実的には近い将来大増税が避けられなくなる可能性は十分にあると思われる。<br /> そういう状況では、国民としてどう政治に参加するか、という話とは別に、個人としてこの状況にどう適応するかを考え、来るべき状況変化への準備を今からしておいてもいいだろう。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>高所得者を搾取して遊んで暮らす戦略</h4> <p><br /> 「高所得者に重税をかけると、海外に逃げられてしまう」というのは、<br /> 一部の金持ちのポジショントークに過ぎない側面がある。<br /> 「日本から出る出る詐欺」だ。</p><br /> <p>実際には、<span style='font-size:170%;color:red'>日本の高所得者の多くは、本人の能力も仕事場も日本語経済圏に依存しており、重税をかけられても日本からは逃げられない。</span><br /> 高所得者に重税をかけると海外に逃げ出すのは、将来高所得者になる見込みの大きい才気あふれる若者達でしかない。<br /> 才気あふれる若者達はこれから海外に適応していける柔軟性を持っているが、中高年はそうはいかない。</p><br /> <p>それに加え、<br /> <span style='font-size:170%;'>優秀な若者達が国外に流出しても、すぐには経済には影響しない。</span><br /> そもそも優秀な人材が海外流出すればすぐにでも経済が衰退するという論調自体、<br /> 金持ちのポジショントークに過ぎないところが多い。</p><br /> <p>そもそも、日本の科学技術を支える技術職や研究職におけるエリートはそれほど高所得を得ているわけでもないし、<br /> 上位5%の優秀人材が海外に流出すると、次の5%が二軍から一軍に昇格して穴を埋めるという効果もあるだろうし、<br /> 少ない手取りでもばりばり働くエリートだってそれなりにいる。<br /> だから、優秀人材がかなり流出してしまっても、しばらくの間はけっこう社会はまわってしまうものだ。</p><br /> <p>もちろん、若手の優秀な人材が海外に流出し続ければ、<br /> 世界経済を牽引するようなすごい産業はますます日本語経済圏では生まれにくくなるし、<br /> 世界経済の知識化が進む中で高度人材の流出が続けば、<br /> 長期的には、美味しいフロンティアはほとんど英語経済圏に食われてしまうだろう。</p><br /> <p>しかし、それによって日本の国力が衰退するプロセスは緩慢なものであって、<br /> たとえ最終的に重税高福祉体制が破綻するとしても、それまでには何十年もの長い歳月がかかる。<br /> 実際、共産主義体制ですら破綻するまでに数十年かかったのだ。</p><br /> <p>だから、日本では高所得者に大増税されるというシナリオもありうるし、<br /> そうなったときの個人の適応戦略の一つは、<br /> 重税高福祉体制が破綻するまでの数十年間は、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>日本から逃げられない高所得者から</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>可能な限り多くの富を搾取して</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>その富で豊かに暮らすことだ。</span></p><br /> <p>数十年後に重税高福祉体制が破綻するとしても、それは我々の死んだ後かも知れない。<br /> だとしたら、そもそも破綻したときの準備なんてするだけ無駄だ。<br /> 万一生きている間に破綻したときは生活に困窮してもかまわないと覚悟を決めて、<br /> 破綻までの数十年間を太く短く豊かに暮らすという選択だってある。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>一時的に向上した福祉は、じわじわと劣化していく</h4> <p><br /> 重税高福祉国家の未来がどうなるかは、ある程度スウェーデンが参考になる。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>スウェーデンは国民負担率7割という重税国家にもかかわらず、</span><br /> <span style='font-size:170%;'><span style='color:red'>税収が不足</span>してきている。</span></p><br /> <p>そして財源不足からスウェーデンは福祉がどんどん劣化してきている。<br /> たとえば、医療サービスなどの劣化は深刻だ。しかも、今後ますます酷くなる見込みのようだ。<br /> <a href="http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1606?page=2">http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1606?page=2</a></p> <blockquote> <p> しかし、財政難は医療現場にも押し寄せている。「国は住民への医療サービスを行う義務がある」と法律上は高らかに謳われているものの、実際に医者に診察してもらうまでは一苦労だ。<br />  3歳になった直後、長男が高い滑り台からジャンプし、唇の端をザックリ噛み切ってしまった。ボードセントラーレン(Vardcentralen)という、自治体に属する診療所に連れて行ったが、状態がひどいので総合病院に向かった。<br />  ルンド大学病院へ運んで専門医に診てもらい、切れた唇を縫合するため全身麻酔を行うことになった。長男は飲まず食わずの状態で、痛みに震えながら真夜中まで待たされた。夫が怒りをあらわにして「いつまで待たされるのか」と大声を上げていなければ、もっと時間が掛かっていたはずだ。<br />  病院内のスタッフは、同じ病棟内でも携帯電話で互いに連絡を取り合い、迅速且つ効率よく仕事しているのだが、それでも医師・看護師の不足はスウェーデン医療の深刻な問題になっている。<br />  それに追い打ちを掛けるように、削減項目が1000を超える医療サービスコストの見直しが進められている。一部の総合病院では入院病棟のベッド数が3分の1〜2分の1まで削減され、外来救急は救急車搬送の患者以外を受け容れなくなった。</p> </blockquote> <p><br /> なんでこれほど重い負担にもかかわらず財源不足におちいるかについては、働かずに福祉に寄生して生きる人が多いということと、人材の国外流出が原因ではないかと言われている。</p><br /> <p>日本の場合、高齢化はスウェーデンよりも酷く、政府債務もスウェーデンよりもずっと大きいので、スウェーデンよりもさらに条件は悪い。<br /> 日本では、大増税されても税収のかなりの部分が増え続ける高齢者の医療費や介護費に吸い取られてしまったり、借金の返済に当てられてしまい、福祉へ回されるお金はそれほど大きくならず、福祉はスウェーデンよりも深刻な財源不足に陥るかもしれない。</p><br /> <p>日本も、重税福祉国家になった後、働かない人が増え、才気あふれる若者が国外へ流出していくに従って、ジワジワと国力が衰退し、福祉サービスは劣化していくだろうが、着地点はスウェーデンよりも悪い場所になる可能性がある。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>日本に居続けるのは貧乏くじの可能性もある</h4> <p><br /> だから、人によっては必ずしも日本に居続ける戦略が最適でないケースも多いだろう。<br /> 英語経済圏で自分の居場所を見つけられる才覚と気力のある若者は、いまのうちに英語と専門スキルを磨き、早めに英語圏経済圏に脱出する方が賢い選択である可能性も高い。</p><br /> <p>もちろん、英語経済圏で居場所を見つける才覚も気概もない若者や、年を取って適応力を失った人は選択の余地はないから、劣化していく福祉のなかで、なんとかサバイブする方法を見つけていくしかない。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>貯金の保有には税金はかけられない</h4> <p><br /> せっかくいまのうちから貯金していても、大増税時代になったら、貯金の保有に税金がかかってしまうのではないか、と思う人もいるだろうが、その心配はいらない。<br /> 貯金に税金をかけるのは無理だ。実際、貯金の保有に税金をかけている国は、少なくとも先進国では存在しない。<br /> 固定資産税はあっても、金融資産税というものは、どこにもない。<br /> なぜなら、固定資産は国外へ逃げられないけど、金融資産は国外へ逃げられるからだ。</p><br /> <p>たとえば、100億円の不動産を持っている人がいて、その不動産の保有自体には、固定資産税をかけることができる。<br /> その税額をいくら上げられても、その不動産を持って、国外へ移住することはできない。</p><br /> <p>しかしながら、100億円を現金で持っている人に、その100億円の現金の保有自体に多額の税金をかけたら、その人はその現金と一緒に国外に移住してしまう可能性が高くなる。<br /> 国外に移住しても、国籍が日本である限り資産保有税をかけるような法律にしたら、その人は国籍を変えるだろう。<br /> それを防ぐには、その人が国籍を変えるときに、多額の国籍変更税をかけて財産の大部分を没収してしまうようにすればいいが、それはもはや先進国ではなくなってしまう。そんなことをやっている国は、先進国ではどこにもない。</p><br /> <p>このように、資産の保有そのものには税金をかけるのは困難なので、貯金の保有自体に税金がかかる可能性は低いと思われる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>為替変動リスク</h4> <p><br /> 日本語経済圏が衰退すると、円安が進行して、貯金の価値が目減りしてしまうリスクがある。これに対する対策も、インフレ対策と同じだ。外貨立てて貯金をするようにする。そのころには、その手のサービスがたくさん出回っているだろう。<br /> それにまで課税されるようになったら、金や銀などの小片としてタンス預金しておくことになる。そこまできたら、もはや経済は末期的な状態だろうが。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>相続税を増税されないのか?</h4> <p><br /> 所得税や消費税のようなフローに対する課税を強化しすぎると経済をゆがめてしまうので、ストックに対する課税である相続税を強化するのが、理屈の上では理想だ。<br /> しかし、実際には、高齢者人口が増えていくので、相続税を増税しようとする政党は多くの老人有権者の支持を失うため、相続税増税に実現性がどれだけあるかは疑問なところだ。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-9e940a89" name="f-9e940a89" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">これは、ミクロ経済学の教科書に載っている「税の帰着(tax incidence)」と言われる問題だ。税金は、それを直接支払う人が全額負担するわけではない。価格メカニズムを通して、市場の他のプレーヤーに転嫁される。わかりやすい例が消費税と売上税の違いだ。「消費者が消費をしたらその5%を消費者が税金として支払う(ただし徴収は企業がやる)」場合、その税金は「消費者」が「支払って」いる。一方で、「企業が売上を上げたら企業はその5%を税金として支払う」場合、その税金は「企業」が「支払って」いる。しかし、消費税が上がればその分だけ税込み価格が上がって買い控えが起き、売上が落ち込んでしまうので、企業は税抜き価格を下げるという形で税込み価格を元の値段に近づけなければならず、結果として消費税の一部を「企業」が「負担」せざるをえなくなる。一方で、売上税が上がればその分だけ企業のコストが上がるので、商品の値上げという形で売上税の一部を「消費者」が「負担」することになる。このように、価格メカニズムが作用することにより、「税金を誰が支払うか」に関係なく、消費税と売上税は中長期的には同じものであり、どちらも消費者と企業の両方が負担することになるので、「売上税を払うのは、企業なんだから、結局、株主や経営者の負担が増えるだけで、俺には関係ないな。企業からお金をとるのは良いことだよ」と安心していると、知らず知らずのうちに消費者の負担がどんどん増えていくことになる(ちなみに、この説明で使った消費税や売上税は、いわゆる「付加価値税」のことであり、厳密には付加価値に対する課税であって売上そのものにかかる課税のことではない)。もっと単純な例だと、化石燃料税が上がれば、それを石油会社だけが負担するのではなく、価格メカニズムが連鎖的に機能して、風が吹けば桶屋が儲かる式に、結局は各種の商品やサービスに転嫁され、ガソリンを直接買うことがない多くの一般消費者もそれを負担するようになる。つまり、「自分以外の人間や企業が払う税金ならば、値上げされても自分は困らない」と単純に考えてしまうと結果的に「肉屋を支持するブタ」になるはめになる。ついでに、個人所得税の負担転嫁がどのように起こるかの例を挙げると、たとえば、多業態戦略で美味しい飲食店を次々とプロデュースする企業の、高給取りの腕利き売れっ子フードプロデューサーにかかる所得税率が上がり、追加的に100万稼いだときにかかる税金(限界税率)が50万円→70万円に上がったとすると、100人のフードプロデューサのうち10人ぐらいは労働量を減らしたり、引退の時期を早めたりするかもしれない。追加的な労働に見合った追加的な手取りが目減りするので、割に合わないと考える人が10人に1人ぐらいは出てくるからだ。そうすると、企業では腕利きフードプロデューサの労働力が不足することになる。その場合、企業は他社の腕利きプロデューサーをヘッドハンティングしてくることになったりする。こうして引き抜き合戦がおこると、腕利きプロデューサーの年収は上がり、値上げされた所得税を支払ってでも、割に合う手取りになり、労働量を増やしたり引退の時期を少し伸ばしたりするプロデューサーが増えて、プロデューサ不足は解消されることになる。しかし、引き上げられたプロデューサの年収分は、商品価格の値上げという形で消費者から回収されることになったりするので、結局は消費者も負担することになる。もちろん、複雑な価格メカニズムが作用するので、中長期的には、消費者だけでなく、他の従業員、経営者、株主など、そのお店の利害関係者全てに、負担が分散される。ただし、中長期では弾力的な価格も短期で見ると弾力性が低かったり、短期では価格硬直性があったりするので、短期的には利害関係者のうちの特定セクターだけが負担する形もある。この辺の説明は、<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313524/search-3213-22/" target="_blank">マンキュー経済学〈1〉ミクロ編 </a>の解説が丁寧で分かりやすいので、詳しくはそちらに譲る。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-fad97c28" name="f-fad97c28" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">厳密に言うと、貨幣を介在しない売買であっても税法上定義される「所得」が発生すれば税金がかかることになっているので、貨幣システムの利用というより売買に対して課税されるわけだが、制度上や運用上の制約もあって、実質的にはそれは「貨幣システムの利用料」という概念で近似できる。さらに言うと、税金にはストックに対する課税とフローに対する課税があり、「貨幣システムの利用料」に相当するのは、フローに対する課税となる。ストックに対する課税の例としては固定資産税や相続税がある。フローに対する課税としては消費税、所得税、法人税などがある。</span></p> </div> fromdusktildawn 会社側から待遇改善を勝ち取る交渉テクニック hatenablog://entry/10257846132601979730 2009-10-04T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:41:43+09:00 不況のせいか、長時間&高ストレス労働で身体をこわしてしまう人が増えているようなので、 そうなるまえに、個人で行える待遇改善交渉の事前準備とテクニックを整理してみました。 トピックハイライト 知識もないのに考えても無駄。本とネットで知識をゲットするのが先。 自分1人で考えてると独り善がりになりがち。情報交換&相談できる仲間をゲットするのが先。 素人がヌルいこと考えてても愚かな対応をしてしまう。餅は餅屋。専門家に相談するのが先。 上司や会社側の、どの弱みに、どうつけ込み、どう使いこなすか。 上司や会社側の利害構造を、どう把握し、どうハックするか。 交渉のリスクは他人に押しつけ、自分は安全圏にいて、… <div class="seemore"> <p><br /> 不況のせいか、長時間&高ストレス労働で身体をこわしてしまう人が増えているようなので、<br /> そうなるまえに、個人で行える待遇改善交渉の事前準備とテクニックを整理してみました。<br /> <br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>トピックハイライト</h4> <ul> <li>知識もないのに<b style='color:red'>考えても無駄</b>。本とネットで知識をゲットするのが先。</li> <li>自分1人で考えてると<b style='color:red'>独り善がり</b>になりがち。情報交換&相談できる仲間をゲットするのが先。</li> <li><b style='color:red'>素人がヌルいこと考えてても愚か</b>な対応をしてしまう。餅は餅屋。専門家に相談するのが先。</li> <li><b style='color:red'>上司や会社側の、どの弱みに、どうつけ込み、どう使いこなすか。</b></li> <li>上司や会社側の利害構造を、どう把握し、どうハックするか。</li> <li><b style='color:red'>交渉のリスクは他人に押しつけ、自分は安全圏にいて、その果実だけを収穫する方法。</b></li> <li><b style='color:red'>額に銃口を突きつけられ</b>ながら(=失職→家計破綻)では交渉に<b style='color:red'>勝てるわけがない</b>。会社側の武器を無効化するのが先。</li> <li><b style='color:red'>ヤクザが賠償金を脅し取るときに使う武器</b>が有効。</li> <li><b style='color:red'>上司や会社を、どのような罠に、どうはめるか。</b></li> <li><b>降格&減給を戦略的にゲット</b>する。</li> <li>安いプライドを捨てて親や家族を味方に付ける。親と家族みんなで収入ダウンの覚悟を決めれば、腹を据えて戦える。</li> <li>短中長期の収入プランがないと目先の収入喪失を<b>家族が不安がる</b>。まずは戦略&プランを策定する。</li> <li>不況のどん底で安住の地を探すのは愚策。不況の間だけの一時的な避難場所の確保と割り切る。</li> </ul> </div> <div class="section"> <h4>大前提</h4> <p><br /> 待遇改善交渉はめんどくさいです。<br /> それに個人で会社側に無理に要求を押し通すようなことをやると、たとえ待遇改善を勝ち取ったとしても、やっかいでめんどくさい人間だと誤解(or正解)されたり、職場に居づらい雰囲気になってしまうリスクがあります。<br /> そのリスクを回避しつつ交渉となると、要求を押し通すというより会社側とWin-Winになるような待遇改善交渉をせざるをえませんが、それをやりようのない状況もけっこうあります。</p><br /> <p>なので、まともな労働組合があるのなら、待遇改善交渉は組合に任せておいた方がいいと思います。<br /> あるいは、転職できるならさっさと転職しちゃう方が簡単です。<br /> フリーで食っていける人はフリーになっちゃった方がいいです。<br /> 実家に居候させてもらったり伴侶に養ってもらえる人は、景気が回復するまで家で勉強や資格取得でもしていた方がいいです。<br /> 十分な貯金のある人は、景気が回復するまで貯金を食いつぶしながら職業訓練でも受けていた方がいいです。<br /> 起業して勝算のある人は、起業しちゃった方がいいです。</p><br /> <p>しかし、それらのどれも困難or避けたい事情がある人は、最悪、今の職場に居づらくなってしまうリスクを覚悟で、ダメモトで待遇改善交渉をやってみるというのもアリだと思います。</p><br /> <p>なぜなら、後述するように、<b>ブラック労働環境に居続けるリスクの方が、職場に居づらくなったりドロップアウトしてしまうリスクより大きい</b>ことも多いからです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>まずはブラック職場の情報交換ができるSNSに参加する</h4> <p><br /> ブラックな労働環境と戦うには、具体的な知識と知恵と勇気がたっぷり必要ですが、<b>自分1人で思い悩んでいても知識は増えませんし、知恵も勇気もたかが知れています。</b><br /> なので、まずは各人が得た具体的な知識と知恵を持ち寄って、情報交換することでお互いの知識武装を強化するのが良策です。<br /> それらのための場所としては、サバイブSNSが適していると思います。</p><br /> <p>この際、サバイブSNSが本来何を目的としたSNSであるかは、どうでもいいことです。<br /> 重要なのは、「そこに、実際にブラックな労働環境を経験した人達や、それを切り抜けてきた人達が集まっていて、かつ、それを切り抜けるための情報交換をすることを許容する雰囲気がある」ということです。<br /> <a href="http://survive-sns.jp/">http://survive-sns.jp/</a></p><br /> <p>とりあえず、ここにユーザ登録するのが、最初の一手としてよいと思います。<br /> 登録には3分もかかりません。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>悩むより、本とネットから知識をゲットするのが先決</h4> <p><br /> 「ない知恵を絞る」という表現がありますが、<b>知識のない状態で「ない知恵」を絞ってもろくなものはでてきません。</b>ないものはないんです。</p><br /> <p>だから、悩んでないで、まずは本とネットから知識を得ることが先決です。<br /> たとえば、ネットで検索すれば以下のようなサイトがけっこう見つかります。<br /> <a href="http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/sodansitu/qa/qa_mokuji.html">http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/sodansitu/qa/qa_mokuji.html</a><br /> <a href="http://www6.ocn.ne.jp/~kurouren/sub3.htm">http://www6.ocn.ne.jp/~kurouren/sub3.htm</a></p><br /> <p>また、大きな本屋の、労働トラブルや職場トラブルの本のコーナーに行けば、この手の本が並んでいます。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4406032983/search-3213-22/" target="_blank">労働トラブル相談日誌 この給料、契約と違うじゃん! (単行本)</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4406032983/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec3.images-amazon.com/images/I/5139406T5YL._SL160_.jpg" alt="4406032983" border="0" /></a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>自分で考えるより、専門家に相談するのが先</h4> <p><br /> この手の問題は、素人が自分の頭で考えるだけでは、愚かな行動をしてしまいがちです。<br /> やっぱり、餅は餅屋、まずは専門家に相談しながら対策を練っていく方が良策です。</p><br /> <p>予備知識を仕入れる余裕すらないほどせっぱ詰まった人は、とりあえず電話しちゃってみてください。<br /> <a href="http://www.rodosodan.org/">http://www.rodosodan.org/</a><br /> <a href="http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html">http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html</a></p><br /> <p>もちろん、なんの予備知識もなしにいきなり相談するより、基礎的な知識はあらかじめ自分で勉強し、自分なりに問題点を整理した上で相談した方が、早い段階で踏み込んだ相談ができ、効率がよいです。</p><br /> <p>なので、本とネットである程度情報を仕入れ、自分なりに相談すべき内容をまとめてから、労働相談センター等に相談する余裕があるのなら、その方がいいです。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>有能な社員やムードメーカーを攻略されると、会社は逆らいにくくなる</h4> <p><br /> 他の有能な社員やムードメーカーを味方に取り込むと、<span style='font-size:170%;color:red'>会社のキンタマを握った状態</span>になります。</p><br /> <p>まず、上司や会社は有能な社員に抜けられると大きな痛手なわけで、有能な社員に会社に居着いてもらいたいと切実に思っています。<br /> だから、その有能な社員と仲の良い社員がいたら、会社側はその人と揉めるのを避けようとします。有能な社員に会社の悪口を吹き込まれるのが怖いからです。</p><br /> <p>また、多くの社員の信頼を勝ち得ているムードメーカー的な社員と揉めることも、会社は避けようとします。そういう人と揉めると、会社への疑心暗鬼が社員の間に広まり、他の有能な社員が連鎖的に辞めていったりしかねないからです。</p><br /> <p>なので、会社側に待遇改善を交渉するときには、そういう有能な社員やムードメーカーを味方に引き入れておくことが効果的です。<br /> 会社は有能な社員やムードメーカーを含む人達が待遇改善交渉をしてきたら、<br /> 気軽に<span style='font-size:170%;'>「イヤなら辞めろ」とは言えない</span><br /> からです。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>「会社も上司も揉め事を避けたい」という弱点を人質に取る</h4> <p><br /> 「会社や上司は、従業員と揉めるのを恐れている」という弱点も、交渉のカードとして使えます。</p><br /> <p>会社や上司は、従業員と揉め事を起こしていることを、上司の上司や、他部署や、経営幹部や、取引先や、株主や、投資家や、業界に知られるのを嫌がることが多いです。(既に失うものがほとんどないほど最底辺の中小零細企業や、破綻寸前or崩壊寸前の企業や、既に悪評が立ちまくりでそれ以上評判が悪化しようがないほどブラックな企業や、確信犯の筋金入りブラック企業は別)</p><br /> <p>なぜかというと、ビジネスでは誰もがやっかいごとを避けようとしていて、やっかいごとの可能性が少しあるだけで、念のため別の取引先にしておいたり、投資を控えたり、別の人間を部署の管理者にしたり、採用活動に支障を来したり、他の社員に疑心暗鬼を引き起こして有能な社員に転職されたりということが、よくあるからです。</p><br /> <p>だから、待遇改善のために上司や会社側と交渉するときは、<br /> <span style='font-size:170%;'>「あんた、揉めたくねえんだろw 揉めてることがあちこちに知れ渡ると困るんだろw だったら、オレのいうこときけよ。」</span><br /> という脅迫を、脅迫だという証拠をつかまれないように、それとなく相手に悟らせる方法が効果がある場合があります。</p><br /> <p>ただし、あまり露骨なことをやってしっぽをつかまえられると、自分の立場&キャリア&人脈を汚すことになるので要注意です。<br /> あくまで、「あの人が被害妄想を膨らませただけですよ。私はことを荒立てるつもりは毛頭なく、極力穏便に済まそうと努力したんですよ。」と、交渉が終わったあとに言いつくろえる余地を残しながら、「こいつは本気でやばいことをやりかねない」と交渉相手に思わせるようにします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>汚れ仕事は他人にやらせる</h4> <p><br /> この手の待遇改善交渉を率先してやると、成功しても失敗しても、会社から目を付けられたり、<br /> 他の社員にも、そういう「こすっからい」立ち回りをする油断ならない人間だと思われるので、何かと損です。</p><br /> <p>なので、それと悟られないように、他の社員の不満を煽り、被害妄想を抱かせ、誘導し、<br /> 他の社員に待遇改善交渉をやらせることができれば、それが一番の理想形態です。<br /> そして、他の社員が自ら動き出したら、自分自身は動かず、要所要所で入れ知恵をしたり、誘導したりするようにします。</p><br /> <p>そして、まるで自分は主役ではなく、他の社員が待遇改善交渉をするので、<br /> なんとなく雰囲気に流されていただけの、無害な人物を装っておきます。</p><br /> <p>そもそもこういう交渉は、他の有能な社員にやってもらうのが一番よいのです。<br /> 理由は以下のようなものです。<br /> <br /> </p> <ul> <li>会社は有能な社員を失いたくないので、有能な社員が交渉の前面に立つと会社側も譲歩しがちです。</li> <li>そういう有能な社員は頭が切れるし、リーダー格なことも多いので、不満を持っている社員たちを取り仕切って交渉のまとめ役になることが出来ます。</li> <li>有能な社員は頼られ慣れているので、他人が「僕にはこんな難しそうな交渉はとてもできそうにないんです。あなたにお願いするしかないんです。」と頼ってこられると、損な役回りであることは重々承知していても、ついついいつものクセで頼まれてしまうからです。</li> <li>そういう有能な社員は、最悪、会社と対立してクビになっても、他に転職先が見つかるので、交渉に失敗しても大して痛手ではありません。</li> <li>転職先が見つかりやすい有能な社員はクビがあまり怖くないので、強気で交渉できます。</li> <li>有能な社員ほど仕事が集中しやすいので、長時間労働を強いられて、待遇を改善してもらいたいと思っていることがけっこうあります。</li> <li>有能な社員ほど、上層部とコミュニケーションをとる機会が多く、会社側の事情もよく理解しているので、会社側が譲歩可能な待遇改善案を提案することができます。</li> </ul><p><br /> ただ、一方で、有能な社員ほど経営サイドに近いことが多く、従業員よりも、経営サイド寄りの見方をする傾向もあるし、経営サイドに懐柔されて、寝返られるリスクも大きくなるので、交渉役としてどの社員を焚きつけるかの人選は、状況によっていろいろな要素を天秤にかけながら、総合的に判断することになると思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>上司や会社側を追いつめすぎると危険</h4> <p><br /> 相手の事情を一切無視して、あまりに無理な要求を押し通そうとすると、上司も会社も大出血を覚悟で大なたを振るってくることがあるので、要注意です。</p><br /> <p>とくに下請けの中小零細企業などの場合、そもそも従業員がかなり無理な低賃金&長時間労働をすることでしか採算がとれないような事業構造になっていることがよくあります。<br /> そういう状況で「休みたいときに休める、適切なワークバランス」をごり押ししても、会社側にとっては無理難題としか言いようがなく、そういう場合は、もう、痛手だろうがなんだろうが、何人かの従業員をごっそり入れ替えるしか生き残る道はない、と会社側が決断する可能性があります。</p><br /> <p>こういう状況では、会社がのむことの出来るギリギリの範囲に、待遇改善要求を留めておくしかありません。もしくは、転職するか。<br /> こういう、本来なら何をやっても元々採算の合わない会社が、従業員の低賃金&長時間労働で無理やり経営を維持している場合、待遇改善交渉をするだけ不毛なので、そういう会社は可能な限り早く見捨てた方がいいです。転職先が見つからない場合、失業保険と生活保護で食いつなぐ方がマシなことすらあると思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>会社側にもメリットのある待遇改善要求を出す</h4> <p><br /> 会社側の事情と従業員の待遇改善は、必ずしもトレードオフでもゼロサムゲームでもありません。<br /> 会社側のわずかな譲歩で、待遇が大きく改善することもあります。<br /> そういう、コストパフォーマンスの良い待遇改善なら、会社側も要求をのみやすくなります。</p><br /> <p>というか、実際には、会社側も従業員も両方とも大きく得するような、Win-Winの交渉が可能なことの方がずっと多かったりします。</p><br /> <p>たとえば、不必要に過剰な叱責・パワハラ・セクハラで従業員に精神的ダメージを与える上司や、顧客に安請け合いしてしょっちゅうデスマーチを引き起こす営業や上司や、部下に間違った指示だしをして無駄な仕事をさせる上司を排除することは、会社側とはWin-Winになることが多いです。</p><br /> <p>過剰な叱責・パワハラ・セクハラをすると、利益率が上がるどころか、むしろ部下の生産性が落ちて会社の利益率は下がりますし、デスマーチというのは、徹夜が繰り返されたり、設計ミスが起きてやり直しが発生したりでスケジュールが遅れ、顧客も損失を被るし、経営側としても非能率な赤字プロジェクトになることが多く、誰も得しません。</p><br /> <p>こういう場合、プロジェクトの中の「まともな」人間同士が結託して、上司の上司や、経営幹部や、顧客に根回しして、そういう無能な上司や営業を排除し、まともな人間にクビをすげ替えるのが得策です。</p><br /> <p>多くの場合、これだけで劣悪な労働環境は劇的に改善されます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>有能な上司は特効薬</h4> <p><br /> 世の中的にブラック会社と言われるものの正体は、多くの場合、実際には「ブラック上司」だったり「ブラック社長」だったりすることの方が多いように思えます。会社というより、単にリーダーがブラックなのです。</p><br /> <p>たとえば「優秀な管理職が会社に転職してくる」というだけで、劇的に労働環境が良くなることがあります。<br /> 信じられないぐらいあっさりと、徹夜が減り、休日出勤が減り、トラブルが減り、顧客の心証が良くなり、プロジェクトの雰囲気も良くなります。</p><br /> <p><b>デスマーチが引き起こされるとき、<span style='font-size:170%;color:red'>上司も顧客もヌルい</span>ことが多いです。</b><br /> 顧客は、そもそも顧客自身が何を要求しているのか理解しておらず、<br /> 納品物がかなり出来あがってしまってから要求を行き当たりばったりに変えて<br /> しかも、納期も予算も増やさず、そのしわ寄せが現場の従業員に来ることで、<br /> 劣悪な労働環境が作られたりします。</p><br /> <p>しかし、有能な上司というのは、顧客自身が何をほんとに望んでいるのかを顧客に理解させ、<br /> それを要件定義に落とし込み、顧客が満足し、かつ、コストもかからないような成果物に落とし込んだりします。<br /> 無理なスケジュールを約束してデスマーチを引き起こすようなことも、ゼロにはなりませんが格段に少なくなったりします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>額に銃口を突きつけられながらでは、交渉に勝てるわけがない</h4> <p><br /> 会社側が、有能な社員に辞められたり、従業員と揉めるのを恐れているように、従業員も、<br /> 「失職したら家計が破綻して路頭に迷う。」<br /> ということを恐れています。</p><br /> <p>だから、待遇改善交渉というのは、従業員と会社側がお互い相手の銃口に怯えながらの交渉になります。<br /> お互いがお互いの弱みにつけ込みながら、自分の弱みにつけ込まれるのを嫌がるわけです。</p><br /> <p>だから、これは、相手の弱みを最大限えぐるのと同時に、<br /> 自分の弱みをどこまで無効化できるか、というゲームになります。</p><br /> <p>従業員側の弱みを無効化するには、<br /> 解雇に関する法的&行政的な知識を身につけておくこともありますが、<br /> 究極的には、<br /> 「失職しても家計が破綻しない」<br /> ようにしておくことが最も強力です。</p><br /> <p>これだけで、自分の額に突きつけられた拳銃を取り除くことができますから、<br /> かなり強気で交渉できるようになります。</p><br /> <p>古い企業の中には、このことをよく知っているところがよくあります。<br /> 彼らは、たとえば男性の従業員に、住居をローンで購入してもらい、結婚し、奥さんには会社を辞めて専業主婦になってもらい、子供を作ってもらうと、非常にありがたいと考えていたりします。<br /> 交渉上、有利になるからです。</p><br /> <p>ようするに、従業員は、削減できない固定費があまりに大きい場合、失職した場合の家計破綻リスクが大きすぎて、会社に逆らえなくなるわけです。<br /> 額に突きつけられた銃口にホールドアップし、どんなに劣悪な労働環境でも堪え忍ばなければならなくなるわけです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>有利な立場で交渉できるようにする</h4> <p><br /> 上記を踏まえると、会社側との交渉で有利な立場に立ちたいなら、以下のことが重要になります。</p> <ul> <li>住居を長期ローンで買わない。</li> <li>住居だけでなく、そもそも車などの高額商品をローンで買わない。</li> <li>できるだけ多く貯金を蓄えておく。</li> <li>いざ失職した場合の転職先のツテを、あちこちに作っておく。</li> <li>結婚しても仕事を辞めない異性と結婚するか、いざというときに働いて家計を支えられる異性と結婚する。</li> <li>もしくは、結婚しない。</li> <li>会社からの給料に依存した今の生活レベルへの未練を捨てる。</li> <li>いざとなったら失業保険や生活保護で暮らす覚悟を決める。</li> <li>普段から失業保険や生活保護の有利な受給テクニックを勉強しておく。</li> <li>大幅な収入減になった場合、生活を切り詰めることを家族と話し合って合意を得ておく。</li> <li>最悪の場合、両親の支援を受けられるように、あらかじめ話をつけておく。</li> <li>安い賃貸の部屋に引っ越す。</li> <li>金のかかる趣味(ex.外食グルメ)を控え、金のかからない趣味(ex.料理)に切り換える。</li> <li>少しでも別の収入源を確保しておく。</li> </ul><p><br /> これらをしっかり準備しておけば、<br /> 「交渉に失敗した場合、最悪失職してもかまわない」<br /> という覚悟を持って、交渉に臨むことができるため、強気で踏み込んだ交渉ができるようになります。</p><br /> <p>要するに、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>「オレの武器は、お前に大損害を与えることが出来るが、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>お前の武器はオレにはたいして効果はない。」</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>という、有利な立場で交渉できる</span><br /> わけです。</p><br /> <p>交渉というのは、たいてい、<br /> 「いつでも交渉の席を立てる」<br /> 方が圧倒的に有利に進めるものなので。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ブラック労働環境に居続けることのリスク計算を間違えると酷いことになる</h4> <p><br /> 万一、ブラック労働環境のせいでうつをこじらせてしまうと、キャリアが深刻なダメージを負い、<span style='font-size:170%;color:red'>生涯賃金が激下がり</span>しかねません。<br /> うつをこじらせると、何年もの間「イザというときの無理」ができなくなることがあるからです。<br /> イザというときに無理のきかない人は<span style='font-size:170%;color:red'>労働者としての市場価値が大きく下がります</span>。</p><br /> <p>ごく健全で快適な労働環境であっても、なにかの手違いでトラブルが起こることを完全に防ぐことは不可能です。<br /> 万一トラブルがあったとき、無理してでもなんとか辻褄を合わせることのできる人でないと、<br /> 会社は重要な仕事を安心して任せることができません。<br /> 「イザという時無理ができる能力」というのは極めて重要な保険なのです。</p><br /> <p>なので、うつをこじらせて無理の利かない身体になってしまうと、その保険がなくなってしまい、<br /> 労働者としての価値が大きく毀損されてしまうのです。<br /> そうなると、景気が良くなってもなかなか良い仕事はもらえなくなったり、<br /> 年収も大きく下がることになりかねません。</p><br /> <p>その意味で、ブラック労働環境で働き続けるということは、極めて大きなリスクを抱えた、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>非常に危ないギャンブルです。</span></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>ドロップアウトした方がむしろリスクは小さくなることも</h4> <p><br /> 「今の会社を辞めてしまうと、いまよりもずっと低い年収のつまらない職しか得られないのではないか。」<br /> と不安がってブラック労働環境にいつまでも居続ける人がいます。<br /> 要するに、ドロップアウトが怖くて、ブラック労働環境にしがみついちゃう人達です。</p><br /> <p>しかしながら、長時間&高ストレス労働でうつをこじらせるリスクと、<br /> ドロップアウトしていまより年収や仕事内容のランクが下がるリスクを比べると、<br /> どちらのリスクが大きいのか、冷静に比較分析して、天秤にかけた方がいいと思います。</p><br /> <p>そもそも、ブラック労働環境に居続ける人は、ブラック労働環境にいるリスクを過小評価し、<br /> ドロップアウトするリスクを過大評価する傾向にあるように思えます。</p><br /> <p>実際には、ドロップアウトしちゃっても、そこそこの年収と、そこそこの仕事で、それなりに幸せそうに暮らしている人達は結構います。<br /> ブラック労働環境のせいで、うつをこじらせて、結局退職してしまった人達より、はるかに幸せそうだったりします。<br /> 安い年収だと、それほどものすごい成果を期待されることもなくなり、ずいぶんとプレッシャーが少なくなるというのも原因の一つだと思います。</p><br /> <p>だから、闇雲にドロップアウトを恐れてブラック労働環境に居続けるより、<br /> <span style='font-size:170%;'>「明日は明日の風が吹く」</span><br /> と、軽いノリでドロップアウトしてしまった方が、賢い選択であることも多い、<br /> ということは、念頭に置いて判断すべきだと思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>武器を増やす</h4> <p><br /> 待遇改善交渉をするときは、武器は多ければ多いほどいいです。<br /> しかし、単に闇雲に武器を増やせばいいというものでもなくて、強力な武器を優先してそろえておくのが吉です。</p><br /> <p>ざっと思いつくところでは、以下のものがあります。</p> <ul> <li>診断書</li> <li>メール</li> <li>作業記録</li> <li>ICレコーダー</li> </ul> </div> <div class="section"> <h4>ヤクザが賠償金を脅し取るときに使う武器</h4> <p><br /> やはり、一番強力な武器は診断書だと思います。<br /> 劣悪な労働環境にいると、ストレスから不眠症になったり、うつになったりする方がいますが、<br /> そのときこそ、最強の武器を手に入れるチャンスです。</p><br /> <p>その場合、できるだけ速やかに心療内科等に行き、治療を受けると同時に、診断書をゲットするようにした方がいいと思います。<br /> 診断書は、具体的な被害があったことを証明する強力な武器になりますから。</p><br /> <p>ヤクザが相手に殴らせておいて、カモの家に損害賠償を請求しに乗り込むときも、診断書を武器として使いますよね。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>上司を罠にはめる</h4> <p><br /> 上司を罠にはめるために最も効果的なツールは、メールだと思います。<br /> セクハラやパワハラをする上司がいたら、その上司がメールでセクハラやパワハラをするように、巧妙にし向ける方法があります。<br /> このとき、こちらが変なメールを出して挑発したなどの証拠を残さないようにします。上司だけが一方的にメールでパワハラしたりセクハラするようにし向けることが肝心です。<br /> 特に、女性の部下と男性上司の組み合わせの場合、誰の目にも言い訳のしようのないヤバイメールになることが珍しくなく、この方法は効果的です。</p><br /> <p>上司を罠にかけようと待ちかまえていると、<br /> マヌケな上司がセクハラメールを送ってくるたびに、小躍りしたくなるほど嬉しくなったりするかもです。<br /> せっかく診断書までもらっておきながら、うつが治ってしまうかも知れません。</p><br /> <p>とくにセクハラの場合、このメールは、いろいろ使いやすい武器です。<br /> 上司の上司や経営幹部に根回しするときも、言い訳のしようがないヤバイメールに見えますので、そのメールをプリントアウトしたものを根回しの場所に持っていけば、相手の顔色がみるみる変わっていくのを鑑賞して楽しむことが出来たりします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>記録する</h4> <p><br /> 普段から仕事の開始終了時刻は、分単位で精密に付けておくべきです。<br /> ブラックとまではいかなくても、少しでもきつい状況になったら、精密な記録は絶対にやっておいた方がいいです。<br /> また、上司からの作業指示や、自分が行った作業内容も、無理のない範囲で、できるかぎり細かく記録しておきます。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>裁判に限らず、あらゆる交渉の席では、具体的で精密で正確な数字を語る人間の言葉の方が、<span style='color:red'>圧倒的な説得力</span>を持ちます。</span><br /> 記録があれば、労働基準監督署に訴えるときも有利になりますし、訴訟のときも有利になります。</p><br /> <p>また、上司の上司に根回しをするという局面においても、上司の上司がはじめから理屈抜きで上司の方を信用して、はなっから従業員を潰しにかかっているときは戦法を変えなければなりませんが、常にそんな状況ばかりとは限りません。<br /> 上司が、上司の上司に取り入って誤魔化すのがいくらうまくても、上司の出した愚かな指示のおかげで現場が無駄な仕事をして、会社に損害を与えていることが、精密で具体的な証拠によって裏付けられた場合、会社を守りたい上司の上司が、上司を切る決断をする、というのも、十分にありうるシナリオだとおもいます。</p><br /> <p>このように、作業記録を残しておくことは、いろんな局面で、有効な武器となります。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ICレコーダー</h4> <p><br /> もちろん、同意を得て録音をするなどということは現実的ではありませんが、<br /> 隠し録音でも十分にいろんな局面で武器となると思います。</p><br /> <p>まず、上司の上司や会社の幹部に根回しするときも、ICレコーダーからセクハラ発言のうごかぬ証拠が飛び出してきたら、強力な説得力を持つようになります。<br /> そもそも、会社の幹部は、この音声ファイルが会社の外部に漏れたらと考えると気が気ではないでしょう。</p><br /> <p>もちろん、これもいろんな局面で使うことの出来る強力な武器です。</p><br /> <p>そして、これを使うと、相手から決定的な一言を巧妙に引き出すのが楽しくてたまらなくなります。</p><br /> <p>ただ、問題は、隠し録音がばれるリスクがあるということです。<br /> 隠し録音をするときは、十分に注意してやった方がいいと思います。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013UCHWA/search-3213-22/" target="_blank">最長71時間録音可能!【ペン型ICレコーダー】</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013UCHWA/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec3.images-amazon.com/images/I/21H5pZateLL._SL160_.jpg" alt="B0013UCHWA" border="0" /></a></p><br /> <p><a href="http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/0aea6446.aba3f348/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2fautoland%2f721551%2f1984560%2f1984562%2f%231544042" target="_blank"><br /> 腕時計型ICレコーダー</a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>戦略的に降格&減給をゲットしにいく</h4> <p><br /> 無理な長時間労働やサービス残業の究極的な原因が、<br /> 「給料が高すぎるために、そういうブラックな労働をしてもらわないと、会社の採算が合わない」<br /> というものであるケースがあります。</p><br /> <p>実際、過去にいろいろ偶然が重なって手柄を立てて会社側に実力以上に評価されてしまい、実力以上に昇進&昇給してしまったために、ブラック労働しないと採算が合わなくなってしまっている、というケースです。</p><br /> <p>こういうケースでは、会社側が降格&減給すると本人がプライドを傷つけられてモチベーションダウンしてしまうので、会社側も降格&減給しにくく、ひたすら無茶なブラック労働をさせて収支の辻褄を合わせる、ということがずるずると続き、やがては、その人が負担に耐えきれなくなって、鬱になったり、身体をこわしたりして退職していったりします。</p><br /> <p>こういう罠にはまってしまった場合、つまらないプライドは捨てて、自ら会社側に降格&減給を申し出る方が、結局は不幸にならずに済むこともあります。<br /> いったん鬱になってしまうと、何年も引きずるケースもあって、キャリアが台無しになってしまいかねません。<br /> それよりも、自ら降格&減給してもらって、それと引き替えに、長時間労働もサービス残業もなしにする、という交渉をした方が賢いケースがあります。もちろん、上司や会社次第なので、ケースバイケースですが。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>短中長期の収入プランを作っておく</h4> <p><br /> 「交渉のなりゆきによっては失職する可能性があるので、<br /> 家賃の安い場所に引っ越すなど、生活コストの削減に協力して欲しい」と家族を説得するとき、<br /> まったく将来の見通しを示さないまま、<br /> 「失職した場合に生活がどうなるか分からない」<br /> というのでは、家族は不安がって、そんな危ないことはやめてくれと言うかも知れません。</p><br /> <p>あるいは、独身の人が、両親に対し、<br /> 「交渉のなりゆきによっては失職する可能性があるので、<br /> 失職した場合、実家にしばらく居候させて欲しい。」<br /> と交渉する場合、<br /> 「それで辞めてどうするつもりなの?」<br /> という両親の不安に答えることができなければ、協力を得にくい場合があります。</p><br /> <p>なので、両親や家族に協力を仰ぐ前に、<br /> 短期、中期、長期の収入プランを立てておくべきだと思います。</p><br /> <p>たとえば、まず、短期的には失業保険で食いつなぎながら、<br /> 家賃の安いところに引っ越し、転職先を探しつつ、キャリアアップのための勉強や資格取得をする。<br /> 失業保険が切れた後は、貯金を取り崩しながら、職業訓練校に通うなり、キャリアアップの勉強なりをしつつ、<br /> やはり転職先を探す。<br /> そうしているうちに、景気も回復して求人も増えるだろうから、就職も決まるだろう。<br /> 生活コストは十分に抑えてあるし、貯金もこのくらいあるので、<br /> 景気が回復するまでは十分に耐えられる。<br /> などなど。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>不況の間だけの、一時的な避難場所と割り切る</h4> <p><br /> 不景気の時に見つかる転職先なんて、どこもかしこもブラックだらけで、<br /> まともな職場なんてろくにありません。</p><br /> <p>なので、不況の時の職探しは、何年も働けるような安住の地を探すのではなく、<br /> 不況の嵐が吹き荒れている間だけの、一時的な避難場所と割り切って探すくらいでちょうどよいかと思われます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>景気の良いときだけ働く</h4> <p><br /> そもそも、不況になると一気にブラック化する職場が増えるのですから、<br /> 不況で職場環境が劣悪になってきたら、さっさと辞めてしまい、<br /> たまにフリーランスで細切れの仕事でもやりながら、<br /> 基本的には貯金を食いつぶしながら、勉強したり遊んだりしながら優雅に過ごし、<br /> 景気が回復するのを待つ、というスタイルも解決方法としては、理にかなっていると思います。</p><br /> <p>これを確信犯的に実行するために、<br /> 景気の良いときも、家賃の安い部屋で低コストな生活をして、<br /> 給料の大半を貯金して、ひたすら貯金を積み上げるようにします。</p><br /> <p>つまり、景気変動に合わせて、ひたすら働いて貯金を積み上げる時期と、<br /> 貯金を取り崩しながらのんびりブラブラしている時期を交互に繰り返すわけです。</p><br /> <p>極端な場合、景気が悪い間は、生活費の安い国でブラブラ遊んでいる、という手もあります。<br /> 何年か前に私がネパールのポカラに行ったときは、たしか一泊2ドルという看板の出ていたドミトリーがありました。<br /> また、その近所の日本食屋に言ったら、日本のマンガなどが散乱していて、日本語がいろいろ書き込まれた訪問帳などがあり、現地で安く長期滞在している日本人のたまり場になっているようでした。</p><br /> <p>そもそも、必死こいて自力で劣悪な労働環境と戦うこと自体、<br /> あまりスジのよい方法じゃないです。</p><br /> <p>究極的には、劣悪な労働環境と戦う努力自体を必要なくしてしまうのが、<br /> もっとも賢い戦略なのではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>獲得した権力をどう行使するか</h4> <p><br /> 上記のテクニックで、会社側の弱みを握ったり、会社側が逆らいにくい状況を作ると、ある種の権力を握った状態になります。<br /> ひとたび権力を握ると、それを使って、いろいろな局面で待遇改善を行うことが出来ます。<br /> 以下、待遇改善行動の具体例に、軽く触れてみます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>無理な約束はしない</h4> <p><br /> 基本的には、毎日定時に帰っても終わる分量の仕事しか引き受けないようにします。<br /> 上司が、毎日定時に帰っていては終わらない分量の仕事を要求してきたら、量を減らすか、納期を延ばすように交渉します。<br /> 「残業すれば出来るだろ?」とごり押ししてきたら、<br /> 「予想外のトラブルが起きたときのために、バッファを見ておくべきです。<br /> はじめから残業や休出前提でスケジュールを組んでおいて、トラブルが出たら、納期に間に合わず、お客さんに迷惑をかけることになります。万一のトラブルに備えて、十分に余裕をもったスケジュールにすべきです。」<br /> などと正論を述べて、理屈でぐいぐい押していきます。<br /> 「他のヤツだったら、この仕様とこのスケジュールでも納期に間に合う」<br /> とか言ってきたら<br /> 「じゃあ、その人に頼んでください。私は責任持てません。」<br /> と、はねつけます。</p><br /> <p>そのようにして、十分に余裕を持った仕事量と納期で仕事を引き受け、<br /> 実際になんかのトラブルが起きたら、残業や休日出勤をして納期に間に合わせます。<br /> そして、<br /> 「余裕をもったスケジュールを設定していたから、予想外のトラブルにもかかわらず、納期に間に合ったんですよ。<br /> 最初からギリギリのスケジュールにしていたら、残業や休出をしても納期に間に合わず、<br /> お客さんにも会社にも大損害をもたらしていたところです。」<br /> ということを、部下、同僚、上司、上司の上司を含めて多くの人にアピールし、認識させ、<br /> 以降も、余裕をもったスケジュールでしか仕事を引き受けない、ということの正当化を徹底するようにします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>降格、減給、閑職を恐れない</h4> <p><br /> 上司の要求をはねつけ続けると、上司は面白い仕事を回してくれなくなったりします。<br /> また、減給されたり、降格されたりすることもあると思います。</p><br /> <p>しかし、それらを恐れてはいけません。<br /> いくら面白くてやりがいのある仕事を回してもらえても、無理な納期を約束して、無理な長時間労働をしたあげく、うつ病になったりしたら、何年も引きずることになります。<br /> それよりも、不況の間だけだと割り切って、つまらない仕事を淡々とこなして、毎日定時で帰り、家に帰ってからキャリアアップのための勉強でもしていた方が、長期的に見て得です。</p><p>いったん上司から融通の利かない人間だと思われると、基本的には出世はないと思った方がいいです。<br /> なので、景気が回復してきたら、精力的に転職先を探すようにします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>無駄な責任感を捨てる</h4> <p><br /> 「自分の担当するプロジェクトの責任があるから辞められない」という人がよくいますが、<br /> たいていは、<span style='font-size:170%;color:red'>それは単なる妄想です</span>。<br /> 実際には、あなたの代わりなどいくらでもいます。<br /> 首相ですら、辞めても代わりはいます。</p><br /> <p>辞めたければ、明日から職場に行かなければいいだけです。<br /> 究極、引き継ぎなんてしなくていいです。<br /> あなたが抜けたためにそのプロジェクトが納期を守れなかったとしても、崩壊したとしても、<br /> 会社やお客さんは、一時的には損失が出て困るかも知れませんが<br /> あなたが抜けた穴は、組織がどこからか人を引っ張ってきて、なんとかしてしまうことが多いです。<br /> そもそも1年たったら思い出すことすらしなくなったりします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>おしまい</h4> <p><br /> 他にもいろいろありそうですが、なんだか書くのに飽きてきたので、この辺でおしまいします。<br /> Good Luck!</p> </div> </div> fromdusktildawn 人類史上何度も起きた、クソ労働環境の劇的な改善の原因 hatenablog://entry/10257846132601979741 2009-09-28T00:00:00+09:00 2023-01-13T12:05:49+09:00 積み上がっていく仕事の山、長時間労働、サービス残業、休日出勤、終わりの見えない仕事。。。 日本の劣悪な労働環境はここ20年ぐらい、いっこうに改善される兆しが見えず、 いまこの瞬間も、鬱病患者と自殺者を量産し続けています。 このクソな労働環境を改善するには、いったいどうすればいいのでしょうか? 実は、最悪のクソ労働環境が劇的に改善される事態は、 人類史上、何度も何度も起こってきました。 どれも、ほとんど同じパターンです。 ここでは、その一つとして、かつてヨーロッパ大陸全域で起こった大規模な労働環境革命を取り上げてみます。 それは、まさに歴史の転換点でした。 最悪のクソ労働環境が劇的に改善し、 労… <div class="seemore"> <p><br /> 積み上がっていく仕事の山、長時間労働、サービス残業、休日出勤、終わりの見えない仕事。。。<br /> 日本の劣悪な労働環境はここ20年ぐらい、いっこうに改善される兆しが見えず、<br /> いまこの瞬間も、鬱病患者と自殺者を量産し続けています。</p><br /> <p>このクソな労働環境を改善するには、いったいどうすればいいのでしょうか?</p><br /> <p>実は、<span style='font-size:170%;'>最悪のクソ労働環境が劇的に改善される事態は、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>人類史上、何度も何度も起こってきました。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>どれも、ほとんど同じパターンです。</span></p><br /> <p>ここでは、その一つとして、かつてヨーロッパ大陸全域で起こった大規模な労働環境革命を取り上げてみます。<br /> それは、まさに歴史の転換点でした。</p><br /> <p>最悪のクソ労働環境が劇的に改善し、<br /> 労働者の地位は飛躍的に向上し、<br /> 人々の生活は見違えるように豊かになったのです。</p><br /> <p>いまから千年ぐらい前、<br /> ヨーロッパ大陸の大部分が、夜のような森に覆われていた時代にそれは起きました。</p><br /> <p>労働基準法どころか、人権すらなかった時代に、<br /> 彼らは、いかにしてこの歴史的大偉業を成し遂げたのでしょうか?</p><br /> <p>当時、労働人口の9割が農業労働者でした。</p><br /> <p>当時の農民の待遇は、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>控えめに言って、最悪のクソ労働環境でした。</span></p><br /> <p>農民は、自分の経営する農地での労働の他に、領主直営地での労働を強制されていました(賦役労働)。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120450" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120450.jpg" width="321" height="379" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>この賦役労働は、領主直営地での農作業に留まらず、領主の屋敷の建築・修理・警備、繊維製品や木工品、パンやビール、ワインの製造にまで及びました。</p><br /> <p>しかも、領主に納める賦課租(税金)や賦役労働は全てが事前に決められているわけではなく、<br /> 領主の都合で好き勝手に徴発されました。<br /> せっかく一生懸命農作物を育てて収穫しても、領主の勝手な都合や気まぐれでごっそり持って行かれたりすることがよくあったのです。</p><br /> <p>「自由で独立した労働者が領主との対等な契約を結んで労働している状態」と、<br /> 「奴隷的な労働をさせられている状態」の違いは、<br /> 納める税金や賦課労働の内容が事前に契約によって決められているか否かにあります。</p><br /> <p>その意味で、彼らは法的には自由民のケースもありましたが、<br /> 実質的には奴隷的な労働をさせられていたと言えます。</p><br /> <br /> <p>ここには、<span style='font-size:170%;'>現代日本のクソ労働環境と同じような構造がありました。</span><br /> 現代の欧米の会社では、ジョブディスクリプションによって、仕事の内容や範囲が事前に定められていることが多く、その範囲を超えて仕事を押しつけられることはあまりありません。<br /> 従って、現代の欧米の労働者は定義上、「自由な労働者」と言えます。</p><br /> <p>ところが、日本のクソ労働環境では、仕事の範囲が事前にはっきり決まっておらず、会社側の都合で好き勝手に仕事を押しつけられてしまうことがよくあります。<br /> これは、1000年前のヨーロッパの農民が領主の都合で好き勝手に労働させられていたのとよく似た構造であり、法律上は会社と対等な契約を結んだ自由な労働者ではあっても、実質的には奴隷的な労働という側面があります。</p><br /> <br /> <p>ところが、あることが原因で、ヨーロッパの農民の待遇が劇的に改善します。</p><br /> <p>それまで領主の好き勝手に労働させられていた農民が、<br /> 領主からの賦役労働を免除されるようになりました。</p><br /> <p>しかも、領主の勝手な都合で収穫物を持っていかれることもなくなり、<br /> 事前に定められた契約通りの定率や定量の税だけ納めればいいようになりました。</p><br /> <p>農民の社会的&法的地位は、革命的に向上したのです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>いったい何が起こったのでしょうか?</span><br /> <span style='font-size:170%;'>いかにして彼らはこの好待遇を勝ち取ったのでしょうか?</span></p><br /> <p>ヨーロッパ大陸全域の農民が一致団結して、領主と交渉したのでしょうか?<br /> いえいえ、いくら交渉したところで、そんな領主にとって都合の悪い条件を、領主がのむわけがありません。</p><br /> <p>それでは、農民達が武装蜂起して革命を起こしたのでしょうか?<br /> いえいえ、そのころの農民と領主の軍事力の差は圧倒的で、武装蜂起で待遇改善を勝ち取るなど、とうてい出来るような力関係ではありませんでした。</p><br /> <p>キリスト教の指導者が、領主に愛の精神を説き、もっと慈悲深くなりなさいと指導したのでしょうか?<br /> いえいえ、むしろ、教会や修道院が領主として農民に奴隷的労働を強制するのはよくあることでした。<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>愛や友愛がクソ労働環境を改善したわけではなかった</span>のです。</p><br /> <p>クソな労働環境文化が、なぜか突然、消え去ったのでしょうか?<br /> もちろん、クソ労働環境の原因の一つはそういう労働文化だったでしょう。<br /> 領主も農民も、そういうクソ労働環境を当然のこととする労働文化を内面化しており、領主は農民を奴隷のようにこき使うのが当然と考え、労働者にはそれを受け入れてしまう奴隷根性が染みついていたのでしょう。<br /> まるで、現代日本のクソ経営者と社畜たちのように。<br /> しかし、<span style='font-size:170%;'>クソ労働環境<span style='font-size:170%;color:red'>文化</span>など、<span style='font-size:170%;color:red'>経済</span>的な前提が変われば、吹き飛んでしまうものなのです。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>そんなことは、人類史上、何度も何度も起こってきたことです。</span></p><br /> <br /> <br /> <p>実は、ヨーロッパの農民の待遇を劇的に向上させた原因は、<br /> 大開墾運動でした。<a href="#f-043d084b" name="fn-043d084b" title="ブコメで黒死病によってヨーロッパの人口が激減したことが原因との指摘がありましたが、大開墾運動によって農民の待遇が改善したのは、黒死病による人口減が起こる何百年も前のことです。">*1</a></p><br /> <p>領主達は、自分の所領の森を切り開き、畑にし始めました。<br /> 森を切り開いて畑にするには、人手、すなわち労働力が必要です。</p><br /> <p>そこで、領主達は入植者を募集しました。<br /> ところが、現在と待遇が同じであれば、<br /> わざわざ新しい開墾地に「転職」する理由がありません。<br /> 待遇が変わらないのであれば、わざわざ今までの生活を捨て、苦労して森を切り開いて畑をつくるなんてバカバカしいので、それでは人は集まりません。</p><br /> <p>そこで、領主はいままでよりもずっと有利な条件で入植者を集めることにしました。<br /> 具体的には、賦役労働はなく、定率や定量の税だけ納めればいい、というような条件でです。</p><br /> <p>こうして、森が切り開かれ、新しく畑が作られると、領主の収入は増えました。<br /> 農民も、いままでよりもずっとよい待遇になったので、幸せになりました。<br /> 収入が増え、生産性も上がり、生活は豊かになり、人口も増えていきました。</p><br /> <p>そうしたら、その成功を見た他の領主達が、同じことをやり出したのです。<br /> すなわち、好待遇で入植者を募集し、どんどん森を開墾し始めたのです。<br /> これが、ヨーロッパ大陸全域へ拡大していきました。</p><br /> <p>ここで重要なのは、近隣の古い村落の農民が、その好待遇に釣られて流出し始めたという点です。<br /> これに危機感を感じた領主達は、農民の流出を防ぐため、古い村落の農民にも、同じ待遇を与えなければならなくなりました。<br /> 領主と農民の間の権力ゲームにパワーシフトが起きたのです。</p><br /> <p>こうして、開墾地だけでなく、ヨーロッパ大陸全域の農民の待遇が劇的に改善し、<br /> 最悪のクソ労働環境がみちがえるように改善し、<br /> ついでに、人類史的な大規模森林破壊が起こり、<br /> ヨーロッパ大陸を覆っていた夜のような森は、ずたずたに破壊されて消えていったのです。<br /> ヘンゼルとグレーテルや眠れる森の美女や森の精霊達の世界も消えていったのです。</p><br /> <br /> <br /> <p>結局の所、農民の待遇を革命的に改善した原因は、開墾という新規ビジネスの立ち上げが創出した雇用であり、人手不足であり、労働力の需給バランスの変化でした。<br /> 開墾という新規ビジネスの立ち上げを、ヨーロッパ中の領主が一斉に始めたために、ヨーロッパ中が人手不足になったのが原因だったのです。</p><br /> <p>もちろん、これはなにも1000年前に一度起きただけのことではありません。<br /> 人類の歴史において、何度も何度も繰り返し起きてきたことです。<br /> 新規ビジネスが次々に立ち上がり、人手不足が起きるとき、労働者の待遇が改善するのは、人類の長い歴史において、何度も何度も起きて来たことなのです。</p><br /> <p>日本の高度成長期に労働者の待遇が劇的に向上し、多くの日本人の年収が文字通り倍増したのも、新規ビジネスが次々に生まれ会社が成長し、人手不足が起きたからなのです。</p><br /> <p>もちろん、現代日本において、クソな労働環境を改善するには、労働基準監督署の取り締まりを強化することは必要ですし、労働規制の強化が有効な部分もあるでしょう。</p><br /> <p>しかしながら、<span style='font-size:170%;color:red'>労働規制を強化しさえすればクソ労働環境が改善される、という考えはヌルい</span>ように思われます。<br /> たとえば、現役霞ヶ関官僚のbewaad氏が、この問題について以下のように指摘しています:<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080913/p1">http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080913/p1</a></p> <blockquote> <p>たとえば偽装請負問題について、派遣規制がそれなりのものであったからこそ請負という抜け穴を使われたわけで、派遣分野についての是正措置は十分には効を奏しませんでした。では請負の穴をふさげばよいのかといえば、もちろんふさがないよりはふさいだ方がいいですが、すべての穴をふさげるわけでもなし、すべての穴をふさごうとすればするほど、一般的には行政の力を強くしすぎたり、適切でない手法による規制が混じってしまったりする可能性が指数関数的に高くなっていきます。<br /> 是正措置の実効性を挙げるとともにそうした副作用の可能性を許容範囲に抑制するためには、労働市場の需給バランスを改善することこそが「真っ先にやるべきこと」ではないかというのがwebmasterの管見です。</p> </blockquote> <p>要するに、規制を強化すると、規制の抜け穴を使って商売をする人が現れ、その抜け穴を塞ぐためにまた別の規制が必要になり、またその規制の抜け穴を塞ぐためにさらに別の規制が必要で。。。と、抜け穴を見つけ出して商売する人と、抜け穴を塞ぐ規制の不毛ないたちごっこが続き、穴のない労働規制を追求すると規制はどんどんふくれあがっていってしまうのです。</p><br /> <p>そして、規制を作るときは、その規制が民間の経済活動を阻害しないように注意深く規制を設計する必要があります。しかしながら、民間の経済活動がどのような展開になり、どのようなことが障害になりうるのかは、全てを予測するのが困難なことも多く、<span style='font-size:170%;'>抜け穴を塞ごうとして規制を作れば作るほど、誤って民間の経済活動を阻害して経済を駄目にてしまう確率が高くなってしまう</span>のです。そして、ミスが起こると<span style='font-size:170%;color:red'>官製不況</span>などと大衆に叩かれるのですから、官僚の方は、たまったものではありません。官僚の人達だって、好き好んで間違った規制をして官製不況を作り出したのではなく、そもそも安易に規制を増やせと大衆が要求するから、官僚の人達が徹夜続きの朦朧とした頭で規制案を作り、経済への影響を読み切れずにミスが起きて官製不況を生み出してしまうのです。</p><br /> <p>これは、個人所得税の累進税率の上限が、世界中何処でも、多くてもせいぜい50〜60%ぐらいで頭打ちで、それほど大きな差がない理由とよく似ています。<br /> 世界に冠たる重税国家スウェーデンですら、所得税の最高税率は日本と大してかわりません。<br /> なぜかというと、累進税率が高くなればなるほど、ビジネスを拡大するより税体系の抜け穴を探して節税努力をする方が、実質所得が増えるようになるからです。そこで、その抜け穴を塞ぐために別の法律を作ったり徴税ルールを変えたりしても、また別の抜け穴を探す、といういたちごっこが生まれます。こうしてどんどん法律を作っていくと、どこかで手違いが起こってまっとうなビジネスまで阻害してしまったり、ろくでもない副作用が生まれる確率はどんどん高くなっていきます。たとえば、ある支出項目を経費として認めると、それを利用して見かけ上の所得を大きく減らすことで、所得税逃れをする人が出てきたとします。この抜け穴を塞ぐため、その支出項目を経費と認めないようにルール変更したとします。すると、副作用として、それが経費として落とせないと商売がなりたたないようなビジネスを潰してしまうことになるのです。<br /> 高額所得者の場合、もともとの所得が大きいですから、仮に税率が低所得者と同じだったとしても、かなり高額な税金を支払うことになります。実際にはその上さらに税率まで上がるわけですから、納める税金の額はかなり巨大になります。そうなると、膨大なお金と時間をかけて抜け穴を探しだし、抜け穴を利用して節税したとしても、ペイしてしまうようになってしまうという背景もあります。</p><br /> <p>労働規制の強化もこの構造にそっくりで、規制による企業活動の阻害が大きければ、その規制を遵守するまっとうな企業より、抜け穴を探してビジネスする企業の方が、競争上有利になります。だから規制が強すぎると、本来の企業活動よりも抜け穴を探し、抜け穴を利用するシステムを作り上げることに経営資源を投入する方が企業の利益が増えるようになってしまいます。しかし、こんなことに資源が投入されても、労働者も消費者も豊かになりません。むしろ、国全体が貧しくなります。</p><br /> <p>結局の所、<span style='font-size:170%;'>法規制と役人の仕事を無制限に増やし続けることによって抜け穴をふさぎ続ければ、いつかはクソな労働環境を一掃できる、という発想は、安直でスジが悪い</span>のです。悪手なのです。<br /> 何でも規制を強化することによって解決しようとすると、ろくでもない副作用が生まれ、行政コストは上がり、社会全体を貧しくしてしまいかねないのです。</p><br /> <p>これに比べると、bewaad氏の指摘する労働市場の需給バランスを改善する方法の有効性は、人類の長い歴史が証明しています。<br /> 需給バランスの改善によるクソ労働環境の排除という方法は基本的にスジが良く、副作用も比較的酷くないことは歴史によって実証されているのです。<br /> もちろん、これらは<span style='font-size:170%;'>二者択一ではなく両方が必要ですが、優先順位の問題として</span>、新規ビジネスがどんどん立ち上がり、雇用が生み出されるような環境を整備することによってクソ労働環境を改善する方法をまず真っ先に模索する方が良策なのではないでしょうか。<br /> そして、新規ビジネスの立ち上げが十分に行われるような環境を整備した上で、それでも足りない分を、補助的に労働規制の強化で補うのが、正攻法なのではないでしょうか。</p><br /> <p>また、ときどき「景気が良くなっても労働者の賃金は上がらなかったじゃないか」ということが言われることもありますが、これはタイムラグのせいでそう見えるだけでしょう。実際には、景気が良くなってビジネスが拡大し、企業が十分潤い、資産家が潤い、高所得者が潤う期間が十分に長く続いた後、最後に労働者の人手不足の深刻化が臨界点を越え、労働者の待遇改善が引き起こされるのが歴史上繰り返されてきたパターンです。ところが、ここ20年ぐらいの日本では、人手不足が深刻化して労働者の待遇が改善されるほどの力強い景気回復は一度も起きていないのです。</p><br /> <br /> <br /> <p>それから、ここで重要なのは、新規ビジネスの立ち上げによる雇用の創出を政府だけに期待するのはお門違いだということです。<br /> 政府ができるのは、新規ビジネス創出のための障害を取り除くこと(ex. 金融緩和とか為替レートの是正とか規制緩和とか法整備)ぐらいであって、実際に新規ビジネスを立ち上げで雇用を創出するのは民間です。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>この20年、日本経済が低迷していた間、GoogleもYahooもマイクロソフトも大きく発展し、アメリカに良質の雇用を生み出してきましたが、GoogleもYahooもマイクロソフトも米国政府や政治家や役人が作り出したわけではありません。これらのビジネスや雇用は、アメリカの<span style='color:red'>民間の若者達</span>が作り出したのです。</span></p><br /> <p>国民の生活を楽にしてくれる政府を望む声が大きいですが、実際には、国民の生活を豊かにするのは、政府の役割ではありません。<br /> 国民の生活を豊かにするのは、民間の経済活動であり、社会活動です。僕や私やあなたたちが、自分たちの生活を作っていくのです。<br /> 政府が僕たち私たちの生活を豊かにしてくれるのを口をあけてまっていても、<span style='font-size:170%;color:red'>お母さんみたいに優しい政府が全てなんとかしてくれるなんてことはない</span>のです。<br /> 国民の生活を豊かにするために政府ができることは、せいぜい民間が自ら豊かになろうとする行動を邪魔しないことだけです。<br /> 我々の経済活動を阻害する異常なデフレを解消し、異常な円高を解消し、無駄な公共工事を廃止し、腐敗し肥大化した天下り組織を健全化し、しっかりしたセイフティーネットを作ることだけです。<br /> そして、<span style='font-size:170%;'>セイフティーネットというのは、あくまで転落したときに最悪の事態を避けるための最終的な歯止めでしかなく、<span style='color:red'>それによりかかって快適なニートライフを楽しめるようなものではないです。</span>そんなものができあがるというのは、童貞中学生のオナニー的な妄想に過ぎません。</span>それがあるから、豊かな生活を営めるようなものではないのです。生活の豊かさを作り出すのは、あくまでも政府ではなく、民間なのです。</p><br /> <p>まるで<span style='font-size:170%;'>「自分ではない誰か」だけの責任であるかのように、ブラック会社批判をしている人をよく見かけますが、<span style='font-size:170%;color:red'>民間人であるあなたも当事者なんですよ。「自分ではない誰か」だけの責任ばかりじゃないんです。</span></span><br /> 日本のクソ労働環境を愚痴っているヒマがあったら、自らクソ労働環境を解消する行動をしてみてはどうでしょうか。具体的には、自分でまっとうな会社を作ってみてはどうでしょうか。あるいは、あなたがブラックな中小企業で働いているなら、その労働環境をクソでなくなるように改善してみてはどうでしょうか。<br /> それができないなら、せめてそれらを手伝ってみてはどうでしょうか。あるいは、そういう会社に出資してあげてみてはどうでしょうか。そういう会社を支援するための時間もスキルも資金もないなら、せめて<a href="http://survive-sns.jp/radio/blog/?p=273">&#x30AF;&#x30BD;&#x52B4;&#x50CD;&#x74B0;&#x5883;&#x3092;&#x6539;&#x5584;&#x3059;&#x308B;&#x305F;&#x3081;&#x306E;&#x5177;&#x4F53;&#x7684;&#x306A;&#x30B9;&#x30AD;&#x30EB;</a>を身につける努力をしてみてはどうでしょうか。あるいは、それらを持っている人達が、まっとうな会社を支援するように促してみてはどうでしょうか。昨日も今日も明日も、「もはや新規ビジネスを立ち上げる余地はない」だの「景気が良くなっても労働環境はよくならない」だの、政府の規制強化に期待するばかりで自らは何も行動しない自分を正当化する理由を延々と並べ立て、「自分ではない誰か」の批判をやり続ければ、まっとうな明日がやってくるなんてことはないですよ。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>産業を作り出し、労働環境を改善し、生活を豊かにする仕事の主役は、政府でも政治家でも役人でもなく、民間人であるあなたなのですから。</span></p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-043d084b" name="f-043d084b" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ブコメで黒死病によってヨーロッパの人口が激減したことが原因との指摘がありましたが、大開墾運動によって農民の待遇が改善したのは、黒死病による人口減が起こる何百年も前のことです。</span></p> </div> fromdusktildawn ネットの炎上は人類進化の必然で、健やかなる新時代を拓く鍵かもしれない hatenablog://entry/10257846132601979746 2009-06-21T00:00:00+09:00 2023-01-13T12:25:09+09:00 目次 ●ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上で苦しむ人と喜ぶ人 ●宇宙が熱平衡へ向かうように、人類社会は偉さの平衡(=平等)へと向かう ●ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上の3つの格差是正機能 ●この社会にエリートはいらない ●なぜエリートがいなくても、社会が機能するのか? ●経済体制の革命では「偉さ格差」は是正できないということは、歴史が証明している ●人類史上唯一Webだけが、共産革命という劇薬によってもなしえなかった根本的な「平等革命」を引き起こす ●会社は社員を馬車馬のように働かせるために、「偉さ格差」を利用する ●権力者は、人々の「生活基盤を人質」にすることで、人々を支配する ●Webが人質を… <div class="seemore"> <div class="section"> <h4 id="目次">目次</h4> <p><br /> ●ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上で苦しむ人と喜ぶ人<br /> ●宇宙が熱平衡へ向かうように、人類社会は偉さの平衡(=平等)へと向かう<br /> ●ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上の3つの格差是正機能<br /> ●<b style='color:red'>この社会にエリートはいらない</b><br /> ●<b style='color:red'>なぜエリートがいなくても、社会が機能するのか?</b><br /> ●経済体制の革命では「偉さ格差」は是正できないということは、歴史が証明している<br /> ●<b style='color:red'>人類史上唯一Webだけが、共産革命という劇薬によってもなしえなかった根本的な「平等革命」を引き起こす</b><br /> ●会社は社員を馬車馬のように働かせるために、「偉さ格差」を利用する<br /> ●権力者は、人々の「生活基盤を人質」にすることで、人々を支配する<br /> ●Webが人質を解放することで、人類史的な進化が引き起こされる<br /> ●<b style='color:red'>Web革命によって斃される運命にあった梅田氏が、Web文明の旗振り役をやったという歴史の皮肉</b><br /> ●<b style='color:red'>梅田氏が「残念」と斬り捨てた日本のWebの生態系こそが、新時代の希望の灯火であることに、人々は無意識のうちに気がついていた</b><br /> ●「近代人の梅田望夫氏v.s新時代人のひろゆき氏」という構図<br /> ●<b style='color:red'>はてなブックマークは2ちゃんねる的だから「残念」なのではなく、2ちゃんねる的だからこそ、新時代を切り開く可能性を秘めている</b><br /> ●「エリートを敬う伝統」など、時代に取り残された老人の繰り言に過ぎない<br /> ●「権力解体装置としてのWeb」を描き出したRPM氏のカリカチュア<br /> ●Web自体に権力解体メカニズムが備わっているわけではない<br /> ●<b style='color:red'>自分の会社が作っている断頭台に、自分の首を切断された梅田望夫氏</b><br /> ●Web上の権力解体装置の主役は、はてなブックマークとは別のところにある<br /> ●権力解体機構を備えていないSNSやtwitterが劣っているわけではない<br /> ●「巨大な読者人口」という人質を取られ、地獄へとひた走る火車にのるアルファブロガーたち<br /> ●「ブログ+ソーシャルブックマーク」とSNSの特徴のまとめ<br /> ●<b style='color:red'>「偉さ」格差の是正(=平等化)が、社会全体の総幸福量を増やすメカニズム</b><br /> ●<b style='color:blue'>新しい時代にふさわしい生き方とは?</b><br /> ●それでもなお、ネットの誹謗中傷揚げ足取りは正当化できるようなものではない<br /> ●この記事のBGM<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上で苦しむ人と喜ぶ人">ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上で苦しむ人と喜ぶ人</h4> <p><br /> ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上は、より平等な社会をもたらす社会的機能を持っている。<br /> 人類の歴史において、より平等になる方向に社会体制が進化してきたことを考えれば、ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上は人類社会を進化させ、新しい時代にふさわしい社会を築く礎となる可能性がある。</p><br /> <p>もちろん、炎上というのは得てして「正義のために誹謗中傷揚げ足取りリンチをするのではなく、リンチするために正義を探す人達」が集まってくることで起きるし、そういう輩は実に醜悪だ。<br /> そんなものより<b>道徳</b>的に正しい手段によって、社会を変えていくべきだという意見もあるだろう。</p><br /> <p>だが、第一に、絶対王政下において市民の暴力による革命しか自由民主主義体制への道が開かれていないとき、<br /> はたしてその暴力は「道徳的な悪」、以上終り、で思考停止し、安易に斬り捨てて良い可能性なのだろうか。</p><br /> <p>第二に、そもそも道徳という社会装置自体が、歴史的な権力闘争の産物でしかない。<br /> <b>男は男に都合の良い道徳を作り、強者は強者に都合の良い道徳を作った。</b><br /> 能力の高い人間ほど自由市場経済を肯定するような道徳観念を支持するのもその変奏だ。</p><br /> <p>もちろん、ニーチェが指摘したように、弱者も弱者に都合の良い道徳を作ることで、逆に強者を支配してきた。<br /> 神の前での<b>平等</b>を説く惑星規模で君臨する世界宗教も、<br /> 世界で最も豊かな国々を牛耳っている自由民主主義システムも、弱者が強者を支配する社会装置だ。</p><br /> <p>そもそも、ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上を、嫉妬だの残念だのとことさら問題視し、過剰反応する人の多くは、ネットの既得権益層だ。<br /> リアルで社会的地位が高く、ネットでも多くの人々の信用を勝ち得ている勝ち組実名ブロガーと、その支持者たちに多い。</p><p>彼らは、東京にビルを所有している富裕層が関東大震災を恐れるように、ネットの炎上による被害をリアルに恐れる。<br /> 勝ち組実名ブロガーには、失って困る信用がたっぷりあるからだ。<br /> 金持ちほど「汝盗むことなかれ」という道徳機能の恩恵にあずかれる。</p><br /> <p>一方で、ネット上の信用がたいしてない無名の人の場合、自分自身がネットの誹謗中傷・揚げ足取り・炎上の被害にさらされることはあまりないし、そもそも誹謗中傷や炎上で失われる信用など、もともとたいして持ち合わせていないので、ネガコメ問題など、所詮は他人事である。<br /> 多くの男性が痴漢被害のニュースを他人事のように聞き流すように、誹謗中傷問題を「ふーん」と聞き流す。<br /> 盗まれて困るようなものを持っていない貧乏人にとっては、泥棒はたいして怖い存在ではない。</p><br /> <p>それどころか、<b>運動会の前日に学校が火事になることを祈る運動神経の鈍い子供</b>のように、無名の人間の中には、ネット上の有名人のブログが炎上し、高みから転落していく姿を見て、暗い悦びを覚える者もいる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="宇宙が熱平衡へ向かうように人類社会は偉さの平衡平等へと向かう">宇宙が熱平衡へ向かうように、人類社会は偉さの平衡(=平等)へと向かう</h4> <p>歴史を振り返ると、人類がこれまで作りだしてきた社会システムは、紆余曲折しながらも、大まかな方向としては、平等を拡大・深化させる方向で進化してきたことが見て取れる。<br /> 古い部族社会から、神権政治、封建制、絶対君主制、全体主義、共産主義、自由民主主義。。。<br /> この宇宙の歴史が熱力学の第二法則によって熱平衡へ向かって進むように運命付けられているのにも似て、<b>人類の歴史は、個々人の「偉さ」の分布が平衡状態へと向かって進むように運命付けられている</b>かのようでもある。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120838" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120838.jpg" width="350" height="316" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4 id="ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上の3つの格差是正機能">ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上の3つの格差是正機能</h4> <p>社会装置としてのネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上がもたらす平等化には、以下の3つの機能が見て取れる。</p> <blockquote> <p><b>(A)ゼロリセット機能</b></p> <blockquote> <p>「所得額に関係なく全ての人の所得税率が無差別に100%になると、全ての人の税引き後の所得が同一(ゼロ)になる」のと同じ原理で、全ての人が無差別に誹謗中傷揚げ足取りされたとしても、「偉さ」の格差は無くなる。<br /> この原理により、ネットの誹謗中傷揚げ足取りが無差別に増大したとしても、全ての人の「偉さ」を無差別にゼロリセットし、「偉さ」の格差拡大を防ぐ効果がある。</p> </blockquote> <p><br /> <b>(B)ストック剪定機能</b></p> <blockquote> <p>無名の人間(=「偉さ資産(ストック)」の蓄積の少ない人間)よりも、社会的地位の高い人間(=「偉さ資産」を多く蓄積している人間)の方が、ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上のターゲットとされやすい。これは、植木を剪定するようなもので、必要な「偉さ資産」を保有する人間(イチローとか)は叩かれにくいが、不必要に伸びすぎた偉さの芽(必要以上に偉そうにしている人間)を剪定するような効果がある。</p> </blockquote> <p><br /> <b>(C)フロー剪定機能</b></p> <blockquote> <p>ネットの誹謗中傷揚げ足取りは、自分の偉さ資産を増大させようとする瞬間を狙い打ちする傾向にある。<br /> たとえば、経営者が経営者の偉さを<b>正当化</b>するようなことを記事に書くと炎上しやすい。「経営者など少しも偉くはない」と腰の低いスタンスで記事を書くと炎上しにくい。自分の偉さを不必要に増大させるようなことを書くと偉さのフロー収入が増大するので、誹謗中傷揚げ足取りをされ、炎上し、それ以上の偉さの増大が防止される。</p> </blockquote> </blockquote> </div> <div class="section"> <h4 id="この社会にエリートはいらない">この社会にエリートはいらない</h4> <p>ここで重要なのは、ネットの誹謗中傷揚げ足取り炎上によって「偉さ格差」が大幅に減少したとしても、社会はそれほど大きな問題もなく機能してしまう可能性がある、という点だ。<br /> つまり、この社会にエリートは必要ないのである。<br /> エリートがいなくても、この社会は十分に維持・発展できるし、むしろ、<b>エリートの存在は、人々の総幸福量を減少させる害悪</b>かもしれないのだ。</p><br /> <p>池田信夫氏は社会の生産性は上位3%の質で決まると言い、<br /> 梅田望夫氏はWebは上位10%の人に活躍の場を与えると言い、<br /> 海部美知氏は知的エリートたちがネットのバーチャルなアテネの学堂に集って世の中を良くするための知の形成をすると言う。</p><br /> <p>しかしながら、世界をよりよくするため(to make the world a better place)には、「上位3%」も「上位10%」も「知的エリート」も必要が無いどころか、その存在自体が害悪かもしれないのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="なぜエリートがいなくても社会が機能するのか">なぜエリートがいなくても、社会が機能するのか?</h4> <p><br /> ここで、<br /> 『じゃあ、「上位3%」も「上位10%」も「知的エリート」もなしに、誰が一体、社会を維持し、さまざまな問題を解決し、不便を解消し、より便利なもの、より楽しいものを、より少ない労力で生産・供給する仕組みを作るというのか?エリートなしに、それらの社会システムが維持・発展できるとでも言うのか?』<br /> という疑問を持つ人もいるだろう。</p><br /> <p>この疑問に答えるために、「起業家」という社会装置を例にとってみる。</p><br /> <p>確かに、社会の問題を解決し、不便を解消し、より便利なもの、楽しいものを、より少ないコストで生産・供給する仕組みを作るには、起業家の存在が欠かせない。よりイノベーションを起こす力を持った人間にリソースを集中させ、新しいサービスを作り出すために、能力の高い人間ほどより多くの自己資本を蓄えられるという社会的な仕組みは必要だろう。人々の問題を解決し、生活を便利にするような新規サービスを開発するには、それがまだ機関投資家どころかエンジェルにすら相手にされない海の物とも山の物とも分からないうちから、失敗したときのリスクを負う覚悟で自己資本を投入して起業する人間が必要だ。サービスが立ち上がり、実際に収入が入り始めるまでの「つなぎ」の運転資金をあらかじめ蓄積していないと、新規サービスは立ち上がらない。社会がそういう人達を生み出すには、高い能力を持ったタフな人間が高収入を得て、まだ若いうちに起業のための自己資本を蓄えられるようにしておく必要がある。能力や成果に関係なく資本が全ての労働者に平等に分配されてしまったら、イノベーションを起こせる能力を持った人間が十分な自己資本を蓄えるのに時間がかかり、社会の問題の解決は遅れ、経済は停滞し、人々の生活は絶対的な意味で貧しくなっていくだろう。より仕事のできる人間により多くの資本が分配されるような社会システムになっているのは、社会が富を創出するためのインセンティブ設計の都合も大きいけど、社会装置としての資本機能の都合も大きいのだ。</p><br /> <p>しかし、それは単に社会を維持するための資源配分の都合でそうなっているという社会装置エンジニアリングの話にすぎず、そこからは、起業家を「エリート」としてあがめ奉る理由を導き出すことは出来ない。これは単に経済的資源配分の話であって、「偉さ」までを彼らに集中させる必要はない。<br /> 「所得や資本蓄積の格差」は人々の生活を支える「起業家」という社会装置を生み出すのに必要だが、「偉さの格差」は必ずしも必要ではないのである。<br /> したがって、人々に価値あるサービスを提供する起業家が、ネットで偉そうなことを書くことを許す必要はない。<br /> 彼らを「エリート」として尊敬する必要など無いのである。<br /> 「私は少しも凄くありません。私は、たまたま運良く成功しただけです。私の成功はみなさんのおかげです。儲けたお金は無駄遣いせず、さらによいサービスを皆様に提供するために投資させていただきます。」<br /> と、腰を低くして、自分の偉さを徹底的に無化する起業家だけをネットが受け入れ、それを行わない「エリート」を徹底的に誹謗中傷揚げ足取りをし叩きつぶすようにしても、腰の低い起業家、経営者、実務家たちによって、社会インフラを支えることは可能だ。</p><br /> <p>むしろ、「私はエリートだ」と公言するような鼻持ちならない人間を誹謗中傷揚げ足取りするすることで、彼らを「教育」することができる。<br /> すなわち、社会の問題を解決し、社会を支えるサービスを作り出す人間は、「偉さ格差の最小化を徹底する」という、<b>Web時代の道徳</b>を身につけることを義務化することができる。<br /> ネットの誹謗中傷揚げ足取りや炎上は、そのような機能を持った社会装置なのだ。</p><br /> <p>たしかに池田信夫氏の言うとおり、社会の生産性は上位3%で決まるかも知れないが、それはあくまで富を生み出すための、無色透明な社会装置の役割を担う3%の人間のことであって、偉さの序列によって人々を並べた場合に「上位」3%にくるエリートである必然性はないのである。<br /> 彼らは「偉い」エリートなのではなく、単に社会の生産性を左右するという価値中立な属性を備えているだけの人間でしかないのだ。</p><br /> <p>それから、ここではたまたま「起業家」という社会装置を例に見てみたが、これは「学者」、「研究者」、「政治家」、「官僚」、「ジャーナリスト」、「マスコミ」、「医者」、「弁護士」、「経営者」、「思想家」、「評論家」など、「偉さ」を過剰に保有しがちな他の社会装置についても、ほぼ同じことが言える。<br /> 社会の維持発展には、起業家だけでなく、学者も研究者も政治家も必要だが、必ずしも彼らが「偉い」必要はない。彼らが腰を低くして、自分自身の偉さを徹底的に無化するという「Web時代の道徳」を身につけていないのなら、ネットの住人は、よってたかって誹謗中傷揚げ足取りを行い、完膚無きまでにたたきつぶすことだろう。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="経済体制の革命では偉さ格差は是正できないということは歴史が証明している">経済体制の革命では「偉さ格差」は是正できないということは、歴史が証明している</h4> <p><br /> 経済体制をどう変更しても、「偉さ格差」の是正には繋がらない。<br /> 「偉さ格差」は、経済格差とは別次元の話だからだ。</p><br /> <p>かつて、資本家階級を打倒し、労働者のみによって究極に<b>平等</b>な政治体制を作ろうとした共産主義の国々は、ことごとく醜悪な権力ゲームの魔窟と化した。<br /> そこでは、共産党幹部をバカにすることは許されなかった。<br /> 人々は、共産党幹部に敬意を払うことを強制された。<br /> 共産党幹部は「偉さ」を独占し、吐き気を催すようなおぞましい「偉さ格差」が社会にまん延した。<br /> 資本主義を廃止し、共産主義体制にしても、「偉さ格差」は少しも減らなかったのである。</p><br /> <p>共産革命という人類史的な社会実験から得られた貴重な教訓の一つは、<br /> 経済体制の変革によって「偉さ格差」を解消することは困難だということではないだろうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="人類史上唯一Webだけが共産革命という劇薬によってもなしえなかった根本的な平等革命を引き起こす">人類史上唯一Webだけが、共産革命という劇薬によってもなしえなかった根本的な「平等革命」を引き起こす</h4> <p>そして、Webというイノベーションは、人類が共産革命という凄まじい劇薬をもってしてもなしえなかった「偉さ格差」を克服するという、人類史的な大革命を可能にしたのではないだろうか。</p><br /> <p>人類の長い歴史の中で、唯一、Webだけがこの大偉業を成し遂げたのは、Webだけが唯一、人類誕生以来数百万年に渡って人々を抑圧し続けてきた、生活基盤が副作用として生み出す抑圧的な権力構造から人々を解放する社会装置だからだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="会社は社員を馬車馬のように働かせるために偉さ格差を利用する">会社は社員を馬車馬のように働かせるために、「偉さ格差」を利用する</h4> <p><br /> 人々は生活の糧を得るために、勉強し、仕事をし、生活の糧を得なければ生きていけない。<br /> しかし、生活の糧を得るためには、人間は組織的に行動することを避けられない。<br /> 社会的な動物である人間は、組織的に行動したとき、桁違いのパワーと生産性を生み出すからだ。<br /> 人類をこの惑星の支配者の椅子に座らせた最大の力の一つが、この「組織力」なのだ。<br /> そして、人間を効率的に組織化し、高い生産性を生み出すシステムは、権力者の隠された邪悪な欲望によって、醜悪な偉さ格差を生み出し、それを人々に強制する装置として、悪用されてしまうことを防ぎきれない。</p><br /> <p>おおよそ人間が作り上げる組織というものは、命令指揮系統があり、上下関係がある。<br /> それなしには、組織の責任システムは機能せず、組織は十分に機能できない。<br /> また、直接命令せず、部下の自由裁量でやらせるようなタイプのマネージメントスタイルであっても、部下の実態を把握し、部下の目的を明確にし、方針を与え、目標を設定し、それを評価する必要がある。</p><br /> <p>そして、原理的には、マネージメントする側の人間と、される側の人間に「偉さ」の序列を作る必然性などない。<br /> ビジョンを作り、方針を打ち出す管理職は、単にそういう役割を持つ人間なのであって、管理職から方針を受け取り、その方針に従って行動する人間もまた、単にそういう役割を持つ人間であるというだけで、原理的には「どちらが偉い」ということにする必要もない。<br /> 大企業のマネージャーが高校野球部のマネージャー程度の「偉さ」であっても原理的には十分にシステムは成り立つはずだ。</p><br /> <p>ところが、現実には、部下を「くん」付けで呼び、自分の権威を誇示しようとする上司が後を絶たない。<br /> また、企業の側も、この醜悪な「偉さ格差」を利用して、社員を競わせて社員を激しく働かせ、搾取する。<br /> たとえば、銀行員の人達と酒を飲むと、やたらと人事のうわさ話が出てくる。<br /> 彼らは、同期のうちだれが早く出世するか、誰が出世が遅れるかにただならぬ興味を示す。<br /> 出世の遅れた人間は、先に出世した人間に嫉妬する。<br /> 同期の人間同士で、先に出世されて見下されまいとして、必死に成果を上げようと競い合う。<br /> 大手の銀行の人事管理とは、オヤジ同士を互いに嫉妬させて競い合わせるという、かなり悪趣味なシステムだ。</p><br /> <p>このように、組織の上下関係をそのまま「偉さの序列」に転化することは、企業が社員を馬車馬のように働かせるための手段になっているため、原理的には必ずしも必要とされない「偉さの序列」を、意図的に作り出す企業も多い。<br /> それこそ、オヤジをオヤジに嫉妬させるため、滑稽なほどのビジュアルで「偉さ格差」を演出する。<br /> たとえば、平社員は肘置きのない椅子に座らせ、昇進して課長になると、肘置き付きの椅子になる。<br /> さらに出世すると、机の位置が窓際になり、机のサイズも大きくなる。<br /> ほとんど子供じみた滑稽なほどの「偉さ格差」の演出で、今でも思い出すたびに笑いがこみ上げてくる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="権力者は人々の生活基盤を人質にすることで人々を支配する">権力者は、人々の「生活基盤を人質」にすることで、人々を支配する</h4> <p><br /> また、これは職場に限った話だけではない。<br /> たとえば、田舎などでは、それぞれの家に「格」のようなものがあり、その地域で顔役の人間がおり、目に見えない序列構造によって「偉さ格差」の構造が作り出されていることがよくある。</p><br /> <p>一方、ブログやソーシャルブックマークで形成されるネットコミュニティは、このような構造的な偉さ格差を根本から破壊するパワーを秘めている。</p><br /> <p>リアルにおいて、権力者が人々の上に君臨し、人々を抑圧し、「偉さ」を搾取し、独占することができるのは、<br /> 人々の生活基盤を人質にしているからだ。<br /> 上司の不興を買うと、査定や昇進に響くから、上司が偉そうに部下を君付けで呼んでも、人々は逆らえないのである。</p><br /> <p>その極端なケースとして、とくに外資系の会社などでときどき耳にすることだが、仕事の出来る上司の社内不倫率が高い会社があるようだ。<br /> 女子社員の中には、社内の権力者に股を開くことで、昇進や査定で依怙贔屓してもらおうとする者もいるとのことだ。<br /> そこでは、まるでリアル猿山のような原始的な権力構造が形成されていたりするわけである。(チンパンジーなどは、同盟、分割支配、調停など、かなり高度な政治ゲームを繰り広げることが知られているが(根回しすらまともにできない不器用なタイプの人間より、よっぽど政治に長けているサルも多い)、彼らの政治闘争は、主に「偉さ序列、セックス利権、食べ物利権」の3つを巡る戦いのようにも見える。)<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120831" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120831.jpg" width="449" height="253" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> そして、だからこそ、組織のなかで権力を握ることは人々にとって悪魔的な魅力を持つようになり、会社はその悪魔的な果実を人々の鼻先にぶら下げて、馬車馬ように社員を働かせ、会社を維持することができる。<br /> この手の会社で、適度の不倫をして上司に依怙贔屓をしてもらって楽しようとする女性は、出世競争へと社員を猛烈に駆り立てるエネルギーを供給する存在であり、会社にとっては都合の良い存在なのかも知れない。</p><br /> <p>ここ数千年の人類の社会システムの進化の到達点は、結局の所、類人猿たちが目を血走らせて覇を競うリアル猿山と大差ない権力構造なのかと思うと、複雑な気持ちになる。<br /> 進化どころか、類人猿にまで先祖返りしてしまっているってばよ!<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="Webが人質を解放することで人類史的な進化が引き起こされる">Webが人質を解放することで、人類史的な進化が引き起こされる</h4> <p><br /> Webの人間関係において最も革命的な点は、<b>権力者は人々の生活基盤を人質にとっているわけではない</b>という点だ。<br /> はてなブックマーカーがアルファブロガーの小飼弾氏や梅田望夫氏を馬鹿にし、見下し、貶すようなコメントを付けても、査定や昇進にはなんの影響もないし、小飼氏や梅田氏に媚びを売ったところで、たいして美味しい目に会うわけでもない。<br /> (実名ブロガーだけは例外で、他の「有用な」実名ブロガー(梅田望夫氏とか)に媚びを売ることで、リアルで対談に呼んでもらったり、仕事を回してもらったりするような美味しい目に会うことができるので、彼らは自らの実利のために巧妙な擁護記事を書くことがある。)</p><br /> <p>これは、ネットコミュニティが、人々のフラットな趣味の集まりだからそうなっている、ということではない。<br /> たとえば、リアルでフラットな趣味のサークルを作り、そこに人々が集まったとき、そこでのリーダー格の人間を、好き放題コケにするようなことを言ったら、たいていはそのコミュニティからたたき出されてしまう。<br /> アルファブロガーのような「偉い」人間を、「公衆の面前で」、「いつでも」、「気軽に」、思う存分こき下ろし、馬鹿にし、見下すことができるのは、唯一、Webという社会インフラによってのみ、可能となったのであり、これは、人類が今までに生み出した他のいかなる社会装置によっても、実現できなかった、とてつもなく革命的なことだ。<br /> 自宅の居間でテレビの政治家を貶したところで、それは単なる独り言に過ぎないのだ。</p><br /> <p>まさに、この特徴こそが、Webを人類社会の進化の歴史的な革命装置たらしめているのである。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="Web革命によって斃される運命にあった梅田氏がWeb文明の旗振り役をやったという歴史の皮肉">Web革命によって斃される運命にあった梅田氏が、Web文明の旗振り役をやったという歴史の皮肉</h4> <p>そして、このWebがもたらした人類史的な革命によって、権威の座から引きずり下ろされ、無化される運命にあった梅田望夫氏が「Web進化論」を著し、Webの価値を称揚し、Web文化の旗振り役を勤めたのは、歴史の皮肉のようにも見える。</p><br /> <p>梅田望夫氏のインタビュー記事に対して、<a href="http://b.hatena.ne.jp/y_arim/20090602#bookmark-13774944">&#x6709;&#x6751;&#x60A0;&#x6C0F;&#x306F;&#x4EE5;&#x4E0B;&#x306E;&#x3088;&#x3046;&#x306A;&#x92ED;&#x3044;&#x6307;&#x6458;&#x3092;&#x3057;&#x3066;&#x3044;&#x308B;</a> :</p> <blockquote> <p>y_arim 岡田有花による「望夫おろし」。笑いが止まらん。っていうか慶應幼稚舎出身だろ?人生の最初から階層が違ったんだよ、ハイブロウが好きとかじゃなくて。<b style='color:red'>むしろwebによって相対化され無化される側だったんだよお前は!</b> 2009/06/02</p> </blockquote> <p>(赤字による強調は引用者による)</p><br /> <p>要するに、「Web進化論」とは、そもそも「人類進化論」という、より大きな物語の一章、いや、一節として書かれるべきであった。<br /> 人類進化論をよく吟味し、咀嚼した上で、その文脈の中で一パートを分担する作者として、「Web進化論」を書くべきであった。<br /> 梅田氏は、人類進化論の全体文脈を十分に読まずにWeb進化論を書いたために、Webが持つ人類史的な意味を見落としてしまったのかも知れない。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="梅田氏が残念と斬り捨てた日本のWebの生態系こそが新時代の希望の灯火であることに人々は無意識のうちに気がついていた">梅田氏が「残念」と斬り捨てた日本のWebの生態系こそが、新時代の希望の灯火であることに、人々は無意識のうちに気がついていた</h4> <p>結局、よくも悪くも、梅田望夫氏の発想は、最初から最後まで一貫して、典型的な「近代人」のものだった。<br /> 彼は、良くも悪くも、古き良き時代の遺物なのであり、好きを貫くと言うよりも、近代思想を貫いている。<br /> 「上位数%のエリートが人々を導いて、世界をよりよいところにしていく」という発想は、結局の所プラトンの哲人政治のような古めかしい理性主義的な社会システム発想の焼き直しに過ぎない。</p><br /> <p>本来なら、育ちもよく、良い大学を出て、まっとうなビジネスをして、はてなという優良企業の取締役をしている、<br /> 品行方正を絵にしたような梅田氏のような人間がネットで叩かれる要素などない。<br /> 一方で、誹謗中傷揚げ足取りの巣窟の2チャンネルを運営し、違法行為すれすれのことをやりまくって、2ちゃんの下品なエロ広告で大金をかせぎ、裁判で訴えられまくっているアウトローなひろゆき氏のような人間は、ネットで叩かれる要素は満載だ。どこを叩いても埃が出まくる。</p><br /> <p>これだけ絶望的なハンデがありながら、梅田氏はネットで叩かれ、ひろゆき氏はむしろネットで<br /> 親しみと尊敬を集めているという、ありえない大逆転劇が起きている。<br /> これほどの凄まじいハンデをひっくり返すほどの、社会的潮流、いや、ほとばしる濁流こそが、Web革命の核心ではないのか。</p><br /> <p>これは、原理的に「偉さ格差」を是正できない「近代」に人々が愛想を尽かし、「偉さ格差」を是正する原理的可能性を秘めたひろゆき的なものに、新しい時代の可能性を人々が本能的に見いだしたからではないのだろうか。</p><br /> <p>梅田氏が「残念」と斬り捨てた日本のWebの生態系こそが、新時代の希望の灯火であることに、人々は無意識のうちに気がついていたのではないだろうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="近代人の梅田望夫氏vs新時代人のひろゆき氏という構図">「近代人の梅田望夫氏v.s新時代人のひろゆき氏」という構図</h4> <p>ちなみに、いかに梅田望夫氏が「近代」の価値観を体現した人物で、ひろゆき氏の生き方が現代的で洗練されているかについては、次の記事で詳しく書いた。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20071209/1197232409">「好きを貫く」よりも、もっと気分よく生きる方法</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20071209/1197232409" alt=""></p> <blockquote> <p>しかし、その後の歴史において、この近代の理想的人間像に隠された欺瞞とインチキと弊害が、さまざまな哲学者や思想家たちによって徹底的に暴かれぬいた。<br /> 後に、ポストモダニズムと総括されることになる多様な思想の潮流群だ。<br /> <<中略>><br /> こういうことが、すっかりバレちゃっている現代という時代において、いまさら、古めかしくかび臭い「近代の理想的人間像」などを持ち出しで「好きを貫く」などと言われても、少しもピンとこない。もちろん、これら、ポストモダンが突きつけた思想的課題を克服した上で、それでもなお、「好きを貫く」という思想を構築したというのなら、それはそれで一本スジの通った主張であり、傾聴に値する。そして、ぼくが梅田氏に期待したのは、そこの部分だった。ポストモダンは、近代の安易な理想を徹底的に破壊し尽くしたのはいいのだけど、壊すだけ壊しておいて、その後に、あるべき人間や社会の理想像を構築できたかというと、いかにも心許ない。その点において、少なくともニーチェは、キリスト教、民主主義、科学、哲学など、既存のメジャーな価値体系が隠蔽している欺瞞と汚物をえぐり出し、徹底的にその正当性を破壊し尽くした後、「では、人間が目指すべき理想像とはどのようであるべきか」という、その後の価値創造に腐心している。あんまり成功したとはいえないけど(笑)。これに対し、ポストモダンの思想家たちの多くは、近代の理想を、ぶっ壊すだけ壊しておいて、その後の価値創造において、見るべき成果がない。だから、現代社会における現実的な諸問題(たとえば、日本の教育システムはどうあるべきか)などの解決策を議論するとき、多くの場合ポストモダニズムはものの役に立たない。むしろ、ポストモダンが徹底的に批判し尽くし、欠陥商品であることがバレバレになったはずのヘーゲル思想の方が、人々の間にコンセンサスを作り出し、より多くの人を納得させるよりよい教育システムを構築するために、はるかに思考のベースとして役に立ってしまうほどだ。この意味で、一見、上から目線で近代をこき下ろし、すっかり近代を乗り越えたはずのポストモダンは、ボク的な感覚では、とてもじゃないが、きちんと近代を乗り越えたとは言えない。<br /> だから、ボクは梅田氏に、本来、広がり伸びていく人間の自由な精神を、堅苦しい枠に閉じこめて殺してしまう、古めかしくかび臭い近代の呪いを破壊し尽くしたポストモダンを、さらに乗り越えて、その向こうに新たな理想の生き方を示してくれることを期待した。<br /> <b style='color:red'>しかし彼は、あの、すっかり欠陥商品であることがバレバレになってしまっている、古めかしい「近代」に、WebとかITとかいうペンキを塗り直して持ち出しただけだった。</b><br /> <<中略>><br /> いかにも古めかしく暑苦しい近代的な梅田思想に比べ、肩の力の抜けたひろゆき氏が自然体で語りかける言葉の一つ一つは、はるかに現代的で洗練されており、次の時代を生きるためのヒントがあるように思う。</p> </blockquote> <p>(赤字強調は、引用者による)</p><br /> <p>この記事でのキーワードは「近代の呪い」だ。「一部のエリートが、人々を導いて、世界をよりよいところにしていく」という構図自体もまた、「近代の呪い」に捕らわれた発想の一種ではないだろうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="はてなブックマークは2ちゃんねる的だから残念なのではなく2ちゃんねる的だからこそ新時代を切り開く可能性を秘めている">はてなブックマークは2ちゃんねる的だから「残念」なのではなく、2ちゃんねる的だからこそ、新時代を切り開く可能性を秘めている</h4> <p><br /> ポストモダンの思想潮流群が哲学のレイヤで「近代」を解体し尽くし、人々の精神を解放したように、2ちゃんねる的なWeb文明の潮流は、ネット上の「近代的権威」を解体し尽くし、人々をリアルな権力構造から解放する。<br /> はてなブックマークは2ちゃんねる的だから「残念」なのではなく、2ちゃんねる的だからこそ、新時代を切り開く可能性を秘めているのである。</p><p>ポストモダン潮流が解体したのは、単にエリートの権力だけでない。宗教的権威、哲学的権威、科学の権威、学問の権威、そして右翼も左翼も、弱者権力まで容赦なく解体しつくした。<br /> 少なくとも思想的なレベルでは、この地上に存在するありとあらゆる権力構造は、ポストモダンという多弾頭核ミサイルの豪雨によって、草の根一本残らないほどの焦土と化した。</p><p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120834" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120834.jpg" width="500" height="374" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>もはや、「偉さ格差」を支える権力構造の根拠は、少なくとも思想的なレベルでは、ほとんど残っていない。<br /> だから、小飼弾氏や海部美知氏がいくらエリートが世界を良くする云々と言ったところで、エリートをエリートたらしめる思想的根拠は破壊され尽くしてしまっているのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="エリートを敬う伝統など時代に取り残された老人の繰り言に過ぎない">「エリートを敬う伝統」など、時代に取り残された老人の繰り言に過ぎない</h4> <p><br /> <a href="http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51136972.html">&#x5C0F;&#x98FC;&#x5F3E;&#x6C0F;&#x306F;&#x3001;&#x65E5;&#x672C;&#x306B;&#x30A8;&#x30EA;&#x30FC;&#x30C8;&#x3092;&#x656C;&#x3046;&#x4F1D;&#x7D71;&#x304C;&#x306A;&#x3044;&#x3053;&#x3068;&#x3092;&#x5606;&#x3044;&#x3066;&#x3044;&#x308B;&#x3002;</a></p> <blockquote> <p>なぜエリートを敬う伝統が生じなかったか。エリートとなりうる人々に、人々が無礼をもって答えてきたからではないのか。人々の無知蒙昧に、エリートは耐えねばならない。これはエリートとしての、義務である。しかし、エリートたりうる人々が、エリートにならねばならぬ義務もまた存在しないのである。エリートとなるのは義務ではなく、しかしいったんエリートとなれば義務ばかり追う。そんな損な役割の彼らの唯一の報酬は、敬意である。</p> </blockquote> <p><br /> しかし、小飼弾氏の言うような「敬意を払われるべきエリート」などというものを支える思想的基盤はもはや失われて久しく、小飼弾氏や海部美知氏の「エリートが世界をよりよいところに云々」という発想は、ひなたぼっこしながら「昔は良かった」と繰り返す、時代に取り残された老人の懐古趣味にすぎないのかも知れない。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="権力解体装置としてのWebを描き出したRPM氏のカリカチュア">「権力解体装置としてのWeb」を描き出したRPM氏のカリカチュア</h4> <p><br /> そういう時代においては、ろくな書評も書かずに、<br /> 「この本はとにかくいい本だから読んでおけ。オレが勧めるんだから間違いない。とにかく読んでみろ。」<br /> 的な、自分の権威をかさにきた推奨記事を書いても、人々はそんな権威に敬意を払ったりしないから、<br /> 「いやー、偉い偉いアルファブロガー様が推奨しているかしらんが、それがどんな本なのかの書評もないのに、そんな権威だけを信じて、わざわざ金と時間を費やしてその本を読む気にはならないぜよ。本を薦めるのなら、まずは内容がちゃんと分かるようなしっかりした書評を書けよ。」<br /> と人々が感じるのも、自然なことだろう。</p><br /> <p>アルファブロガーの梅田望夫氏と小飼弾氏が「日本語が亡びるとき」という本を、内容がさっぱり分からないろくに書評になってない記事で、とにかく買え、話はそれからだ、みたいな薦め方をして炎上した「日本語が亡びるとき」事件はこうして起きた。</p><br /> <p>その様子を<a href="http://blog.hatena.ne.jp/RPM/">id:RPM</a>氏がカリカチュア風にまとめた<a href="http://d.hatena.ne.jp/RPM/20081113/1226515040">&#x300C;&#x8CA1;&#x5E03;&#x306E;&#x4E2D;&#x306E;1890&#x5186;&#x304C;&#x4EA1;&#x3073;&#x308B;&#x3068;&#x304D;&#x300D;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x8A18;&#x4E8B;</a>を以下に引用する。</p> <blockquote> <p>普段から英語の重要性を実感しているへんな会社の取締役が「ズキュウウウン」とキた本に出会った。<br /> へんな会社の取締役「買いなさい。とにかくこの本を買いなさい。凄いから買いなさい。内容は読めばわかるから買いなさい。日本人なら買いなさい。無心で買いなさい。読書用、保存用、観賞用、布教用と4冊は買いなさい。アフィリエイト経由だとはてなにお金が入るからAmazonで買いなさい。亡びる前に買いなさい。」<br /> 取締役に魂を引かれた男「買います!先生が絶賛するんだから買います!内容なんか微塵もわからない書評でも買います!というか書評にすらなってない気がしますが買います!無心で買います!」<br /> 取締役に魂を引かれてない男「全然書評になってないんですが?具体的な内容が皆無なんですが?買いなさいしか書いてないんですが?というか本当に読ませる気あるんですか?」<br /> dankogai「重要!重要!最重要!今世紀で最重要!!こいつを読むのはもはや義務ッ!読まない奴は納税してないも同じッ!!」<br /> dankogaiに魂を引かれた男「買います!先生が絶賛するんだから買います!相変わらず内容なんか微塵もわからない書評ですが買います!熱い心だけは伝わってきますから買います!無心で買います!」<br /> dankogaiに魂を引かれてない男「まともな書評になってないんですが?何をいいたいのか全然わからないんですが?勢いで義務とか噴き上がってるだけに見えるんですが?というか本当に読ませる気あるんですか?」<br /> へんな会社の取締役「絶望した!本も読まずに批判する馬鹿に激しく絶望した!!馬鹿ばっかり!馬鹿多すぎ!!でもこれは取締役を離れた発言だからね!勘違いしないでよね!!あととりあえず買いなさい。」<br /> 取締役に魂を引かれてない男「自業自得ワロスwというか煽りすぎた書評の方の問題ですが何か?」</p> </blockquote> <p><br /> このカリカチュアは、結果的に、Webという権力解体装置が、どのように機能しているのかを描き出すことになっている。<br /> Webという権力解体装置があってはじめて、「取締役に魂を引かれてない男」や「dankogaiに魂を引かれてない男」が、<b>公衆の面前</b>で、<br /> 「偉い偉いアルファブロガー様がなんぼのもんじゃい。オレの金と時間を費やして、本を買って読むのはオレであって、あんたじゃない。本を買う価値があるかどうかを判断するのはオレだ。オレにとって重要なのは、その本自体の客観的価値なんかじゃなく、「オレ」にとってそれが価値があると「オレ」が思うかどうかだ。あんたらは、オレがそれを判断するための参考となるデータだけ提供すりゃいいんだよ。」<br /> と大衆に向かって放送し、真正面から権力を解体し、無化することができるようになったのだ。<br /> 数千年にわたる人類の平等化への道程をじっくり振り返ってみれば、この地上に、このようなとてつもない舞台装置が存在したことが、かつて一度としてなかったことが、しみじみと実感できる。<br /> 人類史上、いまだかつて、老若男女、地位身分に関係なく、世間の柵に捕らわれず、全く自由にこんなことのできた時代があったろうか?<br /> これほど多様な人がことごとく権力から解放された時空間というのは、いったい、いつの時代のどの空間にあっただろうか?<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="Web自体に権力解体メカニズムが備わっているわけではない">Web自体に権力解体メカニズムが備わっているわけではない</h4> <p><br /> ここで注意が必要なのは、Web自体がこのような権力解体メカニズムを持っているわけではない、ということだ。<br /> たとえば、SNSのユーザは全世界で既に数億人にも達し、Web世界の重要な構成要素となっているが、SNSではこのような権力解体メカニズムは働きにくい。<br /> SNSというメディアは、お互いにある程度の信頼関係があり、前提を共有する人間同士のつながりであることが多いので、リアルの人間関係に似た特性を備えている部分が多い。リアルの人間関係においてはそもそも話の合わない人間同士ははじめから付き合ったりしないように、SNSにおいてもはなっから話の通じない人間は、そもそも友人登録しないし、場合によってはアクセス禁止にしたりする。また、プロテクトモードのtwitterにおいても同じようなことが言える。<br /> また、コメント欄が承認制になっているブログのコメント欄でも、やはり権力解体メカニズムは働きにくい。</p><br /> <p>権力解体メカニズムが働くのは、ブログとソーシャルブックマークだ。<br /> もっと厳密な言い方をすると、全てのソーシャルブックマークが本質的に権力解体メカニズムを持っているわけではない。<br /> 権力解体メカニズムが働くかどうかは、個別具体的なソーシャルブックマークの個別具体的な仕様に依存する。<br /> もし、SNS的に、記事作者が拒否したユーザのソーシャルブックマークコメントが、コメント一覧画面には表示されないようにすることができる機能(自分の画面だけに表示されないようにする機能ではなく、全てのユーザの画面において、そのユーザのコメントを非表示にする機能)が組み込まれていれば、それは実質的にSNSで特定ユーザをアクセス禁止にするのと同様に、信頼関係のないユーザはその記事にコメントを付けられないので権力解体メカニズムは働かない。<a href="#f-17a4ee92" name="fn-17a4ee92" title="これは、はてなダイアリーに限らず、これはすべてのブログで可能だ。たとえば、登録用のコード文字列をはてなに発行してもらい、それを自分のブログのトップページに一時的に表示させるだけで、自分がそのブログのオーナーであることを証明できるので、認証は簡単だ。">*1</a></p><br /> <p>したがって、たとえばはてなブックマークのように、記事作者と信頼関係にない全くの第三者が、記事作者の意向を無視して、強制的にコメントを付け、しかもそれをインターネット全体に公開されたコメント一覧画面で、大勢の人に向かって「放送」できる仕様になっている場合だけ、権力解体メカニズムが機能する。</p><br /> <p>ちなみに、はてなブックマークの場合、記事作者はコメント一覧画面全体の表示・非表示を選択できるようになっているが、これは権力解体メカニズムを阻害しない。なぜなら、一部の酷いコメントをするユーザのコメントを非表示にしたいだけなのに、コメント一覧画面を非表示にすると、他の多くの有用なコメントが全て非表示になってしまうからだ。<br /> すなわち、他のユーザのコメントを人質にして、抱き合わせ商法をすることで、一部の誹謗中傷揚げ足取りコメントを排除できないようになっているわけだ。<br /> パンドラの箱を開けて「希望」を取り出したければ、希望と一緒にありとあらゆる邪悪な悪魔がその箱から飛び出すことに耐えなければならないような仕様になっている。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="自分の会社が作っている断頭台に自分の首を切断された梅田望夫氏">自分の会社が作っている断頭台に、自分の首を切断された梅田望夫氏</h4> <p><br /> 結局の所、梅田望夫氏の「偉さ」を解体し、無化したのは、<br /> Webでもなければ、ブログでもなければ、ソーシャルブックマークですらない。<br /> 個別具体的なソーシャルブックマークサービスである、はてなブックマークに組み込まれた個別具体的な「権力解体仕様」が、株式会社はてなの取締役の梅田望夫氏の「偉さ」を解体し、無化したのである。</p><br /> <p>梅田氏は、やがて自分の首の上に刃を振り下ろす運命にある断頭台を作っている会社の取締役に嬉嬉として就任したわけである。</p><br /> <p>だから、彼の存在には二重の意味で歴史の皮肉がかかっている。<br /> 一つは、やがて彼の「偉さ」を解体・無化する断頭台の開発を可能とする人類史的な社会インフラであるWebの旗振り役を務めたこと。<br /> もう一つは、そのWebというインフラの上で、自分の首を切断する断頭台を直接的に開発する会社の取締役に就任したことである。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="Web上の権力解体装置の主役ははてなブックマークとは別のところにある">Web上の権力解体装置の主役は、はてなブックマークとは別のところにある</h4> <p><br /> もちろん、権力解体機構が組み込まれてるのは、はてなブックマークだけではない。<br /> むしろ、はてなブックマークはマイナーなサービスだ。<br /> 実際の権力解体システムの主力は、匿名コメントを未承認で書き込めるブログのコメント欄、2ちゃんねる、そしてリンクやトラックバックでネットワークを形成して「祭」に参加するブログや個人ニュースサイト、あるいはWeb上のゴシップニュース媒体だろう。<br /> 最近では、半匿名でコメントを書き込め、完全匿名でコメントへの投票が可能なYahooニュースや、mixiニュースも、権力解体装置として機能している。<br /> 規模や世の中に与える影響度合いを考えれば、ブログネットワーク、Yahooニュース、mixiニュース、2ちゃんねるは、はてなブックマークをはるかに凌駕する権力解体装置として機能している側面もある。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="権力解体機構を備えていないSNSやtwitterが劣っているわけではない">権力解体機構を備えていないSNSやtwitterが劣っているわけではない</h4> <p><br /> よく、はてなブックマークのコメントで「議論がかみ合ってない」という主旨のものが散見されることがあるが、そもそも人気エントリーに上がるような記事の間ではまともな議論は成立しにくい。「ブログ+ソーシャルブックマーク」は、議論の場ではなく「偉さ」や「正しさ」を巡る権力闘争の場になってしまいがちだからだ。<br /> ブロガーBが『「ブロガーAが書いた記事」が間違っていること』を論証するような記事を公表して、それが人々に認められると、ブロガーAの「発言信憑性(≒偉さ)」が減少し、ブロガーBの「発言信憑性(≒偉さ)」が増加する。<br /> あるいは、ブロガーDが「ブロガーCが道徳的に悪であること」を論証するような記事を公表して、それが人々に認められると、ブロガーCの「道徳的正しさ(≒偉さ)」が減少し、ブロガーDの「道徳的正しさ(≒偉さ)」が増加する。<br /> このようにブロガー同士が、発言の真実性と道徳的優位性を奪い合うゲームをしている場合、まともな議論はまず期待できない。ブロガー達は、まともな議論をすることよりも、自分の「正しさ」を人々に認めさせ、自分の「偉さ」の減少を防ぎ、自分の「偉さ」を増加させることを優先するからだ。<br /> 田舎の土建業の利権争いをしている人達がまともな議論などしない理由と同じような構造だ。<br /> 一見まともな議論をするブロガーがいるように見えても、よくよくその記事の書き方を見ると、「まともな議論をするブロガーだ」という人々の評判を勝ち取って自分の「偉さ」を増やすために書いてあることがかいま見えて興ざめすることも多い。</p><br /> <p>このくだらない『「道徳的な正しさ」を勝ち取るゲーム』を有利に進め、人々の支持を勝ち取るのに効果的な方法がある。<br /> それは、倫理学を勉強することだ。<br /> 倫理学というのは、複雑怪奇な「道徳的正しさの構造」を何千年にもわたって人類が徹底して分析し、議論を積み重ねてできた知の体系だ。<br /> 倫理学の知識体系には、倫理学の初歩すら分かってないナイーブなブロガーの記事から道徳的誤謬を拾い上げ、道徳的あら探しをし、道徳的に貶めるのに使えるツールが満載だ。<br /> ごく初歩的な倫理学知識を応用するだけで、倫理学童貞のネットの住人はいたく感心するから、攻撃対象のブロガーの道徳的正しさを減らし、あなたの道徳的正しさを増やすことができるし、実際にそのようにして書かれた記事は、はてなのホッテントリでよく見かける。<br /> 多くの人は倫理学童貞なので、薄っぺらい倫理学の入門書の最初の方のページに書いてある何百年も前に議論の大部分が終わっているような理屈の劣化版のような記事ですら、まるではじめてエロ本を見て大興奮する中学生のように、その道徳的正しさに感激するコメントがびっしりついたりする。</p><br /> <p>自分があるテーマについて、まともな議論を重ねて、その問題を深く掘り下げたいとき、議論の場としてブログやソーシャルブックマークを選ぶのが、あまり賢い選択になりえないのは、こういった状況があるからだ。<br /> 「公開ブログでまともな議論をして、大衆が正しい判決を下す」などという状況も、起きることはないではないが、それが起きることはむしろまれだと考えた方がいいだろう。なぜなら、大多数の人は十分な倫理学のトレーニングを受けておらず、ブロガーの稚拙なレトリックすらみぬけず、流されてしまうし、そのうえ、まっとうなロジックより、自分にとって心地よく聞こえるロジックを肯定するという誘惑に抗えないし、抗う必要もメリットもない。</p><br /> <p>それに比較すると、このような不毛な駆け引きに捕らわれることがないSNSでは、「ブログ+ソーシャルブックマーク」よりも、はるかに深く精緻な議論ができる。<br /> 公開Webの場合、道徳的な予防線をはりまくったまどろっこしい書き方をしないと、相手の「悪」を見つけて、自分の道徳的正しさを公衆の面前で証明し、人々の支持を勝ち取りたくてうずうずしている道徳ウォーリアーたちにつけいる余地を与えてしまう。<br /> センシティブな話題の場合、いちいちそんなまどろっこしい記事の書き方をしていたら、まず議論にはならない。議論のための本筋のロジックより、「誤解を招かないようにするため」の文章の方がはるかに分量が多くなってしまうからだ。<br /> しかし、SNSで議論する場合、そもそも、獲物の「悪」を見つけ出して、自分の道徳的「正しさ」や「偉さ」を証明するために論争をしかけるような人は、もとより友人登録しないし、間違って紛れ込んできたとしても、アクセス禁止にすればいい。</p><br /> <p>そういう「偉さ」や「正しさ」を巡る不毛な権力闘争を排除してはじめて、まともな議論が可能となるのであり、そのための装置としては、SNSは「ブログ+ソーシャルブックマーク」をはるかに凌駕する。</p><br /> <p>要するに、「ブログ+ソーシャルブックマーク」という権力破壊装置は、<br /> 権力だけでなく、「まともな議論」まで破壊してしまうという副作用があるのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="巨大な読者人口という人質を取られ地獄へとひた走る火車にのるアルファブロガーたち">「巨大な読者人口」という人質を取られ、地獄へとひた走る火車にのるアルファブロガーたち</h4> <p><br /> それではなぜ、まともな議論も成立せず、権力も解体されてしまう「ブログ+ソーシャルブックマーク」の世界で、ブロガー達はブログを書くのだろうか?<br /> その最大の理由は、スケールメリットからくる影響力の大きさである。<br /> 梅田氏が、mixiで友人限定で記事を書いていれば、誹謗中傷揚げ足取り炎上が起こって、「偉さ」を破壊され、無化されることもなかっただろう。<br /> それどころか、不毛な正義権力争いに巻き込まれず、内容の充実した、まっとうな議論もでき、精神の成長の糧とすることができたろう。<br /> しかしながら、いくら多くの友人をmixiで登録すると言ってもたかが知れている。せいぜい数万人がいいところだろうし、それだけむちゃくちゃ大量の友人登録をしたところで、検索エンジンから人々は来てくれない。<br /> インターネット全体に公開するブログと比べると、書いた文章を読んでくれるユーザ数の、文字通りの意味で桁が違う。<br /> SNSの中に記事を書くのは、投資効果が悪すぎるのだ。</p><br /> <p>すなわち、権力は解体されてしまうわ、まともな議論は成立しないわで、ふんだりけったりの「ブログ+ソーシャルブックマーク」というメディアだが、「圧倒的に巨大な読者人口」を<b>人質</b>にとられているため、誹謗中傷揚げ足取り炎上泥仕合を覚悟で、SNSではなくブログで記事を書かざるを得ない状態なのだ。</p><br /> <p>だから、彼らはそれが地獄へとひた走る火車だと知っていてもなお、それに乗らざるを得ないのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="ブログソーシャルブックマークとSNSの特徴のまとめ">「ブログ+ソーシャルブックマーク」とSNSの特徴のまとめ</h4> <p><br /> 上述した「権力解体メカニズム」、「まともな議論」、「読者数」についての「ブログ+ソーシャルブックマーク」とSNSの特徴をまとめると、以下のようになる。<table> <tr> <td></p><p></td> <td><br /> ブログ+ソーシャルブックマーク</td> <td><br /> SNS</td> </tr> <tr> <td><br /> 権力解体機能</td> <td><br /> ○</td> <td><br /> ×</td> </tr> <tr> <td><br /> まともな議論</td> <td><br /> ×</td> <td><br /> ○</td> </tr> <tr> <td><br /> 読者数</td> <td><br /> ◎</td> <td><br /> △</td> </tr> </table></p><br /> <br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4 id="偉さ格差の是正平等化が社会全体の総幸福量を増やすメカニズム">「偉さ」格差の是正(=平等化)が、社会全体の総幸福量を増やすメカニズム</h4> <p>ネットの誹謗中傷揚げ足取りで「偉い」人達を引きずり下ろし、無化することで「偉さ」の格差が減り、社会はより平等化するかもしれない。<br /> そして、人類社会の進化の方向性は、平等化を深める方向へ向かっているから、これは正常な社会進化なのかもしれない。</p><br /> <p>しかしながら、「偉さ」格差の是正は、はたして人々を幸福にするのだろうか?<br /> もっと言うと、社会全体の総幸福量を増やすのだろうか?</p><br /> <p>ここで重要なのは、「偉さ」はあくまで相対的なものであって、<br /> 絶対的な「偉さ」というものは存在しないということだ。</p><br /> <p>だから、他人の「偉さ」が減った分だけ、自分の「偉さ」が上昇する。<br /> したがって、誹謗中傷揚げ足取り炎上によって、偉い人達の権威が失墜するとき、<br /> 自分の「偉さ」がそれだけ増大することになり、自分の幸福量は増える。</p><br /> <p>自分の年収が同じままでも、自分より年収の多い人が全て財産を没収されたとすると、<br /> 自分は世界で一番年収の高い人間ということになり、かなり気分がよくなる。<br /> 自分の幸福度は上昇する。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120845" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120845.png" width="700" height="1109" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p><a href="http://blogpal.seesaa.net/article/88037108.html">&#x52AA;&#x529B;&#x3057;&#x3066;&#x3082;&#x6C7A;&#x3057;&#x3066;&#x5E78;&#x305B;&#x306B;&#x306A;&#x308C;&#x306A;&#x3044;&#x7406;&#x7531;</a>という記事で紹介されていたグリーンスパン氏の本からの引用の孫引きになるが、以下のような調査がある。</p> <blockquote> <p>ハーバードの大学院生に、自分の年収が5万ドルで、同僚の年収がその半分の場合と、自分の年収が10万ドルで、同僚の年収がその倍の場合、どちらが幸せかと聞いたところ、大多数が前者を選んだという。</p> </blockquote> <p>ハーバードの大学院生という、勝ち組集団ですら、自分の幸福量は他人との相対関係によって決まると答えているわけだ。</p><br /> <p>こうして考えると、誹謗中傷揚げ足取りによって偉さ格差が是正したとしても、<br /> それはあくまで<b>ゼロサムゲーム</b>であって、社会全体の総幸福量は増えも減りもしていないように思える。</p><br /> <p>しかしながら、話はそう簡単ではない。<br /> 人間の幸福の感覚は、プロスペクト理論のグラフのような構造をしている可能性があるからだ。<br /> たとえば、「自分の年収が50万円増える嬉しさ」と、<br /> 「自分の年収が50万円減る悔しさ」の絶対値を比較すると、<br /> 「自分の年収が50万円減る悔しさ」の方がずっと大きい、<br /> というようなことが知られているからだ。<br /> 50万円の価値は、それを得た時と失ったときで、大きく異なるのだ。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230113120841" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230113/20230113120841.gif" width="420" height="306" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> <a href="https://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/investment/yamazaki/in05_report_yamazaki_20050603.html">&#x5C71;&#x5D0E;&#x5143;&#x6C0F;&#x306E;&#x30D7;&#x30ED;&#x30B9;&#x30DA;&#x30AF;&#x30C8;&#x7406;&#x8AD6;&#x306E;&#x89E3;&#x8AAC;&#x8A18;&#x4E8B;&#x3088;&#x308A;&#x5F15;&#x7528;</a><br /> (この図は、1000円で買った株が50円値上がりすることで得られる幸福量より、50円値下がりすることで失われる幸福量の方が大きいことを表している。)</p><br /> <p>これと同様に、<br /> 「自分が同僚たちよりも20%優れていると感じるときの幸福量」と、<br /> 「自分が同僚たちよりも20%劣っていると感じるときの不幸量」<br /> の絶対値を比較したとき、後者の方がずっと大きい可能性もある。</p><br /> <p>個人的な経験を一般化することはできないが、たとえば、私は幼い頃、ペーパーテストは得意だったし、絵画コンクールや水泳大会や作文コンクールでも特別の賞をもらうことが多く、1回の朝礼で、校長先生から私の名前が何度も呼ばれ、1人でいくつもの賞状を抱えるというようなシュールな状態がよくあったが、<b>その賞の数に比例した幸福量を感じていたかというと、まったくそんなことはなかった。そういうことが続くと、感覚が麻痺してしまって、それほど特別に嬉しいものではなくなってしまうのだ。</b><br /> しかし、あるとき賞状を授与された人達の中に、たまたま私が入っていないことがあって、別に私はそれをなんとも思っていなかったのに、とくに交流があったわけでもない女の子に、「ぜったい自分の名前が呼ばれると思ってたくせに!」というのと、あとザマーミロ的なことを、嫉妬むき出しで言われてびっくりしたことがある。それだけでなく、まったく予想もしない人から、強烈な嫉妬を告白されてびっくりするようなことが、何度かあった。そのたびに、「賞状ぐらい、欲しければいくらでもあげるよ。」と、後から思い返したりした。言われた瞬間は、あまりにも予想外で、不意を打たれた形になり、とっさにその言葉は出てこなかったのだけど。<a href="#f-fb6c6b86" name="fn-fb6c6b86" title="ちなみに、私は絵の描き方を知らない。絵の技術は全くない。子供の頃、全校の代表に私の絵が選ばれたのは、絵の技術が云々という話ではなかったんだと思う。そのとき特別賞を受賞した絵を大人になってから見返したことがあったけど、絵の技術なんかまったくなくて、輪郭もバランスもぐちゃぐちゃだけど、ほとばしる生命力というか躍動感というか、一種独特の異様な何かが画用紙一杯にぶちまけられていて、その絵を当時の大人達が選んだ理由がなんとなく分かる気もした。">*2</a><br /> このことから幼い私が実感したことは、<b style='color:red'>「賞状をたくさんもらえ、みんなの前で褒め称えられ続ける」ということは、たいして嬉しいことではないのに、「賞状をもらったことがなく、みんなの前で褒められたこともない」ということは、かなり不快な状態らしい</b>ということだ。</p><br /> <p>フランシスフクヤマは、人間には「対等願望(他人と同じだけ優れた存在になりたい)」と「優越願望(他人よりも優れた存在になりたい)」があり、それが歴史を前進させる要因の一つだ、みたいなことを論じていたけど、これは少し表現が実態とずれている感じがする。<br /> もっと実態に即した表現をするなら、「劣等回避願望(他人より劣った存在でいたくない)」と「優越願望(他人より優れた存在になりたい)」なんじゃないだろうか。<b>同等になりたいのではなく、劣りたくないのだ。</b><br /> そして、ぼくの個人的な経験からすると、プロスペクト理論のValue Functionのグラフのように、優越願望が満たされることによる幸福量より、劣等回避願望が満たされないことの不幸量の方が、絶対値が大きい可能性があるのではないかとも思ったりする。</p><br /> <p>もし、仮にそうだとすると、ネットの誹謗中傷揚げ足取りによって、ネットの偉さ格差が是正され、平等化が推し進められると、社会全体の総幸福量は増大することになる。<br /> そして、平等化に向かって進んできた人類の社会システムの進化の歴史は、同時に社会全体の総幸福量を増大させる方向での進化の歴史だったことになる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="新しい時代にふさわしい生き方とは">新しい時代にふさわしい生き方とは?</h4> <p><br /> ここまで見てきたようなことを踏まえると、新しい時代にふさわしい生き方というものが見えてくるような気がする。<br /> 「ポストモダンとWeb」という二つの強力な権力解体装置が、新しい社会構造形成の基盤となっている時代においては、自分の「偉さ」を失うまいともがけばもがくほど、泥沼にはまる。<br /> だから、「偉さ」への執着を捨て、淡々と自分の役割を果たしていくことが、Web時代に求められる生き方なのではないだろうか。<br /> Web時代の起業家は、少しも偉くない単なる一般人として、淡々と自己資本を蓄積し、淡々とビジョンを作り、淡々と新規サービスを立ち上げ、淡々と人々を雇い、少しも偉ぶらず、淡々と会社を経営し、淡々と人々の生活基盤を豊かにし、淡々と会社を売却して、その資本で淡々と次のサービス開発を行う。少しも偉くない、単なる一般人として。単に、起業家という社会的な役割を与えられただけの他の誰とも変わらない一個の人間として。<br /> Web時代の学者は、少しも偉くない単なる一般人として、淡々と知識を蓄積し、淡々と研究を練り上げ、淡々と学会に発表し、淡々と一般向け書籍を書いて社会に知識を還元し、淡々と研究生活を続ける。少しも偉ぶらずに。<br /> 医者も、弁護士も、政治家も、資本家も、すべて、少しも偉くない、単なる一般人として、究極のフラット化が実現した社会の中で、淡々と一個の生を全うするのだ。<br /> そこには、人々の頭上を覆う抑圧的な権力装置はない。頭上にはただ、青空が広がっているだけだ。</p><br /> <p>そして、このフラット化の流れに逆らい、ネット上で自分の偉さ(頭の良さ、美しさ、道徳的正しさ、経済力、etc.)を誇示しようという無意識の下心を持つ人間のブログは、それが学者だろうが、コンサルだろうが、市場原理主義者だろうが、ウヨクだろうが、サヨクだろうが、フェミニストであろうが、科学者だろうが関係なく、まるで体内に侵入した異物に白血球が寄り集まって攻撃し始めるように、ネットの住人たちがよってたかって誹謗中傷揚げ足取りを行い、炎上することになるのではないだろうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="それでもなおネットの誹謗中傷揚げ足取りは正当化できるようなものではない">それでもなお、ネットの誹謗中傷揚げ足取りは正当化できるようなものではない</h4> <p>こうしてみると、Webの誹謗中傷揚げ足取りは、「残念」どころか、人類史的な意味を持つ社会装置として機能しているようにも見える。<br /> しかし、だからといって、誹謗中傷揚げ足取りが美しい行為だとも思わないし、それを正当化する気にはとうていなれない。醜悪な動機で行われた醜悪な行為を詭弁で正当化するほどおぞましいことはない。それが結果として社会的に役に立っているという側面があったとしても、誹謗中傷揚げ足取りをやるような人間は下劣な人間であり、その精神は腐臭を放っており、そういう人間と交遊を深めたいとは、というてい思えない。<br /> ただ、たいていの物事には良い側面と悪い側面の両方があり、Webの誹謗中傷揚げ足取りのようなおぞましい行為すらもその例外ではない、ということは忘れてはいけないと思うのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="この記事のBGM">この記事のBGM</h4> <p>この記事を書きながら、ずっとボクの頭の中で流れていたのは、ジョン・レノンのイマジンという曲だ。<br /> さまざまな権力装置が解体へと向かい、頭上にはただ青空が広がる、そういう時代のイメージソングだ。<br /> <iframe width="420" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/3ibatGGIIQ4?wmode=transparent" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></p> <blockquote> <p>Imagine there's no Heaven<br /> It's easy if you try<br /> No Hell below us<br /> Above us only sky<br /> Imagine all the people<br /> Living for today...</p><p>Imagine there's no countries<br /> It isn't hard to do<br /> Nothing to kill or die for<br /> And no religion too<br /> Imagine all the people<br /> Living life in peace</p><p>You may say I'm a dreamer<br /> But I'm not the only one<br /> I hope someday you'll join us<br /> And the world will be as one</p><p>Imagine no possessions<br /> I wonder if you can<br /> No need for greed or hunger<br /> A brotherhood of man<br /> Imagine all the people<br /> Sharing all the world</p><p>You may say I'm a dreamer<br /> But I'm not the only one<br /> I hope someday you'll join us<br /> And the world will live as one</p><p>想像してごらん 天国なんて無いんだと<br /> ほら、簡単でしょう?<br /> 地面の下に地獄なんて無いし<br /> 僕たちの上には ただ空があるだけ<br /> さあ想像してごらん みんなが<br /> ただ今を生きているって...</p><p>想像してごらん 国なんて無いんだと<br /> そんなに難しくないでしょう?<br /> 殺す理由も死ぬ理由も無く<br /> そして宗教も無い<br /> さあ想像してごらん みんなが<br /> ただ平和に生きているって...</p><p>僕のことを夢想家だと言うかもしれないね<br /> でも僕一人じゃないはず<br /> いつかあなたもみんな仲間になって<br /> きっと世界は1つになるんだ</p><p>想像してごらん 何も所有しないって<br /> あなたなら出来ると思うよ<br /> 欲張ったり飢えることも無い<br /> 人はみんな兄弟なんだって<br /> 想像してごらん みんなが<br /> 世界を分かち合うんだって...</p><p>僕のことを夢想家だと言うかもしれないね<br /> でも僕一人じゃないはず<br /> いつかあなたもみんな仲間になって<br /> そして世界はきっと1つになるんだ</p> </blockquote> <p><br /> 今、我々にもっとも必要なことは、あらゆる権力が解体された、究極にフラット化された時代を生きる覚悟なのかもしれない。</p><p>The web is flat.</p> </div> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-17a4ee92" name="f-17a4ee92" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">これは、はてなダイアリーに限らず、これはすべてのブログで可能だ。たとえば、登録用のコード文字列をはてなに発行してもらい、それを自分のブログのトップページに一時的に表示させるだけで、自分がそのブログのオーナーであることを証明できるので、認証は簡単だ。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-fb6c6b86" name="f-fb6c6b86" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ちなみに、私は絵の描き方を知らない。絵の技術は全くない。子供の頃、全校の代表に私の絵が選ばれたのは、絵の技術が云々という話ではなかったんだと思う。そのとき特別賞を受賞した絵を大人になってから見返したことがあったけど、絵の技術なんかまったくなくて、輪郭もバランスもぐちゃぐちゃだけど、ほとばしる生命力というか躍動感というか、一種独特の異様な何かが画用紙一杯にぶちまけられていて、その絵を当時の大人達が選んだ理由がなんとなく分かる気もした。</span></p> </div> fromdusktildawn 読まれる記事を書くために、文章技術よりもはるかに有効なこと hatenablog://entry/10257846132601979765 2009-05-12T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:45:06+09:00 ブログ記事をより多くの方に読んでいただくために、 小手先の文章テクニックや 場当たり的なアクセス稼ぎテクニックなどよりも はるかに効果のあること <p>ブログ記事をより多くの方に読んでいただくために、<br /> <span style='font-size:170%;'>小手先の文章テクニックや</span><br /> <span style='font-size:170%;'>場当たり的なアクセス稼ぎテクニックなどよりも</span><br /> <span style='font-size:170%;'>はるかに効果のあること</span><br /> があると思います。</p><br /> <p>それは、経営戦略の基本中の基本である、需給バランスに徹底的にこだわることです。<br /> すなわち、需要があるのに供給が不足している記事を書くのです。</p><br /> <p>本来、「需要があるのに供給が不足している」というのは<span style='font-size:170%;color:red'>異常な状態</span>です。<br /> なぜなら、みんなが読みたがっているのに、誰も書いていない記事を書けば、たくさんの読者を獲得できるのは明らかだから、そういう記事は瞬く間にたくさんのブロガーに書かれ、需給はすぐにバランスしてしまうはずだから、<br /> <span style='font-size:170%;'>そんな状態は、本来アリエナイ</span>はずだからです。</p><br /> <p>したがって、「需要があるのに供給が不足している」という異常な状態は、<br /> なにか「供給を阻害している要因」がある場合にしか生じません。</p><br /> <p>なので、取るべき戦略は、</p><p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 記事の供給を阻害している要因を見つけ出し、そこに記事をぶつける</div></p><p>というものになります。</p><br /> <p>具体的には、以下のような戦略でブログ記事を書くと、あまり文章が上手でなくても、多くの方に読んでもらえる傾向があると思います。</p> <blockquote> <p>(1)ブログを書くのが<b>割に合わない</b>人たちだけが知っている情報を書く<br /> (2)その情報を知っている人は<b>立場上書くことができない</b>という情報を書く<br /> (3)通常<b>アリエナイ組み合わせの知識or経験</b>がないと書けない記事を書く<br /> (4)本屋とネットを探しても見つけられなかった情報を書く</p> </blockquote> <div class="section"> <h4>(1)ブログを書くのが割に合わない人たちだけが知っている情報を書く</h4> <p><br /> たとえば、業界内でそれなりにブランドを確立しているレベルのITベンチャーの経営層の人達は、とても忙しくてブログを書いているヒマはないし、あったとしても、そういう人の時給(正確には機会費用)<a href="#f-31eeeea4" name="fn-31eeeea4" title="本来時給で報酬をもらうような人達ではないが、あえて時給に換算したとすると、の話">*1</a>はとても高いので、ブログ記事を書くのは、<b>その時給に見合うだけの</b>自尊心の満足か、ビジネス的メリットのどちらかがないと、割に合いません。経済学の言葉で言うと、そういう人達は「機会費用」が高いわけです。</p><br /> <p>ところが、そういう人達は、そもそも日常の仕事でもプライベートでも十分に自尊心は満たされています。<br /> 日々、重要な顧客から一目置かれ、重要なプロジェクトの重要な会議に参加し、重要な意思決定を行い、業界の重要人物と打ち合わせし、上層に近い有能な部下達に指示を出していますから、わざわざブログ記事を書いてネットユーザに認めてもらわなくても、自尊心は十分に満たされているのです。</p><br /> <p>また、そういう人達が、自分のビジネスに具体的メリットをもたらすようなブログ記事を書くのは、かなり難しいです。ブログプロバイダーを運営している会社の社長ですら、サイトの立ち上げ期以外は、ブログを書き続けるのがだんだん割に合わなくなって、更新頻度がどんどん落ちていったり、だんだん内容のうすい、スカスカのブログ記事になっていったりします。</p><br /> <p>だから、この場合のブログ記事の供給阻害要因とは、<br /> 「機会費用が高すぎて、供給するには採算が合わないこと」<br /> となります。</p><br /> <p>なので、この阻害要因を狙ってブログ記事をぶつけると、多くの読者に読んでいただけます。</p><br /> <p>先ほどの例で行くと、「業界内でそれなりにブランドを確立しているレベルのITベンチャーの経営層」の人達が、経営会議で話しているような視点で書いたブログ記事は、多くの読者に読んでいただける傾向にあります。</p><br /> <p>たとえば、会社の経営陣が集まって、人事採用や昇進の方針決めをする会議で出てて思いついたネタには、以下のようなものがあります。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061230/1167474130">未来の転職が、過去にさかのぼって現在の自分を有能にする</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061230/1167474130" alt=""></p><p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060301/1141182389">「努力すればスキルが向上して上に昇れる」というのは幻想</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060301/1141182389" alt=""></p><br /> <p>それから、会社の経営層が出席する会議で頭の悪い発言を繰り返し、会社の上層部からダメ人間のレッテルを貼られた人達の様子をネタにしたものが以下の記事です。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060329/1143595622">「この人無能だな」と思われる人の3つの特徴</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060329/1143595622" alt=""></p><br /> <p>これは、一種のアービットラージでもあります。情報のあるところ(経営会議)から無いところ(ネット)へ情報を輸出することで、さや取りをやってるわけですね。</p><br /> <p>なお、ここではたまたまITベンチャーの経営層というケースを取り上げましたが、「ブログを書くのが割に合わない人たちだけが知っている情報」であれば、金融だろうが政治だろうがなんでもよいので、いろいろな応用パターンが考えられます。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(2)その情報を知っている人は「<b>立場上書くことができない</b>」という記事を匿名(コテハン)で書く</h4> <p><br /> たとえば、以下の記事に書かれたような「実情」を実感として知っている人は、立場上、それを書くことができないという矛盾があります。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080410/1207806673">身も蓋もない仕事の法則</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080410/1207806673" alt=""></p><br /> <p>この記事で箇条書きされたようなことは「実情」ではあるものの、社員の前ではとても公言できない、会社の役員飲み会のぶっちゃけトークで出てくるような放言です。<br /> 公言すると社内で人望を失いかねない物言いです。</p><br /> <p>もちろん、匿名であればこういう「実情」を書くことも出来ますが、こういう実情を知っている人間は、そもそも匿名でそういうことをネットに書く動機もメリットもありません。こういう実情を知っている人達は、仕事で自尊心を満たされているし、匿名で書いたところで、自分のビジネスにメリットをもたらすことはできませんから。<br /> こういう理由で、この手の情報は需要があるのにあまり供給されないわけです。</p><br /> <p>この「知っている人は立場上書くことができない」というパターンの情報は、ほかにもいろいろあると思います。お医者さんなんかにも多いんじゃないかと思ったり。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(3)通常アリエナイ組み合わせの知識or経験がないと書けない記事を書く</h4> <p><br /> たとえば、哲学っぽい本をいろいろ読みあさっている人はありふれています。だから、哲学っぽいテーマのブログ記事はネットにたくさん書き散らされています。</p><br /> <p>また、ビジネスの現場でビジネスモデルをバリバリ組み立てているような人も、めずらしくありません。だから、ビジネスネタも、ネットにあふれています。</p><br /> <p>しかし、哲学っぽい本をあれこれ読みあさりながら、ビジネスの現場でバリバリとビジネスモデルを組み立て、なおかつブログを書いているという、3つを兼ね備えた人種というのは数が限られます。</p><br /> <p>なので、哲学っぽい本をある程度読みあさっていないと書けない記事で、かつ、ビジネスの現場で現役で活躍している人の感覚が分からないと書けないような記事というのは、供給が不足しています。</p><br /> <p>もちろん、ビジネスの現場にいる人で哲学書を読む人もときどきいますが、たいていはある特定の哲学者のファンであり、「哲学っぽい本をあれこれ読みあさる」というような読み方をするのは、<b>ビジネスにあまり興味のない人に特有の読み方</b>なのです。</p><br /> <p>イメージがわくように、もっと具体的な言い方をすると、たとえば、ざっくりでいいので、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどのギリシャ哲学から、中世のアキナス、スコトゥス、オッカムを経て、デカルト、ルソー、カント、ヘーゲルにいたる近代哲学の大まかな流れ、そして、その「近代」的な安直な理性信仰への反発と解体というニーチェ的なるものからポストモダンへの流れをざっくりと把握しているくらいには哲学っぽい本を読んでないと書けないような記事で、なおかつ、仕事やビジネスの現場感覚をある程度もっていないと魅力的な記事に仕上がらないような記事は、供給が不足します。<br /> たとえば、以下のような記事です。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20071209/1197232409">「好きを貫く」よりも、もっと気分よく生きる方法</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20071209/1197232409" alt=""></p><br /> <p>また、もう一つの例として、「プログラミング×ビジネス&経済」というパターンもあります。</p><br /> <p>ビジネスモデルをバリバリ組み立てるような人の中には、経済や社会全体を俯瞰する視点を持つ人間がけっこういます。<br /> なので、経済や社会を俯瞰するような記事は、ネットにたくさんあります。</p><br /> <p>また、プログラマーの視点から社会やビジネスをとらえた記事も、ネットにはたくさん供給されています。</p><br /> <p>しかし、プログラマーの多くは、テクノロジーの視点から社会全体を把握しようとする人が大半で、経営者やビジネスマンのような視点から、社会を俯瞰するようなタイプが少ないです。</p><br /> <p>なので、コンピュータープログラマーの現場感覚と、ビジネスパーソン的な経済の俯瞰的感覚の両方を融合させて書いた以下のような記事は、供給が不足することになります。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061003/1159869683">現代という時代は、どのようなプログラミングを求めているのか?</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061003/1159869683" alt=""></p><p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060928/1159407912">「IT投資」という考え方そのものが間違っている</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060928/1159407912" alt=""></p><p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060118/1137558108">プログラミングとは経営判断の集積である</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060118/1137558108" alt=""></p><br /> <p>というわけで、通常アリエナイ組み合わせの知識を持っていたとしたら、このパターンはなかなかに有効です。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(4)本屋とネットを探しても見つけられなかった情報を書く</h4> <p><br /> これは、阻害要因が不明だけど、供給されていないことだけが分かっているパターンです。</p><br /> <p>googleでさんざん検索して、なおかつ、池袋のジュンク堂の専門書のコーナーを片端から読みあさっても、自分が欲しい情報が得られないときってありますよね。なぜかはしらないけど、その情報がどこにもない。<br /> そういうときは、自分でいろんな論文を解析して、メーカーに電話で問い合わせて、自力で答えにたどり着かなきゃならなくなります。<br /> そういう情報は、いわば自分で調べて、自分で作りだした情報であって、本屋にもネットにもない情報だから、そういう情報は、供給が不足どころか、供給がない状態なわけです。<br /> こういう、供給がないことが確かめられている記事を書くと、それなりに多くの人に読んでいただけるようですが、後述するように、これには注意点があります。</p><br /> <p>たとえば、私は花粉症なのですが、医者からもらった薬がちっとも効きません。<br /> ネットによると、その薬の<a href="http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4490019F1028_2_12/4490019F1028_2_12?view=body">&#x4E8C;&#x91CD;&#x76F2;&#x691C;&#x6CD5;&#x3067;&#x306E;&#x81E8;&#x5E8A;&#x6210;&#x7E3E;&#x306F;&#x300C;&#x6539;&#x5584;&#x7387;&#xFF15;&#xFF10;&#xFF05;&#x300D;</a>とあります。すなわち、半分の人は薬が効かず、しかも、残り半分も、完全に症状がなくなるわけじゃないというわけです。他の薬でも、改善率が100%の薬など無いし、完全に症状がなくなるのとはほど遠い状態です。なので、多くの人は、薬だけではどうしても症状が出てしまうと思われます。<br /> なので、薬を飲んでいてもマスクをすることになるわけですが、私の場合、マスクをしていてもやっぱり鼻づまりが酷い。<br /> どうもおかしいと思って、googleで検索してみても、さっぱり情報が引っかからない。<br /> しかたがないので、ジュンク堂の専門書のコーナーへ行ったのですが、そこでいくら本を読みあさっても、やっぱりマスクをしているのに鼻水がずるずる出てくる理由が書かれている本を見つけられない。<br /> なんじゃこりゃ、いったい何の陰謀だよ、と思いながら、しかたがないので、アレルゲンの分子構造や花粉の微細構造、アレルゲンを測定した論文などを読みあさるうち、オイラ的には衝撃的な結論に達する。<br /> なんと、花粉マスクは花粉は防げるけど、砕け散って細かくなった花粉破片はだだ漏れ、という詐欺みたいなことになっているとしか考えられない!<br /> ちきしょう!騙された!この詐欺野郎め!とか、花粉マスクメーカーに悪態をつきながら、花粉破片も除去できるマスクってないの?いやいや、それどころか、この調子では、花粉除去をうたっている換気口フィルターもやばいんじゃないの?花粉除去の掃除機は大丈夫か?空気清浄機は?と調べはじめたわけです。</p><br /> <p>で、せっかく調べたのだから、他の、薬があまり効かないタイプの花粉症患者の方にも調べたことを伝えるために、以下のようなブログ記事にしたわけです。<a href="#f-372aefb5" name="fn-372aefb5" title="ちなみに、その記事を書いたあとにお医者さんや薬剤師さんから聞いたうわさなどを総合すると、花粉症には処方薬のステロイド点鼻薬がすごく効くっぽいです。不運にも、私はそれを処方してくれるお医者さんに出会ったことがなかったのですが。また、花粉症の薬は相性の問題があるので、効かなければ効く薬に出会うまで次々と薬を変え続けるのがよいっぽいです。来年は私もそうしてみます。">*2</a></p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20090406/p1">あまり知られてないけど、すごく効果のある花粉症対策まとめ</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20090406/p1" alt=""></p><br /> <p>ただし、本屋でもネットでも見つからなかった情報をブログ記事にすると、異様に長くて読みにくい記事にならざるを得ません。<br /> その理由は、調べた本人が、その分野の専門家ではなく、情報に「権威」がないからです。</p><br /> <p>たとえば、ボクが医者か花粉アレルゲンフィルタの研究者であれば、結果だけ簡潔に書いた方がいいと思います。なぜなら、それは専門知識に裏付けられていることが暗黙の了解となっているので、詳細がわからないまま鵜呑みにしても比較的安全な情報だからです。<br /> しかしながら、まったくの門外漢である私が、花粉アレルゲンの除去について結論だけを簡潔に書いても信憑性など皆無ですから、読者はその情報を信用していいのかどうかがわからないので、その記事の情報は役に立ちません。</p><br /> <p>そこで、ぼくの推論が正しいかどうかを読者の方が検証できるように、自分がその結論に至った道筋を、使用したデータや論文の出典と共に、逐一ブログ記事のなかに埋め込む必要が出てくるのです。そうすることで、その記事は、書いた人間の権威に関係なく、信用できる情報かどうかが判定できるようになり、情報としての価値がでてくるのです。</p><br /> <p>また、これと同様のパターンの記事に、以下のようなものもあります。</p><br /> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070212/1171244226">思考の速度でパソコンを使う技術</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070212/1171244226" alt=""></p><br /> <p>これも、ネットや本屋でさんざん調べたのだけど、ボクが欲しい情報が見つからなかったため、自分で調べて作り上げたパソコン技法をまとめたものです。<br /> そもそも、パソコンのキーボード、マウス、IMEって、デフォルトのものはかなり効率が悪いです。そこで、最初はemacsやviのキーアサインで使っていたのですが、emacsやviのキーアサインも、かなりの無駄があることがだんだん分かってきた。また、emacsやviのキーアサインは、必ずしもプログラマでない一般ユーザの日常的なパソコン操作には、必ずしもフィットしていない。そこで、日常的なパソコン操作を最高能率にするようなパソコン操作技法や、それを開発するための戦略が必要になったわけです。そうして編み出した戦略と技法をまとめたものが、上記の記事なわけです。</p><br /> <p>たいていの情報は、ネットか本屋に落ちていますから、ネットにも本屋にもない情報に出会うのは、偶然に依存するところが大きいです。なので、このパターンは、たまたまそういう偶然に出会ったときに使えるパターンですね。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-31eeeea4" name="f-31eeeea4" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">本来時給で報酬をもらうような人達ではないが、あえて時給に換算したとすると、の話</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-372aefb5" name="f-372aefb5" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ちなみに、その記事を書いたあとにお医者さんや薬剤師さんから聞いたうわさなどを総合すると、花粉症には処方薬のステロイド点鼻薬がすごく効くっぽいです。不運にも、私はそれを処方してくれるお医者さんに出会ったことがなかったのですが。また、花粉症の薬は相性の問題があるので、効かなければ効く薬に出会うまで次々と薬を変え続けるのがよいっぽいです。来年は私もそうしてみます。</span></p> </div> fromdusktildawn あまり知られてないけど、すごく効果のある花粉症対策まとめ hatenablog://entry/10257846132601979772 2009-04-06T00:00:00+09:00 2023-01-19T12:47:17+09:00 ハイライト [落穴]売れ筋の「花粉用」マスクではアレルゲンだだ漏れ 売れ筋の花粉用マスクでも、除去できるのはせいぜい10〜30ミクロン程度 花粉のサイズは30ミクロンでも、0.76〜7ミクロンのアレルゲン粒子が大量に浮遊 すばらしい花粉アレルゲン除去性能のマスクを発見! [落穴]キッチンやお風呂の換気扇を回すと、給気口から花粉が大量侵入 → 市販の給気口花粉フィルターでは花粉アレルゲンがだだ漏れ → 100円ショップのグッズでちょっと工作して解決 意外と知られてない、すぐれもの花粉症対策アイテム [落穴]キッチンやリビングの空気清浄機が、ろくに機能していない? 炒め物などを作るときに発生する微… <div class="seemore"> <div class="section"> <h4 id="ハイライト">ハイライト</h4> <ul> <li>[落穴]売れ筋の「花粉用」マスクでは<b>アレルゲンだだ漏れ</b> <ul> <li>売れ筋の花粉用マスクでも、除去できるのはせいぜい10〜30ミクロン程度</li> <li>花粉のサイズは30ミクロンでも、0.76〜7ミクロンのアレルゲン粒子が大量に浮遊</li> <li><b>すばらしい花粉アレルゲン除去性能のマスクを発見!</b></li> </ul></li> <li>[落穴]キッチンやお風呂の換気扇を回すと、<b>給気口から花粉が大量侵入</b> <ul> <li>→ <b>市販の給気口花粉フィルターでは花粉アレルゲンがだだ漏れ</b></li> <li>→ 100円ショップのグッズでちょっと工作して解決</li> </ul></li> <li><b>意外と知られてない、すぐれもの花粉症対策アイテム</b></li> <li>[落穴]<b>キッチンやリビングの空気清浄機が、ろくに機能していない?</b> <ul> <li>炒め物などを作るときに発生する微細な油滴でフィルターが目詰まりして機能しなくなる。</li> <li>換気扇を回していても、微細な油滴が部屋に流れ出して空気清浄機に吸い込まれる。</li> </ul></li> <li><b>[落穴] 鼻腔の奥にまで花粉が付着</b> <ul> <li>→ 「鼻うがい」で洗い流す</li> <li>→ [落穴]医師達が<b>水で鼻うがいの危険性</b>を指摘</li> <li>→ でも生理食塩水なんてめんどくさくて作ってらんない → 解決策は。。。</li> </ul></li> <li><b>本当に効果のある空気清浄機の買い方、使い方</b></li> <li>インチキ臭い花粉抑制機能をうたう高価な空気清浄機</li> <li><b>多くの掃除機が花粉アレルゲンをまき散らしている?</b> <ul> <li>→ 花粉アレルゲンをまき散らさない掃除機の選び方</li> </ul></li> </ul> </div> <div class="section"> <h4 id="売れ筋の花粉用マスクのほとんどで花粉アレルゲンがだだ漏れ">売れ筋の花粉用マスクのほとんどで、花粉アレルゲンがだだ漏れ?</h4> <p><br /> たとえば、薬局やコンビニでで売れ筋の、ユニチャームの「花粉用」と書かれた超立体マスクは<b>30ミクロンの粒子を98.1%除去</b>できるとのことです(メーカーによる回答)。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013P5KII/search-3213-22/" target="_blank">ユニ・チャーム 超立体マスク花粉用ス-パ-ふつう10枚</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013P5KII/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51L1kn1vTfL._SL160_.jpg" alt="B0013P5KII" border="0" /></a><br /> そして、<b>スギ花粉の大きさは30〜40ミクロン</b>ですから、花粉自体はかなり除去できます。</p><br /> <p>しかしながら、空気中には<span style='font-size:170%;'>花粉よりもはるかに小さなサイズの花粉アレルゲン含有粒子</span>がけっこうな量浮遊していることが、研究者の方々の実証実験によって明らかにされ、学会に報告されています。</p><br /> <p>たとえば、以下のグラフは、郡山女子大学の菅原文子らの研究(菅原 文子 宮沢 博 岡部 かおり 住居侵入スギ花粉エアロゾルに関する研究 日本建築学会計画系論文集 第515号 75-81 1999年1月)で測定された、屋内及び屋外で採取された花粉アレルゲン粒子の粒径分布です。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120850" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120850.png" width="450" height="463" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> (元の論文は、数字がつぶれて読みにくいので、見やすいように、引用者が赤字の大きな文字にした数字を添えた)</p><br /> <p>これを見て分かるように、屋内でも屋外でも、<br /> <span style='font-size:170%;'>スギ花粉のサイズである30〜40ミクロンよりも、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>はるかに小さな0.76〜7ミクロンの</span><br /> <span style='font-size:170%;'>スギ花粉アレルゲン粒子が大量に</span><br /> 浮遊していることが分かります。(40ミクロンより大きな粒子は、複数の花粉や花粉破片とそれ以外の何かがくっついて塊となっている可能性が考えられます。)</p><br /> <br /> <p>さきほどのユニチャームの「花粉用」超立体マスク(30ミクロンの粒子を98.1%除去)でかなり漏らしてしまうと思われるアレルゲン粒子粒径の部分を赤く塗りつぶすと、だいたい以下のような感じになると思われます。<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120858" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120858.png" width="450" height="463" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> 15〜22.5ミクロン、22.5〜30ミクロンの部分が完全に赤ではなく、色を薄く塗ったのは、ほぼ除去可能とうたっている粒子の半分ぐらいのサイズまでなら、漏らしてしまう粒子量はそれほどには多くないだろうという想定からです。</p><br /> <p>これを見て分かるように、ユニチャームの「花粉用」超立体マスクでは、かなりの量のスギ花粉アレルゲン粒子を漏らしてしまうと思われます。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013P5KII/search-3213-22/" target="_blank">ユニ・チャーム 超立体マスク花粉用ス-パ-ふつう10枚</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0013P5KII/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51L1kn1vTfL._SL160_.jpg" alt="B0013P5KII" border="0" /></a></p><br /> <p>そして、スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れなのは、ユニチャームの花粉用マスクだけではありません。<br /> 電話で各メーカーに除去可能な粒径サイズを問い合わせて回ったところ、<br /> <span style='font-size:170%;'>現在市販されている「花粉用」マスクのほとんどは、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れ</span><br /> のようです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%'>花粉用マスクをしていても</span><br /> <span style='font-size:170%'>鼻づまりが、いっこうにおさまらない</span><br /> 理由も分かるような気がします。(オイラの個人的体験談)<a href="#f-5abdb5e6" name="fn-5abdb5e6" title="薬を飲んでいても、鼻水鼻づまりになる方は、私以外にも割と多いようですが。">*1</a></p><br /> <p>また、山形県衛生研究所の高橋裕一(スギ花粉アレルゲンの飛散動態と花粉アレルゲンの情報化の可能性  環境技術 Vol.32 NO.3 (2003))においても、<span style='font-size:170%;'>空気中に飛散する花粉の数と、花粉アレルゲンの量は比例しない</span>ことがあることが最近の研究から分かっているとされていますが、これは、何らかの環境条件の違いによって、花粉が壊れて出来た花粉破片と壊れずにそのまま飛散する花粉の比率が変わるためかもしれません。<br /> その原因はまだよく分かっていないようですがですが、気温や湿度によって花粉の破裂しやすさが変わるのかも知れませんし、あるいは、雨の降らない日が続くと、花粉がアスファルトに降り積もり、その上を歩行者や自動車が踏みつぶしていくことで、破砕された花粉が蓄積されるなどの可能性が考えられます。</p><br /> <p>スギ花粉の飛散量と空気中のスギ花粉アレルゲン濃度の不一致の原因については、永田文男氏<a href="#f-8c3a559e" name="fn-8c3a559e" title="この方自身は現役の研究者ではなく、老後に趣味で走査電子顕微鏡(安い物でも400万円ぐらいする!)を購入して身の回りのいろいろなものを観察しているようです。">*2</a>の走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察記録が参考になります。<br /> <a href="http://www.technex.co.jp/tinycafe/discovery10.html">&#x6C38;&#x7530;&#x6C0F;&#x306F;&#x3001;&#xFF13;&#x6708;&#xFF12;&#xFF12;&#x65E5;&#x301C;&#xFF15;&#x6708;&#xFF11;&#xFF15;&#x65E5;&#x306B;&#x304B;&#x3051;&#x3066;&#x3001;&#x81EA;&#x5206;&#x306E;&#x8ECA;&#x306E;&#x30DC;&#x30F3;&#x30CD;&#x30C3;&#x30C8;&#x306B;&#x4ED8;&#x7740;&#x3057;&#x305F;&#x6749;&#x82B1;&#x7C89;&#x3092;&#x3001;&#x8D70;&#x67FB;&#x96FB;&#x5B50;&#x9855;&#x5FAE;&#x93E1;&#x3067;&#x89B3;&#x5BDF;&#x3057;&#x307E;&#x3057;&#x305F;&#x3002;</a></p><br /> <p>3月22日に採取した花粉<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120956" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120956.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119121000" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119121000.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>4月11日に採取した花粉<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119121003" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119121003.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119121007" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119121007.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>4月20日に採取した花粉<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119121010" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119121010.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119121014" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119121014.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>5月15日に採取した花粉<br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120838" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120838.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span><br /> <span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120841" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120841.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>早い時期に採取された花粉はきれいな形状を保っているのですが、日が進むにつれ、しだいに砕けた花粉が多くなっていく様子が見て取れます。</p><br /> <p>このように、いろいろな情報を総合して判断すると、「花粉用」マスクでは、スギ花粉アレルゲン粒子がだだ漏れな可能性はかなり濃厚だと思われます。<br /> そして、それが「花粉用」である限り、どのメーカーのマスクを買ったとしても、結局はアレルゲンがだだ漏れなわけです。</p><br /> <p>では、「花粉用」がダメなら、「ウイルス用」ではどうでしょうか?<br /> ウイルス用マスクは、花粉よりもずっと細かい粒子まで除去可能とうたっていますし。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000KJGP3C/search-3213-22/" target="_blank">超立体 マスクウイルスガード ふつう 5枚</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000KJGP3C/search-3213-22/" target="_blank"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51%2B3WCoYmSL._SL160_.jpg" alt="B000KJGP3C" border="0" /></a></p><br /> <p>ユニチャームに問い合わせたところ、ユニチャームの「ウイルス用」超立体マスクは、<b>3ミクロンの粒子を95%</b>まで除去できるとのことでした。<br /> この情報を元に、「ウイルス用」超立体マスクが漏らしてしまと思われるスギ花粉アレルゲン粒子の様子と、さきほどと同様の要領でグラフに書き込んでみると、次のようになります。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120902" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120902.png" width="450" height="463" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>先ほどの花粉用マスクに比べると、ずいぶんマシですが、それでも、<br /> <span style='font-size:170%;'>ウィルス用マスクでも</span><br /> <span style='font-size:170%;'>花粉アレルゲン粒子がだだ漏れ</span><br /> <span style='font-size:170%;'>なことには変わりありません。</span></p><br /> <p>結局、スギ花粉アレルゲン粒子を漏らさないマスクというのはないのでしょうか?</p><br /> <p>そこで、あちこちの会社に問い合わせたところ、<br /> とうとう次のようなマスクを見つけました。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001EYQ0N2/search-3213-22/" target="_blank">3M社製 N95マスク 8000N95(1箱30枚入)</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001EYQ0N2/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/21xJRbZ8TNL._SL160_.jpg" alt="B001EYQ0N2" border="0" /></a></p><br /> <p>3M社の担当者に問い合わせたところ、このマスクは0.06〜0.1ミクロンの塩化ナトリウムが95%除去できたことが確認されているそうです。<br /> このマスクが漏らしてしまうアレルゲン粒子の粒径範囲を、先ほどユニチャームの花粉用マスクやウイルス用マスクについてやったように、赤く塗りつぶすと、次のようなグラフになります。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120850" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120850.png" width="450" height="463" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>真っ白ですね。赤く塗りつぶされたところは全くありません。<br /> つまり、この3M社のマスクは、菅原文子氏らの研究で計測された<br /> <span style='font-size:170%;'>全ての粒径のアレルゲン粒子を、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>ほぼ100%除去します。</span></p><br /> <p>ただ、この手の高性能マスクは、<span style='font-size:170%;'>呼吸がしにくいのではないか</span>という不安があります。<br /> 一般に、フィルターは目が細かいほど通気性能が落ちます。粒子除去性能と通気性能はトレードオフの関係にあるのです。<br /> たとえば、猛烈な勢いでゴミを濾過しなければならないパック式の掃除機は、通気性能の制約から、十分に粒子除去性能を上げられず、室内にアレルゲン粒子をまき散らしてしまうものも多いようですし、換気扇を回したときに給気口から勢いよく入ってくる外気からスギ花粉を除去するための給気口フィルタも、通気性を確保するために粒子除去性能は低く、給気口フィルターを付けていても大量のアレルゲン粒子が室内に侵入します。</p><br /> <p>ですから、原理的に、この3M社のマスクのように、高い粒子除去性能のフィルタを使っているマスクは、単位面積あたりの通気性能が低いはずですから、装着すると、かなり呼吸が苦しくなってしまうような気がします。</p><br /> <p>しかしながら、この3M社のマスクは空気清浄機のフィルターと同じ原理で高い通気性能を確保するように設計することで、高い粒子除去性能とそこそこの通気性能を両立させています。</p><br /> <p>フィルターの目を細かくして、より細かい粒子まで除去できるようにすると、<b>単位面積あたりの</b>通気性能が落ちます。<br /> このため、たとえば、空気清浄機のフィルターは、<b>フィルターの<span style=''>面積</span>を増やすことによって、高い粒子除去性能と通気性能を両立させています。</b></p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0002V625Y/search-3213-22/" target="_blank">HITACHI 空気清浄機用交換フィルター (EP-X20用) EPF-X20H</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0002V625Y/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/11K3TV1J31L._SL160_.jpg" alt="B0002V625Y" border="0" /></a></p><br /> <p>空気清浄機のフィルターをよく見ると、蛇腹状に折りたたまれているのが分かります。これによって、実質的なフィルタ面積を増やし、高い粒子除去性能の代償として失った通気性能を取り返しているのです。</p><br /> <p>市販されている花粉用マスクの多くは、ふにゃふにゃの素材を使っているため、息を吸い込むときに、フィルタが鼻の穴や口に吸い寄せられて凹んでしまい、鼻の穴や口との距離が縮まり、実質的にマスクのごく一部、鼻の穴や口の周辺だけをつかって外気をフィルターして空気を吸い込むことになっています。<br /> このため、息を吸い込むときは、実質的なフィルタ面積が小さく、通気性が悪いのですが、花粉アレルゲン粒子をだだ漏れにしてしまうほどフィルターの目が粗いために、フィルター素材自体の通気性能が高く、これが問題として顕在化していません。</p><br /> <p>しかし、前述の3M社のマスクのように、粒子除去性能の高いフィルター素材を使ったマスクだと、この問題が顕在化します。通常のマスクと同じような形状のマスクにしたら、通気性能が低下し、かなり呼吸がしにくくなる可能性があります。</p><br /> <p>この問題を、3M社のマスクは、マスクの素材を形状を維持できるくらいには堅くし、マスクの形状をお椀型に維持することによって、解決しています。(付けてて痛くなるほどには堅くはない。許容範囲内なくらいには付け心地はソフト。)<br /> マスクの素材が堅く、お椀型の形状を維持していると、息を吸うときにフィルターが鼻の穴や口元に吸い寄せられるのが防がれます。そのため、息を吸うときに、マスク全体がフィルターとして機能するため、実質的なフィルタ面積が増えるのです。</p><br /> <p>3M社のマスクは、このようにして実質的なフィルタ面積を増やしているため、実際に装着してみても、それほど息苦しくありません。少なくとも、私としては十分に許容範囲内です。</p><br /> <p>ただし、お椀型にすると、フィット性能が下がるという問題があります。通常の立体裁断の不織布の花粉用マスクの場合、柔軟な素材のために顔に頬のあたりでびったり顔に貼り付くため、フィット性能が高いです。これに比べると、お椀型のマスクは、お椀の縁の部分だけが顔面にくっつく形になるので、フィット性能はどうしても下がってしまいます。</p><br /> <p>この問題を解決するため、3M社のマスクは、けっこう強力なゴムによってお椀を顔面に押しつけることで、フィット性の低さを補っています。<br /> しかし、<b style=''>お椀型のマスクをしっかり顔面に押しつけてフィットさせられるほどの強度のゴムを耳にかけると、耳が痛くなってしまわないでしょうか?</b><br /> 3M社のマスクは、ゴムを耳ではなく、後頭部に回すようにすることで、この問題を解決しています。しかも、ゴムは2本ありますので、かなり力が分散されます。</p><br /> <p>このように、3M社のマスクは、細部まで巧妙に考え抜かれて設計されていますが、弱点もあります。<br /> それは、顔の形によって、フィットしないことがあるという点です。<br /> 売れ筋の不織布の立体裁断のマスクは、柔軟な素材を使っていますから、少々顔の形状が違う人でも、それなりにフィットします。<br /> しかしながら、お椀型のマスクは、柔軟に形状を変えることができませんから、顔の形状が合わない人だと、どうしても隙間が出来てしまうのです。<br /> <a href="http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/flu2007/pickup/200803/505731.html">&#x5317;&#x91CC;&#x5927;&#x5B66;&#x533B;&#x5B66;&#x90E8;&#x885B;&#x751F;&#x5B66;&#x30FB;&#x516C;&#x8846;&#x885B;&#x751F;&#x5B66;&#x52A9;&#x6559;&#x306E;&#x548C;&#x7530;&#x8015;&#x6CBB;&#x6C0F;&#x306B;&#x3088;&#x308B;&#x3068;&#x3001;&#x30AB;&#x30CA;&#x30C0;&#x306E;&#x533B;&#x7642;&#x6A5F;&#x95A2;&#x3067;&#x884C;&#x3063;&#x305F;&#x30D5;&#x30A3;&#x30C3;&#x30C8;&#x30C6;&#x30B9;&#x30C8;&#x306E;&#x7D50;&#x679C;&#x3067;&#x306F;&#x3001;&#xFF11;&#x301C;&#xFF12;&#x5272;&#x306E;&#x4EBA;&#x304C;&#x3001;&#x7B2C;&#x4E00;&#x9078;&#x629E;&#x306E;&#x30DE;&#x30B9;&#x30AF;&#x3067;&#x306F;&#x30D5;&#x30A3;&#x30C3;&#x30C8;&#x305B;&#x305A;&#x3001;&#xFF13;&#x7A2E;&#x985E;&#x306E;&#x30DE;&#x30B9;&#x30AF;&#x3092;&#x7528;&#x610F;&#x3057;&#x305F;&#x5834;&#x5408;&#x306F;&#x3001;99%&#x304C;&#x30D5;&#x30A3;&#x30C3;&#x30C8;&#x3057;&#x305F;</a>とのことです。<br /> また、この3M社のマスクのアマゾンの評価欄を見ると、フィットした方としなかった方で評価が分かれています:</p> <blockquote> <p>合う合わないはあるにせよ、呼吸の深い人や動きながら作業する人には<br /> 平形マスクでは息を吸う際に貼りついたり隙間が出来るのでカップ型に限りますね</p> </blockquote> <p>という書き込みがある一方で、</p> <blockquote> <p>女性の場合カップが大きすぎる気がします。鼻に隙間も出来てしまうので少し高くてもフィット性の高い折り畳み式のソフトタイプの方が良いと思いました。カップ式だと下を向いただけでずれてしまいます。隙間があるとマスクの意味があまり無いような気がします。 </p> </blockquote> <p>という書き込みもあります。</p><br /> <p>わたしも、このマスクを買って付けてみました。<br /> このマスクは、鼻の形状に合わせるための柔らかい金属板がついており、鼻の部分はそれでフィットすることができます。<br /> しかしながら、私の顔は平均よりやや小さいため(女性用のマスクがちょうどよい)、いちおうフィットはするものの、頬のあたりの密着度が緩い感じがして、少し不安を覚えます。<br /> そこで、大きめの普通の花粉用マスク(ノーズフィットのないもの)をまず装着し、その上からこのマスクをかぶせて使うようにしたら(内側のマスクの微妙な厚みが追加されたせいで)密着度が上がり、完全なフィット感が得られました。<br /> また、マスクを二重に付けているにも係わらず、思ったよりは呼吸は楽で、私としては、十分に許容範囲内でした。</p><br /> <p>あと値段ですが、このマスクは一箱30枚入りで2390円ですから、1枚約80円です。<br /> ユニチャームの超立体マスクは、アレルゲン粒子が大量にだだ漏れの花粉用で1枚約50円、漏れる量は少なくはなるけど、やっぱりアレルゲン粒子がだだ漏れのウイルス用だと1枚約160円でしたので、それと比較すると、これだけの性能と使い勝手で1枚80円というのは、かなり安いように思えます。<br /> さらに、このマスクは本来は使い捨てですが、このマスクの内側に、ノーズフィットの付いていない、1枚30円くらいの大きなサイズのマスクをすれば、毎日内側の30円マスクを取り替えるだけで、この80円マスクを1週間ぐらいは使えて経済的です。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000LRT2OW/search-3213-22/" target="_blank">超立体 マスク花粉用 やや大きめ 30枚</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000LRT2OW/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51w4OGMKi8L._SL160_.jpg" alt="B000LRT2OW" border="0" /></a></p><br /> <p>それから、人によってはかなり致命的になってしまう問題が、このマスクにはあります。<br /> それは外見です。<br /> このマスクは、一般的な花粉用マスクとは、かなり形状が違い、目立ちます。<br /> そのうえさらにマスクを二重になどしていたら、<span style='font-size:170%;'>かなり怪しい人</span>になってしまいます。<br /> お客さん回りをする営業マンはまず無理で、こんなものを付けるのはプログラマーやデザイナーなど、あまりお客さん回りをしないでも仕事ができる職種の人だけかも知れません。</p><br /> <br /> <p>それでは、お客さん回りをせずに済む職種の方は、このマスクを買えば花粉アレルゲンを防げて、めでたしめでたしという結論でいいのでしょうか?</p><br /> <p>実は、前述した菅原文子らの研究には、<br /> <span style='font-size:170%;'>重大な落とし穴</span><br /> があります。</p><br /> <p>彼女らの研究では、スギ花粉アレルゲン粒子を採取するのに、八段型アンダーセンサンプラーという器具を使いました。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120906" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120906.jpg" width="230" height="255" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>この写真の八段型アンダーセンサンプラーは、実際に彼女たちが実験に使用したものとは別のものですが、基本的なメカニズムは同じです。<br /> 八段型アンダーセンサンプラーは、空気中の粒子(エアロゾル)を8粒径区分に分けて捕集する装置です。たとえば、この写真のアンダーセンサンプラーは0.43ミクロン以上の粒子を粒子サイズ別に分けて捕集します。</p><br /> <p>論文によれば、前述の菅原文子らの研究で使用されたアンダーセンサンプラーの捕集粒径区分は、以下のようになります。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120909" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120909.jpg" width="435" height="84" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>これを見て分かるように、この研究では、0.76ミクロン以上の粒子が捕集され、研究対象とされています。<br /> 逆に言えば、<br /> <span style='font-size:170%;'>0.76ミクロン以下の粒子は捕捉できていない</span><br /> のです。</p><br /> <p>ここで問題となってくるのが、0.76ミクロン以下のスギ花粉アレルゲン粒子がどの程度存在するかです。</p><br /> <p>実は、空気中の杉花粉の個数と、空気中に含まれる杉花粉アレルゲンの濃度が一致しないもう一つの理由の一つとして、<span style='font-size:170%;'>杉花粉表面のオービクルと呼ばれる粒子が分離して浮遊</span>している可能性も指摘されています。<br /> たとえば、前述の<a href="http://www.technex.co.jp/tinycafe/discovery11.html">&#x6C38;&#x7530;&#x6587;&#x7537;&#x6C0F;&#x304C;&#x3001;&#x81EA;&#x5206;&#x306E;&#x8ECA;&#x306E;&#x30DC;&#x30F3;&#x30CD;&#x30C3;&#x30C8;&#x306B;&#x4ED8;&#x7740;&#x3057;&#x305F;&#x6749;&#x82B1;&#x7C89;&#x3092;&#x8D70;&#x67FB;&#x96FB;&#x5B50;&#x9855;&#x5FAE;&#x93E1;&#x3067;&#x64AE;&#x5F71;&#x3057;&#x305F;</a>のが次の写真です。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120927" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120927.jpg" width="530" height="398" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>この写真では、杉花粉の表面に<span style='font-size:170%;'>0.2〜0.5ミクロン</span>程度の、金平糖のような形をした粒子と、それよりも小さな粒子のように見える物がビッシリと付着しているのが見て取れます。<br /> この写真で見える粒子はオービクルやセキシンで、そのどちらにも花粉アレルゲン物質の一つであるCryj1(分子量は約4万)が含まれていることが確認されています。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120913" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120913.jpg" width="355" height="261" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>以下は、スギ花粉の構造図です。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120930" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120930.jpg" width="374" height="397" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>(神奈川歯科大学の中村澄夫教授の発表を、永田文男氏がレポートしたものから引用)</p><br /> <p>また、次の写真は、花粉表面のどの部分がオービクルで、どの部分がセキシンかを示したものです。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120934" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120934.jpg" width="530" height="396" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>(この写真に写っているのは、オービクルがかなりはげ落ちた状態の花粉?)</p><br /> <p>この図と写真からわかるように、一番外側がオービクル層です。先ほど、最初に示した走査電子顕微鏡写真の、0.5ミクロンくらいの金平糖のような形の粒子が、おそらくはオービクル粒子だと思われます。</p><br /> <p>その次の層が、セキシン層です。最初の写真で、金平糖のような大きな粒子以外に、細かな粒子状のものがたくさん見えましたが、これが未成熟な小さなオービクルなのか、それともセキシンなのかは、私には判然としません。<br /> どちらも、Cryj1という花粉アレルゲン物質が大量に含まれているという点では、我々花粉症患者の敵であるということに、変わりはないのですが、構造上、オービクルの方が花粉から分離しやすそうではあります。</p><br /> <p><a href="http://pollen.sci.yokohama-cu.ac.jp/2allergy-2.html">&#x30AA;&#x30FC;&#x30D3;&#x30AF;&#x30EB;&#x53CA;&#x3073;&#x30BB;&#x30AD;&#x30B7;&#x30F3;&#x306B;&#x82B1;&#x7C89;&#x30A2;&#x30EC;&#x30EB;&#x30B2;&#x30F3;&#x7269;&#x8CEA;Cryj1&#x304C;&#x542B;&#x307E;&#x308C;&#x3066;&#x3044;&#x308B;</a>ことは、免疫電子顕微鏡法<a href="#f-ece3c2aa" name="fn-ece3c2aa" title="免疫電子顕微鏡法とは、電子顕微鏡を利用して組織や細胞内の抗原を観察する方法です。電子顕微鏡で抗原を検出するには抗体を用います。このときに金コロイド、フェリチン、プルオキシダーゼなどの電子密度の高い物質または電子密度の高い反応物を作る物質で抗体を標識させて、可視化させます。">*3</a>で確かめられています。以下の写真は、神奈川歯科大学の中村澄夫教授の講演で発表されたもので、免疫電子顕微鏡法でオービクルとセキシン部にCryj1が多く含まれている様子を観察したものだとのことです(<a href="http://www.technex.co.jp/tinycafe/discovery13.html">&#x8B1B;&#x6F14;&#x3092;&#x8074;&#x304D;&#x306B;&#x884C;&#x3063;&#x305F;&#x6C38;&#x7530;&#x6587;&#x7537;&#x6C0F;&#x306E;&#x30EC;&#x30DD;&#x30FC;&#x30C8;&#x304B;&#x3089;&#x5F15;&#x7528;</a>)。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120916" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120916.jpg" width="566" height="397" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>(小さく黒く見える金粒子があるところに、花粉症を引き起こすアルゲンが分布していることが見て取れます。)</p><br /> <p>スギ花粉には、Cryj1とCryj2という2種類の杉花粉アレルゲン物質が含まれています。オービクルとセキシンにはCryj1が、花粉内部のデンプン粒にはCryj2が含まれています。Cryj2の分子量は、Cryj1とほぼ同じです。<br /> セキシンにCryj1が含まれていることが、Cryj1より作製した抗体を用いた電顕レベルの免疫金コロイド法によって確認されたことについては、<a href="http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kanho/kafun/torikumi/pollen_report1998.pdf">&#x6771;&#x4EAC;&#x90FD;&#x300C;&#x82B1;&#x7C89;&#x75C7;&#x5BFE;&#x7B56;&#x7DCF;&#x5408;&#x5831;&#x544A;&#x66F8;&#x300D;(&#x5E73;&#x6210;10&#x5E74;&#x767A;&#x8868;)</a>でも言及されています。</p><br /> <p>このオービクルのサイズについては、別の文献では「1ミクロン程度」や「2ミクロン」などと書かれていることがあり、永田氏の走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロン程度というサイズ計測が誤っている可能性も考えられます。また、逆に、他の文献の記述が誤っているか、もしくは、計測精度などの問題で、実際には0.5ミクロン程度のものを「1ミクロン程度」という測定しかできなかった可能性もあります。<br /> 実は、ここは非常に重要なところです。永田氏の計測したオービクルサイズと、他の文献に記載されているサイズのどちらの信憑性が高いかは、<span style='font-size:170%;'>様々な花粉症対策商品の有効性を評価するのに<span style=''>重要な意味</span></span>を持つケースが出てくる可能性が考えられます。</p><br /> <p>もちろん、ほとんどの花粉用マスクは数ミクロン〜数十ミクロンという一桁〜二桁大きな粒子サイズの除去用に作られているので、オービクルのサイズが1ミクロンであろうが、0.5ミクロンであろうが、どっちにしろ、花粉アレルゲンはだだ漏れでなので、そんな細かなサイズの違いなど、どうでもいい話です。</p><br /> <p>しかしながら、たとえば、料理などで換気扇を回したときに、給気口から花粉が入ってくるのを防ぐ市販の給気口フィルターでは、その物理的な制約から、0.3〜0.5ミクロン粒子の除去率が31.50%〜46.50%、1.0〜2.0ミクロン粒子の除去率が56.50%〜70.60%という性能のものが出回っていたりします。<br /> このケースでは、オービクルのサイズが1〜2ミクロンであるなら5〜6割を除去できますが、0.5ミクロンであれば、3〜4割程度しか除去できないことになります。なので、オービクルのサイズの違いがやや意味を持ってきます。</p><br /> <p>また、三洋の掃除機の標準のパックでは、0.5〜1ミクロンの粒子を6割程度除去、2ミクロンだとほぼ全部除去できるという性能だとのことです。これもきわどい数字で、<span style='font-size:170%;'>オービクルのサイズが0.5ミクロンか、それとも1〜2ミクロンかで、掃除機の排気口からまき散らされるアレルゲン粒子の量が数十パーセントも変わってきそう</span>です。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00137VGL6/search-3213-22/" target="_blank">SANYO 軽量 コンパクトクリーナー 「きわどりターボブラシ」 (ブルー) SC-WR5J(L)</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00137VGL6/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/31GkmFbFRXL._SL160_.jpg" alt="B00137VGL6" border="0" /></a></p><br /> <p>掃除機の排気口からアレルゲン粒子がまき散らされるのを防ぐために、三洋のハイグレードの掃除機パックを使うとしても、ハイグレードパックの除去性能は「0.5〜1ミクロン粒子をほとんど除去する」という回答でしたから、もしオービクルのサイズが1〜2ミクロンであれば、標準パックではなく、ハイグレードの掃除機パックを買った方がよさそうだとということにもなりかねません。<br /> また、たとえハイグレードの掃除機パックを使ったとしても、「0.5〜1ミクロン粒子をほとんど除去する」という性能に対し、0.5ミクロン程度というオービクルのサイズはけっこうギリギリであり、不安に思う人もいるかも知れません。<br /> そういう人は、「本当にハイグレードのパックを使えばパック式の掃除機でも大丈夫だと言えるのか?それとも0.3ミクロン粒子をほぼ100%除去できるというシャープのキレイオンを使ったほうが安心なのか?」という、<span style='font-size:170%;'>けっこう大きな判断に影響</span>を及ぼしかねません。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001JA41PA/search-3213-22/" target="_blank">SHARP KIREION 高濃度「プラズマクラスター」技術搭載 サイクロンクリーナー パワーヘッド シルバー系 EC-VX200-S</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001JA41PA/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/41LePP9MxRL._SL160_.jpg" alt="B001JA41PA" border="0" /></a></p><br /> <p>このように、オービクルの実際のサイズはけっこう重要なので、永田氏が走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロンというサイズと、他の文献に書かれている「1〜2ミクロン程度」という記載では、どちらの方が信憑性があるのか、考察してみました。</p><br /> <p>で、結論から言うと、少なくとも東京都のスギ花粉のオービクルサイズに関しては、永田氏が走査電子顕微鏡写真から見て取れる0.5ミクロンというサイズの方が信憑性が高いと思われました。<br /> その理由は以下の通りです。</p> <blockquote> <p>(1)永田氏は3〜5月のかなり長期間にわたって、何度もスギ花粉を観察した。</p><br /> <p>(2)成熟したスギ花粉だけでなく、未成熟のスギ花粉も観察した。</p><br /> <p>(3)特定のスギの木の花粉ではなく、自動車のボンネットに付着した花粉を観察した。</p><br /> <p>(4)オービクルのサイズが1ミクロン程度としている文献(ネット上の文章)で、計測条件の詳細が記載されているものが見つからなかった。</p> </blockquote> <p><br /> まず、花粉のオービクルのサイズは、スギ花粉の成熟度によって変化する可能性があります。<br /> もし、永田氏の観察が1回だけであれば、オービクルのサイズが特別小さいような成熟度の花粉が飛来する、特別な時期だった可能性があります。<br /> しかしながら、永田氏は3〜5月という長期間に渡って複数回観察しているため、たまたま特別な時期の、特別なサイズのオービクルを観察した可能性は少ないと思われます。<br /> また、永田氏がある特定のスギの木から花粉を採取したのであれば、たまたまその杉の木が、特別小さなサイズのオービクルをもつスギ花粉であるような、特殊なスギの木だった可能性があります。しかしながら、彼は飛来した花粉が自動車のボンネットに付着したものを観察しており、たまたま特殊な杉の木だった可能性は低そうに思われました。<br /> さらに、彼は、ボンネットに付着したスギ花粉だけでなく、雄花が着いたスギの枝を採取し、そこに詰まっている未成熟のスギ花粉も、走査電子顕微鏡で観察しています。未成熟のスギ花粉の電子顕微鏡写真を見ても、やはりオービクルのサイズは成熟したものとそれほど大きな違いがなかったことが見て取れました。<br /> 一方で、オービクルのサイズが1ミクロン程度だとする文献の根拠となるオービクルのサイズ測定の条件の詳細が記載されている文章は、ネットをいくら検索しても見つからず、この「1ミクロン程度」という記載の信憑性は薄いと思われました。もしくは、オービクルのサイズの正確な違いが問題となるということについて、研究者の意識が薄いため、かなりおおざっぱな記載をした可能性が考えられます。</p><br /> <p>さらに重要なのは、<span style='font-size:170%;'>花粉が破砕されて飛び散るのは、オービクルだけではない</span>ので、花粉が破砕されるときに飛び散る<span style='font-size:170%;'>0.5ミクロンよりもはるかに小さなアレルゲン物質含有粒子がそれなりの量浮遊している</span>可能性もあるということです。</p><br /> <p>そう考えると、空気清浄機はHEPAよりもULPAのものを使った方がより多くのアレルゲン物質を除去できる可能性があるし、掃除機も、パック式の掃除機でハイグレードのもの(0.5〜1ミクロンをほぼ除去)を使うより、0.3ミクロンをほぼ100%除去するシャープのキレイオンを使う方が、掃除機の排気口からまき散らされるアレルゲン粒子が少なくなるという可能性があるということです。</p><br /> <p>ただし、一方で、オービクルのサイズが0.5ミクロンだからといって、それが即、「0.5ミクロンの粒子が大量に浮遊している」という結論には直結しません。<br /> 菅原文子らの実験では、本来の花粉サイズである40ミクロンよりも大きな花粉アレルゲン粒子が採取されています。すなわち、花粉だけでなく、花粉破片やオービクルも、そのほとんどがくっついて塊になって浮遊している割合が多い、という可能性も考えられます。<br /> もし、単体で浮遊するオービクルがごくわずかで、ほとんどのオービクルはくっつき合ってもっと大きな粒子として空気中を浮遊しているなら、0.5ミクロンという粒子サイズにこだわりすぎると、さまざまな花粉症対策商品の実質的なアレルゲン粒子除去能力の評価をゆがめてしまうことにもなりかねません。</p><br /> <p>一方で、現時点ではその辺はまだよく分かっていないので、0.5ミクロンのオービクルが単体で大量に浮遊している可能性がある程度高いという前提で花粉症対策商品の有効性を評価しても、それほどはずしていないのではないかと思われます。</p><br /> <p>だいたいこれくらいで、先ほどの0.06〜0.1ミクロン粒子を95%除去可能な3M社マスクの有効性が評価するための情報はそこそこ出そろった感じがします。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001EYQ0N2/search-3213-22/" target="_blank">3M社製 N95マスク 8000N95(1箱30枚入)</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001EYQ0N2/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/21xJRbZ8TNL._SL160_.jpg" alt="B001EYQ0N2" border="0" /></a></p><br /> <p>このマスクが除去できないアレルゲン粒子が空気中に浮遊している可能性もそれなりにありますが、花粉の構造からして花粉から遊離しやすい0.5ミクロン程度のオービクルは十分に除去可能ですし、例えより細かいセキシンが砕け散ったとしても、セキシンの粒ですら、先ほどの写真では0.1〜0.2ミクロン程度に見えましたし、オービクルより小さな花粉破片についても、ある程度の除去性能は期待できそうにも思われます。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="キッチンやお風呂の換気扇を回すとフィルターを付けてても給気口から花粉アレルゲンが大量侵入">キッチンやお風呂の換気扇を回すと、フィルターを付けてても給気口から花粉アレルゲンが大量侵入?</h4> <p><br /> 料理の時には、換気扇を回して排気をしますよね。換気扇は、部屋の中の空気を吸い出して外に捨てるわけですから、当然、入れ替わりにどこからか外気が入ってきます。そのための穴が給気口で、どの家でも部屋のどこかに給気口の穴が開いていると思います。<br /> 換気扇を回すと、この穴から外気がどんどん入ってきます。もし、この給気口に花粉フィルターを付けずに換気扇を回すと、<br /> <span style='font-size:170%;'>給気口からどんどん花粉が入ってきます</span>。</p><br /> <p>これを防ぐために、花粉症の方は、給気口には、たとえば以下のような給気口フィルターを付けている方も多いでしょう。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ5690/search-3213-22/" target="_blank">ブレスト 給気口用フィルター・エリア 125 E125</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ5690/search-3213-22/" target="_blank"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51hy8jhyGjL._SL160_.jpg" alt="B000FZ5690" border="0" /></a></p><br /> <p><a href="http://www.breast-web.co.jp/products/efficient.html">&#x30A8;&#x30EA;&#x30A2;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x7D66;&#x6C17;&#x53E3;&#x30D5;&#x30A3;&#x30EB;&#x30BF;&#x30FC;&#x306E;&#x5546;&#x54C1;&#x4ED5;&#x69D8;&#x8AAC;&#x660E;&#x306E;Web&#x30DA;&#x30FC;&#x30B8;&#x306B;&#x8A18;&#x8F09;&#x3055;&#x308C;&#x305F;&#x30D5;&#x30A3;&#x30EB;&#x30BF;&#x30FC;&#x6027;&#x80FD;&#x30C7;&#x30FC;&#x30BF;</a>を元に、前述した菅原文子らの論文で出てきたスギ花粉アレルゲンの粒径分布図のうち、このフィルタが数十パーセントの単位でアレルゲン粒子をだだ漏れにしてしまう粒径分布を、大まかに赤色で塗ってみましょう。</p><br /> <p>商品仕様によれば、このフィルタの粒子除去性能は以下の通りです。<table cellspacing="20" cellpadding="20"> <tr> <th><br /> 測定風速 (m / min)</th><th><br /> 1.5</th><th><br /> 3</th> </tr><tr> <td><br /> 0.3〜0.5μmの捕集効率</td><td><br /> 46.50%</td><td><br /> 31.50%</td> </tr><tr> <td><br /> 0.5〜1.0μmの捕集効率</td><td><br /> 55.10%</td><td><br /> 40.00%</td> </tr><tr> <td><br /> 1.0〜2.0μmの捕集効率</td><td><br /> 70.60%</td><td><br /> 56.50%</td> </tr><tr> <td><br /> 2.0〜5.0μmの捕集効率</td><td><br /> 83.10%</td><td><br /> 72.50%</td> </tr><tr> <td><br /> 5.0μm以上の捕集効率</td><td><br /> 94.20%</td><td><br /> 91.20%</td> </tr> </table>また、このフィルタが漏らしてしまう粒径範囲を赤く塗りつぶしたのが以下のグラフです。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120854" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120854.png" width="450" height="463" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>このフィルタは、かなりのアレルゲン粒子を室内に侵入させてしまうものの、それなりに効果的に機能していることがわかります。<br /> その理由は、屋内より屋外の方が、粒径の大きな花粉アレルゲン粒子が多く、粒径の小さなアレルゲン粒子は、室内に比べるとやや少ないというものです。</p><br /> <p>これを見る限りでは、花粉症の症状の軽い方や、少々の鼻水鼻づまりはさして気にならないという方は、この換気口フィルターで妥協してもよいと考える方もおられるかもしれません。</p><br /> <p>しかし、花粉症の症状がそこまで軽くない方は、換気扇を回すたびに、これまとまった量のアレルゲン粒子が室内に侵入するのを嫌がる方も多いかと思われます。</p><br /> <p>それにしても、<span style='font-size:170%;'>給気口フィルターは、なんでこんなに性能が悪いのでしょうか?</span><br /> それは、フィルタ面積が小さいからです。</p><br /> <p>しかし、なぜ、フィルタ面積が小さいと、性能が悪くなるのでしょうか?<br /> それを理解するには、フィルタの性能を決定している物理的要因を把握する必要があります。</p><br /> <p>フィルターの目を細かくすればするほど、より細かい粒子まで捕集できるようになりますが、その分だけ空気が通りにくくなり、単位面積あたりの通気性能が落ちます。<br /> このため、HEPAフィルターのような目の細かいフィルターを使う空気清浄機では、フィルター面積を巨大化しています。かなり面積の大きなフィルターを、蛇腹状に折りたたんで使っていますが、折りたたまれたものですら、数十センチ×数十センチのかなり大きなサイズになっています。<br /> 空気清浄機のフィルターがあれほど大きなサイズなのは、ちゃんと理由があるのです。</p><br /> <p>フィルターを小型化するには、次の4つの方法が考えられます。</p> <blockquote> <p>(1)フィルターの蛇腹折りをさらに緻密にする</p><br /> <p>(2)空気をゆっくり濾過するようにする</p><br /> <p>(3)フィルターの目を粗くする</p><br /> <p>(4)フィルターの厚みを薄くする</p> </blockquote> <p><br /> まず、(1)の蛇腹折りの緻密化として考えられるのは、たとえば人間の小腸の襞の構造のように、蛇腹折りの一つの山を拡大してみると、その山自体が細かな無数の蛇腹折りからなっているような、フラクタル的というか再帰的蛇腹折り構造をしたフィルターにすることです。しかし、これは技術的な問題や、やコストが見合うのかという問題があります。</p><br /> <p>次に(2)の空気をゆっくり濾過する方法ですが、これは、キレイオンなどのサイクロン式の掃除機の排気口に付けられたHEPAフィルタがこれに相当すると考えられます。たとえばサイクロン式掃除機のキレイオンの場合、最初に遠心分離でゴミを十分にこし取り、こし取り切れなかったぶんを、HEPAフィルタで濾過する方式になっています。このため、パック式の掃除機に比べると、単位時間あたりにフィルターを通過する空気量は、はるかに少なくなっています。</p><br /> <p>また、(3)のフィルターの目を粗くする方法ですが、これはパック式の掃除機で行われている方法です。<br /> パック式の掃除機の場合、吸い込んだ空気を直接フィルターで濾過する方式ですから、猛烈な勢いで空気がフィルターを通過することになり、少なくともフィルターの一つはかなり空気抵抗の小さいものでなければなりません。また、パックは使い捨てなので、あまり高度な構造にするとコスト的に見合いません。そのため、シャープのキレイオンのような、排気口にHEPAフィルタの付いたサイクロン式の掃除機に比べると、目の粗いフィルタになっているようです。<br /> たとえば、キレイオンでは「排気中の0.3μm以上の微細じんをほぼ100%キャッチ」とあるのに対し、三洋の現在のパック式掃除機の場合、標準的な紙パックは0.5〜1ミクロンの粒子は6割しか捕集できません。最高グレードの紙パックとなると、「0.5〜1ミクロンの粒子をほとんど捕集する」とのことですが、やはりキレイオンよりはかなり性能が落ちます。<a href="#f-a997df74" name="fn-a997df74" title="ただし、現状がこうなっているというだけの話で、パック式の掃除機でも、原理的には、複数のフィルターを組み合わせることで、排気が空気清浄機並みのものを作れる可能性があるかもしれません。それをやると構造が複雑になって、価格やメンテナンス性能に問題が出るからやってないだけの可能性もあります。">*4</a></p><br /> <p>最後の(4)のフィルターの厚みを薄くする方式ですが、wikipediaによると、ULPAフィルタがこちらのやり方をしているようです。前述したように、HEPAフィルタが<br /> 「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」<br /> と規定されているのに対し、ULPAフィルタは<br /> 「定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」<br /> と規定されています。<br /> ただし、厚みを薄くすることで、強度が弱くなるという問題があるようです。</p><br /> <p>こうしてみると、この給気口フィルターの性能が、空気清浄機よりもはるかに劣る理由がよく分かります。<br /> 換気扇は、かなりの勢いで空気を吸い込みますから、密閉性の高い家屋の場合、給気口からはそれに見合った勢いで外気が入ってきます。<br /> つまり、給気口フィルターには、かなりの通気性が必要とされます。<br /> そして、それだけの通気性を、小さな面積で実装しようとすると、次のどれかにしなければなりません。</p> <blockquote> <p>(1)フィルターを再帰的蛇腹構造にする</p><br /> <p>(2)フィルターの厚みを檄薄にする</p><br /> <p>(3)フィルターの目を粗くする</p> </blockquote> <p>このうち、(1)は技術的な問題をクリアしたとしても、かなりのコストになってしまう可能性があります。<br /> また、(2)厚みを檄薄にするのも技術的に難しそうだし、コストがかかりそうですし、強度の問題もでそうです。<br /> で、結局、技術力がいらず、コストもかからず、強度の問題も出ない、(3)に落ち着くことになったのではないかと。</p><br /> <p>ということで、この給気口フィルターではスギ花粉アレルゲンがだだ漏れの可能性が高いので、別の、ちゃんとした給気口フィルターを購入したくなります。<br /> ところが、困ったことに、<span style='font-size:170%;'>現在市販されている給気口フィルターはほぼ全て似たりよったりの形状と性能であり、どれも花粉アレルゲンがだだ漏れ</span>の可能性が高いです。<br /> 「ちゃんとした給気口フィルター」を売っている店を探したのですが、少なくとも安価なものは、見つかりませんでした。</p><br /> <p>それでは、通気口フィルターを2枚重ねて使ってみるというのはどうでしょうか?<br /> たとえ、アレルゲン粒子の除去性能が50%だったとしても、2枚重ねれば、除去性能は75%になるはずです。</p><br /> <p>しかしながら、この方法だと、給気口フィルターの粒子除去性能が上がる一方で、通気性能が低下します。<br /> 吸気口の通気性が低下すると、換気扇の吸引力が低下し、料理の時に発生する、油滴を含んだ空気を換気扇が全部吸い込みきれずに、油滴が部屋の中に拡散し、それがキッチンやキッチンに続く部屋にある空気清浄機のフィルターを目詰まりさせ、空気清浄機性能が劣化してしまう恐れがあります。空気清浄機のフィルタが油滴で目詰まりしてしまうと、<span style='font-size:170%;'>むしろ、部屋の中のアレルゲン粒子の量は増えてしまいます。</span></p><br /> <p>さらに、<span style='font-size:170%;'>フィルターによって通気口の通気性能が低下している状態で換気扇を回すと、窓やドアなど、部屋のあちこちのわずかな隙間から花粉が侵入してきます。</span></p><br /> <p>このため、給気口フィルタを2枚重ねるという方法では問題は解決できないことが分かります。</p><br /> <p>そこで次に、通常の空気清浄機用のフィルターを給気口に取り付けるという方法を考えてみます。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0002V625Y/search-3213-22/" target="_blank">HITACHI 空気清浄機用交換フィルター (EP-X20用) EPF-X20H</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0002V625Y/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/11K3TV1J31L._SL160_.jpg" alt="B0002V625Y" border="0" /></a></p><br /> <p>もちろん、サイズが合いませんので、100円ショップなどで、衣類などを格納する大きめのビニール袋を買ってきて、</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120949" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120949.jpg" width="600" height="450" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>切り開いて、</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120953" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120953.jpg" width="600" height="450" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>切り貼りして、</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120946" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120946.jpg" width="600" height="450" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>「ピラミッドを平たく押しつぶし、先端をちょん切った」のような形状を作り、</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120937" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120937.jpg" width="600" height="450" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>それでフィルターと給気口をつなぎます。</p><br /> <p>ただし、これだけでは問題がおきます。<br /> 給気口フィルターは、空気清浄機と異なり、外気が通過します。住んでいる場所や生活スタイルにもよりますが、一般に、室内の空気に比べると、外気は汚れていることが多いですから、フィルターの目詰まりが早いのです。<br /> すなわち、フィルターの寿命が短くなってしまうのです。</p><br /> <p>この問題を解決するには、前述の性能の悪い小さな給気口フィルターを併用する方法が考えられます。</p><br /> <p>まず、前述の性能の悪い小さな給気口フィルターを、普通に給気口に取り付けます。<br /> そのあと、その給気口フィルターに、先ほどビニールシートで接続した空気清浄機用のフィルターをつなぐようにします。<br /> すなわち、市販の給気口フィルターをプレフィルタとして使うわけです。</p><br /> <p>こうすると、小さな方の給気口フィルターは直接外気に晒されますので、目詰まりが早いですが、そちらはどうせ安いものですので、頻繁にどんどん交換すればいいです。<br /> また、ピラミッドの底の部分にあたる空気清浄機用フィルターは直接外気に晒されるわけではありませんので、寿命がかなり長くなります。<br /> この方式だと、給気口フィルタを二枚重ねたときの問題は起きません。<br /> 空気清浄機のフィルターの通気性能は換気口フィルターよりもはるかに高いからです。</p><br /> <p>この方法では、もう一つの問題点があります。<br /> 前述したように、0.1ミクロンサイズの花粉アレルゲン粒子が浮遊している可能性もありますが、空気清浄機の場合、0.3ミクロン粒子までしか十分に除去できず、0.1ミクロン粒子となると80%しか除去できないとしても、これはあまり問題になりません。<br /> なぜなら、空気清浄機の場合、部屋の空気をぐるぐると何度でもこし取ることができるからです。<br /> たとえば、0.1ミクロン粒子を80しか除去できない空気清浄機でも、同じ空気を5回こし取れば、0.1ミクロン粒子の99.968%を除去することができます。</p><br /> <p>しかしながら、給気口フィルターの役割は、外気が室内に侵入してくるとき、それに含まれているアレルゲン粒子を除去することですから、一発勝負です。1回の濾過で、アレルゲン粒子を漏らしてしまったら、それは部屋の中に入ってしまい、空気清浄機がその濾過に成功するまで、それは部屋を循環し続けるのです。</p><br /> <p>こう考えると、給気口フィルタには空気清浄機よりも高い粒子除去性能が欲しくなってくる人もいるかも知れません。<br /> なので、微少なサイズのアレルゲン粒子が部屋に入ってくる可能性を気にする人は、念には念を入れて、HEPAフィルタ(0.3μmの粒子に対して99.97%以上)より、ULPAフィルタ(0.15μmの粒子に対して99.9995%以上)を使っておくというのもありかもしれません。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000C9HH5/search-3213-22/" target="_blank">National プラズマULPAフィルター EH3561F1</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000C9HH5/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/21RWRTC6WAL._SL160_.jpg" alt="B0000C9HH5" border="0" /></a><br /> 値段的にも、ULPAはHEPAよりも1〜2割程度高いだけですし。</p><br /> <br /> <p>しかし、せっかくここまできちんとした給気口対策をしたとしても、<span style='font-size:170%;'>住宅が古かったりすると、部屋の窓やドアに隙間があって、換気扇を回すと、給気口だけでなく、あちこちの窓の隙間から外気が入ってきてしまう</span>ことがあります。いや、<span style='font-size:170%;'>新築のマンションで、そうとう密閉性の高い家ですら、換気扇を強にして回しながら、窓の近くで耳をすますと、外気が侵入してくる音が聞こえることがあります。</span></p><br /> <p>この問題に対処するために、花粉のシーズンだけ、窓を布テープで密封してしまうという方法があります。<br /> 花粉は早いときで1月から飛び始めますから、年末の大掃除が終わった後、部屋の窓の隙間という隙間を、布テープで念入りに密封してしまいます。後ではがすとき面倒ですが、これで花粉の季節も鼻づまりに悩まされることなく熟睡できるのですから、それをやるだけの価値はあるかもしれません。<br /> 家族で住んでいる方などは家族に迷惑がかかるのでできないかもしれませんが、独り暮らしでワンルームマンションに住んでいる花粉症の方などは、どうせ花粉の季節は窓を開けることはほとんどないでしょうから、いっそのこと、花粉の季節は部屋を密封してしまうというのもありかもしれません。</p><br /> <p>また、玄関のドアは、さすがに布テープで密封するわけにはいきませので、玄関のドアの隙間はスポンジテープで塞ぐようにします。<br /> スポンジテープではどうしても完璧な密封性を得られない場合もありますので、その場合、玄関に玄関専用の空気清浄機を置くようにします。数千円の安物の空気清浄機で十分です。そして、玄関とリビングの間のドアは常に締め切っておき、玄関の空気清浄機は回しっぱなしにしておきます。これにより、換気扇を回したときに、玄関区画に少し花粉アレルゲン粒子が侵入したとしても、リビングに到達する前に、玄関の空気清浄機に回収されます。</p><br /> <br /> <p>それから、このエリアという給気口フィルターを買うときには、一つ注意点があります。それは、給気口のサイズによって、取り付ける給気口フィルター器具が異なるという点です。サイズを間違えると、うまく取り付けられないことがあるので、注意してお買い求めされた方がよいと思います。<br /> サイズは、以下の3つがあります。</p><p>「エリア100」直径12.3〜15.5cmの丸型給気口用</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ2CUG/search-3213-22/" target="_blank">ブレスト 給気口用フィルター・エリア 100 E100</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ2CUG/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51PJlGr-5PL._SL160_.jpg" alt="B000FZ2CUG" border="0" /></a></p><br /> <p>「エリア125」直径15.5〜18.0cmの丸型給気口用</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ5690/search-3213-22/" target="_blank">ブレスト 給気口用フィルター・エリア 125 E125</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ5690/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51hy8jhyGjL._SL160_.jpg" alt="B000FZ5690" border="0" /></a></p><br /> <p>「エリア150」直径18.0〜21.2cmの丸型給気口用</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ2CVU/search-3213-22/" target="_blank">ブレスト 給気口用フィルター・エリア 150 E150</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FZ2CVU/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/51GAMJBH0AL._SL160_.jpg" alt="B000FZ2CVU" border="0" /></a></p><br /> <p>また、このエリアというフィルターには、「アレルゲンタンパク無害化フィルタ」というのがありますが、実質的な効果はほとんどないので、それを買うのはやめて置いた方がいいです。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="キッチンやリビングの空気清浄機がろくに機能してない">キッチンやリビングの空気清浄機がろくに機能してない!?</h4> <p><br /> キッチンや、キッチンに繋がったリビングに置かれている<br /> <span style='font-size:170%;'>空気清浄機が、音ばかりして、ろくに機能していない</span><br /> ことがあります。</p><br /> <p>ほとんどの空気清浄機の取扱説明書には、<br /> <span style='font-size:170%;'>空気清浄機は、油滴の浮遊するところでは使用できない</span><br /> と書いてあります。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120923" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120923.jpg" width="600" height="234" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>キッチンで野菜炒めを作ると、かなりの量の油が気化し、空気中に大量の油滴が発生</span>します。<br /> もちろん、換気扇をフルパワーにしてそれらの油滴を含んだ空気を吸い込んで外に排出するわけですが、必ずしも全ての油滴が換気扇で除去されるわけではなく、残った油滴が空気清浄機に吸い込まれて、フィルターを目詰まりさせてしまうのです。</p><br /> <p>この問題を解決するには、いくつかの対策が必要です。</p><br /> <p>まず、料理中や食事中は、必ず空気清浄機をオフにします。料理中や料理後しばらくの間は、空気中に油滴がたくさん漂っているからです。</p><br /> <p>それから、料理で発生した油滴を含んだ空気を換気扇が吸い込む力が弱いと、油滴を含んだ空気が部屋の中に拡散してしまいます。<br /> これを防ぐために、常に換気扇のパワーが最大限発揮できるような施策をします。</p><br /> <p>料理の油滴がレンジフードに付着して目詰まりすると、換気扇のパワーが劣化します。これを防ぐには、レンジフードを頻繁に掃除する必要があるのですが、普通はめんどくさくてそんなことはやってられません。<br /> そこで、100円ショップで売っているレンジフードフィルターを換気扇に取り付けます。レンジフードフィルターが油で汚れてきたら、すぐに捨てて、次のレンジフードフィルターに取り替えます。レンジフードフィルターは、たくさん買いだめしておいて、気軽にどんどん取り替えるようにします。</p><br /> <p>また、給気口の通気性能が悪いと、換気扇の吸引力が劣化します。給気口から入ってくる花粉を除去するためのフィルターを取り付けるときは、<span style='font-size:170%;'>アレルゲン粒子除去性能だけでなく、通気性能に十分に気をつける</span>必要があります。</p><br /> <p>それから、料理中及び料理後しばらくは、エアコンやサーキュレーターを止めておきます。<span style='font-size:170%;'>エアコンやサーキュレーターが回っていると、部屋の空気を循環させてしまい、油滴を含んだ空気を部屋に拡散させてしまう</span>恐れがあるからです。<br /> 花粉が1月から飛散する年もありますが、寒い時期に、料理中と料理後しばらくの間エアコンを止めておいても困らないように、ホットカーペットなど、エアコンやサーキュレーターのように、空気を循環させない暖房手段を用意しておくといいかもしれません。</p><br /> <p>また、料理中や料理後しばらくは、換気扇を回しっぱなしにしておく方法も考えられますが、これをやるべきかどうかは、住居の密閉度や換気口フィルターの粒子除去性能に依存します。<br /> 築年数が浅くて家賃の高いマンションなどは、密閉性が高く、換気扇を回すと、外気の大部分が給気口から入ってくるようなものもあります。あるいは、前述したように、花粉の季節だけ、窓の隙間を布テープで完全に密封してしまうような人もいるかもしれません。<br /> しかしながら、古い、木造、安い家賃のアパートやマンションで、とくに密閉化対策をしていない場合、密閉性が低く、換気扇を回すと、給気口からだけでなく、窓やドアの隙間からも外気が入ってきます。<br /> したがって、密閉性の低い住居の場合、<span style='font-size:170%;'>換気扇を回しすぎると、花粉タップリの外気が窓やドアのわずかな隙間から部屋に侵入</span>してきてしまう可能性もあります。</p><br /> <p>また、それなりに密閉性の高い住居であっても、密閉性は所詮程度問題に過ぎず、換気扇を回せば、家のどこかのわずかな隙間から、少しは花粉が侵入しているかもしれません。</p><br /> <p>さらに、前述したように、市販の花粉用給気口フィルタはどれも粒子除去性能が低く、花粉アレルゲン粒子がだだ漏れなので、市販の花粉用給気口フィルタを使っている人、もしくは、給気口フィルタを付けていない人は、<span style='font-size:170%;'>換気扇を回せば回すほど、大量の花粉アレルゲン粒子が部屋に入ってきます。</span></p><br /> <p>この問題がありますので、料理が終わってから長時間にわたって換気扇をフルパワーで回しておくのは、問題があるケースが結構あると思われます。しかし、料理後すぐに換気扇を止めてしまうと、空気中の油滴が十分に除去できず、空気清浄機フィルターがすぐに油滴で目詰まりしてしまうというジレンマがあります。</p><br /> <p>この問題を正攻法で解決するには、前述したように、花粉の季節は窓の隙間を布テープで密封した上で、給気口に空気清浄機用のフィルタを取り付けます。</p><br /> <p>しかし、それをせずに、この問題を解決する方法があります。<br /> それは、花粉の季節は、油滴が発生するような料理を一切作らない、ということです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>結局、花粉症の人は、次の3つの選択肢の中から、究極の選択をしなければならないのです。</span><br /> </p> <blockquote> <p>(1)花粉の季節は、野菜炒めやポークソテーは一切自宅で料理できない。</p><br /> <p>(2)花粉の季節も野菜炒めは食べられるけど、部屋の中が花粉アレルゲン粒子で汚染されて、鼻水鼻づまりで悩まされる。</p><br /> <p>(3)花粉の季節は、窓を布テープで密封して、窓を開けられなくなる。</p> </blockquote> </div> <div class="section"> <h4 id="意外と知られていないすぐれもの花粉症対策アイテム">意外と知られていない、すぐれもの花粉症対策アイテム</h4> <p><br /> マスク、給気口フィルタ、空気清浄機の3つは、極めて効果が大きいこともあって、重要な花粉症対策アイテムとして、多くの花粉症患者に使われています。</p><br /> <p>これら3つに匹敵する、花粉の季節に大活躍の強力な花粉症アイテムが、もう一つあります。<br /> それは「花粉吸引ブラシ」です。<br /> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001O0M788/search-3213-22/" target="_blank">花粉吸引ブラシHC-SB-100</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001O0M788/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/21dJhsCI5AL._SL160_.jpg" alt="B001O0M788" border="0" /></a></p><br /> <p>この吸引ブラシが活躍するのは、<br /> 箱、バッグ、袋に入ったものを、外部から部屋の中に持ち込み、<br /> 開封して中から品物を取り出すときです。</p><br /> <p>花粉の季節は、<br /> <span style='font-size:170%;'>外で荷造りされて送られてきた品物の場合、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>その品物に花粉が付着している</span>ことは多いです。</p><br /> <p>そういう品物が入った箱を開封し、中から品物を取り出すとき、<br /> その品物に付着した花粉をどうやって除去するかが問題です。</p><br /> <p>まず、箱から出した品物に、掃除機をかけるという方法を考えてみます。<br /> すると、たとえば三洋のパック式の掃除機の場合、標準的なパックでは、0.5〜1ミクロンの粒子ですと、6割程度しか捕集できません。<br /> このため、使用している掃除機のタイプによっては、スギ花粉オービクルのように0.2〜0.5ミクロンしかないサイズのものに掃除機をかけると、スギ花粉アレルゲンをまき散らしてしまう恐れがあります。<br /> また、スギ花粉アレルゲンの粒子サイズにも対応した高性能掃除機を使うという方法もありますが、そもそもいちいち大きな掃除機を<br /> 引っ張り出してくるのはめんどくさいです。<br /> さらに、素材によっては掃除機では、吸引力が強すぎて品物の一部まで吸い込もうとしたりして、花粉だけ吸い取りにくいものもあります。<br /> 一方で、ぬれ雑巾や濡れ布巾で拭くのも、やはりいちいち雑巾を絞ってもってこなければならないし、そもそも、素材が布だったり食品だったりして、雑巾で拭きにくいケースがあります。<br /> このため、荷物に付着した花粉を吸い取るには、結局花粉吸引ブラシを使うことになります。</p><br /> <p>掃除機やぬれ雑巾に比べると、この花粉吸引ブラシは小型で使いやすく、面倒がありません。<br /> また、パック式の掃除機(標準のパック)よりも細かいアレルゲンの粒子まで除去できますので、吸引ブラシによって空気中にまき散らされるアレルゲン粒子は、パック式の掃除機(標準のパック)のように酷くはありません。<br /> たとえば、株式会社H&Cの花粉吸引ブラシの場合、<b>1〜2ミクロンの粒子を99%、0.3ミクロンの粒子を75%除去</b>するとのことです。</p><br /> <p>オービクルのサイズが0.5ミクロンであることを考えると、かなりの性能であるように思われます。</p><br /> <p>ただ、花粉症の症状が重い方の場合、0.3ミクロンの粒子を25%漏らしてしまうのすらイヤがるかもしれません。<br /> その場合、ぬれ雑巾の使えるような、表面がつるつるのものはぬれ雑巾で拭き取り、ぬれ雑巾が使えない布、紙、野菜などの材質の品物に関しては、多少面倒でも、0.3ミクロンの粒子をほぼ100%除去できるシャープのキレイオンなどのような、超高性能掃除機の吸引力を「弱」にして、吸い取り口を付け替えて、花粉を吸い取る方が良いかも知れません。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001JA41PA/search-3213-22/" target="_blank">SHARP KIREION 高濃度「プラズマクラスター」技術搭載 サイクロンクリーナー パワーヘッド シルバー系 EC-VX200-S</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001JA41PA/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/41LePP9MxRL._SL160_.jpg" alt="B001JA41PA" border="0" /></a></p><br /> <p>この花粉吸引ブラシは、箱から荷物を取り出すときに役立つだけではありません。<br /> たとえば、宅急便の荷物を受け取った場合、そのたびに、荷物をもって玄関の外へ出て、荷物に付着した花粉を払い落とすのは面倒ですし、そのたびにいちいち玄関の外に出ると、玄関から部屋に侵入する花粉の量が多くなります。<br /> ですので、宅急便の荷物を受け取ったら、この花粉吸引ブラシで花粉を吸引することで、花粉の除去ができます。<br /> (もちろん、これも、より完璧をきすなら、シャープのキレイオンでやった方がよい)</p><br /> <p>また、スーパーや100円ショップでたくさんのものを買った場合、<br /> スーパーのビニール袋に入った一つ一つの品物に花粉が付着しています。<br /> それを吸い取るのにも使えます。</p><br /> <p>さらに、外出して帰ってきたとき、玄関の外で服や荷物に付着した花粉を手で払い落とすと、花粉が舞い上がります。<br /> 玄関を出てすぐのところで花粉を手で払い落とすと、玄関を開けたときに、空気中を舞い上がった花粉が部屋に入ってきます。<br /> また、玄関から少し離れたところで、花粉を払ったとしても、舞い上がった花粉が鼻や目に入ります。<br /> それを考えると、外出して服やバッグに付着した花粉も、この花粉吸引ブラシで吸い取るのが良さそうです。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="鼻腔の奥に入り込んだ花粉アレルゲンを洗い流す鼻うがいとその危険性">鼻腔の奥に入り込んだ花粉アレルゲンを洗い流す「鼻うがい」とその危険性</h4> <p><br /> 鼻腔の奥に入り込んだ花粉アレルゲンを洗い流す方法として、「鼻うがい」をする人も多いようです。</p><br /> <p><span itemscope itemtype="http://schema.org/Photograph"><a href="http://f.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20230119120920" class="hatena-fotolife" itemprop="url"><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fromdusktildawn/20230119/20230119120920.jpg" width="440" height="426" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image"></a></span></p><br /> <p>「鼻うがい」はインドでは昔から行われているヨガの方法の一つのようです。</p><br /> <p><iframe width="420" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/kOYdApb7_M0?wmode=transparent" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></p><br /> <br /> <p>「鼻うがい」は、花粉症対策として人気があるようですが、<br /> <span style='font-size:170%;'>安易に行うと鼻粘膜の線毛や粘膜面の機能を損ないやすいため、最近では鼻うがいを推奨しない医師も増えている</span>ということです。<br /> <a href="http://www.hanasuusuu.net/ka_hanaugai.shtml">&#x5C02;&#x9580;&#x5BB6;&#x306E;&#x5148;&#x751F;&#x65B9;&#x306B;&#x3088;&#x308B;&#x3068;&#x3001;&#x9F3B;&#x6D17;&#x6D44;&#x306E;&#x6CE8;&#x610F;&#x70B9;&#x306F;&#x6982;&#x306D;&#x4EE5;&#x4E0B;&#x306E;&#x3088;&#x3046;&#x3067;&#x3059;&#x3002;</a></p> <blockquote> <p> 1. 鼻洗浄は、鼻腔内を清浄化することで鼻粘膜および自然口の状態を改善するために行う。<br /> 2. 副鼻腔内に洗浄液が達することはない。<br /> 3. 鼻洗浄器を使用して鼻うがいをする場合、粘膜に与える影響を少なくするため、洗浄液は25度〜30度の生理食塩水(0.9%の食塩水)を用いる。<br /> 4. 普通の水道水を使うと、浸透圧の関係で鼻粘膜に非常な悪影響を与える。これは水道水に含まれる残留塩素の影響を遙かに上回る。多少濃度が違っても、必ず食塩水を使うこと。<br /> 5. 洗浄は前屈みになって時々休憩しながら行い、片側の鼻穴から注入した液がもう一方の鼻穴から流れ出るようにする。洗浄管先端の方向は鼻の穴の向きに合わせる。鼻底と平行にし、前方(鼻背)には傾けないこと。<br /> 6. 水圧が高かったり、注入中に唾や洗浄液を飲み込もう(嚥下運動)とすると、開いた耳管に洗浄液が入り中耳炎などの原因になることがある。<br /> 7. 洗浄終了後は、前屈みのまま頭を左右に傾け、鼻腔内に残っている洗浄液を鼻から排出すること。鼻腔内に洗浄液が残っている状態で鼻をかむと、中耳炎の原因になる。<br /> 8. 一日に何度も洗浄することは避け、鼻や喉に急性炎症がある時も鼻洗浄は中止する。<br /> 9. 後鼻漏がある場合は鼻腔内に洗浄液が残りやすいので、鼻洗浄を行わない方が良い。 </p> </blockquote> <p><br /> しかしながら、<br /> <span style='font-size:170%;'>いちいち生理食塩水を作るなど、めんどくさくて</span>とてもやってられません。</p><br /> <p>ですから、鼻うがい専用液を使って鼻うがいをした方が、はるかに簡単です。</p><br /> <p><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FQ4XO8/search-3213-22/" target="_blank">ハナノア 300ml</a><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FQ4XO8/search-3213-22/" target="_blank"><img src="http://ec2.images-amazon.com/images/I/41TJQNQS0QL._SL160_.jpg" alt="B000FQ4XO8" border="0" /></a></p><br /> <p>私はこの鼻うがい専用液をつかっていますが、水で鼻うがいをするように、鼻の奥が痛くなるようなことはありません。<br /> またコスト的にも15回分で630円ですから、1回あたり42円しかかかりません。<br /> 鼻うがいをするのは、外出先から自宅に帰ってきたときぐらいですから、そんなにお金のかかるものでもありません。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="本当に効果的な空気清浄機の買い方と使い方">本当に効果的な空気清浄機の買い方と使い方</h4> <p><br /> 結論から言うと、花粉症対策を最優先する場合、空気清浄機は一台数千円の安いものを、主要な部屋の数だけ買うのが良いと思われます。<br /> コンセプトは、<span style='font-size:170%;'>自宅の宇宙船化</span>です。</p><br /> <p>前述したとおり、空気清浄機の花粉除去機能自体は、数万円のものでも数千円のものでもほとんど変わりませんから、花粉症対策として空気清浄機を購入するという前提のもとでは、プラズマクラスターイオンうんちゃらというようなチャラチャラした余計な機能のついている高価な空気清浄機を買う意味はほとんどないと思われます。</p><br /> <p>一方で、一台数千円の安い空気清浄機を、寝室、リビング、玄関と、各部屋に一つずつ設置すると、その効果は絶大です。<br /> とくに、玄関に設置した数千円の安物空気清浄機の効果は劇的です。</p><br /> <p>玄関に空気清浄機を置いていない場合、リビングの空気清浄機で玄関の空気まで浄化しようとすると、いったん玄関とリビングの間のドアを開放し、玄関から入ってきたアレルゲン粒子タップリの空気を、いったんリビングに引き入れなければなりません。しかし、そんなことをすれば、リビングはアレルゲン粒子で汚染されてしまいます。</p><br /> <p>これを防ぐには、宇宙船のように、各部屋を独立の区画として、部屋と部屋の間のドアは、常に閉めておくようにします。<br /> 玄関のドアを開けても、アレルゲンをたっぷり含んだ外気は玄関の中だけに入ってきて、締め切られたドアで隔離された他の部屋にいくことはありません。そして、玄関の空気清浄機は、つねにフルパワーにしておきます。フルパワーにしたままほったらかしておけば、そのうち、玄関の空気は浄化されます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="花粉抑制機能をうたう高価な空気清浄機のインチキ臭さ">花粉抑制機能をうたう高価な空気清浄機のインチキ臭さ</h4> <p><br /> まず、そもそも空気清浄機の花粉除去性能自体は、一台5万円の空気清浄機と8千円の空気清浄機では、さほど性能の差はないのではないかと思われます。<br /> 5万円の空気清浄機も、8千円の空気清浄機も、どちらもHEPAフィルターを使っており、粒子除去性能自体にはそれほど差はありません。<br /> では、この価格差は、いったいどこから来ているのでしょう?</p><br /> <p>高価な空気清浄機の宣伝文句には、たとえばプラズマクラスターイオンで花粉アレルゲンに効果が研究で実証されたの云々とありますが、ネットに公開されている文章等を読む限りでは、<span style='font-size:170%;'>かなりインチキ臭い</span>です。</p><br /> <p>たとえば、<a href="http://www.sharp.co.jp/plasmacluster-tech/release/060721-result.html">&#x3053;&#x306E;&#x6587;&#x7AE0;</a>によれば、空気清浄機がプラズマクラスターイオンを発生し、プラズマクラスターイオンがアレルゲンタンパク質を切断し、分解消失させることによってアレルゲンを抑制するという作用機序ですが(この作用機序自体はダニアレルゲンに対して確認された)、そもそもスギ花粉アレルゲンであるCryj1とCryj2が単体で空気中を浮遊しているわけではありません。花粉や、オービクル、セキシン、花粉内部のデンプン粒のなどの花粉破片として空気中を浮遊し、Cryj1やCryj2は、それらの内部に組み込まれているわけです。ですから、たとえプラズマクラスターイオンがそれらの粒子と反応し、なんらかの化学的変化を引き起こしたとしても、あくまでそれらの粒子の表面の分子のごく一部を変質させるに過ぎず、それらの粒子の内部のアレルゲン分子であるCryj1やCryj2にまで分解できるとはとても思えません。粒子内部のアレルゲンタンパクを無害化できないのであれば、それが鼻腔内に侵入して、粘液に溶けたときに粒子内部のアレルゲンタンパクが流出し、結局はアレルギー反応を引き起こしてしまったりはしないのでしょうか。また、粒子内部のCryj1とCryj2を全て破壊するほど大量のプラズマクラスターイオンを放出すると、人体への影響が問題となるのではないでしょうか。もし、プラズマクラスターイオンがスギ花粉アレルゲンだけを特異的に破壊し、人間の細胞膜を破壊しないようなものであるとすれば、プラズマクラスターイオンはそれなりに高度な分子的構造をしていなければなりません。しかし、Cryj1やCryj2のような高分子のアレルゲンタンパクに特異的に反応するような分子構造を作り出せるような高度にインテリジェントな機構が空気清浄機に組み込まれているとはとても思えません。ということは、プラズマクラスターイオンがアレルゲンタンパクを分解するとしても、それはアレルゲンタンパクを特異的に分解するのではなく、その化学的活性によって、タンパク質や脂質などの生体有機物であれば、無差別に分子構造を破壊するようなものでしょう。だとすると、それは人間の細胞膜も破壊するわけで、ここにジレンマが発生します。アレルゲンタンパクを破壊する力を上げようとすればするほど、人体への害も大きくなってしまうので、結局は、空気中に浮遊するアレルゲン分子を含んだ粒子を十分に無効化できるほどの濃度のプラズマクラスターイオンを放出すると人体に有害になってしまうので、結局、人体に害のない範囲での、ごく弱い効果しか出せず、実質的な効果はほとんどなくなってしまうのではないでしょうか?</p><br /> <p>もし、プラズマクラスターイオンが、空気中の細菌を破壊できる、主張するのなら、まだ可能性はあります。なぜなら、それはオゾン発生装置による殺菌と同じような作用機序だからです。そもそも、消毒液で手を洗うとき、その消毒薬に含まれる化学物質の活性は、手に付いたばい菌の細胞を破壊するには十分だが、それが手の皮膚細胞に与える損傷は許容可能な範囲に収める、というように消毒薬の濃度を調整します。ですから、「ばい菌の細胞だけを破壊し、人間への害は許容範囲内」という薬品や装置は、十分にありうるのです。</p><br /> <p>しかしながら、花粉アレルゲン分子を含有した粒子はばい菌とは異なります。ばい菌の場合、消毒薬に含まれる化学活性をもった分子によって、細胞膜のごく一部に穴を開けられただけで、その細胞の中身が外部に流れ出したり、外部の液体が細胞内部に侵入したりして、その細胞は機能しなくなって、死んでしまいます。<br /> 一方、アレルゲン分子を含んだ粒子の場合、化学活性をもった分子で、粒子の表面の一部を破壊されたとしても、粒子の内部のアレルゲン分子は、機能を失うことはないのです。アレルゲン分子を含んだ粒子は、ばい菌のような高度で繊細な構造をもった生命体ではなく、単に特定の種類の分子が混じっているだけの物質の塊に過ぎないのです。<br /> ですから、アレルゲン物質含有粒子の内部にある全てのアレルゲン分子を破壊するほどの強力な化学活性をもったプラズマクラスターイオンを大量発生させたら、人体への影響がないとはとても思えないのです。そして、メーカーさんが、人体への影響がないことをうたっているということは、それはすなわち、<span style='font-size:170%;'>たいして効果がない</span>ことを意味するのではないでしょうか。</p><br /> <br /> <p>このように、プラズマクラスターイオンのアレルゲン抑制効果は、<span style='font-size:170%;'>考えれば考えるほどインチキ臭く</span>思われます。</p><br /> <br /> <p>そして、これはプラズマクラスターイオンに限ったことではありません。<br /> たとえば、後述するように、アレルゲンを吸着するといううたい文句のアレルキャッチャーという素材を使ったフィルターもありますが、電話でその作用機序を問い合わせたところ、少なくとも花粉除去フィルターにその素材を使っても、実質的な効果はほとんどないと思われます(この記事の後の方で詳しく解説しています)。</p><br /> <p>そういうわけで、少なくとも現時点においては、スギ花粉アレルゲンを除去する現実的に使い物になる機能は、ほぼフィルター機能だけではないかと思われます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4 id="最上グレード掃除機よりもさらに少ないのアレルゲン粒子しか排出しない超高性能掃除器具">最上グレード掃除機よりもさらに少ないのアレルゲン粒子しか排出しない、超高性能掃除器具</h4> <p><br /> <span style='font-size:170%;'>古いor安物のパック式の掃除機は、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>花粉アレルゲンをまき散らしている</span><br /> 可能性があると思われます。</p><br /> <p>前述したように、構造上の問題でパック式掃除機のフィルターの目はかなり粗く、たとえば三洋の標準フィルターは0.5〜1ミクロン粒子が6割程度しか除去できませんから、オービクルのサイズが0.5ミクロンであることを考えると、掃除機をかけると部屋の中には大量の花粉アレルゲン粒子がまき散らされてしまう可能性があり、少なくとも、標準のパックは使わず、ハイグレードのパックを使った方が良さそうです。</p><br /> <p>一方で、サイクロン式の掃除機は第一段階は遠心分離でゴミをこし取りますので、パック式のように猛烈な勢いで空気をこし取る必要がありません。このため、空気清浄機のように高性能のHEPAフィルターを排気口に取り付けることができます。</p><br /> <p>たとえば、私が使っている<a href="http://www.sharp.co.jp/products/living/cleaner/prod04/ecvx200s/f_ecvx200s.html#t32584">&#x30B7;&#x30E3;&#x30FC;&#x30D7;&#x306E;&#x30AD;&#x30EC;&#x30A4;&#x30AA;&#x30F3;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x6383;&#x9664;&#x6A5F;</a>は、遠心分離でゴミをこし取った後の排気を、さらにHEPAフィルターでこし取り、最後にもう一つのだめ押しの別のHEPAフィルターを通して排気するという念の入れようで、「排気中の0.3μm以上の微細じんをほぼ100%キャッチ」するとのことです。ここまで来ると、排気の浄化レベルは、空気清浄機とほとんど変わりません。<br /> このキレイオンは音も静かですし、今のところ、申し分ない使い心地です。</p><br /> <p>しかしながら、このキレイオンにも問題があります。<br /> それは価格です。<br /> 現時点でのカカクコムでの最安値で、44780円です。<br /> スギ花粉症の人にとっては、それだけの価値があるとは思うものの、買うのに躊躇するという方もいらっしゃるかも知れません。</p><br /> <p>そういう方のために、<br /> <span style='font-size:170%;'>最高級掃除機よりもはるかに安く、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>最高級掃除機よりも少ないアレルゲン物質しかまき散らさず、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>最高級掃除機をはるかに凌駕する静音性能</span><br /> という、究極の掃除器具があります。</p><br /> <p>それは「ぬれ雑巾」です。</p><br /> <p>最高級掃除機のHEPAフィルターといえども、排気に含まれるアレルゲン物質をゼロにすることはできません。<br /> しかし、ぬれ雑巾は、そもそも排気自体を</p> </div> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-5abdb5e6" name="f-5abdb5e6" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">薬を飲んでいても、鼻水鼻づまりになる方は、私以外にも割と多いようですが。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-8c3a559e" name="f-8c3a559e" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">この方自身は現役の研究者ではなく、老後に趣味で走査電子顕微鏡(安い物でも400万円ぐらいする!)を購入して身の回りのいろいろなものを観察しているようです。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-ece3c2aa" name="f-ece3c2aa" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">免疫電子顕微鏡法とは、電子顕微鏡を利用して組織や細胞内の抗原を観察する方法です。電子顕微鏡で抗原を検出するには抗体を用います。このときに金コロイド、フェリチン、プルオキシダーゼなどの電子密度の高い物質または電子密度の高い反応物を作る物質で抗体を標識させて、可視化させます。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-a997df74" name="f-a997df74" class="footnote-number">*4</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ただし、現状がこうなっているというだけの話で、パック式の掃除機でも、原理的には、複数のフィルターを組み合わせることで、排気が空気清浄機並みのものを作れる可能性があるかもしれません。それをやると構造が複雑になって、価格やメンテナンス性能に問題が出るからやってないだけの可能性もあります。</span></p> </div> fromdusktildawn 努力しない人を国家が救済すべき14の理由 hatenablog://entry/10257846132601979816 2008-12-14T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:17:22+09:00 ちゃんと努力をしているのに運悪く失業しちゃった人を国家が救済するのに異論がある人はあまりいない。 しかし、スキルアップ努力も貯金もせずに浪費しまくり、ギャンブルや女遊びなどの自堕落な生活を続けて失業しちゃった人達を国家が救済する理由が分からないという人がたまにいるので、その理由を箇条書きにしてみる。*1 「努力しなかったために職を失った人」が家を失うと、ホームレスが街にあふれて街の景観と治安が悪くなるから。子供の乞食やひったくりが、うようよいる社会に住みたいという変な趣味の人はなかなかいないよ。 「努力しなかったために職を失った人」かどうかの選別が難しいから、努力した人もしない人も区別せずに全… <div class="seemore"> <p><br /> ちゃんと努力をしているのに運悪く失業しちゃった人を国家が救済するのに異論がある人はあまりいない。<br /> しかし、<a href="http://anond.hatelabo.jp/20081212233028">&#x30B9;&#x30AD;&#x30EB;&#x30A2;&#x30C3;&#x30D7;&#x52AA;&#x529B;&#x3082;&#x8CAF;&#x91D1;&#x3082;&#x305B;&#x305A;&#x306B;&#x6D6A;&#x8CBB;&#x3057;&#x307E;&#x304F;&#x308A;&#x3001;&#x30AE;&#x30E3;&#x30F3;&#x30D6;&#x30EB;&#x3084;&#x5973;&#x904A;&#x3073;&#x306A;&#x3069;&#x306E;&#x81EA;&#x5815;&#x843D;&#x306A;&#x751F;&#x6D3B;&#x3092;&#x7D9A;&#x3051;&#x3066;&#x5931;&#x696D;&#x3057;&#x3061;&#x3083;&#x3063;&#x305F;&#x4EBA;&#x9054;&#x3092;&#x56FD;&#x5BB6;&#x304C;&#x6551;&#x6E08;&#x3059;&#x308B;&#x7406;&#x7531;&#x304C;&#x5206;&#x304B;&#x3089;&#x306A;&#x3044;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x4EBA;</a>がたまにいるので、その理由を箇条書きにしてみる。<a href="#f-597ef945" name="fn-597ef945" title="もちろん、そもそもそういう人を救済するのに理由なんていらない、という人は読む必要はない。しかし、納得できていない人にひたすら「良心を持ちなさい」というのは不毛なんだよね。">*1</a></p><p></p> <blockquote> <ul> <li>「努力しなかったために職を失った人」が家を失うと、ホームレスが街にあふれて<b>街の景観と治安が悪くなる</b>から。子供の乞食やひったくりが、うようよいる社会に住みたいという変な趣味の人はなかなかいないよ。</li> </ul> <ul> <li>「努力しなかったために職を失った人」かどうかの<b>選別が難しい</b>から、努力した人もしない人も区別せずに全員救済する方が現実的。</li> </ul> <ul> <li>「怠け者を税金で養うのはしゃくにさわるが、怠け者を養う金をケチったために<b style='color:red'>怠け者が飢え死にしたら、とても寝覚めが悪い</b>」と思う人が多数派だから。もちろん、怠け者を死刑になんぞしたら、もっと寝覚めが悪い。</li> </ul> <ul> <li>好景気のときの失業は<b style='color:blue'>『「全員分の椅子がある椅子取りゲーム」で空いている椅子にたどり着けない人がいる』</b>というサプライサイドの問題なので、「本人の努力」というミクロ的な要因に帰すこともできるかもしれないが、不況のときはマクロ的に総需要が不足して失業が増大する<b style='color:red'>「全員分の椅子のない普通の椅子取りゲーム」</b>(デマンドサイドの問題)になる。不況の時は全ての怠け者が働き者になってもやっぱり失業者が出るので、怠け者であるかどうかに関係なく、失業者全員を救済する政策を実行するしかない。</li> </ul> <ul> <li>そもそも<b style='color:red'>努力しないことは道徳的な悪ではない</b>。努力をした者に多くの報酬が配分される可能性が高くなる社会システムになっているのは、単にその方が社会全体が豊かになる、という<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%F3%A5%BB%A5%F3%A5%C6%A5%A3%A5%D6">インセンティブ</a>設計の都合に過ぎない。</li> </ul> <ul> <li>ろくに貯蓄せずに、欲しいものをどんどん<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%D4%BF%F1%C8%BF%BC%CD">脊髄反射</a>的に買ってしまうような人達は、<b style='color:red'>景気を良くしてくれる経済の救世主</b>なのだから、景気が悪化したときにそういう人達を救済してあげるのは、辻褄が合っている。むしろ金を貯め込むばかりで、ろくに消費しない老人や富裕層の方が、この社会を悪くしている。不況の時に、金を貯め込んだ老人と富裕層が一斉にドバドバ消費を始めれば、椅子取りゲームの椅子の数は増え、多くの失業者が救済されるはずだ。</li> </ul> <ul> <li>低い待遇に甘んじている怠け者がいるからこそ、働き者は相対的に自分の待遇の良さを実感し、誇りを持って働ける。「他人との比較によって自分の幸せが決まるわけではない」という主張をする人は、<b style='color:red'>心の底の方で、自分にウソをついている</b>。</li> </ul> <ul> <li>向上心のある努力家は、クリエイティブでなく、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%AD%A5%EB%A5%A2%A5%C3%A5%D7">スキルアップ</a>に繋がるわけでもない仕事をやりたがらない。彼らの代わりに、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%AD%A5%EB%A5%A2%A5%C3%A5%D7">スキルアップ</a>に繋がらない<b style='color:red'>低賃金で退屈な仕事をのんびりやってくれる人も、一定数は社会に必要である</b>。不況でそういう人達がいらなくなった時に国家が養っておけば、また景気が回復したときに、そういう人達に働いてもらえる。</li> </ul> <ul> <li>才能があるのに怠けている人と、才能がないので怠けている人がいる。才能の乏しい人は、努力してもしなくても、社会全体の生産性にはたいして影響しない。彼らが怠け者であっても社会は大して困らないし、<b style='color:red'>彼らが働き者になっても、社会はさほど豊かにならない</b>。才能の乏しい人間の最大の社会貢献は、犯罪を犯したり他人に迷惑をかけるような社会的害悪を垂れ流さないことである。</li> </ul> <ul> <li><b style='color:red'>経済的な生産活動の才能はなくても、すばらしくクリエイティブなものを生み出す人達</b>が、ほんの少しいる。社会が経済的に役に立たない人達を養っておくと、そういうゴクツブシたちの中から、豊饒な文化が生まれてきたりする。</li> </ul> <ul> <li>「努力しなかったために職を失った人に最低限の待遇を与えること」と「努力した人により良い待遇を与えること」は両立可能なので、怠け者を救済したところで、働き者のやる気が削がれるわけではない。</li> </ul> <ul> <li><b style='color:red'>怠け者に罰を与えたところで、社会が良くなるわけではない</b>。働き者に報償を与えればそれで十分である。</li> </ul> <ul> <li>彼らは社会の多様性を保つのに貢献している。ハエも蚊も<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%F3%C0%B8%C3%EE">寄生虫</a>もシマウマもライオンも、等しく生態系の豊饒さに貢献していて、貴賤はない。</li> </ul> <ul> <li>日本の経済を立て直すためにこれから観光産業をもり立てようとしているのに、街に失業者やホームレスが増えて景観が悪化したら、<b>観光産業にはマイナス</b>になる。</li> </ul> </blockquote> <p><br /> もちろん理屈としては、努力なんてしない自堕落な人を見捨てる社会もありうるよ。職にあぶれた人が都市の近郊にスラムを形成するような社会だってあり得るさ。<br /> ただ単に、そういう社会をこの国の多数派は望んでないから、そういう政策を掲げる政治家が選挙に当選することはない、というだけの話。スラムや子供の乞食がいる社会を望む人ってのは、なかなかいない。そして、この社会は多数決原理で動いているんだ。 </p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-597ef945" name="f-597ef945" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、そもそもそういう人を救済するのに理由なんていらない、という人は読む必要はない。しかし、納得できていない人にひたすら「良心を持ちなさい」というのは不毛なんだよね。</span></p> </div> fromdusktildawn カップ麺なみの手間でできる6つの健康的激うま格安レシピ hatenablog://entry/10257846132601979823 2008-11-30T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:48:05+09:00 ハイライトトピック ■次元の違う旨さの「おひたし」の超簡単な作り方(調理器具洗い不要) ■炭火で焼いたような香ばしい焼き魚を超簡単につくる方法(調理器具・食器洗い不要) ■甘くて美味しい焼き芋もどきを超簡単につくる方法(調理器具洗い不要) ■美味しいアイスコーヒーを簡単・確実につくる方法(器具洗い不要) ■超低カロリーのポップコーンを超簡単に格安でつくる方法(調理器具・食器洗い不要) ■甘くて美味しい湯豆腐もどきを超簡単につくる方法(調理器具洗い不要) <div class="section"> <h4>ハイライトトピック</h4> <p><br /> ■<span style='font-size:170%;'>次元の違う旨さの「おひたし」</span>の超簡単な作り方(<b style='color:red'>調理器具洗い不要</b>)<br /> ■炭火で焼いたような<span style='font-size:170%;'>香ばしい焼き魚</span>を<span style='font-size:170%;'>超簡単に</span>つくる方法(<b style='color:red'>調理器具・食器洗い不要</b>)<br /> ■甘くて美味しい焼き芋もどきを超簡単につくる方法(<b style='color:red'>調理器具洗い不要</b>)<br /> ■美味しいアイスコーヒーを簡単・確実につくる方法(<b style='color:red'>器具洗い不要</b>)<br /> ■<span style='font-size:170%;'>超低カロリーのポップコーン</span>を超簡単に格安でつくる方法(<b style='color:red'>調理器具・食器洗い不要</b>)<br /> ■<span style='font-size:170%;'>甘くて美味しい湯豆腐</span>もどきを超簡単につくる方法(<b style='color:red'>調理器具洗い不要</b>)</p> </div> <div class="section"> <h4>はじめに</h4> <p><br /> ここで紹介するのは、<br /> <span style='font-size:170%;'>料理のスキルもセンスもない人が、お金も手間も時間もかけず、</span><br /> <span style='font-size:170%;'><span style='color:red'>確実に</span>美味しくて栄養のある食事</span><br /> を作るためのレシピです。<br /> <span style='font-size:170%;'>ためしてガッテン流だと手間がかかりすぎるので、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>ガッテン流を<span style='color:red'>超ものぐさ人間用に改造</span></span><br /> したものが多いです。<br /> あまりにも手抜き過ぎて、もはや「料理」ではありませんが(笑)。</p><br /> <p>もっと平たく言うと、ようは、</p> <blockquote> <p>料理するのは面倒だし、料理をしたあとの食器洗いがめんどくさい。<br /> だいたい、自分で料理したら、たいていマズイ。<br /> 定食屋の焼き魚は、カリっと香ばしく焼けているのに、自分で焼き魚を焼くと、油っぽかったり、生臭かったり、いまいち。<br /> でも、外食やコンビニやホカ弁の味はワンパターンで飽きてきた。<br /> もっとバリエーション豊かな、新鮮な味を楽しみたい。</p> </blockquote> <p>という方々向けに有効だと思われるテクニックを並べてみました。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>次元の違う旨さの超手抜き「おひたし」</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p>通常の方法で小松菜のおひたしを作ると、以下のような問題が発生します。<div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>お湯で茹でるとき、小松菜の味、風味、栄養がお湯の中に溶け出してしまうので、風味、味、栄養が劣化してしまう。</li> <li>小松菜を茹でた後、鍋、鍋の蓋、ザルなどを洗うのがめんどくさい。</li> <li>スーパーで安売りされているときに小松菜をまとめ買いすると、ついつい食べきれずに時間が経ち、小松菜がしなしなになってしまう。また、まとめ買いすると、しなしなになる前に小松菜を消費しようと、毎食小松菜ばかりになって飽きてくる。</li> <li>ついうっかり茹ですぎて風味が台無しになることがある。料理のセンスやテクニックのない人でも、リスクなく、安定して美味いおひたしを作れるようになってない。</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 小松菜を洗って、ざく切りにして、フリーザーパックに入れて冷凍し、それを自然解凍する。</div></p> <blockquote> <p>これだけで、非常に美味しいおひたしが作れます。茹でません。<br /> ようは、<b>冷凍庫を調理器具として使うテクニック</b>です。</p><br /> <p>茹でずに、単に凍らせて解凍すると、風味、味、栄養が逃げずに凝縮されてて、すごくおいしくなります。<br /> 味と風味は、おひたしというより、小松菜本来の、芥子っぽいような味と風味が濃厚に残っていて、浅漬けのようでもあります。<br /> ただし、浅漬けのようにしょっぱくない。<br /> 普通のおひたしのように食べられます。</p><br /> <p>また、このやり方だと、鍋で茹でないので、食後に鍋、鍋の蓋、ザルなどを洗う手間もありません。<br /> 食べ終わった後に、おひたしのお皿を、ざっと水道の水で流すだけで、後片付けは終わりです。</p><br /> <p>そもそも、茹でるには、ゆで時間を正確にしないと、風味が損なわれてしまいます。<br /> その、最高の味にするような正確なゆで時間のコントロールがめんどくさいです。<br /> この方法だと、その辺の絶妙なテクニックのないひとでも、美味しいおひたしが安定して作れます。</p><br /> <p>基本的には、スーパーで小松菜が格安で売られているときに、まとめ買いして、<br /> 片端から洗って、ざく切りにして、フリーザーパックに詰めていくといいです。</p><br /> <p>で、朝、冷凍庫からフリーザーパックを一つ取り出して、冷蔵庫に移します。<br /> 夕方仕事から帰ってくると、かなり溶けているのですが、少し凍ってる部分が残っています。<br /> なので、冷蔵庫からそれを取り出して、テーブルの上に置いておきます。<br /> そうすると、ちょうど食べる頃に、完全に解凍されて美味しく出来上がっています。</p><br /> <p>このやり方だと、毎回スーパーに小松菜を買い出しに行かなくても済むし、<br /> 買っておいた小松菜を使うのをついつい忘れて、しなしなになってしまうこともありません。</p><br /> <p>これの元ネタはためしてガッテンです。<br /> しかし、自分でやってみて、ためしてガッテンでは言ってなかった、いくつか重要な点を発見しました。</p><br /> <p>まず、ためしてガッテンでは、同じことはほとんどの青菜でできる、と言っていました。<br /> (ただし、ホウレンソウだけはエグ味が出てしまうので、うまくいかないと言っていた。)</p><br /> <p>なので、私も、同じことを、春菊や青梗菜(ちんげんさい)でも試してみました。</p><br /> <p>しかし、春菊の場合、なぜか、このやり方だと、風味が飛んでしまいます。<br /> 春菊の場合、買ってきてすぐに、さっとお湯で茹でて、ポン酢で食べた方が美味しいです。</p><br /> <p>青梗菜の場合、このやり方でもいけます。かなり美味しいです。しかし、小松菜のおひたしの方が、美味しさが際だっていると感じられました。<br /> 青梗菜の場合、解凍したものを青梗菜の中華風スープにも使えます。<br /> ただし、青梗菜を投入するタイミングが、生の青梗菜とは異なります。<br /> 解凍した青梗菜をスープに投入するタイミングを、後の方にずらした方がよいようです。</p><br /> <p>それから、このおひたしの作り方はサラダや浅漬けと同様、湯がくことでシュウ酸などの天然の有害物質を抜いていないので、結石の原因になるのではないか、という話があります。<br /> これに対して、ためしてガッテンに出ていた医師は、シュウ酸が大量に含まれることが知られているホウレンソウですら、湯通しせずに食べても、内臓に持病を抱えている人などを除けば、まず問題にはならない、と言っていました。<br /> また、ネットを検索してみると、毎日よほど大量に生で葉っぱ類を食べ続けない限り、問題となるほどのシュウ酸摂取量にはならないようです。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>炭火で焼いたような香ばしい焼き魚を、ほとんど手間なく作る方法</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p><div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>ガスコンロに付属している魚焼き器で焼くと、料理に手間がかかるし、後片付けも非常にめんどくさい。受け皿に水をいれ、火加減と加熱時間を精密に調節し、適切なタイミングで裏返しにする必要がある。それに失敗すると、生臭くてマズイ魚になるか、真っ黒焦げになる。テクのない人には難しい。しかも、表面は焦げているのに、いまいちカリっと焼き上がらない。焼いた後の受け皿や網を洗うのも非常にめんどくさい。</li> <li>フライパンで油を敷いて焼き魚を焼くと、魚が油っぽくなって、味が落ちる。焼いた後、フライパンを洗うのもめんどくさい。</li> <li>フライパンにクッキングシートを敷いて焼くと、もう少しマシだが、焼き時間の調節がめんどくさい。また、適切なタイミングで裏返さなきゃならないので、そのタイミングの見極めも難しい。</li> <li>専用のフィッシュロースターを別に買うと、置き場所に困る。</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> オーブントースターに、アルミホイルを敷いて、そこに魚を載せて焼く。</div><img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/fish_put_in_oven.jpg"></p> <blockquote> <p>焼き上がったら、オーブントースターからアルミホイル毎取り出して、皿の上に載せて、そこで食べ終わったら、魚の骨や頭をアルミホイルに包んで捨てます。<br /> 食器を洗う手間はいらないです。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/fish_cooked.jpg"><br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/fish_trush.jpg"></p><br /> <p>ただし、僕の家にあった古いタイプの安物のオーブントースターでは、いまいち上手く行きませんでした。<br /> 最新式の、大きなワット数の、少し値段が高い目のオーブントースターでやると、非常に美味しくできました。</p><br /> <p>古いタイプの安物のオーブトースターの問題点:<div style='background-color:#EEE;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>魚が完全に焼ける前に、サーモか何かが作動して、動作を停止してしまうことがある。(← そもそも、魚を焼くことを想定していない仕様になってる?)</li> <li>ヒーターが棒状で、しかも、上下に一本ずつしかついていないためか、ヒーターと魚との距離が近すぎるところと、遠すぎるところが出来てしまい、焼きムラができてしまう。ある箇所は真っ黒焦げで、ある箇所は生焼けになったり。</li> <li>サイズが小さすぎると、長い魚が中に入りません。</li> <li>なんだか生臭くなることがある。</li> </ul><p></div></p><br /> <p>ちなみに、僕が買った最新式のオーブントースターは以下のものです。<div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00137TFL4/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41zSMKB6u1L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="SANYO オーブントースター SK-WF10(K)" title="SANYO オーブントースター SK-WF10(K)"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00137TFL4/fromdusktilda-22/">SANYO オーブントースター SK-WF10(K)</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 三洋電機</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2008/03/07</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> ホーム&キッチン</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 1人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 134回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/B00137TFL4/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (11件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p>なぜ、このオーブントースターだと、カリっと焼き上がるのかの原因を、ぼくは把握していません。考えられる原因を、以下に列挙してみます。</p><p><div style='background-color:#FEC;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>魚が完全に焼き上がるまで、サーモで動作が停止してしまうようなことはない。(←ハンバーグも焼けるような仕様になってるので、魚も焼けるようだ)。</li> <li>上下のヒーターがそれぞれU字型になっており、四方から魚へ熱を放射するようになっているため、焼きムラができないのかもしれない。</li> <li>説明書には「温風を送る」と書いてある。温風でまんべんなく加熱するため、焼きムラができないのかもしれない。また、温風で表面の水分がとんで、表面だけカラリと乾いたできあがりになるのかも。</li> <li>消費電力が1350Wとなっていて、昔使っていた安物の1000Wに比べ、火力が強い。</li> </ul><p></div></p><br /> <p>ちなみに、価格コムでこのトースターの最安値のものを買おうとしたのですが、送料や代引き手数料を入れると、アマゾンとほとんど変わらない値段になったので、結局、ぼくはアマゾンで買いましたが、値段はいつも変化しているので、念のため価格コムで一番安いところをチェックしてみた方が良さそうです。</p><br /> <p>このオーブントースターは魚だけでなく、さまざまな調理に使えますので、フィッシュロースターのように魚専用に場所を取ってしまうようなこともありません。</p><br /> <p>また、オーブントースターで魚を焼くことの不安点として、以下があります。<div style='background-color:#EEE;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>オーブントースターに魚の臭いが移ってしまうので、トーストやクッキーを焼くときに、魚臭くなってしまうのではないか?</li> </ul><p></div></p><br /> <p>実は、これも元ネタはためしてガッテンなのですが、ためしてガッテンでは、<div style='background-color:#FEC;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>トースターで加熱するときに、食材は周囲に水蒸気や臭いを放出する一方であり、周囲の空気、水蒸気、臭いを吸収することはない。</li> </ul><p></div>と説明していました。</p><br /> <p>なので、ぼくも試しに魚を焼いた後のオーブントースターで、トーストやクッキーを焼いてみたのですが、臭い移りは感じられませんでした。<br /> もちろん、魚を焼いた後、内部をティッシュで拭くぐらいはしています。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>甘くて美味しい焼き芋もどきを超簡単につくる方法(食器洗い不要)</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p><div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>薩摩芋を普通にお湯で茹でると、甘みが少なく、まずいゆで薩摩芋になる。</li> <li>鍋にお湯を沸かし、芋をいれて、適切な時間を計るのがめんどくさい。</li> <li>茹でた後、鍋、鍋の蓋、ザルを洗うのがめんどくさい。</li> <li>土鍋を使って、水から弱火で薩摩芋を茹でると、酵素が働いて甘くて美味しい芋がゆであがるが、時間がかかりすぎてめんどくさい。</li> <li>芋のうまみがお湯の中に溶け出してしまうような気がする。</li> <li>普通に電子レンジでサツマイモを加熱すると、甘みが少なく、不味くなる。</li> <li>鍋の底に小石を敷いて、弱火で石焼き芋にすると美味しく出来上がるが、時間も手間もかかるのでそうそうやってられない。</li> <li>焼き芋専用の鍋を買うと、鍋を格納する場所を取るし、調理後、その鍋を洗うのがめんどくさい。なにより、自分1人分(お芋半分)だけの焼き芋を作るような場合でも、調理後、鍋全体を洗わなきゃならないのは不便すぎる。</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 薩摩芋を電子レンジで1分半加熱し、そのあと電子レンジの解凍モードで15分程度加熱する。</div></p> <blockquote> <p>石焼き芋が甘くて美味しいのは、石焼き芋にたくさんの糖分が含まれているからです。この糖分は、サツマイモの中の酵素が、サツマイモの中のデンプンを分解することでできます。<br /> しかしながら、この酵素は、温度が低すぎても高すぎても作用しません。50?60℃の温度帯の時に、この酵素が活発に働くらしいです。</p><br /> <p>このため、沸騰したお湯にサツマイモを入れると、サツマイモが一気に100℃付近の温度帯になり、ほとんど酵素が働かないまま、ゆであがってしまいます。このため、沸騰したお湯にサツマイモを入れると、甘みがなく、不味くなります。</p><br /> <p>そこで、ためしてガッテンでは、土鍋を使って甘いサツマイモを作る方法が紹介されていました。土鍋に水をいれ、その水の中にサツマイモを入れて、水から煮ていくことで、酵素の働く温度帯をゆっくり通過し、甘みを作り出すのです。</p><br /> <p>しかしながら、このやり方だと、かなり時間がかかりますし、普段使わない土鍋をひっぱり出してくるのがめんどくさいです。しかも、茹で終わった後、土鍋を洗うのがめんどくさい。<br /> また、サツマイモのうまみ成分がお湯に溶け出してしまうような気がするので、イマイチ。</p><br /> <p>このため、ためしに電子レンジでサツマイモを加熱してみたのですが、電子レンジだと、やはり急速に100℃付近まで温度が上がってしまうため、酵素が働く時間がなく、甘みがなくて不味いサツマイモができてしまいます。</p><br /> <p>そこで、電子レンジで酵素の働く温度帯をゆっくり通過させるために、まず、冷たいサツマイモを、酵素の働く温度帯まで普通にレンジで加熱した後、解凍モードで、その温度帯を長い時間維持するようにしてみました。<br /> その結果、石焼き芋屋さんほどではないですが、それなりに甘くて美味しいサツマイモを、電子レンジで作れるようになりました。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/sweet_potato_cooked.jpg"></p><br /> <p>これだと、甘みがお湯に溶け出してしまうことはなく、茹でる手間もなく、鍋を洗う手間もなく、簡単に焼き芋もどきがつくれます。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>美味しいアイスコーヒーを簡単・確実につくる方法(食器洗い不要)</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p><div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>市販のペットボトル入りアイスコーヒーは不味い。とくに風味が最悪。しかも、高い。</li> <li>市販のアイスコーヒーは、重いので、買って家まで運ぶのがめんどくさい。容器がゴミになって、捨てるのもめんどくさい。</li> <li>コーヒーメーカーでアイス珈琲を作ると、粉やフィルターセットしたり、後で容器を洗ったりするのがめんどくさい。</li> <li>ドリップすると、失敗して不味い珈琲になることがある。</li> <li>インスタント珈琲は不味い。</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 珈琲の粉を紙パックに入れたものと水を、1?2Lぐらいの容器にいれて冷蔵庫に入れておく。</div></p> <blockquote> <p>いわゆる、水出し珈琲です。<br /> これをホットで飲みたいときは、水出し珈琲をカップに入れて、電子レンジで加熱します。</p><br /> <p>紙パックは、1L分のもので10円で済みます。<br /> 私は、以下の水出しコーヒー用フィルターを使っています。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/water_coffee_filter.jpg"></p><br /> <p>で、400gで399円とかのコーヒーの粉を買ってきて、この紙パックに詰め込んでいきます。<br /> 紙パックが10個ぐらいできますから、それをいくつかの小さなフリーザーパックに入れて、冷凍庫に入れておきます。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/water_coffee_freezer_pack.jpg"></p><br /> <p>実際に作るときは、私の場合、100円ショップで買ってきた、900mlのビンに、そのパックを一つ入れ、浄水器を通した水を満タンに入れて、冷蔵庫に入れておきます。<br /> なぜ、ミネラルウォーターではなく浄水器の水なのかというと、軟水の方がよく珈琲の成分が抽出できるのではないかと思うからですが、比較実験をしていないから、実際の所どうなのかはわかりません。</p><br /> <p>市販のペットボトル入りの物に比べると、自分で作った水出し珈琲は、味も風味もよいです。また、重たいペットボトルを運ばないで済むので楽です。</p><br /> <p>アイスで飲むときは、ブラックよりも、ある程度ガムシロップを入れた方が美味しく感じる人が多かったりしますが、<br /> 私の場合、<a href="http://www.hanamasa.co.jp/">&#x306F;&#x306A;&#x307E;&#x3055;</a>のオリゴ糖(1kg 399円)を入れています。その方が、おなかにもよさそうなので。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/oligo.jpg"></p><br /> <p>自分でドリップ式でアイスコーヒーを作ろうとすると、失敗した場合、<br /> エグいというか、非常に不味い珈琲になりますが、水出し珈琲だと失敗することはまずありません。<br /> また、いちいちお湯を沸かす必要も、粉やフィルターをセットする必要も、ドリップの後片付けもいりません。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>超低カロリーのポップコーンを格安で超簡単につくる方法(食器洗い不要)</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p><div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>市販のポップコーンは、油がタップリ添加されているため、カロリーが高く肥満や糖尿病の原因になる。</li> <li>市販のポップコーンの油は、オメガ6系脂肪酸のものが多く、オメガ6系脂肪酸の過剰摂取によってホルモンバランスを崩し、健康被害が起きるリスクがある。バターなどの飽和脂肪酸の含有量が多そうな場合もある。</li> <li>市販のポップコーンは、味が濃すぎて、味覚がおかしくなる。とくに、普段から野菜本来の味を楽しむような料理を作っていると、市販のジャンクフードのどぎつい味はだんだん受け付けなくなってくる。</li> <li>市販のポップコーンは、かさばるので、スーパーで買ってくるのがめんどくさい。ゴミも出るし、輸送にもコストがかかるので、環境にもよろしくない。</li> <li>ポップコーンの種を買ってきて、フライパンでポップコーンを作ると、出来上がったポップコーンが焦げてしまい、不味くなる。火加減も調理時間のコントロールも難しい。また、油っぽくて、カロリーが高く、しかも調理も後片付けもめんどくさい。また、ガスも油の値段もかかる。</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 紙袋にポップコーンの種を入れ、電子レンジで加熱する。</div></p> <blockquote> <p>500W電子レンジだと、3分20秒の加熱がちょうど良いようです。<br /> 紙袋はなんでもよいです。適当な大きさの物は、東急ハンズに売っています。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/paper_bags_bought.jpg"></p><br /> <p>最初のうちは、塩や胡椒をかけたり、エゴマ油につけたりして食べていましたが、慣れてくると味覚が変化し、塩も油も一切付けず、素のままのポップコーンそのままで美味しく食べられるようになってきました。最近は、もっぱら、何も付けないポップコーンを美味しく食べています。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/popcorn_cooked.jpg"></p><br /> <p>ポップコーンの種は、普通にスーパーで買うと、だいたい150g138円とかなのですが、<a href="http://www.hanamasa.co.jp/">&#x306F;&#x306A;&#x307E;&#x3055;</a>で買うと、1kg380円と破格に安い値段でポップコーンの種が買えます。これで、市販のポップコーン4000円分くらいは作れます。10分の1の価格ですね。<br /> <img src="https://sub-fromdusktildawn.ssl-lolipop.jp/healthy_instant_food/popcorn_seeds.jpg"></p><br /> <p>電子レンジで作ると、ちゃんと時間を正しく設定しておけば、焦げることなく、いつでも美味しいポップコーンが作れます。</p><br /> <p>電子レンジでポップコーンを作ると、破裂しなかった種が紙袋の底に溜まりますが、その種は次回また再利用できます。次回も破裂しなかったポップコーンの種は、破裂しないまま、こんがり茶色に焼けていますので、そのままポリポリ食べられます。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>甘くて美味しい湯豆腐もどきを超簡単につくる方法</h4> <div class="section"> <h5>■解決すべき課題</h5> <p><div style='background-color:#EEE;border-style:double;border-color:gray;padding-right:10px;'></p> <ul> <li>湯豆腐はを普通にお湯で茹でて作ると、固くて不味い湯豆腐になる。</li> <li>高級料亭のように、甘くて美味しい湯豆腐を作るには、絶妙の加熱時間と温度コントロールが必要だが、これをやるのは、けっこうめんどくさい。</li> <li>ためしてガッテンで、土鍋を使って、この絶妙の温度コントロールを簡単にやる方法が紹介されていたが、それでも、やはり土鍋用意したり、後片付けしたりするのがめんどくさい。</li> <li>お湯で茹でると、豆腐の甘みが、お湯の中に逃げてしまうような気がする。(気のせいかも知れない)</li> </ul><p></div></p><p></p> </div> <div class="section"> <h5>■解決策</h5> <p><div style='background-color:#FEC;border-style:double;border-color:orange;padding-right:10px;'><br /> 豆腐を皿に載せて、電子レンジで加熱する。</div></p> <blockquote> <p>豆腐のサイズにもよるが、これで何度か実験を繰り返し、豆腐が甘くて美味しく感じられるような温度帯になるような時間設定を見つける。<br /> 僕がよく食べるお豆腐だと、500Wの電子レンジで、1分40秒加熱すると、甘くて美味しいお豆腐になりました。<br /> もちろん、精妙に温度コントロールして作られた湯豆腐の味には遠く及びませんが、少なくとも、ろくに温度管理せずに作った固い湯豆腐などよりも甘くて美味しくなります。<br /> また、お鍋を洗う手間もないです。<br /> さらに、一個100円もしないような安物の豆腐でも、そこそこ甘くて美味しくなります。(消泡剤を使ってないものなら、安い豆腐でも美味しいということをrepon氏から聞いたことがある気がしますが、実際に僕自身が食べ比べをやってみたことがないので、そこはよく分かりません。)</p><br /> <p>ぼくの場合、できあがったら、すぐに鰹節とポン酢で食べることが多いです。<br /> ちなみに、ゆずを絞ってかける場合には、ゆずを半分に切ったら、ゆずの皮側を下にしてゆずを搾ると格段に風味が良くなります。ゆずの皮の中にある油泡がつぶれて、皮側から、ゆずの香り成分がとび出すからです。これもためしてガッテンで仕入れた情報です。</p> </blockquote> </div> </div> <div class="section"> <h4>おわりに</h4> <p><br /> 超手抜き料理の情報源としては、ためしてガッテンはじつにすばらしいです。<br /> しかし、その情報を鵜呑みにするのではなく、自分なりに検証し、改良し、応用すると、さらにすばらしい超手抜き料理の世界が広がります。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>関連エントリ</h4> <p><br /> 以下のエントリでは「最小の手間とお金で、食物繊維を摂取する方法」なども解説されています。</p> <blockquote> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080629/p1">睡眠の質を最高にする、ちょっと変わった夕食のとり方</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080629/p1" alt=""></p> </blockquote> </div> fromdusktildawn 「頭悪い・退屈な・痛い英語」を話さないための7つのテクニック hatenablog://entry/10257846132601979877 2008-11-15T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:50:37+09:00 なぜここで紹介するテクニックが有効なのかの解説 いきなり具体的なテクニックを解説しても、なぜそれらのテクニックが有効なのかが理解不明になってしまいますので、まず最初に、それらのテクニックの下敷きになっている基本コンセプトについて説明しておきます。 たとえば、「How are you doing?」と訊かれるたび、毎回、壊れたレコードのように「Fine, thanks.」と同じ答えをするのは、退屈でつまらなくて頭悪そうな英語表現に聞こえます。 「fine」という答えが(1)ありふれた答えである上に、(2)毎回そればかりでは、二重に陳腐なのです。 しかし、だからと言ってネイティブ並に多彩な英語表現… <div class="seemore"> <div class="section"> <h4>なぜここで紹介するテクニックが有効なのかの解説</h4> <p><br /> いきなり具体的なテクニックを解説しても、なぜそれらのテクニックが有効なのかが理解不明になってしまいますので、まず最初に、それらのテクニックの下敷きになっている基本コンセプトについて説明しておきます。</p><br /> <p>たとえば、「How are you doing?」と訊かれるたび、毎回、壊れたレコードのように「Fine, thanks.」と同じ答えをするのは、退屈でつまらなくて頭悪そうな英語表現に聞こえます。<br /> 「fine」という答えが(1)ありふれた答えである上に、(2)毎回そればかりでは、二重に陳腐なのです。</p><br /> <p>しかし、だからと言ってネイティブ並に多彩な英語表現を駆使すれば問題が解決されるかというと、<br /> 話はそんなに単純ではありません。以下のような問題があります。</p> <blockquote> <p>(1)日本人の多くは、そもそも多彩なボキャブラリーをマスターするだけの学習時間(と根性)が確保できない。<br /> (2)多彩な英語表現を使いまくると、中国、インド、イタリア、フランスなどの、英語を母国語としない人たちにに通じないケースが多くなる。<br /> (3)<b style='color:red'>たいして英語力のない人が、無理して多彩な英語表現を使っているのは、むしろ痛い。</b><br /> (4)多彩な英語表現を駆使しながら、陳腐で退屈な英語を話すネイティブも珍しくない。</p> </blockquote> <p><br /> このうち、とくに重要なのは(4)です。<br /> 結局、陳腐で退屈で頭悪そうな英語表現というのは、「単純に語彙の貧弱さがもたらすものではない」ということです。</p><br /> <p>それでは、陳腐で退屈で頭悪そうな英語表現の原因とは何なのでしょうか?<br /> それは、その表現に<b style='color:red'>新鮮さ</b>がない、ということです。<br /> 新鮮さというのは、<b style='color:red'>驚き</b>です。予想もしていなかったような表現で言われると、<br /> おもわずニヤリとしてしまうような、おもしろみが生まれるのです。</p><br /> <p>そして、貧弱な語彙の人が、新鮮な英語表現を使うための、極めて効果的な戦略があります。<br /> それは、臨機応変に、<br /> <span style='font-size:170%;'>「存在しない英語表現」をでっち上げながら話す</span><br /> という戦略です。<br /> 「文法的に間違っているけど、意図が的確に通じてしまう」<br /> という英語表現をどんどん使います。<br /> 公式スピーチなどのフォーマルな場面を除き、普段の仕事、生活、友人との交流など、多くの場合、<br /> <span style='font-size:170%;'>重要なのは、正しい英語を話すことではなく、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>意図を的確に伝えること</span><br /> なのです。<br /> だから、「正しい英語」でないからダメだということにはなりません。</p><br /> <p>ただし、単に間違いだらけの英語は聞きにくく、意味も曖昧(ambiguous)で、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>何を言っているのだかよく分からず、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>聞き手を退屈させてしまいます。</span></p><br /> <p>新鮮な英語表現とは、単に素で間違えてしまった英語表現ではなく、<br /> <span style='font-size:170%;'>「意図的に間違えた英語表現」</span><br /> なのです。</p><br /> <p>むしろ、「意図的に間違えた英語表現」を際だたせるため、<br /> 普段から、時制、複数形と単数形、定冠詞と不定冠詞、三単現などの細部に神経を行き渡らせ、<br /> 精密に使い分けながら、徹底的に正確な英語を話すように心がけることが重要です。</p><br /> <p>このテクニックは、デザインや格闘技でも定番です。<br /> デザインの基本セオリーに徹底して忠実でありながら、一部意図的にデザインのセオリーから逸脱した表現を混ぜて新鮮なデザインを作り出すのです。<br /> 格闘技の基本形に徹底して忠実でありながら、技の中に、セオリーを無視した型破りな攻撃を混ぜることで、<br /> 相手の予想を超えた、不意打ち的な攻撃を作り出すのです。</p><br /> <p>そして、面白いことに、このような「意図的に間違った英語表現」をでっち上げようとすると、<br /> 結果的に、わりとよく使われる英語表現となることが多いのです。</p><br /> <p>試しに、自分で「間違っているけど意味が的確に通じる英語表現」を適当にでっちあげて、<br /> それをgoogleしてみると、それがすぐに分かります。<br /> 多くの場合、大量のページがヒットする、想像以上によく使われている英語表現なことが分かります。</p><br /> <p>すなわち、「間違っているけど意味が的確に通じる英語表現をでっち上げながら話す」<br /> というのは、決して奇策ではなく、ネイティブスピーカーも含めた、<br /> 多くの英語話者が使う、ごく基本的な戦略なのです。</p><br /> <p>また、人々は遙か昔からこれを行ってきたために、<br /> 「間違っているけど意味が的確に通じる英語表現」の中には、<br /> むしろ、「よく使われるありふれた英語表現」になっているものも多いことに気がつきます。</p><br /> <p>それから、よく、<br /> <span style='font-size:170%;'>「このような表現は、ほんとうに正しい英語なのか?」</span><br /> <span style='font-size:170%;'>ということを心配するあまり、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>本で習った正しい英語表現だけを使おうとする人がいますが、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>それはバカバカしいことです。</span></p><br /> <p>正しい英語表現とは、「意味が的確に伝わる英語表現」のことであって、<br /> 意味が的確に伝わる限り、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>この惑星上でそれを使うのが自分しかいない</span><br /> ような表現であっても、<br /> <span style='font-size:170%;'>それは正しい英語表現なのです。</span></p><br /> <p>また、不慣れな人の場合、自分で創作した英語表現は、言いたいことと別の意味に取られる恐れがあります。<br /> たしかに、これはもっともな心配です。ですから、不慣れな人の場合、絶対に失敗の許されない、重要な会議では、自分で新しい表現を創作するのは、避けた方が無難でしょう。<br /> しかしながら、普段の会話でいつも新しい表現を創作しながら英語を話すようにしていると、どのような英語表現なら的確に相手に伝わるのか、だんだん勘がつかめてきます。そして、慣れるに従い、英語表現の創作をしながら話しても、相手に誤解されるリスクがどんどん減っていくのです。そもそも、英語表現を創作しながら会話するというのは、実際に多くの人によって行われている、とくに珍しくもない行為なのです。</p><br /> <br /> <p>もちろん、「間違っているけど意味が的確に通じる英語表現をでっち上げながら話す」<br /> というのは、語彙の少ない人が新鮮な英語を話すときに効果的なテクニックの一つに過ぎません。<br /> これ以外にもいくつかのテクニックがありますので、ここでは、それらも含めて解説してみました。</p><br /> <p>基本的には、どれもよく空気を読んで使うのが基本です。とくに(1)と(2)は、仲間内などのインフォーマルな場所で、それが受け入れられる空気の時だけ使うのが一般的です。また、いくら仲間内でも、過剰に乱発するとタダの痛い人になります。</p><br /> <p>また、ここで紹介するテクニックは以下のタイプの人には向きませんので、その点、ご了承ください。</p> <blockquote> <p>・空気がまるで読めない。<br /> ・ユーモアのセンスが皆無。<br /> ・外したときに自己フォローする反射神経がなさすぎる。</p> </blockquote> </div> <div class="section"> <h4>テクニック1: 存在しない単語の組み合わせをでっち上げて使う</h4> <p><br /> まずは、一番お手軽な方法から。</p><br /> <p>たとえば、「very beautiful」とか「very strong」というように、<br /> 何かを強調する時にいつもveryを使うのは、陳腐で退屈です。</p><br /> <p>そこで、その時々の空気を読んで、veryの代わりに使えそうな言葉の組み合わせをでっち上げてみます。</p><br /> <p>たとえば、criminallyを使って、</p> <blockquote> <p>criminally delicious(犯罪的なまでに美味しい)<br /> criminally beautiful(犯罪的なまでに美しい)<br /> criminally gorgeous(犯罪的なまでに豪華だ)<br /> criminally spacious(犯罪的なまでに広々としている)</p> </blockquote> <p><br /> 具体的な使用例としては、たとえば、単に</p> <blockquote> <p>Mr. Kogai's house is very spacious.<br /> (小飼弾氏の家は、とても広々としている。)</p> </blockquote> <p>と言うと、なんだか退屈な感じになってしまうし、自分が感じた印象を十分に表現できていないな、と感じるとき、</p> <blockquote> <p>Mr. Kogai's house is criminally spacious.<br /> (小飼弾氏の家は、犯罪的なまでに広々としている。)</p> </blockquote> <p>という表現を使うことで、自分が感じた印象を、より的確に伝えることが出来たりします。</p><br /> <p>あるいは、stupidlyを使って、</p> <blockquote> <p>stupidly expensive(バカバカしいほど高価だ)<br /> stupidly cold(バカバカしいほど寒い)<br /> stupidly small(バカバカしいほど小さい)</p> </blockquote> <p>という言い方をしてみたりとか。</p><br /> <p>また、これ以外にも、本来ならそういう組み合わせはしない組み合わせで、<br /> 奇妙なおもしろさの発生する言葉の組み合わせは、いろいろでっち上げられます。<br /> たとえば、challengedを使って、以下のような表現ができます。</p> <blockquote> <p>バカ:cerebrally challenged(大脳が不自由)<br /> チビ:vertically challenged(垂直方向に不自由)<br /> ブス:aesthetically challenged(美的に不自由)<br /> 貧乏:financially challenged(経済的に不自由)</p> </blockquote> <p><br /> この調子で、自分が聞いたことがないような、オリジナルな組み合わせを、<br /> どんどんでっち上げながら話すと会話が生き生きしてきます。<br /> もちろん、でっち上げた表現をgoogleしてみれば分かるように、<br /> たいていは、結果的にわりとよく使われる英語表現になります。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック2:存在しない英単語をでっち上げて使う</h4> <p><br /> これも、お手軽な方法です。</p><br /> <p>仲間内でよく使う固有名詞の動詞化、形容詞化、副詞化は、<br /> 誰にでも簡単にマスターできるテクニックです。</p><br /> <p>たとえば、</p> <blockquote> <p>「ジョナサンが合気道を教えてくれるって話聞いたんだけど、ほんと?」<br /> 「ジョナサン流にアレンジした合気道(Jonathanized version of it)だけどねー。」</p> </blockquote> <p>とか、あるいは、</p> <blockquote> <p>「ついでに空手もジョナサン化(Jonathanize)すると、すごいものが出来上がるんじゃね?wwww」</p> </blockquote> <p>とかです。</p><br /> <p>このとき、ジョナサンがかなりクセのある濃いキャラだと、<br /> この表現に独特の味のあるニュアンスが生まれたりすることがあります。</p><br /> <p>あるいは、まだLISPにCLOS(CLOS = Common Lisp Object System)が導入されたばかりのころ、<br /> LISPでシステム開発している同僚との会話で、</p> <blockquote> <p>It's not CLOSified yet.(その機能はまだCLOS化されてないんだよ。)</p> </blockquote> <p>という表現をしてみたり。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック3:文脈的に間違った英語表現を使う</h4> <p><br /> 「この文脈では、通常その英単語やフレーズを使うのは想定外」となるような、<br /> 文脈的にミスマッチの英語表現を使うテクニックです。</p><br /> <p>たとえば、複数の欧米人と日本人で、日本人の過労死の話題になっていたとします。<br /> そして、日本の過酷な労働環境に興味津々な欧米人たちのために、<br /> 日本人が一人ずつ、過労死について、統計上は何人死んでるとか、<br /> こんなニュース記事が紹介されていたとか、<br /> クドクドとつまらない一般論を語って、みんなを退屈させていたとします。</p><br /> <p>こういう空気の時に、「あなたはどう思う?」と話を振られたら、</p> <blockquote> <p>I survived.(私は生き延びました。)</p> </blockquote> <p>と、まるでベトナム戦争を生き延びたかのような表現をしてみます。</p><br /> <p>いくら日本の労働環境が過酷でも、戦場や飛行機の墜落現場ではないのですから、<br /> surviveという単語を使うのはおかしいのですが、<br /> わざと文脈とミスマッチな単語を使うことで、新鮮なニュアンスを作り出します。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック4:簡単に短く言えることを、意図的に回りくどい表現を使う</h4> <p><br /> たとえば、ひどくブサイクな女性がいて、<br /> 彼女がブスであるということを言わなければならない場合<br /> 単に</p> <blockquote> <p>She is ugly.(uglyはブサイクという意味)</p> </blockquote> <p>と言うのは、無粋だったり、失礼だったりします。</p><br /> <p>この場合、婉曲表現としてhomelyを使ったりしますが、<br /> これはありきたりの婉曲表現であり、相手を退屈させてしまいます。</p><br /> <p>この場合、言外のニュアンスで、<br /> 「uglyというのは失礼だし、立場上、僕はそれを言えない。<br /> しかし、not uglyというのはウソになる。<br /> uglyと言わずに、uglyであることを伝えなければならない。」<br /> という苦しい自分の立場が、言外に相手に伝わるような表現をすると、面白みのある表現になったりします。</p><br /> <p>たとえば、</p> <blockquote> <p>I have to admit the fact that she is not aesthetically appealing.<br /> (彼女が審美的にアピールするわけではないという事実を、私は認めないわけにはいかないでしょう。)</p> </blockquote> <p>という言い方にします。</p><br /> <p>これを言うときに、声のトーンを低く抑え、真面目くさった表情をして、<br /> 本気で誠実に、公式見解を発表するように言うと、<br /> 独特の面白みが生まれたりします。</p><br /> <p>この面白みには、2つの要素があります。</p><br /> <p>一つは、まるで政治家の公式スピーチのように過剰に「政治的に正しい」<br /> 言い方であることによる面白みです。<br /> 多くの人は、政治家の過剰に「政治的に正しい」スピーチに嫌気がさしており、<br /> それとそっくりな言い方をすることで、政治家をからかっているような面白みが生まれるわけです。</p><br /> <p>もう一つは、一種の自虐ネタとしての機能です。<br /> 立場上、政治的に正しい発言しか許されないストレスと苦々しさを味わった経験のある人の場合、<br /> その同じ苦しみを他人が味わっているのをみて、共感を覚えます。<br /> また、その苦しさを分かるが故に、他人の不幸は蜜の味的に、<br /> 他人がそれに苦しんでいる様子が嬉しくてしょうがないのです。</p><br /> <p>もちろん、これを、まだ信頼関係の出来ていない相手に対して、<br /> ニヤニヤしながら言うと「嫌みな人間」になってしまうリスクがあるので、<br /> 注意が必要です。</p><br /> <p>これを使うとき重要なのは、真面目さと茶目っ気との混合比率です。<br /> また、聞き手の頭の良さです。<br /> このブレンド比率を間違えたり、言う相手を間違えたりすると、<br /> 単に過剰にくそまじめな人だと思われたり、<br /> 不謹慎で嫌みな人間だと思われたりします。</p><br /> <p>したがって、相手の人間性と知性をよく見極めた上で、<br /> その場の空気を良く読んで、声のトーンや表情を繊細に制御しながら言う必要があります。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック5:What do you think? と Whadayathink?を使い分ける</h4> <p><br /> 会話中に、相手の感想や意見を聞きたいと思ったとき、<br /> 「どう思う?(Whadayathink?)」<br /> と話をふることがあります。</p><br /> <p>書面に書くと「What do you think?」であったものが、<br /> 何度も使っているうちに、自然にこなれてきて、<br /> 会話の中では「ワダヤシン」みたいな発音になるわけですね。<br /> 一つの英単語みたいな、くっついちゃった感じです。</p><br /> <p>しかし、単に「どう思う?」と話をふるのではなく、<br /> 「『おまえの』意見はどうなんだよ?」<br /> と問い詰めたいときは、「ワダヤシン」という発音ではダメです。<br /> こういう場合は、</p> <blockquote> <p><b>What</b> [区切る] <b>do</b> [区切る] <b style='font-size:32px;'>you</b> [区切る]<b>think?</b></p> </blockquote> <p>という風に、わざわざ単語を区切って発音した上で、「you」という単語をことさらに強調して言います。</p><br /> <p>こうすると、相手は「オレ自身の意見を求められているのだな。」ということを強く意識し、<br /> 「Whadayathink?」と聞いたときとは、ぜんぜん別の回答が返ってきたりします。</p><br /> <p>このように、書面上では全く同じ意味になってしまうフレーズを、<br /> 発音の仕方を変えて、別の意味で使い、かつ、全く別の回答を引き出すように使い分けると、<br /> 会話がより生き生きします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック6: 不意打ち的になれなれしい表現を使う</h4> <p><br /> 普段は丁寧な英語を使って、礼儀を失しないように心がけます。<br /> しかし、相手が十分い自分の人格を信頼し、冗談が通じるモードになったら、<br /> 丁寧な受け答えの中に、いきなり、なれなれしい失礼な表現を混ぜます。</p><br /> <p>たとえば、1人があまりに、石頭でピント外れなことをダラダラとしゃべり続けてて、<br /> しかも、みんなが「ズレてんな、こいつ」と思ってる空気を察知したら、<br /> そして、冗談の通じる相手だったら、いきなり冗談めかした声音で、<br /> 「So what?」(だからどうしたっつーの。)<br /> と、浜ちゃんばりに失礼なツッコミをかまして、ニコニコして、周囲の人の笑いを誘います。<br /> そして、万一、相手が気分を害しそうだったら、<br /> 「ウソです!ごめんなさい!いや、このシリアスな空気の中で、<br /> ためしにSo Whatって言ってみたらどうなるかなーという好奇心を抑えられなくっちゃって(笑)。<br /> 病気ですね。ごめんなさい。失礼しました。それはさておき、これってさ、、、、、」<br /> などとすかさず自己フォローしてごまかします。</p><br /> <p>あるいは、たとえば、絶対アリエナイ変なことを言われたら、<br /> ニコニコしながら、<br /> 「No way!」(ねーよwww)<br /> と言ってみたりします。「ありえねーっつーの!」、ぐらいの意味ですかね。<br /> もちろん、周囲の笑いを取ることを意識しながら、いいます。<br /> また、相手が気分を害しそうになったら、すかさず自己フォローします。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>テクニック7:論理的にtheをつけられないはずのものにtheをつける</h4> <p><br /> 通常の会話では、脈絡もなしに、いきなりthe penとかthe guyとか言い出すのは、<br /> 論理的に成立しないです。</p><br /> <p>論理的、という言い方が適切かどうかは分かりませんが、要するに、<br /> the penやthe guyと言うときのtheというのは、文脈上既に特定されていることが明かな実体を指すものなので、<br /> いきなり「そのペン(the pen)」と言ったって、どのpenなのか、意味不明、ということです。</p><br /> <p>そして、</p> <blockquote> <p>MS Windows is the only Operating System for ordinary people on the planet.<br /> (その惑星(the planet)上にいる普通の人にとっては、ウィンドウズが唯一の現実的なOSの選択肢なんだよ。)</p> </blockquote> <p>とMS信者が言ったとすると、いきなりthe planet(その惑星)というのも、具体的にどの惑星かは、論理的には分からないはずです。<br /> この宇宙に惑星はたくさんあるのだから、いきなりその惑星(the planet)と言い出したって、<br /> どの惑星か分からないぜよ、というわけです。</p><br /> <p>たしかに、1000年後にこのセンテンスを使ったら、この文章は論理的におかしいかもしれません。<br /> しかしながら、現時点では我々人類が居住している惑星は一つしかありませんので、<br /> いきなりthe planetと言っても、意味が通じてしまうのです。</p><br /> <p>これだけでなく、一般に、aやtheを付けたり付けなかったりを、より繊細に使い分けると、<br /> とてもいい感じの英語に聞こえます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>目次</h4> <p>■なぜここで紹介するテクニックが有効なのかの解説<br /> ■テクニック1:わざと存在しない単語の組み合わせをでっち上げて使う<br /> ■テクニック2:わざと存在しない英単語をでっち上げて使う<br /> ■テクニック3:わざと文脈的に間違った英語表現を使う<br /> ■テクニック4:簡単に短く言えることを、意図的に回りくどい表現を使う<br /> ■テクニック5:What do you think? と Whadayathink?を使い分ける<br /> ■テクニック6: 不意打ち的になれなれしい表現を使う<br /> ■テクニック7:論理的にtheをつけられないはずのものにtheをつける<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>誤記を修正</h4> <p>virtically → vertically</p> </div> </div> fromdusktildawn 英語の圧倒的一人勝ちで、日本語圏には三流以下しか残らなくなるが、人々の生が輝ければそれでいい hatenablog://entry/10257846132601979909 2008-11-10T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:52:08+09:00 「英語の圧倒的一人勝ちで、日本語は衰退してしまうから、国語を守るために、国語の時授業時間を増やし、近代日本文学を読み継がせるのに主眼を置くべき」 と主張する「日本語が亡びるとき」という本を、梅田望夫氏と小飼弾氏が絶賛しているが、この本で主張されているのは、 日本文化を守るために個々人の人生を犠牲にする、愚劣な教育政策だ。 日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で作者: 水村美苗出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/11/05メディア: 単行本購入: 169人 クリック: 12,657回この商品を含むブログ (459件) を見る 今後、世界中の、あらゆる価値ある知識は英語で生産され、英語で… <div class="seemore"> <p><br /> 「英語の圧倒的一人勝ちで、日本語は衰退してしまうから、国語を守るために、国語の時授業時間を増やし、近代日本文学を読み継がせるのに主眼を置くべき」<br /> と主張する「日本語が亡びるとき」という本を、梅田望夫氏と小飼弾氏が絶賛しているが、この本で主張されているのは、<br /> <span style='font-size:170%;'>日本文化を守るために個々人の人生を犠牲にする、愚劣な教育政策だ。</span><br /> <div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480814965/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/513ZudxudiL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で" title="日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480814965/fromdusktilda-22/">日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> 水村美苗</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 筑摩書房</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2008/11/05</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 169人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 12,657回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4480814965/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (459件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p>今後、世界中の、あらゆる価値ある知識は英語で生産され、英語で流通する。<br /> インターネットの普及が、その流れをますます加速している。<br /> 世界中の知的にパワフルな人々は、ますます母国語よりも英語で読み、英語で書き、<br /> 英語で議論しながら、価値ある学術的成果・文化・商品・サービスを創り上げていくだろう。</p><br /> <p>知的コミュニティというのは、そこに参加する人の知力の二乗に比例して価値が増大するから、<br /> ひとたび、知的にパワフルな人々が英語コミュニティで知的なコラボをはじめると、<br /> 雪だるま式に、知的な人々が世界中から吸引されてしまい、<br /> 他の言語は、知的にパワフルな生産活動の場ではない、寂れた言語空間となっていく流れにある。</p><br /> <p>そうして、日本語圏は、三流芸人が軽薄にバカ騒ぎするバラエティー番組や<br /> スポーツマンや芸能人の下半身の話題をさも重大事件のように扱うゴシップ雑誌、<br /> 知性のかけらもない動物的で脊髄反射的なネット書き込みばかりがあふれる言論空間に堕ちていく。</p><br /> <p>書店の本も、ネット上の文章も、日本語のものは、ますます知的に貧弱になり、<br /> 英語圏のものは、ますます豊かで豊饒で活力に満ちたものになっていくだろう。</p><br /> <p>これらは、ずいぶん昔から言われてきたことだし、とくに目新しい意見でもない。<br /> 水村美苗氏は、この流れを概ね認めているという点では、きわめて常識的だ。<br /> 問題は、その現状認識にたった上で行われる、彼女の主張だ。</p><br /> <p>日本近代文学大好きな小説家である彼女は、以下のような主旨のことを主張する。</p> <blockquote> <p>「国語」としての日本語の衰退を防ぐために、<br /> 日本の学校教育の国語の時間数を増やし、<br /> 全ての学生に日本近代文学を読み継がせることを<br /> 日本の国語授業の主眼にすべきだ。</p> </blockquote> <p><br /> しかし、この考え方は、<br /> 「個々人のかけがえのない人生を、日本文化に奉仕させる」<br /> というものだ。</p><br /> <p>重要なのは、文化でも社会でも国家でもなく、個々の人間の実存だ。<br /> <span style='font-size:170%;'>日本文化を守るために、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>現にいま、こうして生きている個別具体的な人間のリアルな人生を削って奉仕させる</span><br /> など、本末転倒もいいところだ。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>文化のために個々のリアルな人間が存在するのではなく、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>個々のリアルな人間の生を豊かにするために文化が存在するのだ。</span></p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>個々の人間のリアルな生が輝くのなら、日本文化など亡んでもかまわない。</span></p><br /> <p>そして、文化人達は、萩原朔太郎の詩を味わうことすらできない大衆ばかりになると、<br /> かれらは文化的基盤を失って、根無し草になり、<br /> 個々の人間のリアルな人生までが台無しにされてしまうようなことを言うが、<br /> むしろ、逆である。<br /> 近代日本文学にこだわりすぎるほうが、よっぽど個々のリアルな人間の生は台無しにされかねない。</p><br /> <p>いまや恐ろしい速度で科学も技術も社会も発達し続け、<br /> 人材育成、技術開発、商品開発は、世界的な競争に厳しく晒されてている。<br /> <span style='font-size:170%;'>身につけるべき基礎学力がますます高度なものが要求されている現代において、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>英語、数学、科学、社会などのための時間を削って、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>日本近代文学を読み継ぐための時間の割り当てを増やすことを「<span style='color:red'>強制</span>」する</span><br /> というのは、国家暴力による、子供たちの将来の破壊だ。</p><br /> <p>近代日本文学が好きな子供たちもいるだろうが、それ以外の、<br /> 「近代日本文学より、はるかに英語、数学、科学、社会に惹きつけられる子供たち」にとっては、<br /> 楽しい数学や科学の時間を削って、退屈な近代文学の学習を強制的に学ばされるのは<br /> ある種の拷問に似ている。</p><br /> <p>また、ネット上の娯楽ですら、映画でも音楽でも英語圏のものがますます充実し、<br /> それらの英語のネットコミュニティやSNSも充実していく中で、<br /> 日本近代文学などより、英語をもっと勉強し、世界中の人々と繋がっていきたい<br /> 学生もますます多くなっていくだろう。</p><br /> <p>どの学習課目にどれだけの時間を割り当てるかは、<br /> 子供たちの未来を「賭ける」という、人生でもっとも重大な回避不可能なギャンブルの一つだ。<br /> 一つ間違えば、将来、つきたい職業につく自由を奪われてしまう。<br /> 下手したら、低賃金で退屈なルーチンワークをするしかない人生になってしまうかも知れない。<br /> それは、人生を決定づける重大な選択であり、<br /> 親子でよく話し合って、その将来リスクまで含めて納得ずくで選択すべきものだ。</p><br /> <p>だから、学校の学習課目や授業時間数の割り当ては、<br /> できるかぎり、各学校の自由裁量に任せるべきであり、<br /> 学校の教職員、親たち、子供たちがよく話し合って、カリキュラムを決めるべきだ。<br /> また、自由に学校を選択できるようにし、<br /> できるかぎり、自分にあった学校の教育方針やカリキュラムの学校に通うことができるようにすべきだ。</p><br /> <p>もちろん、最低限の数学、ごく初歩的な科学の基礎、歴史、地理、公民などは、<br /> 国家が強制すべきだろう。<br /> しかし、何をどれだけ時間をかけて学ぶか?についての国家介入は、<br /> 最小限にとどめるべきだ。<br /> 何をどれだけ学ぶか?についての人生の選択について、<br /> 国家が間違っていることがあとから分かっても、国家はその責任をとりようがないのだ。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>近代日本文学の学習は、あくまで、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>それを選択したい人が選択すればいいのであって、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>国家がそれを強制すべきようなものではない。</span></p><br /> <p>そもそも、現在の多くの日本国民は、<br /> 有権者としての最低限の知識すら身につけていない。<br /> どの政治家に投票すれば、自分たちの暮らしが良くなるのかを<br /> 判断するための基礎知識が決定的に欠落しているのだ。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>どの政治家に投票すれば暮らしが良くなるのかを知るには、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>夏目漱石や芥川龍之介を読むより、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>現代経済学の教科書を読む方が、何百倍も効果的だ。</span><br /> <div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313524/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41XGD2J704L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="マンキュー経済学〈1〉ミクロ編" title="マンキュー経済学〈1〉ミクロ編"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313524/fromdusktilda-22/">マンキュー経済学〈1〉ミクロ編</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,小川英治,石川城太,地主敏樹</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 東洋経済新報社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2005/09</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 19人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 200回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4492313524/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (89件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p>萩原朔太郎の詩を深く味わう感受性が発達しているけれども、<br /> 愚かな政治家に投票して<br /> ますます自分の暮らし向きを悪くしてしまうような人間を<br /> 作り出してしまうような教育が、果たして価値ある教育なのだろうか?<br /> そのような教育を、国家が強制するようなことが許されるのだろうか?<br /> 感受性豊かな、美しく愚かな日本人。<br /> 政治家にとっては、ある意味、理想的な国民かも知れないが。</p><br /> <p>また、情熱の赴くまま、プログラミングやコンピュータサイエンスに没頭し、<br /> 英語圏のプログラマーたちと英語で情報交換しながら、<br /> 自分のITスキルを磨けあげていくほうが、<br /> その時間を削って、興味のない日本近代文学を学ぶより、<br /> よっぽど、将来自分のなりたい仕事に近づけるかも知れない。</p><br /> <p>梅田望夫氏や小飼弾氏のように、生まれつきずば抜けた知的ポテンシャルに恵まれた人々なら、<br /> 英語、数学、科学、社会などの科目にさく時間やエネルギーを削って<br /> 近代日本文学に割り当てても、さしたる影響はないかもしれない。<br /> むしろ、人生が豊かになるだろう。</p><br /> <p>しかし、ほとんどの「普通の人」はそうではない。<br /> かれらの知的リソースは限られている。<br /> あれもこれも頭に詰め込むこもうとすると、一つ一つに割り当てられる時間もエネルギーも、<br /> どんどん不足し、中途半端になっていってしまう。</p><br /> <p>そういう、普通の人達にとっては、<br /> 最低限の基礎以外は、将来動向と自分が情熱をもって取り組める教科のバランスを<br /> とりながら、教師と親子で相談しながら自分たちなりにカリキュラムを選択していくのが、<br /> 結果的に納得のいく、充実した人生に繋がるのではないだろうか。<br /> (もちろん、その結果として「近代日本文学」を選択することで、自分の人生を豊かにする人達もいるだろう。しかし、それはあくまで、国家の強制でなく、個人の自由選択の結果でなくてはならない。)</p><br /> <p>坪内逍遙や志賀直哉を知らなくても、<br /> 幸せそうにRuby on Railsでのシステム開発に没頭しているプログラマなど、いくらでもいる。<br /> 近代日本文学を知らない彼らの人生が、文化的ルーツを持たない根無し草の貧しいものである、<br /> という感覚は、文化人のエゴに過ぎない。</p><br /> <p>逆に、プログラム開発の麻薬的な面白さに取り憑かれ、寝ても覚めても<br /> エキサイティングなプログラムのことであたまがいっぱいで、<br /> 頭の中でより美しいアーキテクチャを求めてオブジェクト構造がぐるぐる組み変わっていき、<br /> 寝る時間どころか食事の時間まで惜しんでプログラムに没頭する、<br /> あの陶酔感に満ちた世界を知らないまま一生を終える文化人の方が、<br /> よっぽど貧しい、同情に値する人生に思えることを、彼らは知らないだけだ。</p><br /> <p>また、水村氏は、一部の知的エリートのみを、日本語と英語のバイリンガルとして育成し、<br /> 外交や国際会議やネットで世界中の知的エリートと渡り合って、<br /> 日本の国益を確保すべきだ、などというが、それは非現実的だ。</p><br /> <p>たしかに、スーパーの店員やクロネコヤマトの配達員が英語を話せたり読み書きできたりする必要はない。<br /> しかし、ITエンジニアや、バイオ関係者、さまざまなビジネスマンなど、普通の人々の20〜40%ぐらいは、<br /> 英語を読み書きできるのと出来ないのとでは、仕事の質と生産性に大きな違いがでてくる時代が、<br /> もうまもなくやってくる。</p><br /> <p>とくに、パソコンを使った、相手の繊細な息づかいや、微妙な表情の変化まで伝わるような、<br /> 超高性能テレビ電話があと10年もすれば、普及する。<br /> インターネット回線が太くなり、マイクとモニターの性能がどんどん上がっていくからだ。<br /> これにより、日本のほとんどの企業は、オンライン越しに英語圏の知識労働者をプロジェクトに<br /> 組み込むことがますます当たり前になっていく。<br /> そうなると、日本においても、彼らとコラボするために、ますます英語の会議が増えていく。<br /> 一部の知的エリートだけがバイリンガルであればいい時代の終焉は、<br /> もう、すぐそこまで迫っているのである。</p><br /> <p>そして、梅田望夫氏や小飼弾氏のような、ウルトラスーパーエリートにとっては、<br /> たいした負担ではないかも知れないが、<br /> せいぜい上位20〜40%ぐらいのごく普通の日本人にとって、バイリンガルになるということは、大変な負担だ。</p><br /> <p>このため、学生時代は、バイリンガルになるために大量の時間を使わざるを得ず、<br /> その時間を削って、近代日本文学の学習に大量の時間とエネルギーを割り当てるなど、<br /> 時として自殺行為になる。</p><br /> <p>つまり、行われるべき教育は、水村氏の提案と、まさしく逆で、<br /> 近代日本文学は、梅田望夫氏や小飼弾氏のような、余裕のあるスーパーエリートたち<br /> こそがたしなみ、ハイソな社交の場で、明治の文豪達の苦悩に<br /> 思いを馳せればよいことであって、<br /> 知的リソースの台所事情の厳しい一般大衆に無理やり時間を削って教え込むべきものではない。</p><br /> <p>梅田望夫氏や小飼弾氏ほどの余裕のない、その他大勢は、<br /> 限られた知的リソースを自分の選択した学問・知識・スキルを学ぶために費やす自由を与え、<br /> たった1回しかない、他のいかなる人生とも、絶対的に交換不可能な、<br /> 自分のリアルな生を自分の選択で生きられるようにすべきなのではないだろうか。</p><br /> <p>極論を言えば、それで日本近代文学をたしなむ人口が激減し、日本語が衰退するというのなら、それはそれでかまわない。</p><br /> <p>個々のリアルな人間は、「日本人」でも「国民」でもない。<br /> そういう抽象的な存在であるまえに、絶対的にリアルに存在する、<br /> いかなる抽象化も受け付けないような具体的な存在なのだ。</p><br /> <p>個々の人間は、それ自体が究極の目的であって、<br /> それは決して他の目的の手段であってはならない。</p><br /> <p>それがたとえ「日本語を守る」というような、<br /> 崇高な目的であっても、<br /> その目的を達成するための手段として<br /> 個々の人間の実存を削ってよいということにはならないのである。</p><br /> <p>しかし実際は、そもそも、この意味で日本語が衰退したところで、<br /> 日本文化が亡んでしまうわけではないだろう。<br /> むしろ、英語の中に日本文化を取り込んでいくことで、より豊饒な進化を遂げる可能性だってあるのではないだろうか。たとえば、英語の文法をベースとしながらも、世界共通の英語のスーパーセットの形で、英語の中に日本語のひらがな、かたかな、漢字、顔文字、絵文字が混在するような、日本発の英語文化が生まれる可能性はないだろうか。100年後には、英語自体が様々な国の2バイト文字を取り込んで、ずいぶんと豊饒な進化を遂げている可能性だってあるのではないだろうか。その中に、日本語を語源とする多くの2バイト文字が融け込んでいる未来というのはないのだろうか。<span style="font-weight:bold;">日本が、世界語の体内で息づいている未来</span>というのはないのだろうか。</p><br /> <p>もちろん、かつて、近代日本文学が誕生するときに、それ以前の日本語文化との間に出来てしまった以上の断絶はできてしまうだろうが。<br /> <br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>関連エントリ</h4> <p><br /> ■「英語×インターネット」が世界を支配し、それによって日本社会が変質していく様子を描いた短編SF<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060409/1144582846">西暦2026年の日本</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060409/1144582846" alt=""></p><br /> <p>■英語を学ぶことを拒絶した日本社会がどう変質していくかを描いた短編SF<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060517/1147867121">2026年、言葉の壁で日本沈没</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060517/1147867121" alt=""></p> </div> </div> fromdusktildawn 麻生内閣や小沢民主のより、はるかに強力に日本経済を立て直すと思われる政策を、中学生でも分かるように解説してみる hatenablog://entry/10257846132601979917 2008-11-03T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:54:26+09:00 この記事は、次の4つの章に分かれています。 (1)今回の金融恐慌への経済対策案 (2)今回の金融恐慌の後に来る可能性のある長期デフレ不況(10年以上続くかも)への経済対策案 (3) (1)への予想される反論への反論 (4)麻生内閣の経済対策の問題点 これらを、経済の専門用語を極力使わずに、中学生でも分かるように書いてみました。 (理解に差し支えない範囲では使ってますが) (1)今回の金融恐慌への経済対策案 国家予算をほとんど使わずに、すなわち、 国の借金をまったく増やさず、 将来の増税の心配もなしに、 埋蔵金にも手を付けず、 円高を解消し、株価を下支え できる可能性のある政策があります。 この… <p>この記事は、次の4つの章に分かれています。</p><br /> <p><b>(1)今回の金融恐慌への経済対策案</b><br /> <b>(2)今回の金融恐慌の後に来る可能性のある長期デフレ不況(10年以上続くかも)への経済対策案</b><br /> <b>(3) (1)への予想される反論への反論</b><br /> <b>(4)麻生内閣の経済対策の問題点</b></p><br /> <p>これらを、経済の専門用語を極力使わずに、中学生でも分かるように書いてみました。<br /> (理解に差し支えない範囲では使ってますが)<br /> <br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>(1)今回の金融恐慌への経済対策案</h4> <p><br /> 国家予算をほとんど使わずに、すなわち、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>国の借金をまったく増やさず、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>将来の増税の心配もなしに、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>埋蔵金にも手を付けず、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>円高を解消し、株価を下支え</span><br /> できる可能性のある政策があります。</p><br /> <p>この政策により、日本の景気は強力に下支えされる可能性があります。<br /> 再来しようとしている就職氷河期も、「氷河期」というほど酷いものではなくなるかもしれません。</p><br /> <p>それは、<br /> 「日銀がお札を印刷しまくって、それで国債を買いまくる。」<br /> という政策です。</p><br /> <br /> <p>日銀が<b>印刷したお札</b>で国債を買いまくると、何が起きるのでしょうか?<br /> 銀行、郵貯、生命保険会社、個人などが持っている国債を、100兆円でも200兆円でも、日銀が怒濤のように買いまくったとします。(ただし、GDPデフレータで2%のインフレ率とか、あらかじめ決めておいた目標に達するまで)<br /> そうすると、それらの金融機関や個人の保有する国債が、現金に置き換わっていきます。<br /> 市場には、現金を大量保有する法人・個人がどんどん増えてきます。</p><br /> <p>日銀は、そんな何百兆円ものお金をどうやって調達するのかって?<br /> その心配はご無用。<br /> <span style='font-size:170%;'>日銀が供給できるお金は<span style='color:red'>無限大</span>です。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>印刷するだけで何千兆円でも簡単に作り出せます。</span><br /> <span style='font-size:170%;'><span style='color:red'>日銀にとってはお札などただの紙</span>だからです。</span></p><br /> <p>そうやって、日本中の金融機関の保有する国債がどんどん現金に置き換わっていくと、<br /> 金融機関は、融資先か投資先を見つけなければならないというプレッシャーに晒されます。<br /> なぜなら、金融機関は、いままでは国債でお金を運用することで運用益を出していたんだけど、<br /> 日銀が国債を買いまくると、それができなくなるからです。</p><br /> <p>なぜでしょうか?</p><br /> <p>日銀が国債を買いまくることで、国債の売り手よりも買い手の方が多くなります。<br /> そうすると、需要過剰になるから、国債の値段が上がってしまうのです。</p><br /> <p>たとえば、1年後に満期が来て1万円受け取れる国債が、市場で9500円で取引されていたとします。<br /> この国債を日銀が買いまくると、国債価格が上昇し、この国債の値段は9700円になってしまったりします。<br /> そうすると、国債を満期まで持っていても、300円の利益しか出ないから、<br /> 1年かけて300円の利回りを稼ぐより、いますぐ国債を売却して9700円の現金に換え、<br /> その現金を別の運用方法、たとえば、1年後にその9700円が10100円になるような<br /> 運用方法にした方がお得になります。</p><br /> <p>この流れは、日銀が国債を買いまくれば買いまくるほど、加速されます。<br /> 日銀が国債を買いまくれば買いまくるほど、国債の値段は上昇し、<br /> 限りなく満期に受け取れる額面に近づき、国債を保有し続けるのが相対的に損になっていきます。</p><br /> <p>さらに、日銀が国債を買いまくると、市場に出回る現金の量が増えてインフレ率が上がり、<br /> 固定金利の国債を持っていることがますます不利になります。<br /> 当然、現金をそのまま持っていても不利だから、国債でも現金でもないものに、<br /> 融資や投資をしなければならないという圧力が高まります。</p><br /> <p>しかし、いくら金融機関が、国債以外の運用方法を必死こいて探しても、<br /> 現在は世界中の金融資産が下落局面にあり、下手に融資や投資をすると、<br /> 利回りを稼ぐどころか、大損してしまうリスクがあります。</p><br /> <p>企業の方も、こんな不況でお金を借りて設備投資なんかやったても、作った製品はとても売れそうにないから、そもそも、いくら金利が低くても、お金を借りたいとは思いません。<br /> だから、金融機関は、融資先をなかなか見つけられません。</p><br /> <p>しかし、いくら恐慌だからといっても、融資や投資が一切なくなってしまうかというと、<br /> そんなことはありません。<br /> 単に、融資や投資の量が大きく減ってしまっている、というだけの話です。<br /> 逆にパニックじみた酷い大暴落だからこそ、底値買いのチャンスもあると考える人達もいます。<br /> 逆張り投資家的な行動をする人達は、パニック売りは、むしろチャンスだと考えたりします。</p><br /> <p>普通の企業は、まだまだ値崩れするかも知れないですから、融資や投資をするのは危険ですが、<br /> どんな不況でもつぶれそうにない、確固たる技術やブランドを持つ優良企業は、景気が回復すれば、やがて株価が復活する可能性が高いです。<br /> また、都心の優良物件なども同じで、景気さえ回復すれば、やがて資産価値が回復する可能性が高いです。<br /> さらに、優良な物件であれば、景気が低迷していてもそれなりの地代やテナント料が見込めるケースもあるでしょう。<br /> 物件の価格が十分に低いからこそ、景気低迷で少々空室があっても、それなりの利回りになったりします。<br /> たとえば、年の家賃収入が10億円のビルを100億円で買うと、利回りは10%に過ぎませんが、<br /> 恐慌でビルの値段が半分になるると、50億円で買ったビルの家賃収入が10億円になり、利回りは20%になります。<br /> たとえ空室率が40%にもなってしまったとしても、依然、12%もの高利回りで、<br /> むしろ好況時よりも利回りが高くなるようなケースだって出てくるかも知れません。</p><br /> <p>なので、3年でも5年でも待つぞ、という長期投資のスタンスなら、大暴落のさなかであっても、市況に引きずられて異常に値段の下がっている優良企業や優良物件へ投資するのは、戦略として十分にありなわけです。</p><br /> <p>それに加えて、日銀が国債を買いまくると、市場の金利自体が下がるので、<br /> ヘッジファンドなどが優良物件へ投資するための資金を銀行から調達するときも、<br /> 低い利率で借りられ、うまみが大きくなるので、それが追い風になります。</p><br /> <p>なぜ、日銀が国債を買いまくると、利子率が下がるのでしょうか?<br /> 今までは、金融機関は国債を買うことで運用益を得ることができましたが、<br /> 日銀が国債を買いまくったせいでそれが出来なくなって、<br /> 行き場を失った現金は、金融機関の中であふれかえることになります。</p><br /> <p>その現金を運用するために、国債以外の運用方法=融資先を見つける必要があります。<br /> しかし、お金を借りてくれる人の数は限られているから、<br /> お金の貸し借りをする市場において、お金が供給過剰になってしまいます。<br /> お金が供給過剰になると、借り手市場になり、借り手は貸し手を選べるから、<br /> いちばん利率の低い貸し手から資金を調達することができます。<br /> このため、日銀が国債を買いまくると、市場の金利はどんどん下がっていきます。</p><br /> <p>もちろん、単に金利が下がったから融資や投資がどんどこ増えるなどというほど<br /> 話は単純ではありません。</p><br /> <p><b>まだまだ10%も20%も下落するかもしれないという市況の時に、</b><br /> <b>単に融資の利率が0.5%安くなったからという理由だけで、</b><br /> <b>金を借りて株や不動産に投資するバカはいません。</b></p><br /> <p>しかし、優良物件のパニック売りの底値買いを長期投資で狙っている人達にとっては、<br /> 実質金利が高すぎると、長期で考えると利子負担が大きくなるので、<br /> そこが足枷になりえます。<br /> 日銀が国債を買いまくって市場金利を下げることで、<br /> そのボトルネックを解消する効果があるわけです。</p><br /> <p>このようなメカニズムが働くため、日銀の国債買いまくりにより、<br /> 金融機関の優良企業への融資や、金融機関からお金を借りて、<br /> 優良物件に投資したりする人達を増やすことが出来ます。<br /> それによって、優良物件市場は底堅くなっていきます。<br /> 優良企業・優良物件の投資機会が食い尽くされると、その次くらいに優良な物件や企業の株の底値買いの動きが出てきます。<br /> こうして、不動産や株の下支えになります。</p><br /> <p>また、日銀がお金を印刷しまくると、お札の希少性が薄れてきます。<br /> 市場の現金の総量が増え、いたるとことで現金があふれている状態になるので、現金の価値自体が減っていきます。<br /> お札の価値も、需要と供給のバランスで決まります。<br /> 現金ばかりをどっさり持っている人がたくさんでてくるということは、現金の供給が増えるということです。<br /> 現金の需要が変わらないなら、現金は供給過剰になり、現金の価値は下がっていきます。</p><br /> <p>現金の価値が下がるということは、相対的に現金以外のものの価値が上がるということと同じです。<br /> たとえば、株や土地の相対的価値が上がります。<br /> そうすると、現金で資産を保有していると、資産が目減りしてしまうから、<br /> 現金の資産を株や土地に移し替えることの魅力が上昇していきます。<br /> このようなメカニズムで、マネーサプライの増加は、株や土地の価格を下支えする効果も見込まれえます。</p><br /> <p>ただし、全ての現金が株や不動産に変えられてしまうわけではありません。<br /> また、どれだけの現金が株や不動産に向かうかは、その時の状況しだいなところがあります。<br /> たしかに、マネーサプライが大きく増えると、インフレがちになり、<br /> タンス預金の価値は目減りします。<br /> しかしながら、現金をタンス預金で持っている人の方がむしろ少数派です。<br /> 大多数の人は、現金を銀行口座に預けており、銀行口座の利子率(名目利子率)というのは、<br /> インフレ率(現金の価値が目減りする率)よりも高くなることが多いです。<br /> (「名目利子率−インフレ率=実質利子率」はプラスになりがちだとうこと)<br /> なので、銀行の利子率しだいでは、単に銀行に預けておけば、現金の価値が目減りすることもなく、<br /> わざわざ銀行預金を株や不動産に変えないと大損こくというほどではなくなる可能性もあります。</p><br /> <p>この圧力が働くため、30兆円とも言われるタンス預金の一部は目減り被害を恐れて、<br /> タンスから出てきて銀行に預けられ、ますます、金融機関にあふれる現金の量が増えていきます。</p><br /> <p>また、もう一つの要因として、日本の企業はこれまで、<br /> いざなぎ越えとも言われる、期間だけはやたらと長い「実感無き景気回復」の中、<br /> 業績の良かった輸出企業を中心に、大量の内部留保を貯め込み、有利子負債はずいぶん減りました。<br /> つまり、外から融資や投資などの形で現金を注入してもらうニーズそのものがそれほど大きくない状態にあります。<br /> このため、金融機関の中であふれる現金は、ますます行き場を失い、マネーがあふれかえる状態に拍車をかけます。</p><br /> <p>こうして、ますます現金の価値は低下します。</p><br /> <p>一方で、現金の価値がどんどん下がっていったからといって、人々は単純にその現金を消費に回したりはしません。<br /> 国債や現金を貯め込んでいた人は、<br /> <span style='font-size:170%;'>なんで消費せずに貯め込んでいたかというと、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>お金を貯めたい理由があったから</span>です。<br /> しかも、後述するような社会情勢の変化で、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>お金を貯めたいという欲求が</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>極めて強くなっている</span><br /> かもしれないのです。</p><br /> <p>だから、<br /> <span style='font-size:170%;'>現金で資産を貯めるとその価値が目減りするからといって、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>資産を貯めるのを放棄して、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>お金をどんどん使い始めるようなことをするわけがありません。</span></p><br /> <p>なので、現金を貯め込んでた人は、現金の価値が目減りするようになると、<br /> 現金を現金以外の価値の保蔵手段(土地、株、貴金属、外国の通貨・国債・株)に置き換えようとします。</p><br /> <p>だから、日銀が国債を買いまくると、<br /> 現金以外の価値の保蔵手段である、土地、株、貴金属などの需要が増え、値段を押し上げる力が強くなりますが、<br /> 日用品(食料、お菓子、家電)やその場で消費されてしまう贅沢品(レストランとかディズニーランドとか)の値段を<br /> 押し上げる力はそれほど強まりません。<br /> インフレになるといっても、全ての物の値段が一律に上がるわけではなく、<br /> このように、値段が大きく上がるものとあまり上がらないものの、ムラができるわけです。</p><br /> <p>日用品や消耗品の物価があまり上がらないまま、資産性のあるもののの値段だけが上がるとなると、<br /> 普通の生活者の日常感覚としての「インフレ」のイメージとは、少しずれるかもしれません。</p><br /> <p>貯金する(=価値を保蔵する)理由は人によって異なりますが、それは<br /> 「現在消費するよりも、将来消費したい」という欲求から生じると考えられます。</p><br /> <p>よく、「なぜ利子というものが存在するのか?」<br /> ということの答えとして、<br /> 「いますぐ200万円の車を買って乗れるということは、<br /> 4年後に250万円受け取るのと同じだけの価値があるから。」<br /> というものがあります。<br /> すなわち、4年後の250万円と現在の200万円は同じ価値なのだから、<br /> その差分が、4年分の利子になる、という考え方です。<br /> (もちろん、実際には貸し倒れリスクや手数料など、いろいろ組み入れる必要がありますが)</p><br /> <p>ところが、社会が流動化し、<br /> 企業の平均寿命が短くなり、企業の入れ替わりが激しくなり、<br /> 年功序列も終身雇用も崩れ、<br /> リストラや転職などの頻度が増え、労働市場が流動化し、<br /> 自分の将来の収入が予測しにくい世の中になってくると、<br /> 多くの人が、万一の時のことを考えて不安を感じるようになります。</p><br /> <p>ほんの20〜30年ほど前までは、<br /> いい大学を出て、いい企業に就職し、そのまま終身雇用、年功序列で<br /> 何事もなく歳をとっていくだけという将来が見えてしまっている、<br /> 「レールの敷かれた人生」に疑問を投げかけるマンガや小説がよくありましたが、<br /> 今は「レールが無くなって、先が読めなくなること」が問題だという時代になってきているのです。</p><br /> <p>このため、万が一、将来の収入が激減するようなことがあった場合でも、<br /> 生活に困窮したりしないように、「貯金=将来消費できる権利」の魅力が増してきます。<br /> すなわち、「将来のお金」の価値が高まるわけです。</p><br /> <br /> <p>また、高齢化の影響もあります。<br /> どんどん長寿化して、自分は何歳まで生きるか分からりません。<br /> そうすると、万が一長生きしてしまっても、死ぬ直前まで、困窮せずに暮らせるように、<br /> 「貯金=将来消費できる権利」の価値が増大します。</p><br /> <p>もちろん、これは年金システムの将来に対する不安が加速させている側面もあります。<br /> しかし、今後、年金システムに大量の税金が投入されるなどしても、<br /> 主に年金支給額の低い、貧困層の老人達への年金支給額が底上げされるだけで、<br /> 金融資産を貯め込んでいる中高資産保有者の老人達が、<br /> 現在と同じ豊かな消費生活を、将来にわたって行えることを保証することで、<br /> 安心して貯め込んだ金融資産を吐き出して消費に回せるようになるような制度改革が行われる見通しはほとんどありません。</p><br /> <p>そもそも、若者よりも老人の方が格差がずっと大きいのだから、<br /> 年金改革は格差を是正する方向で行われる見通しが高いわけです。</p><br /> <p>また、<br /> 「貧困層の老人達の消費性向(所得のうち、消費に回す割合)が高いから、<br /> 貧困層へより多くの年金が支給されると、社会全体の消費が増える」<br /> という議論がありますが、<br /> これは、政府によほどの信頼感がないと景気刺激には繋がらないと思われます。<br /> 例の地域振興券のケースがよい例ですが、<br /> 貧困層の方が、むしろ将来に対する不安を抱えているから、<br /> 「貯金=将来消費できる権利」の価値が高い。<br /> だから、一時的に収入があったときに、それを消費に回すのではなく、<br /> 貯金してしまう傾向が強くなる可能性があります。</p><br /> <p>そして、たとえ政権が代わって、<br /> 貧困層の老人への年金支給を増やすような年金制度改革が行われたところで、<br /> その政権が今後もずっと続くとは限りません。<br /> 何年か後に別の政権に代わって、<br /> 「この年金支給額だと、若い世代の負担が大きすぎます。<br /> やっぱりこんなに充実した年金支給は無謀だったことが分かりました。<br /> 前政権はアホでした。失敗を認めて、元に戻します。」<br /> などということにならない保証はありません。<br /> そうなると、年金制度改革で年金支給額が増えても、安心してそれらを<br /> 消費に回せないかもしれません。<br /> 行政と法律が変われば、年金制度は、いい方へも悪い方へも変わってしまうのであり、<br /> 将来の収入源として、絶対的に信頼できるようなものにはなり得ません。<br /> もはや、将来の年金制度ですら、流動性が高く、予測しにくい時代に突入しています。<br /> こうして、ますますそのリスクヘッジとして、<br /> 「貯金=将来消費できる権利」の価値が高まっているわけです。</p><br /> <p>さらに、たとえ年金制度が変わって、<br /> 貧困層の老人の消費が増えるようになったとしても、<br /> それは、中流〜プチ富裕層の老人達が貯め込んだ資産を消費に回させることとは直接は関係なく、<br /> 依然として老人達の膨大な金融資産は市中には出回らないままです。<a href="#f-55b68e0b" name="fn-55b68e0b" title="富裕な老人達の資産をとりあげ、貧困層の老人にばらまく、という社会主義革命みたいな政策も考えられなくはないですが、実現が政治的に困難であるばかりでなく、副作用のことを考えると、たとえ実現したとしても、どれほど長続きするかは疑問です。">*1</a></p><br /> <p>さらに、「貯金=いざというときに消費できる権利」は、<br /> 自由をもたらします。<br /> たとえば、今の仕事がつまらないから思い切って転職してみたいと思っても、<br /> 貯金がないと、いざ転職に失敗したら生活に困窮することになります。<br /> そのため、貯金がないとリスクを冒すことが出来ず、<br /> 実質的に転職する自由が減ることになります。</p><br /> <p>もちろん、これは現在の日本の社会保障制度の在り方が作り出している状況だ、という見方も出来ます。<br /> 転職に失敗しても十分な失業保険をかなり長期に渡って得られるような社会保障制度があれば、<br /> 貯金がなくても比較的安心して転職できることになり、<br /> 「貯金=いざというときに消費できる権利」の価値は、相対的に低くなります。</p><br /> <p>この意味で、社会保障制度改革と、景気対策は関係があると言えます。<br /> すなわち、社会保障制度改革は、日本人の消費性向(収入の内、貯蓄せずに消費に回す割合)自体を多少なりとも変えるかもしれない、という議論は可能かもしれません。</p><br /> <p>しかしながら、転職失敗のリスクに備えて貯金しなくてもいいや、<br /> と安心できるほどの強力な失業保険制度となると、<br /> そのための保険料や税負担もかなりのものになるので、<br /> どのくらいの負担をして、どの程度の所得保障をするか、<br /> というコンセンサスを国民の間で作り出すのは、かなりの時間がかかります。</p><br /> <p>さらにその上、たとえ手厚い失業保険制度ができても、<br /> それが将来の政権交代でまた反故にされるリスクは残ります。<br /> そうすると、やはり、貯金しておかなければ、将来の自由が奪われるリスクを抱えることになります。<br /> なので、やはり貯蓄の魅力は消えません。</p><br /> <p>あるいは、子供を作りたくなった場合でも、子育てのために会社を辞めたり休職したりすると、<br /> あとで職場復帰ができるかどうかは保証されていません。<br /> 貯金が無く、すぐに職場復帰できないと、生活に困窮するリスクがあるので、<br /> 不安で子供を作ることもできなくなります。<br /> しかし、十分な貯金があれば、一時的に職が見つからなくても、<br /> 貯金が底をつく前に、十分に時間をかけて職探しをすればいいので、<br /> 生活困窮に陥るリスクなく、子供を作る自由が得られます。</p><br /> <p>もちろん、これも現在の日本の社会保障制度が作り出した状況であって、<br /> 長期的には制度を変えることである程度対処できる可能性がありますが、<br /> たとえりっぱな社会保障制度ができたとしても、いつまた揺り戻しが起きて、<br /> その社会保障制度が崩れるかもしれないというリスクもあり、<br /> そのリスクに備える意味でも、<br /> やはり「貯金=いざというときに消費できる権利」の魅力は十分に大きいままです。</p><br /> <p>このようにして、現代の日本社会においては、<br /> 相対的に「現在消費する」ということの価値がどんどん低下し、<br /> 「貯蓄=将来消費できる権利or自由な選択をできる権利」の価値がどんどん上昇していきます。<br /> そうすると、人々は、たとえ利子がゼロであっても、現金を貯蓄するインセンティブを<br /> 十分に持つようになります。</p><br /> <p>場合によっては、現在の200万円より、将来の200万円の方が価値が高くなり、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>実質利子率がマイナスであってすら、貯蓄するインセンティブが生じてしまう</span>かもしれません。<br /> すなわち、いま預けた300万円が、30年後に290万円になってしまうような世の中になってすら、それでも人々は老後のために貯蓄するのをやめたりはしないかも知れない、ということです。<a href="#f-2b770895" name="fn-2b770895" title="もちろん、ここでは、あくまで貯蓄のインセンティブ構造の話をしているのであって、将来的に実質利子率がマイナスになる、と言っているわけではない。たとえ実質利子率がマイナスになってすら、貯蓄をしてしまうほどの強いインセンティブがある、という意味だ。">*2</a></p><br /> <br /> <p>ここで、一つ疑問が生じます。<br /> アメリカやヨーロッパでは、日本ほど貯蓄率が高くないじゃないか、という疑問です。</p><br /> <p>これは、こう解釈できます。<br /> アメリカやヨーロッパの経済においても、社会は流動化していて、<br /> 「貯金=将来消費できる権利」は高まっているために、消費が低迷する圧力があった。<br /> しかし、その潜在圧力を、全世界的な証券化バブルやEU内の労働市場自由化による好都合な労働力の<br /> サプライショックによる景気底上げ圧力が覆い隠してしまっていた可能性はないでしょうか。</p><br /> <p>すなわち、バブルによって、自分の総資産額がどんどん増えているのだから、<br /> 貯蓄しなくても、「資産=将来消費できる権利」がどんどん膨張しており、<br /> その分が満たされて、余った分は、どんどん消費に回せたわけです。</p><br /> <p>しかし、全世界的な証券化バブルがはじけた今となっては、<br /> 人々の「資産=将来消費できる権利」が大きく目減りしてしまっているわけだから、<br /> 今後は、貯蓄によって「資産=将来消費できる権利」を増やそうとする傾向が<br /> 増えていく可能性があります。<br /> すなわち、世界中の先進国の国内消費は、<br /> もはや二度と、いままでほどの力強さを取り戻さない可能性があります。</p><br /> <br /> <p>日銀の国債買い取りの話に戻します。</p><br /> <p>現金というのは「高い流動性=現在消費できる権利」と「価値の保蔵=将来消費できる権利」の両方の価値を持つという見方ができます。<br /> この2つの価値のうち、後者の「価値の保蔵=将来消費できる権利」の魅力の方が<br /> 相対的にどんどん高まっている、というのが現代の先進国社会だと考えることができます。</p><br /> <p>社会が流動化したために、自分の将来収入が予測しにくくなり、<br /> 「高い流動性=現在消費できる権利」に対して、相対的に、<br /> 「価値の保蔵=将来消費できる権利」の重要性が増してしまうような時代になったわけです。</p><br /> <p>こういう社会で、日銀が現金を印刷しまくって、現金の価値が目減りするようになると、<br /> 価値の保蔵手段としての現金、すなわち、「将来消費できる権利」という現金の魅力が毀損されることになります。<br /> もちろん、「高い流動性=現在消費できる権利」については、現金の方が依然として<br /> 土地や株よりも高いですが、流動性の魅力自体が、相対的に低くなってしまっているから、<br /> 現金は最高の流動性を持つにもかかわらず、価値の保蔵機能が低下することで、<br /> 他の価値の保蔵手段、すなわち、土地や株の価値が相対的に上昇しやすくなっているのではないでしょうか。</p><br /> <p>また、不動産の証券化や株のインターネット取引によって、流動性が高まっているため、<br /> 現金に対する不動産や株の魅力が高まっている、という力も作用しています。</p><br /> <p>このような力学が働くために、日銀が現金を印刷しまくって市場の現金の量を増やしても、<br /> それが人々の消費を直接的に増やすかどうかは怪しいですが、<br /> 少なくとも、株や土地の暴落に多少なりともブレーキをかけることができる可能性が高いのではないでしょうか。</p><br /> <br /> <p>また、日本円をたくさん印刷しまくって、それが市場にあふれると、<br /> 他の国の通貨に対する日本円の希少性が薄れてきます。</p><br /> <p>円高になるのは、売りたい円の総量(供給)より、買いたい円の総量(需要)の方が大きいからです。<br /> しかし、日本銀行が日本円を印刷しまくって、市場に大量供給すれば、<br /> 日本円は供給過剰になります。<br /> 日本円を印刷しまくったので、円は市場であふれていて、供給は十分なわけです。<br /> むしろ、円以外の通貨の方が、相対的に足りなくなります。<br /> そうなると、円は値崩れして、円高は解消されます。</p><br /> <p>円高が解消されれば、日本の輸出企業の利益率はそこそこ改善されます。<br /> もちろん、いくら円安になったところで、世界中の消費が落ち込んでいるのだから、<br /> 輸出企業の業績は、いぜん厳しいままであることはかわりません。<br /> しかし、円高が続くよりは、はるかに企業業績は良くなるのではないでしょうか。</p><br /> <p>こうして、株価がそこそこ回復すると、株を保有していた人達は、<br /> 自分の総資産額が回復して安心し、不況で固く閉まった財布の紐も、多少はゆるんでくるかもしれません。<br /> すなわち、「このぐらいは貯金(=価値の保蔵)しておけば安心」と思える額以上に、<br /> 資産が回復すれば、将来の不安無くお金を使える分が増えるわけです。<br /> こうして、消費も少し回復し、国内企業の業績も下支えされる可能性が出てきます。</p><br /> <p>さらに、不況であっても、<br /> 現在の日本社会において、人々が「将来消費できる権利」を重視するという<br /> 仮定からは、「将来収入=将来消費できる権利」の増大を促すような消費は、<br /> むしろ積極的に行われる可能性がある、ということが導き出せます。</p><br /> <p>生鮮食料品など、保蔵が困難であるものは、「将来消費できる権利」を減らすだけなので、<br /> 人々はそういうものへの支出は減らそうとします。<br /> しかし、英会話スクールや資格取得のための本や教材などは、<br /> スキルアップによって、自分の将来の収入を増大させるためのものだから、<br /> 「将来の収入=将来消費できる権利」の増大に繋がります。<br /> したがって、マネーサプライが増加すると、<br /> 一種の資産性があり、そういう「自分への投資」に繋がるサービスの消費が拡大する可能性があります。<br /> あるいは、「自炊のための料理教室」みたいな、安い材料で、美味しい料理を、短時間で作るスキルは、<br /> 将来的な生活コストの低減と、生活の質の上昇をもたらすから、やはり、<br /> 需要は伸びるかもしれません。</p><br /> <p>すなわち、「将来消費できる権利」の価値の増大がボトルネックになるために、<br /> いくらマネーサプライを増やしても、単純になんでもかんでも、<br /> あらゆるものの消費が無差別に増えるわけではないですが、<br /> 一方で、まったく消費に回らないわけではなく、<br /> 「投資的な消費」に関しては、「将来消費できる権利」の価値増大が<br /> ボトルネックにならないために、増加する可能性があるわけです。</p><br /> <p>また、インフレによって個人・法人の借金が目減りします。<br /> 正確には、固定金利の借金が目減りします。<br /> これは、借金をして、事業投資していた企業の業績を回復させる効果があります。<br /> もちろん、お金を固定金利で貸していた側の金融機関は、損失を被ります。</p><br /> <p>ついでに、固定金利の国債を買った法人・個人が損失を被り、<br /> それ以外の全ての納税者が、将来の税負担の軽減という形で得をします。<br /> なぜなら、インフレによって国の借金が目減りするからです。<br /> これは、固定金利の国債を保有している法人・個人から、<br /> それ以外の人間への所得移転とも見ることが出来ます。</p><br /> <br /> <p>まとめると、日銀の国債買いまくりによって、<br /> 株価は次の6つの経路で押し上げられる可能性が考えられます。</p><br /> <p>(1)マネーサプライの増加によって、価値の保蔵手段が現金から株に移る。<br /> (2)円安による輸出企業の業績回復という実体経済の効果によって輸出企業の株が買われる。<br /> (3)株価が上がることで、人々の資産が回復し財布の紐がゆるむことで消費が増えて、国内企業の業績が回復し、国内企業の株価を押し上げる。<br /> (4)株や不動産の価格が回復することで、企業が保有していた資産の含み損が解消され、その企業の株価も上がる。<br /> (5)実質利子率が下がるので、新規ビジネスチャンスを見つけて、借金して新規事業に投資する企業が有利になる。<br /> (6)インフレによって企業の過去の借金が目減りし、負担が軽くなる。</p><br /> <p>こうして、株価が回復し、実体経済も治癒してくると、<br /> 企業も無理なリストラが減り、<br /> 内定を取り消して新卒学生の未来を奪うようなことも減る可能性があります。<br /> 若者達が氷河期の中に置き去りにされることも少なくなり、<br /> リストラされて失業し、野宿者に転落する人の数も減かもしれません。</p><br /> <p>このようにして、日銀がお金を印刷しまくって、国債を買いまくると、<br /> 円高は解消され、株安もかなりマシなり、企業業績の悪化も緩和され、<br /> 景気悪化が食い止められ、人々の生活状態の悪化はずいぶん緩和される可能性があります。</p><br /> <p>註:トラバからの指摘によると、国債の日銀引き受けは原則禁止のようですが、1年未満の短期国債の引受は可能だとのこと(実際していますね)。また、ブクマコメの指摘によると、国が発行する国債を直接日銀が買い取るために国会の議決が必要だというだけで、市中に出回っている国債を買オペするぶんには法的な制約はないとのこと。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(2)今回の金融恐慌の後に来る可能性のある長期デフレ不況(10年以上続くかも)への経済対策案</h4> <p><br /> 今回の恐慌が収まった後、もしかしたら、<br /> 10年以上続く、長期のデフレ不況がやってくるかもしれません。</p><br /> <p>このセクションでは、その長期デフレ不況から脱出する方法について考えてみます。</p><br /> <p>ただし、そもそも日本の失われた10年と言われる平成デフレ不況の原因や処方箋ですら、<br /> 経済学者たちの間では、意見が割れまくっていて、統一見解はありません。</p><br /> <p>ましてや、まだ到来してすらいない、世界恐慌後の長期デフレ不況への<br /> 対策案など、経済学者の間で統一見解など有り得るわけがありません。</p><br /> <p>したがって、何を書いても、「間違ってる」「いやいやそれも違う」という、<br /> 異論だらけになって、何の結論も出ないで終わることは見え見えです。</p><br /> <p>しかし、専門家の間で統一見解がないからといって、<br /> 全ての有権者が思考停止してしまうと、<br /> 今後我々がどのような政治家に投票すべきかの判断もできなくなってしまうので、<br /> 無謀を承知で、一有権者として、今後どのような政策を訴える政治家に<br /> 投票すべきか判断するための材料として、<br /> 思考実験も兼ねて、今後予想される長期デフレへの対策を検討してみることにします。</p><br /> <p>まず、今後訪れるかもしれない長期デフレ不況は、<br /> 次のような構造を持つ可能性があるのではないか、と仮定してみます。</p> <blockquote> <p>社会の流動化 <br /> → 将来の収入が読めない (20年後のオレの収入なんてワカンネ)<br /> → 「将来消費できる権利」の価値の増大 <br /> → 貯蓄の魅力の増大<br /> → 消費の低迷(恒常的な総需要の不足)<br /> → 不景気</p> </blockquote> <p><br /> こういう状況で<br /> 「構造的に高まりすぎた貯蓄欲求が飽和して、<br /> あふれ出てしまうまでドバドバとマネーを注ぎ込み続ける」<br /> という政策が、総需要を押し上げることができるかどうか、検討してみます。</p><br /> <p>そもそも、国民みんなが将来が不安で、<br /> 消費よりも貯蓄をしたいと思っているのに、<br /> 無理やり貯蓄を阻害して、消費させるような政策は、<br /> まるで北風と太陽の童話の、北風のような政策です。</p><br /> <p>そっちの方向であれこれ政策を工夫しても、<br /> いろんな副作用が起きて、なかなか上手く行かないのではないでしょうか。<br /> 北風で旅人のコートを吹き飛ばそうとすればするほど、<br /> 旅人はコートの裾を、ますます固く合わせようとするのではないでしょうか。</p><br /> <p>人々に、無理やり消費させようとしても、<br /> 人々は、あの手この手で抜け道を探し、<br /> なんとか貯蓄しようとするから、<br /> イタチごっこになってしまうのではないでしょうか。</p><br /> <p>したがって、北風ではなく、太陽のように、<br /> みんながおなかいっぱいになるまで貯蓄させてあげれば、<br /> 「これ以上の貯蓄は、もういいや」と思って、<br /> 消費性向が上がるのではないでしょうか。</p><br /> <p>そのために、これでもかという程、お金を印刷して印刷して印刷しまくることを考えてみます。</p><br /> <p>最初のうちは、お金をいくら印刷してばらまいても、<br /> みんな将来が不安だから、お金を貯め込むばかり。<br /> ばらまかれたお金は、みんなの銀行口座にひたすら積み上がっていきます。<br /> だから、日銀がいくらお金を印刷してばらまいても、<br /> それらは消費には向かわず、したがって、物も売れず景気も良くなりません。</p><br /> <p>しかし、それは「臨界点」に達するまでの話です。</p><br /> <p>日銀というのは政府機関の一つですから、<br /> 日銀がお金を印刷しまくって、それで国債を買いまくるということは、<br /> 政府の借金が減っていくのと同じことです。<br /> たとえば、日銀が市場に出回っている全ての国債を買い占めたとすると、<br /> 政府が日銀に500兆円の借金をしていることになります。<br /> しかし、日銀というのは政府組織の一つですから、<br /> 政府が政府に借金をしているようなもので、<br /> 実質的には、もはや借金ではありません。</p><br /> <p>こうなると、日本政府の借金は、実質的にゼロになったのと同じことです。<br /> 極端な話、日銀が全ての国債を買い取った後、その国債を破り捨ててしまっても、<br /> 一般的な債務不履行のような大問題には発展しません。<br /> (実際には、万が一インフレが酷くなってきたときに、ばらまいたお金を回収するために、<br /> 買い取った国債はストックしておかなきゃならないけど。)</p><br /> <p>そして、日本政府の借金が減るということは、<br /> 将来の増税の心配が減るということです。<br /> これは、実質的に国民の将来の期待収入が増えたのと同じことになります。</p><br /> <p>さらに、今後ますます高齢化が進み、<br /> 医療費が高騰し、<br /> 介護費用が嵩み、少子化対策費用が嵩み、教育費用が嵩み、<br /> 生活保護費が嵩み、失業対策費用が嵩み、<br /> 社会保障費がどんどん増大して、<br /> ますます財政の恒常的な赤字が続く状態になっても、<br /> その国債を片端から日銀が買い取りまくって市場に出さない状態を<br /> 続けられるとしたら、今後もずっと増税などしないで済むことになります。</p><br /> <p>この状態になると、政府が社会保障費という形で、<br /> 文字通りの意味でお札をバラマキ続けてるのと同じ状態になります。<br /> (麻生氏のインチキなバラマキでなく、これこそ本物のバラマキです。)</p><br /> <p>その、バラマキ続けたお札は、どこへいくのかというと、<br /> ひたすら人々の銀行口座に積み上がっていきます。<br /> なぜなら、みんな将来が不安だから、将来のために貯金しておきたいからです。<br /> だから、バラマキをやりつづけても、消費はあまり増えず、<br /> したがって景気もたいして良くなりません。</p><br /> <p>しかしながら、それでも根気よくバラマキを続けていると、<br /> やがて、人々の貯蓄意欲が飽和する時が来ます。</p><br /> <p>たとえば、今後もずっと年収500万円の暮らしで十分満足だと<br /> 思っている人間の貯金残高が1億円になれば、<br /> 将来の不安がだいぶ解消され、<br /> もうそろそろ、現在の楽しみのために消費をしてもいいのではないか、<br /> と思うようになるのではないでしょうか。</p><br /> <p>つまり、「将来の不安」が人々の消費行動のボトルネックになっている<br /> 現代の先進国経済においては、「将来の不安」を押し流すほどの<br /> 膨大なマネーを供給することで、はじめて景気がよくなるのではないでしょうか。</p><br /> <p>また、これは、一時的なものであるにせよ、<br /> 貧困と格差の強力な是正策になりえます。<br /> 現在、政府の収入の多くは、中高所得者や富裕層から来ています。<br /> 一方で、政府の支出の多くは低所得者層のために費やされています。</p><br /> <p>だから、政府がお金を印刷しまくってばらまくと、<br /> ばらまいたお金の多くは低所得者層へ向かうわけで、<br /> 低所得者層の福利厚生が大きく改善し、格差を縮めることになります。<br /> それでインフレがおきたとしても、インフレの被害は、<br /> 広く薄く、国民全体にかかります。<br /> とくに貧困層だけに負担が集中するわけではありません。<br /> すなわち、福祉は低所得者層が受け取り、<br /> そのための負担は、国民全体で行われることになります。</p><br /> <p>インフレの費用(=シニョリッジの裏返し)が国民のだれにどのように負担されるかは、<br /> 価格メカニズムのチェーンによって調整されるため、かなり複雑にななります。<br /> インフレによる現金の価値の目減り=インフレ税とは、現金保有税のようなものですが、<br /> たとえば、現金保有税をかけられた金融機関は、<br /> その税の一部を融資先や出資先に転嫁し、融資先や出資先の企業は、<br /> その一部を、商品やサービスの価格や、従業員への賃金や、株主への配当に転嫁することで、<br /> たくさんのステークホルダーに薄く広く負担されます。</p><br /> <p>ただ、このようなバラマキを可能にしてしまうと、<br /> 政府の財政規律がゆるんでしまうという弊害が考えられます。<br /> 印刷されたお金で天下り法人がどんどん作られ、<br /> そのお札は、天下り役人の5人目の愛人の3匹目のペットの犬がしゃぶるシャネルのロゴの入った骨になったりするかもしれません。<br /> あまり人通りのない、田舎の山奥のきれいな道路が莫大な予算をかけて作られてしまうかも知れません。</p><br /> <p>そして、いったん財政規律がゆるんでしまうと、<br /> 大量の寄生虫的な利権が発生してしまいがちです。<br /> また、格差是正の名の下に、膨大なマネーが福祉に注ぎ込まれるのが<br /> 当たり前だと感じる人々が大量発生してしまうかもしれません。</p><br /> <p>その状態になったあと、いざ、人々の貯蓄意欲が飽和し、<br /> インフレが起き始めて、日銀によるこれ以上の赤字国債の買い取りができなくなり、<br /> 国家予算を削らなければならなくなっても、<br /> 「福祉切り捨て反対」を唱える大量の人々の圧力から、予算削減が政治的に<br /> 極めて困難になってしまうかもしれません。</p><br /> <p>だから、もし、このようなお札印刷しまくりバラマキ政策をやるのだとしたら、<br /> それとセットで発生してしまう、<br /> 天下り役人や中央の金に寄生する田舎の利権ゴロの無駄遣い大暴走や、<br /> 規律のない福祉予算の膨張にどう歯止めをかけるかが問題となります。</p><br /> <p>だから、日銀の国債買い取りを大規模に行う政策を実行するには、<br /> 必ず、無駄遣いを許容可能な範囲内にとどめるような、強力な政治体制の構築が<br /> セットでなければなりません。</p><br /> <p>しかし、これは言うは安く、行うのは極めて困難です。<br /> 現に、あれほどの議論を巻き起こしたにもかかわらず、<br /> いまこの瞬間も役人達は天下りを続け、<br /> 田舎には、採算のとれる見込みの怪しい道路が造られまくっているのを、<br /> 誰も止めることができていないのですから。</p><br /> <p>もしかしたら、日銀が国債買い取りに慎重なのは、<br /> このような無駄遣いに歯止めがなくなってしまうことを警戒していることも、<br /> 原因の一つかも知れません。</p><br /> <p>しかし、困難だからと言って、それが不可能だということにはなりません。<br /> もしかしたら、どんなに困難でも、それはやるだけの価値ある政策かも知れないのですから。</p><br /> <p>また、もう一つ重要な点は、一時的な世界恐慌のための対策として行う<br /> 日銀の国債買いまくり政策と、<br /> 先進国の構造的な需要不足に対処するための<br /> 日銀の国債買いまくり政策とは、区別しなければならない、ということです。</p><br /> <p>前者は、いますぐにでもやるべき、対処療法的な緊急経済対策であって、<br /> 後者は、この恐慌を脱出した後にやって来るかもしれない、<br /> 長期のデフレ経済に対する処方箋の話です。</p><br /> <p>後者の話はまだまだ議論が必要かも知れませんが、<br /> 少なくとも前者の緊急経済対策としての、大規模な日銀の国債買い取り政策は、<br /> 今すぐにでもやるべきなのではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(3) (1)に書いた今回の金融恐慌への経済対策案へ予想される反論への反論</h4> <p><br /> (1)に書いたような日銀が国債を買いまくるような政策を主張すると、<br /> さまざまな反論をする人達がいます。</p><br /> <p>たとえば、よくあるのが、<br /> 「ジンバブエのようなハイパーインフレになったらどうするんだ?」<br /> という反論です。</p><br /> <p>しかし、これについては、ハイパーインフレになるほどお札を印刷しなきゃいいだけです。<br /> 許容可能なインフレの範囲を決め(たとえば、GDPデフレータで1〜3%とか)、<br /> その範囲を超えるインフレになったら、お札の印刷をやめればいいだけです。<br /> それでもインフレが止まらないようなら、印刷してばらまいたお札を、市場から回収すればいい。<br /> 具体的には、日銀が買い込んだ国債の一部を、インフレが収まるまで売ればいい。</p><br /> <p>このようにして、国債を売ったり買ったりして、ちょうどいい湯加減のマイルドなインフレになるように、<br /> コントロールすれば済む話です。</p><br /> <p>ちなみに、このようにしてマイルドなインフレを起こすことを、リフレ政策と言います。</p><br /> <p>また、別の反論としては、<br /> 「またバブルを引き起こすんじゃないのか?」<br /> というものがあります。</p><br /> <p>これに対する答えも同じです。<br /> 現金の供給過剰が原因で、株や土地の値段が上がりすぎて、バブルになりそうになったら、<br /> 早めに国債を売りまくって、市場から現金を回収すれば、<br /> 現金の供給が足りなくなって、バブルの沈静化を行えます。</p><br /> <p>もちろん、バブルはいったん発生すると、制御不能になることがあります。<br /> また、バブルの最中は、それがバブルなのかどうかはなかなか判断しにくいので、<br /> ついつい放置されたままバブルが膨らんでしまいがちです。</p><br /> <p>しかし、だからと言って、そもそもバブルを全く発生しないようにすると、社会そのものが活力を失ってしまいます。</p><br /> <p>たとえば、ソ連崩壊後、放棄されていたウクライナの耕作放棄地が<br /> 近年の全世界的食料価格バブルのおかげで、瞬く間にグローバル金融資本によって買い占められ、<br /> 農業機械がどんどん投下され、農地として耕され、食料の大増産が始まりました。<br /> 治安が悪いので、マフィアに襲撃されないように私設の軍隊まで雇う徹底ぶりです。</p><br /> <p>つまり、余ったマネーは投資機会を見つけ、そこに投下され、<br /> 瞬く間に市場で不足しているものを増産し、人々に供給するパワーがあるわけです。<br /> そして、この金融資本パワーは、投資機会が枯渇すると、バブルゲームを引き起こしがちです。</p><br /> <p>マネーは免疫システムに似ています。<br /> 正常に機能しているうちは、経済システムの損傷(有効活用されていないビル、工場、農地、特許、著作権)を<br /> 見つけては、その損傷を修復します(それらをビジネスに結びつけ、市場に商品やサービスを提供する)。<br /> しかし、投資機会が枯渇して、マネーが行き場を失うと、まるで暴走した免疫システムが自分自身を攻撃し、リュウマチやアレルギーなどの自己免疫疾患を引き起こすように、狂って暴走したマネーは、バブルを引き起こし、崩壊して経済システムを傷つけます。</p><br /> <p>もし、マネーの供給を抑制しすぎると、免疫力が低下し、<br /> 経済システムに損傷が起きても治癒されずに放置されてしまうようなことが起きてしまいます。<br /> たとえば、市場には食料が足りないのに、世界一肥沃なウクライナの黒土地帯には資本が投下されず、<br /> 農地は放棄されたまま、食料は作られず、食料も供給されないまま、というようなことが起きてしまうでしょう。</p><br /> <p>日本国内に限った話でも同じです。<br /> 多くの人が欲しがるすばらしい新サービスをある起業家が思いつき、<br /> それをビジネス化するために、資本が必要だとします。<br /> しかし、マネーの供給が足りないと、そのビジネスに必要な資本をなかなか調達できず、<br /> その新サービスは実現されないことになってしまいます。</p><br /> <p>だから、マネーは供給過剰でも困りますし、供給不足でも困ります。<br /> 恐慌で信用収縮が起きているときはマネー供給を増やし、バブルの時はマネー供給を減らすべきでしょう。<br /> 完全にはコントロールできないが、そこそこ上手にコントロールすることで、<br /> バブルや不況の被害を緩和することぐらいはできます。<br /> もちろん、マネーサプライのコントロールだけでは限界があるから、<br /> それとセットで、極端に複雑な金融商品の流通に規制をかけるなどの工夫は必要でしょうが。</p><br /> <p>なので、マネーサプライを増やすことそのものが悪であるかのように<br /> 考えるのは、完全に間違いでだと思います。<br /> 少なくとも、現時点での経済状況においては、日銀はお札をどんどん印刷し、<br /> マネーサプライを増やすべきではないでしょうか。</p><br /> <br /> <p>もう一つの反論としては、そもそも現在の世界金融恐慌そのものの原因の一つが、<br /> 日銀が量的金融緩和をやりすぎたために発生した円キャリートレードだったのではないか、<br /> というものがあります。<br /> 円キャリートレードも一因となって、世界中で信用バブルが起き、バブルの崩壊で<br /> 円キャリートレードが逆流しはじめたために、円高が起き、それで日本の輸出企業が大打撃を受けて、<br /> 日本の景気が悪化したのじゃないか、という見方です。</p><br /> <p>しかし、これについては、以下のような疑問点があります。</p><br /> <p>●そもそも、今回のバブルは、どこまで円キャリートレードに起因しているのか怪しい。バブル自体は、円キャリートレード以外の要因の方がはるかに大きい可能性があり、円キャリートレードがそれに関係しているとしても、どの程度それを加速させたのかははっきりしない。たとえば、アメリカの住宅バブルや証券化バブルなどが主因で、円キャリートレードがあってもなくてもこのバブルが引き起こされたのかも知れない。<br /> ●そもそも、円キャリートレードを発生させた要因として、どこまでが量的金融緩和が原因なのか、はっきりしない。別の要因による、為替レートの将来見込みも絡んでくる。</p><br /> <p>また、たとえ量的金融緩和が今回のバブルの原因の一つだったとしても、<br /> とにかくに現に円高が進みすぎている現時点のタイミングにおいては、<br /> 円キャリートレードの逆流による円高を緩和するためにも、<br /> 日本円を印刷しまくって、円の供給を増やす政策が正しいのではないでしょうか。</p><br /> <br /> <p>また、日銀が日本円を印刷しまくると、また円キャリートレードが発生して、<br /> 日本円が海外流出してしまうから、日銀がいくら円を印刷しまくっても、<br /> 国内のマネーサプライは増えないのではないか?<br /> という反論もあります。</p><br /> <p>要するに、日本人のための風呂桶に穴が開いていて、穴の先は、<br /> 「世界金融市場」という海になっているので、<br /> 日本人のためにいくらお湯を注いでも、<br /> 風呂おけにお湯がたまらないのではないか、という反論です。</p><br /> <p>これに対しては、今回の世界恐慌の件で、<br /> 円キャリートレードのリスクについては、<br /> みんなが身にしみて理解しただろうから、<br /> いままでほど盛んに円キャリートレードが行われるかどうかが疑問、というのがあります。</p><br /> <p>それでもこりずに円キャリートレードをする人達もいるでしょうが、<br /> 今回の大暴落で、以前よりはずっと風呂桶の穴が小さくなっているでしょうから、<br /> 少々穴からお湯が漏れたところで、<br /> 気にせず、ジャブジャブお湯を供給し続ければ、<br /> 十分に風呂桶にお湯は溜まるのではないでしょうか。</p><br /> <br /> <p>また、さらに別の反論として、日銀の独立性を保証するために、<br /> 政府は日銀の金融政策に介入するべきではない、というものもあります。</p><br /> <p>しかしながら、日銀が独立性を保証されるべきは、手段の独立性であって、<br /> 目的の独立性ではなありません。<br /> たとえば、政府が日銀に対し、<br /> 「GDPデフレータで1〜3%に収まるように、量的金融緩和を行え」<br /> と指示したとしても、それは日銀の独立性を侵したことにはなりません。</p><br /> <p>日銀は、そのように政府が定めた目標を達成するために、<br /> さまざまな手段を使う(いつ、どのようなタイミングで、どれだけの国債を売ったり買ったりするか、<br /> あるいは、金利を上げたり下げたりするか、日銀総裁のスピーチで、市場にどのような期待を抱かせるか)が、<br /> その個別の手段について、独立性を確保されていれば、それで十分なのではないでしょうか。</p><br /> <p>その意味で、金融政策は日銀ではなく政府が大枠の方針を打ち出すべきであり、<br /> 金融政策の失敗のせいで景気が悪化したとしたら、<br /> それは、内閣や与党の責任でもあるのではないでしょうか。</p><br /> <p>そして、日本の長期経済停滞を作り出したのは、<br /> 量的金融緩和が不十分だったからだ、という声も大きいです。<br /> ノーベル賞経済学者のクルーグマン氏も、現FRB議長のバーナンキ氏も、<br /> 過去のそのような指摘を行っています。</p><br /> <p>すなわち、バブル崩壊はともかく、その後の日本の長期経済停滞は、<br /> 避けられなかった自然現象でも何でもなく、<br /> 頭のヌルい政府や官僚や日銀が引き起こした人災ではないのか、<br /> というのが、それらの、世界のトップレベルの経済学者達の見解なわけです。</p><br /> <p># あと、インフレ期待がないとインフレは起きないとか、<br /> # デフレ期待があってかつゼロ金利になると名目金利をマイナスにできないために<br /> # 実質金利が高止まりして、タンス預金であっても実質利回りが生まれてしまっている<br /> # 問題とか、いろいろあるんですが、そこらへんは、あとで気が向いたら追記します。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>(4)麻生内閣の経済対策の問題点</h4> <p><br /> まず、麻生氏が「景気が良くなったら消費税率を10%に」と宣言すると、<br /> 人々は、<br /> 「だったら、消費税率の低い不況のうちにたくさんものを買っておこう」<br /> と考え、消費が増えて、景気の浮揚効果があるかもしれない、<br /> という議論について検討してみます。</p><br /> <p>たしかに、いつかそのうち買わなければならないことが決まっているものであれば、<br /> 今のうちに前倒しして買うという効果もあるかもしれません。</p><br /> <p>しかし、そもそも人々が貯蓄に回そうと思っていたお金まで<br /> 消費に回そうとするかどうかは、怪しいです。</p><br /> <p>最初の章で解説したように、<br /> そもそも、人々がなぜ貯蓄するのかというと、<br /> 社会が流動化し、自分の将来の収入が読めないので、<br /> いざという時に備えて、貯蓄しておきたいから、という理由があるからです。<br /> 将来が不安だから、その備えとして、貯蓄をするわけです。<br /> 「現在の消費」よりも「貯蓄=将来消費する権利」の方が優先するから、<br /> 貯蓄するわけです。</p><br /> <p>だから、将来消費すると5%ほど損だからと言って、<br /> 将来消費する権利の確保を捨てて、現在の消費に走ったら、<br /> ますます将来が不安になってしまいます。<br /> 5%やそこら税金を節約するために、<br /> 将来のための貯金を取り崩し、不安を抱えて生活するようなことを、<br /> 人々が選択するとは考えにくいです。</p><br /> <p>むしろ、人々は今後ますます消費税が上がっていくことを予感するのではないでしょうか。<br /> もしかしたら、自分が年取ったときには、消費税は20%ぐらいになってるかもしれない。<br /> そう考えると、むしろ、目標額より20%余分に貯金しておかなければ<br /> 将来の生活が不安だ、と考えるようになるかもしれません。</p><br /> <p>こうなると、<br /> 「<span style='font-size:170%;color:red'>将来目減りする分まで見込んで、もっともっと貯金しなきゃ</span>。」<br /> と考え、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>逆に貯蓄率が上がり、消費が落ち込んで</span>しまわないでしょうか?</p><br /> <p>もちろん、消費税率のあげ方にもよるでしょう。<br /> 一気に5%も上げるのであれば、5%上がる直前に、<br /> 値段の高い家電や家具などの駆け込み需要は起きるでしょう。<br /> その直後の消費の落ち込みと引き替えに。<br /> しかし、前述したように、貯蓄(=将来消費できる権利)の魅力自体がなくなるわけでもないですから、<br /> 短期的な需要喚起は、長期的にみると、逆効果だった、<br /> ということにもなりかねません。</p><br /> <p>このように考えると、これらの経済政策がどのような効果を及ぼすか、<br /> なかなか予測が困難なように思えます。</p><br /> <br /> <br /> <p>次に、麻生氏の打ち出した住宅ローン減税について考えてみます。</p><br /> <p>まずそもそも、住宅価格がまだまだ下がるかも知れない、という状況では、<br /> いくら税金が安くなっているからといって、あわてて住宅を買ってしまうと、<br /> 買ったとたんにさらに価格が下落し、税金が安くなった分ぐらいは、<br /> すぐに吹き飛んでしまうリスクが大きいです。<br /> 住宅ローン減税なんて、せいぜい住宅購入価格のほんの数%くらいなもので、現在の住宅価格の価格変動のぶれ幅を考えると、そんなもの誤差の範囲ではないでしょうか。<br /> <b>その数%が欲しいために、まだまだ10〜20%ぐらい値下がりするかもしれない住宅を</b><br /> <b>いますぐ購入する人が、どれだけいるでしょうか?</b></p><br /> <p>また、そもそもの大前提として、<br /> 社会が流動化し、転職も転勤も増えています。<br /> 同じ会社であっても、通勤先のオフィスが変わる頻度が高くなっています。<br /> また、離婚も増え、住宅に必要とされる部屋数も変動が大きいです。</p><br /> <p>そういう時代においては、住宅を購入するリスクはますます大きくなっています。<br /> せっかく会社に通勤しやすい場所に自分の家を買って、通勤が楽になった一ヶ月後には、<br /> リーマンショックが起きて、会社が倒産し、<br /> 別の会社に転職することになり、いきなり片道3時間、地獄の遠距離通勤に<br /> なってしまうかもしれない社会に、我々は住んでいるわけです。</p><br /> <p>結婚してラブラブな二人のために子供は二人欲しいね、と言いながら、<br /> 30年ローンでお家を買っても、半年後にすでにセックスレスになり、<br /> 2年後には離婚し、家族四人用の広い部屋のリビングで、<br /> ただ一人で、30年ローンの返済の重さをかみしめて、ため息をつきながら、<br /> 170円のカップラーメンを食べているかもしれないのです。</p><br /> <p>土地付き一戸建ての「オレの城」を持つなどという人生ビジョンは、<br /> 高度成長期の、終身雇用、年功序列、転勤もめったにない、という特殊な時代だけに<br /> 生まれた、うたかたの夢のようなものなのかもしれないのです。</p><br /> <p>こうして考えると、社会がますます流動化していく現代においては、<br /> 「住宅ローン減税」<br /> という政策は、浦島太郎っぽい時代遅れ感を感じずにはいられません。</p><br /> <p>自分の将来の収入や家族構成がますます予測しにくくなっていく時代においては、<br /> 住宅は買うより借りた方が、はるかにリスクが少ないのです。</p><br /> <p>もちろん、<br /> 「あの時代のセメント会社の社長の感覚で政治をやっているのか」<br /> などという皮肉は言うつもりはありません。</p><br /> <p>小沢氏の感覚はもっと酷いかも知れませんので、<br /> 安易な自民党批判に結びつけるつもりもありません。</p><br /> <p>ただ、日本の政界全体が、そんな感覚の老人達に牛耳られているような気は、<br /> なんとなくしています。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-55b68e0b" name="f-55b68e0b" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">富裕な老人達の資産をとりあげ、貧困層の老人にばらまく、という社会主義革命みたいな政策も考えられなくはないですが、実現が政治的に困難であるばかりでなく、副作用のことを考えると、たとえ実現したとしても、どれほど長続きするかは疑問です。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-2b770895" name="f-2b770895" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、ここでは、あくまで貯蓄のインセンティブ構造の話をしているのであって、将来的に実質利子率がマイナスになる、と言っているわけではない。たとえ実質利子率がマイナスになってすら、貯蓄をしてしまうほどの強いインセンティブがある、という意味だ。</span></p> </div> fromdusktildawn 中途半端に優秀なプログラマが「正しいプログラミングテクニック」だと妄信しがちな3つポイント hatenablog://entry/10257846132601979929 2008-10-26T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:17:45+09:00 「変数のスコープは狭いほど良い」と妄信する 変数でもメソッド名でもクラス名でも言えることだが、単純に「スコープは狭いほどよい」という方針でプログラムすると、逆に保守性も可読性も悪いプログラムができあがることがけっこうある*1。 実際、「あちこちから頻繁にアクセスするようなオブジェクトやメソッド」は、スコープをぐっと広くしてしまった方が(場合によってはグローバル変数やグローバル関数にしてしまった方が)、いちいちパラメータ渡しのバケツリレーをせずに、オブジェクトや機能を使うことができ、プログラムの可読性も保守性もずっと向上することがけっこうある。 たとえば、プログラムのいろいろな箇所から比較的頻繁… <div class="seemore"> <div class="section"> <h4>「変数のスコープは狭いほど良い」と妄信する</h4> <p><br /> 変数でもメソッド名でもクラス名でも言えることだが、単純に「スコープは狭いほどよい」という方針でプログラムすると、逆に保守性も可読性も悪いプログラムができあがることがけっこうある<a href="#f-890883ab" name="fn-890883ab" title="変数のスコープの議論をするのと、メソッド名のスコープを議論するのと、クラス名のスコープの議論をするので、もちろん、別々に議論しなければならない部分もあるが、共通部分の議論もある。ここでは、その共通部分の議論をしている">*1</a>。<br /> 実際、「あちこちから頻繁にアクセスするようなオブジェクトやメソッド」は、スコープをぐっと広くしてしまった方が(場合によっては<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B0%A5%ED%A1%BC%A5%D0%A5%EB%CA%D1%BF%F4">グローバル変数</a>やグローバル関数にしてしまった方が)、いち<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A4%A4%C1%A5%D1%A5%E9">いちパラ</a>メータ渡しのバケツリレーをせずに、オブジェクトや機能を使うことができ、プログラムの可読性も保守性もずっと向上することがけっこうある。<br /> たとえば、プログラムのいろいろな箇所から比較的頻繁にアクセスする必要があるようなオブジェクトや機能がバインド(格納)された変数やメソッドのスコープをクラスやメソッド内のローカルにして、それを使うときは、いちいち各クラスやメソッドにパラメータ渡しのチェーンを繰り返して使うようにコーディングする人がいる。とくに、オブジェクトが複数のオブジェクトから構成されていて、その階層構造が深かったり、メソッドがサブメソッドを呼び出して機能実装する階層が深かったりすると、メソッドのネストの底から、トップのオブジェクトにアクセスするときなどは、悪夢のように醜くノイズの多いコードになる。<br /> 広いスコープからアクセスできるようにした方が正しいケースの代表的な例は、標準入出力ストリーム(stdinやstdout)がバインドされた<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B0%A5%ED%A1%BC%A5%D0%A5%EB%CA%D1%BF%F4">グローバル変数</a>の形で実装されているシステム変数や、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Ruby">Ruby</a>のprintやpメソッドだろう。(この点、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Java">Java</a>のSystem.out.println()は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Ruby">Ruby</a>よりもいささかブサイクな仕様だ。)<br /> もちろん、これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%BE%C1%B0%B6%F5%B4%D6">名前空間</a>やプログラムの担当分け問題との<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EC%A1%BC%A5%C9%A5%AA%A5%D5">トレードオフ</a>があるから、状況を無視して不用意に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B0%A5%ED%A1%BC%A5%D0%A5%EB%CA%D1%BF%F4">グローバル変数</a>、グローバル関数、グローバルクラスを使うとプロジェクトが大混乱になるので、末端の未熟な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>には「とりあえず、変数のスコープはできるかぎり狭くしておけ」という方針出しをするのはありだが、少なくとも、中級以上の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>が、単純になんでもかんでもスコープを狭くするのは、逆に犠牲が大きくなりすぎる。<br /> それと、これはプログラムの担当分け問題にも依存する。比較的小規模の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B9%A5%C6%A5%E0%B3%AB%C8%AF">システム開発</a>で、たとえば一人がサーバ、一人がクライアントを担当する、というように、クライアントプログラム全体のコーディングを一人の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>が担当するような場合、広いスコープの変数を使うメリットがデメリットを遙かに凌駕するケースは多くなるだろう。<br /> また、stdin/stdoutや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Ruby">Ruby</a>のprintなどは、言語仕様に近い組み込みのシステム変数やメソッドなので、別格としてグローバルにアクセスできるだけだ、と単純に思いこんでいる人もときどきいるが、それは違う。<br /> デフォルトの言語仕様の上に、自分が開発しようとしているアプリケーションの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%E1%A5%A4%A5%F3">ドメイン</a>に特化した言語仕様を載せて創り出した「拡張言語仕様」の上でプログラムを書くと生産性が大きく向上する。プログラミングの上級者になると、自然とそういうプログラミングスタイルになる人がけっこういる。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DSL">DSL</a>(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Domain%20Specific%20Language">Domain Specific Language</a>)のコンセプトに近い考え方だ。このプログラミングスタイルだと、アプリケーションロジックレイヤと独自<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DSL">DSL</a>レイヤが明確に分離されて、非常に保守性も生産性も高いプログラミングスタイルになる。この「アプリケーション<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%E1%A5%A4%A5%F3">ドメイン</a>に特化した言語仕様」の実装手段の一つが、あえてスコープを広くする変数やメソッドなのだ。もちろん、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/C%23">C#</a>の「属性」やリフレクションを使ったメタレベルプログラミングと、そういう<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B0%A5%ED%A1%BC%A5%D0%A5%EB%CA%D1%BF%F4">グローバル変数</a>との組み合わせで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DSL">DSL</a>を実装するケースも多い。他の言語でも同様。<br /> すなわち、変数のスコープを考えるときには、その変数が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/DSL">DSL</a>で言うところの「準言語仕様レベルの変数になりうるかどうか?」をよく考える必要がある。それが単なるアプリケーションロジックであるなら、そのスコープは狭くした方がよいケースが多く、そのアプリケーション<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%E1%A5%A4%A5%F3">ドメイン</a>では汎用的な概念や機能であれば、準言語仕様とみなして、スコープを敢えて広くする方がよいケースが多い。もちろん、これは一般論であって、そのときの納期の都合や、開発チームの規模や役割分担にも依存するので、文脈を無視してこのルールを適用できるというほど単純ではないが。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>「同じロジックのコードを2度以上書くな」と妄信する</h4> <p><br /> 同じようなパターンがプログラムの複数箇所に現れる場合、それらを抽象化して一つの共通ロジックへのパラメータ渡しとして実装し、それを複数箇所から呼び出すように実装すると、プログラムコード量が小さくなり、保守性が良くなったような気がするので、未熟な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>が、なんでもかんでも共通ルーチン化しまくって、非常に保守性の悪いプログラムにしてしまうことがある。<br /> レベルの高いエンジニアは、同じロジックのコードが複数箇所に現れている方が、適切な判断の結果であることはけっこうあるということをよく知っている。</p><br /> <p>まず第一に、将来的なプログラムパターンの変更の可能性がある。現在、複数箇所に同じようなプログラムパターンが現れたとしても、将来的には、それらは別の修正を受け、別進化していく可能性が予見されることがある。このような場合に、近視眼的に現在だけのパターンの共通性に着目してルーチンを共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>してしまうと、後の修正の時に、あちらを立てればこちらが立たずの現象があちこちに出てきて、必要以上にたくさんの箇所から呼び出されている共通ルーチンを頻繁に変更し、それがシステムを不安定にさせたり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C7%A5%B0%A5%EC%A1%BC%A5%C9">デグレード</a>につながることも多い。<br /> 今後別々の進化をする可能性が高く、また、それぞれの進化の方向性が予測しにくいときは、同じパターンが複数箇所に現れても、あえて冗長なままにしておく方が、正しいこともよくある。もちろん、あくまでこれは、敢えてコストをかけてまで共通ルーチン化はしなくてもよい理由の一つ、という程度のものであって、コレが理由で現在共通ルーチン化されているものを、あわてていますぐコピペ化する必要はない。現在共通ルーチン化されている場合、将来的に別々に進化させる必要が来たときに、コピペにすればいいのだから。</p><br /> <p>第二に、抽象化レベルの話がある。抽象度を上げることで、共通ルーチン化はできるが、プログラムがコンパクトになるかわりに、直感的に理解しにくくなるケースがある。もちろん、単にそれだけが理由で同じようなパターンがあちこちにたくさん現れているのを放置してはダメだが、共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>のメリット・デメリットを総合的に判断して、共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>するかどうかの意志決定を下すとき、このファクターも考慮に入れるべきだ。</p><br /> <p>第三に、共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>の投資効果の話がある。とくに、短納期の単発の開発の場合、過度な共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%A9%BF%F4">工数</a>の増大につながる。似たようなパターンの共通部分を見いだして、正しく共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>しようとするより、単に同じようなパターンをコピペして使い回した方が、開発速度が速い場合も多い。たとえば、テレビCM、パンフレットの印刷などのメディ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%DF">アミ</a>ックスでのイベントで使われるPCやケータイのサイト開発などで、お客さんのスケジュールが遅れると、巨大な損失が発生するようなときなどは、将来の保守性ためのプログラムルーチンの共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>などより、納期をしっかり守る方が、はるかに重要だ。</p><br /> <p>第四に、将来の保守性や拡張性、というのは、たびたび幻想でしかない。将来このように拡張されるだろう、ということを予測して汎用化し、共通ルーチン化しても、あらかじめ予想していたのと異なる方向での拡張が必要となり、せっかく苦労して汎用化していたルーチンが役に立たないケースも多い。その場合、遙かな未来のことまで考えて、がちがちに汎用的に作るより、毎回適当に、その場しのぎのプログラミングをして、将来、まったく予想外の仕様変更がきたら、さっさとプログラムごと作り直してしまった方が、トータルで見たら低コストで現実的なことも多い。ところが、中途半端に優秀な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>は、自分の未来の予見能力を過信しており、過度な汎用ルーチン化に走りがちだ。未来は自分が思っている以上に予測しにくいということを肝に銘じ、謙虚になることが必要だ。</p><br /> <p>第五に、抽象化し、共通ルーチン化しすぎたプログラムは、可読性が低くなり、スキルの低い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>に引き継ぎをしなければならなくなったときに、途方に暮れてしまうことがある。上級者にとっては高度に抽象化されたコンパクトなプログラムの方がはるかに理解しやすいし、保守もしやすいが、未熟なエンジニアにとっては必ずしもそうではない。もちろん、単にこれだけが理由で共通ルーチン化しないのはばかげているが、プロジェクトの長期的ライフサイクルや社内の体制まで含めた全体の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EC%A1%BC%A5%C9%A5%AA%A5%D5">トレードオフ</a>バランスを考えるときに、考慮すべきファクターの一つではある。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>を極めるのが大切」と妄信する<a href="#f-230e2b33" name="fn-230e2b33" title="これはプログラミングテクニックではないのだけれど">*2</a></h4> <p><br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>のスキルというのは、価値あるスキルのうちの一つにすぎないどころか、それほど優先順位の高いスキルではない。実際には、サーバ設定、ネットワーク、データベース、パフォーマンス設計、セキュリティ設計に関するスキルは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>の知識に負けず劣らず重要だ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>を極めることにこだわりすぎるあまり、それら<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B9%A5%C6%A5%E0%B3%AB%C8%AF">システム開発</a>全体のスキルのバランスを欠くと、独りよがりで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%EB%CC%EE%B6%B9%BA%F5">視野狭窄</a>的なシステム設計に陥りがちだ。<br /> さらに、要求仕様を実装仕様に落とし込むスキル、あるいは、実装の都合と顧客の都合を最大限に満たすような落としどころを洞察するスキルなど、より優れた美しい<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AD%A5%C6%A5%AF%A5%C1%A5%E3">アーキテクチャ</a>設計をするのに、単なる<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>のスキルよりもはるかに重要なスキルはたくさんある。<br /> 結局のところ、ほとんどのコンピュータプログラムは、人間や社会のニーズや欲望を満たすために存在し、人間や社会の利害や感情の構造の組み立て(これも一種のプログラミングだ)と無縁ではいられない。人間や社会の利害と感情の組み立てまで視野に入れた<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AD%A5%C6%A5%AF%A5%C1%A5%E3">アーキテクチャ</a>全体を、もっともシンプルに設計する方法を突き詰めることで、ほとんどプログラムを書かずに根本的な問題が解決する方法を見いだし、顧客も会社も同僚も自分も、関係者全員が幸せになるというようなケースも多いのである。</p> </div> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-890883ab" name="f-890883ab" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">変数のスコープの議論をするのと、メソッド名のスコープを議論するのと、クラス名のスコープの議論をするので、もちろん、別々に議論しなければならない部分もあるが、共通部分の議論もある。ここでは、その共通部分の議論をしている</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-230e2b33" name="f-230e2b33" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%A5%C6%A5%AF%A5%CB%A5%C3%A5%AF">プログラミングテクニック</a>ではないのだけれど</span></p> </div> fromdusktildawn 「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 hatenablog://entry/10257846132601979940 2008-09-28T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:17:47+09:00 男が風俗嬢を見下す心理メカニズム 心のどこかで風俗嬢に欲情している男たちは、うしろめたさを感じている。 羞恥を感じているし、罪悪感を感じている。 そして、あろうことか、風俗嬢に密かに欲情する男たちは、 風俗嬢を見下すことで、 その恥辱と罪悪をすべて風俗嬢に押しつけてごまかすのだ。 彼女たちに密かに欲情する醜悪な自分を隠蔽して、自尊心を守ろうとするのだ。 それでは、これらのうしろめたさや罪悪感は、どこから来たのか? それは、恋愛の崇高さの裏返しなのではないだろうか? 恋愛は崇高なものであるし、その恋愛において「男女の肉体関係は崇高なものだ」という前提をわれわれは心のどこかに持っている。「女性が男… <div class="section"> <h4>男が風俗嬢を見下す心理メ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%CB">カニ</a>ズム</h4> <p><br /> 心のどこかで風俗嬢に欲情している男たちは、<b>うしろめたさ</b>を感じている。<br /> <b>羞恥</b>を感じているし、<b>罪悪感</b>を感じている。</p><br /> <p>そして、あろうことか、風俗嬢に密かに欲情する男たちは、<br /> <span style='font-size:24px;'>風俗嬢を見下すことで、</span><br /> <span style='font-size:24px;'>その恥辱と罪悪をすべて風俗嬢に押しつけて<span style='color:red'>ごまかす</span>のだ。</span><br /> <span style='font-size:24px;'>彼女たちに密かに欲情する醜悪な自分を<span style='color:red'>隠蔽</span>して、自尊心を守ろうとするのだ。</span></p><br /> <p>それでは、これらの<b>うしろめたさ</b>や<b>罪悪感</b>は、どこから来たのか?<br /> それは、恋愛の崇高さの裏返しなのではないだろうか?</p><br /> <p>恋愛は崇高なものであるし、その恋愛において「男女の肉体関係は崇高なものだ」という前提をわれわれは心のどこかに持っている。「女性が男性に肉体関係を許す」ということは重大な意味と価値を持っている。<a href="#f-502fe185" name="fn-502fe185" title="それは、どこまでが進化論的に形成された本能に起因するもので、どこからがその後に形成された文明の産物なのかは、はっきりとしないが。">*1</a> だからこそ、強制わいせつ罪やレイプは、重大な犯罪であり、それらの罪を犯した男性は、社会的に抹殺される。</p><br /> <p>そのように、社会全体の倫理体系が、男女の肉体関係に決定的な崇高さを与えているがゆえに、「お金で女を買う」という行為は、恥辱であり、罪悪ですらあるように感じられてしまう。<br /> こうして生じた罪悪感を、男たちは、風俗嬢になすりつけて、ごまかしているのだ。<a href="#f-69e9b8dc" name="fn-69e9b8dc" title="もちろん、女性の場合は、別の理由で風俗嬢を見下すわけだが。また、とにかく見下せる隙のある相手を見つけては、嬉々として見下しブクマをつけるというタイプの人たちは、相手が風俗嬢であろうとなかろうと、見下せる隙のある相手なら、誰でもよいのだろうけれども。">*2</a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>5兆円産業の売春を合法化すれば、ホームレスや貧困対策のための財源ができる</h4> <p><br /> <a href="http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/hashigotan/20080927/p1">http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/hashigotan/20080927/p1</a></p> <blockquote> <p>xevra: 風俗自体は否定はしないが、風俗の上がりは裏社会に流れ堅気の人の生活を脅かす。真面目に頑張っている人に迷惑をかけているという自覚を持て</p> </blockquote> <p>それは、売春自体が悪いのではなく、売春を管理する社会システムの問題でしょう。<br /> 売春が合法化されて、きちんと国家が管理・運営し、税金を取り立てれば、売春が生み出す利潤は裏社会に流れず、むしろ国庫収入になる。なにしろ、5兆円規模の産業だ。<br /> <a href="http://www.systrat.co.jp/abreak/articles/artc980801.html">http://www.systrat.co.jp/abreak/articles/artc980801.html</a></p> <blockquote> <p>市場規模約5兆円、全国の風俗嬢推定10万人(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%E7%BD%F5%B8%F2%BA%DD">援助交際</a>の素人は除く)は実に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>カのほぼ2倍と言われる。</p> </blockquote> <p>こうして国家が徴集した税金という名の「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%DF%A4%AB%A4%B8%A4%E1%CE%C1">みかじめ料</a>」は、ホームレスを救済し、失業保険や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%B3%E8%CA%DD%B8%EE">生活保護</a>など、貧困者へのセイフティーネットを充実させることにだって使える。もちろん、ヤクザに搾取される分に比べれば、税金の方がはるかに安くつくから、風俗嬢の手取りも増えるだろう。</p><br /> <p>さらに、売春業を営む店舗には、担当医制度を設け、性病の検診を厳しく義務づけ、性病に対する予防措置を行わないセックスを厳重に取り締まるなどすれば、性病の拡散も、いまよりはずいぶんマシになるのではないかな。<br /> たとえば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/IC%A5%AB%A1%BC%A5%C9">ICカード</a>付きの許可証を持った男性だけが風俗サービスを利用できるようにして、風俗サービスを利用する男性には、定期的に性病検査が義務づけられる。当然、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%A4%A5%BA">エイズ</a>検査も定期的に受けなければならない。風俗嬢も、同様に許可証で管理される。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a><b>売春管理局</b>でも作ればいいのではないかと。</p><br /> <p>もちろん、当然ことながら、売春を「通常の職業と完全に同じもの」として国家が認めるわけではない。通常の職業とは別枠で扱われる。たとえば、失業保険や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%B3%E8%CA%DD%B8%EE">生活保護</a>を受ける前提条件として、「ちゃんと職探しをしたが、職が得られなかった。」というものがあるが、ここで言う「職」には売春は含まれない。このため、「売春以外に職がなかった」というケースでは、当然のことながら、失業保険も<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%B3%E8%CA%DD%B8%EE">生活保護</a>も受けられる。</p><br /> <p>ついでに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EA%A5%D5%A5%A1%A5%CA">マリファナ</a>も合法化し、<b><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E7%CB%E3">大麻</a>管理局</b>の管轄にすればよい。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%E2%A5%F6%B4%D8">霞ヶ関</a>のお役人も、自分の役所の権限が拡大するので、喜ぶのではないかな。<br /> 引退後は、羽振りのよい売春宿に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%B7%B2%BC%A4%EA">天下り</a>できるし。<br /> ヤクザが吸い上げる利潤の額に比べれば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%B7%B2%BC%A4%EA">天下り</a>役人が受け取る報酬など微々たるものだ。</p><br /> <p>なぜ、売春や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EA%A5%D5%A5%A1%A5%CA">マリファナ</a>のビジネスをヤクザが取り仕切り、裏社会の資金源になるかというと、それが非合法だからだというのが大きい。</p><br /> <p>単に社会的害悪という点だけを見るなら、<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%EB%A5%B3%A1%BC%A5%EB%C3%E6%C6%C7">アルコール中毒</a>で人生が台無しになった人や、飲酒運転の被害者のことを考えれば、<br /> アルコールは売春や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EA%A5%D5%A5%A1%A5%CA">マリファナ</a>よりもむしろ酷いぐらいだが、<br /> アルコールビジネスがヤクザの資金源となっていないのは、それが合法だからだ。</p><br /> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A1%BC%A5%B1%A5%C6%A5%A3%A5%F3%A5%B0">マーケティング</a>分析をするまでもなく、ビジネス戦略的な意味でのヤクザの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%A2%A5%B3%A5%F3%A5%D4%A5%BF%A5%F3%A5%B9">コアコンピタンス</a>は、<br /> 非合法のビジネスを営むノウハウやスキルや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C8%BF%A5%CE%CF">組織力</a>だ。</p><br /> <p>警察の裏をかき、警察に見つからないように、法の網の目をくぐるノウハウがあるために、<br /> 彼らは非合法のビジネスを独占し、巨額の利益を手にする。</p><br /> <p>だから、売春が合法化されると、彼らは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A1%BC%A5%B1%A5%C6%A5%A3%A5%F3%A5%B0%C0%EF%CE%AC">マーケティング戦略</a>上の優位を失い、<br /> 撤退せざるをえなくなるのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>売春は人のためにならない仕事なのか?</h4> <blockquote> <p>xevra: お金を稼いだ方が偉いんじゃない。人のためになる仕事をした方が偉い。</p> </blockquote> <p><b><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D4%BE%EC%B7%D0%BA%D1">市場経済</a>において悪とされるのは、詐欺、ぼったくり、談合、独占、というような、</b><br /> <b>価値を生み出さずに、ズルしてお金を稼ぐことだ。</b><br /> そして、顧客に対して、より多くの価値を提供した人間が、より多くの報酬を受け取るのは、正当とされている。</p><br /> <p>これが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D4%BE%EC%B7%D0%BA%D1">市場経済</a>の根底にある倫理観なのではないだろうか。</p><br /> <p>つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D4%BE%EC%A5%E1%A5%AB%A5%CB%A5%BA%A5%E0">市場メカニズム</a>は、正常に機能しているなら、<br /> 「より人のためになる仕事をした人間が、より多くのお金を手にする」<br /> というように作用する性質を持っている。</p><br /> <p>逆に言えば、<br /> 「よりお金を稼いでいる人間は、より人のためになる仕事をしている」<br /> という理屈も、考えられなくはない。</p><br /> <p>この意味で、詐欺、ぼったくり、談合、独占でなく、<br /> ちゃんとお客を満足させてお金を稼ぐのであれば、<br /> 時給10万円稼ぐ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%C3%A5%AD%A5%F3%A5%BC%A1%BC">マッキンゼー</a>のコンサル<a href="#f-77666355" name="fn-77666355" title="顧客がマッキンゼーに支払う金額ベースで">*3</a>だろうと、<br /> 日給4万円稼ぐ風俗嬢だろうと、<br /> 政治運動して中央から引っ張ってきた金で無駄な道路を作って<br /> 金を稼ぐ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%DA%B7%FA%B2%B0">土建屋</a>や、ろくに仕事をせずに何千万円もの年収を受け取る利権オヤジや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%B7%B2%BC%A4%EA">天下り</a>役人<br /> などよりも、はるかに「偉い」んじゃないか、<br /> という理屈も、一理ぐらいはあるようにも思える。</p><br /> <p>私は風俗を利用したことがないので、想像することしかできないが、<br /> 風俗サービスに高いお金を払う男性は、それだけのお金を払う価値があると思ったから、<br /> そのお金を払ったのではないだろうか。<br /> (はしごたんの場合、指名がついてないので、そこは微妙なのだけれども。)</p><br /> <p>そもそも、あらゆる「経済活動」の目的は、「価値創造」であり、<br /> そこでいう「価値」とは、他者の欲望を満たすことだ。<br /> それは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE%A1%BC">プログラマー</a>でも、営業でも、美容師でも、作曲家でも、農家でも、みな同じだ。<br /> <span style='font-size:24px;color:red'>あらゆる仕事は、究極的には、誰かの欲望を満たすために行うのだ。</span></p><br /> <p>だとすると、市場原理的な倫理観からすれば、<br /> 電波利権の上にあぐらをかいて、ろくに価値創造もせずに、<br /> 毎日部長席でふんぞり返ってたばこをふかしている<br /> テレビ局の利権オヤジなどよりは、<br /> 風俗嬢の方がはるかに「価値創造」しているということになる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>売春の歴史は人類の歴史より古い</h4> <p><br /> 売春は、人類最古の職業と言われるが、<br /> 売春の歴史は、人類の歴史よりも古い可能性がある。</p><br /> <p>たとえば、オスの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C1%A5%F3%A5%D1%A5%F3">チンパン</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>が持っているバナナを半分、メスの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C1%A5%F3%A5%D1%A5%F3">チンパン</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>に分け与える見返りに、メスの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C1%A5%F3%A5%D1%A5%F3">チンパン</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>が交尾を許すという行動が観察されていることからも、それがうかがえる。</p><br /> <p>少なくとも、人類最古の職業と言われるぐらい古くから行われてきた<br /> 売春行為を見下すような倫理観が形成されたのは、<br /> 多分に文明の産物に過ぎない可能性があり、<br /> 「売春は悪」というのは、それほど「自明」なことではない。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>風俗嬢を下に見るような倫理観は「自明」ではない</h4> <p><br /> 風俗嬢に説教たれている人たちが痛いのは、多くの場合、<br /> その説教の根拠となる倫理を作り出す構造に無自覚であるということに起因する。</p><br /> <p>ここでは、売春の善悪を、市場原理的な倫理観からとらえ直してみたが、<br /> その市場原理的な倫理観自体、人工的なものであり、われわれが勝手に作り出した体系にすぎない。</p><br /> <p>もちろん、太古の昔より、われわれ人類は経済活動を営み、<br /> 互いに「交易」を行うことで、社会全体の富の総量を増やしてきた。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%AB%A1%BC%A5%C9">リカード</a>ゥが比較優位の原理を指摘する遙か以前から、<br /> 暗黙のメ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%CB">カニ</a>ズムとして、比較優位の原理は豊かさを作り出してきた。</p><br /> <p>しかし、その自然発生的に作用していた原理に、倫理的な正当性を与えたのは、<br /> ここほんの数百年の間に哲学者や経済学者たちが行った、<br /> 極めて人工的な心理操作の産物だという見方もできる。</p><br /> <p>その意味で、市場原理的な倫理観ですら「自明」ではない。</p><br /> <p>ましてや、風俗嬢を下に見るような倫理観は、<br /> 「自明」などとは、ほど遠いのではないだろうか。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-502fe185" name="f-502fe185" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">それは、どこまでが進化論的に形成された本能に起因するもので、どこからがその後に形成された文明の産物なのかは、はっきりとしないが。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-69e9b8dc" name="f-69e9b8dc" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、女性の場合は、別の理由で風俗嬢を見下すわけだが。また、とにかく見下せる隙のある相手を見つけては、嬉々として見下しブクマをつけるというタイプの人たちは、相手が風俗嬢であろうとなかろうと、見下せる隙のある相手なら、誰でもよいのだろうけれども。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-77666355" name="f-77666355" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">顧客が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%C3%A5%AD%A5%F3%A5%BC%A1%BC">マッキンゼー</a>に支払う金額ベースで</span></p> </div> fromdusktildawn 企業と金持ち「だけ」から税金を取るようにしてみてはどうか hatenablog://entry/10257846132601979949 2008-09-07T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:17:48+09:00 企業収益は5年連続増益なのに、民間給与は8年連続減少しています。 大企業が国家予算の2.5倍、204兆円ものお金を貯め込む一方で、労働者の賃金は下がり続け、格差と貧困がどんどん広がっています。 なのに、現状では、 企業の7割は法人税を支払っていません。 これは、現在の法人税額の算出方法に起因します。 この状況を打開するため、 低中所得者にかかる税金を全て廃止し、法人税の大増税を 行ってみてはどうでしょうか。 具体的には、以下のような税制改革を行います。 ●消費税は、廃止する ●所得税は、年収750万円以上の人だけから徴集する ●企業から、法人売上税*1を徴集する ●企業から、法人所得税を徴集す… <div class="seemore"> <p><br /> <span style='font-size:24px;'><a href="http://www.toyokeizai.net/business/management_business/detail/AC/8e374f5e0b4f72e78d7f6dd027507961/">&#x4F01;&#x696D;&#x53CE;&#x76CA;&#x306F;5&#x5E74;&#x9023;&#x7D9A;&#x5897;&#x76CA;&#x306A;&#x306E;&#x306B;&#x3001;&#x6C11;&#x9593;&#x7D66;&#x4E0E;&#x306F;&#xFF18;&#x5E74;&#x9023;&#x7D9A;&#x6E1B;&#x5C11;&#x3057;&#x3066;&#x3044;&#x307E;&#x3059;&#x3002;</a></span><br /> <a href="http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-12-07/2005120705_01_4.html">&#x5927;&#x4F01;&#x696D;&#x304C;&#x56FD;&#x5BB6;&#x4E88;&#x7B97;&#x306E;2.5&#x500D;&#x3001;204&#x5146;&#x5186;&#x3082;&#x306E;&#x304A;&#x91D1;&#x3092;&#x8CAF;&#x3081;&#x8FBC;&#x3080;</a>一方で、労働者の賃金は下がり続け、格差と貧困がどんどん広がっています。</p><br /> <p>なのに、現状では、<br /> <span style='font-size:24px;color:red;'>企業の7割は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>を支払っていません</span>。<br /> これは、現在の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>額の算出方法に起因します。</p><br /> <p>この状況を打開するため、<br /> 低中所得者にかかる税金を全て廃止し、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>の大<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%FD%C0%C7">増税</a>を<br /> 行ってみてはどうでしょうか。</p><br /> <p>具体的には、以下のような税制改革を行います。</p> <blockquote> <p>●消費税は、廃止する<br /> ●<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%EA%C6%C0%C0%C7">所得税</a>は、年収750万円以上の人だけから徴集する<br /> ●企業から、法人売上税<a href="#f-5a692148" name="fn-5a692148" title="仕入れにかかっている売上税は控除される">*1</a>を徴集する<br /> ●企業から、法人<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%EA%C6%C0%C0%C7">所得税</a>を徴集する<br /> ●企業から、法人雇用税を徴集する</p> </blockquote> <p><br /> なぜ、7割もの企業が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>を支払わないのかというと、<br /> 現状の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>は、企業の「所得」に対してかかる税金だからです。<br /> 企業は、さまざまな合法的な節税努力をすることで、見かけ上の利益を減らすことができます。<br /> だから、多くの企業は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>を回避することができてしまうのです。</p><br /> <p>企業にこれをさせないために、<br /> 企業の「売上」に課税する分を増やします。<br /> これが「法人売上税」です。</p><br /> <p>利益は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%D0%CD%FD">経理</a>操作で誤魔化しやすいですが、<br /> 売上を誤魔化すのは、それよりもはるかに困難です。<br /> このため、法人売上税を導入することで、<br /> <span style='font-size:24px;color:red;'>ほぼ全ての企業から<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%A1%BF%CD%C0%C7">法人税</a>を徴収することができます。</span></p><br /> <p>ただし、法人<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%EA%C6%C0%C0%C7">所得税</a>は、<br /> 儲かっている企業からより多くの税金を徴収する、<br /> というコンセプトの税なので、それも残します。</p><br /> <p>また、法人雇用税は、企業が人を雇うときに支払わなければならない税金です。<br /> 年収750万円未満の労働者が納める<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%EA%C6%C0%C0%C7">所得税</a>が払われなくなると、<br /> 国家財政に大穴が開いてしまいます。<br /> このため、<b>その分の税収を企業が負担する</b>ようにします。<br /> たとえば、「年収300万円の人を雇うと、<br /> 年に20万円の法人雇用税が企業から徴収される」<br /> といったようにです。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%D2%B2%F1%CA%DD%B8%B1">社会保険</a>の方では、既に似たようなシステムがありますので、<br /> その税金バージョンのようなものです。<br /> これが、法人雇用税です。</p><br /> <p>こうすることで、<br /> <span style='font-size:24px;color:red'>企業が支払う税金が巨額になる</span>一方で、<br /> 年収750万円未満の人は、税金を払わずに生活できます。</p><br /> <p>こんな、企業と金持ちにだけ重税を課すような税制にしたら、<br /> <span style='font-size:24px;color:red'>企業と金持ちが、海外へ逃げて</span>しまわないでしょうか?</p><br /> <p>しかし、<span style='font-size:24px;color:red'>その心配はいらない</span>んじゃないですかね。<br /> <a href="http://en.wikipedia.org/wiki/Flypaper_theory_(economics)">&#x4F01;&#x696D;&#x3084;&#x91D1;&#x6301;&#x3061;&#x306E;&#x591A;&#x304F;&#x306F;&#x3001;&#x7A0E;&#x3092;&#x652F;&#x6255;&#x3046;&#x4EBA;&#x3068;&#x8CA0;&#x62C5;&#x3059;&#x308B;&#x4EBA;&#x304C;&#x5225;&#x3067;&#x3042;&#x308B;&#x3053;&#x3068;&#x3050;&#x3089;&#x3044;&#x5206;&#x304B;&#x3063;&#x3066;&#x308B;</a>でしょうから。<a href="#f-70258cca" name="fn-70258cca" title="もちろん、税率改訂時の価格硬直性のコストを企業が負担するなど、考慮すべき点はある。">*2</a></p><br /> <br /> <p>また、「企業が支払う税金が低い国ほど経済が成長するというデータがある」、<br /> と主張する人もいますが、それは誤りとは言わないまでも、<br /> ミスリーディングな表現だと思います。</p><br /> <p>より正確で、誤解を招かない表現をするなら、<br /> 「<b>法人<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%EA%C6%C0%C0%C7">所得税</a></b>が低いほど経済が成長する」と言うべきでしょう。<br /> すなわち、法人が納めるべき税の<b>算出式</b>の問題であって、企業が政府に納める税金の額自体の問題ではないのです。<br /> 企業がいまの3倍の税金を納めたとしても経済成長を阻害しないような税のかけ方というのが有り得ないとはいえないのではないでしょうか。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-5a692148" name="f-5a692148" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%C5%C6%FE">仕入</a>れにかかっている売上税は控除される</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-70258cca" name="f-70258cca" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、税率改訂時の価格硬直性のコストを企業が負担するなど、考慮すべき点はある。</span></p> </div> fromdusktildawn 女の子に好かれるための基本原則 hatenablog://entry/10257846132601979952 2008-08-10T00:00:00+09:00 2018-07-17T14:17:49+09:00 ●相手の女の子がしゃべりたいことを察知し、それを女の子がしゃべるように誘導してあげる。 ●女の子が何をしゃべりたいかは、その女の子自身が気づいていない。これを女の子自身よりも先に気づいてあげる。 ●会話の辻褄や一貫性は敢えて無視する。論理的に正しいことではなく、女の子が楽しい気分になるように会話を誘導する。 ●女の子は一方的に話す男が嫌い。自分がしゃべっている最中も女の子の表情を注意深く観察し、少しでも退屈していたら、話の途中でも敏感に話の展開を変化させる男が好き。 ●女の子は、抜け目のないだけの男は嫌い。女の子にあっさりやられてくれるような、どこか抜けたところのある、おおらかで人のいい男が好… <blockquote> <p>●相手の女の子がしゃべりたいことを察知し、それを女の子がしゃべるように誘導してあげる。<br /> ●女の子が何をしゃべりたいかは、その女の子自身が気づいていない。これを女の子自身よりも先に気づいてあげる。<br /> ●会話の辻褄や一貫性は敢えて無視する。論理的に正しいことではなく、女の子が楽しい気分になるように会話を誘導する。<br /> ●女の子は一方的に話す男が嫌い。自分がしゃべっている最中も女の子の表情を注意深く観察し、少しでも退屈していたら、話の途中でも敏感に話の展開を変化させる男が好き。<br /> ●女の子は、抜け目のないだけの男は嫌い。女の子にあっさりやられてくれるような、どこか抜けたところのある、おおらかで人のいい男が好き。<br /> ●女の子は、頭で考える男が嫌い。腹やハートで考える男が好き。<br /> ●女の子は、口でしゃべる男が嫌い。女の子は、腹やハートから言葉を放つ男が好き。<br /> ●女の子は、単に明るいだけのバカポジティブ男は嫌い。絶望も苦しみも血を流しながら感じ取り、逃げずに真正面から引き受けた上で、陽気、建設的、未来志向、もしくは、深い自己了解や自己解放をもたらすような話をする男が好き。<br /> ●女の子は、愚痴、悪口、泣き言を言う男が嫌い。<br /> ●女の子は誰かを見下したり、嘲笑したり、貶めたりする男が嫌い。<br /> ●女の子は「オレはダメな男なんだ云々」と自己卑下・自己否定する男が嫌い。(さんまのように、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E7%A1%BC">ジョー</a>クやネタとしてやるのはよい)<br /> ●女の子は、自分が優しいことをアピールする男が嫌い。本当に優しくないとできない気遣いをする男が好き。<br /> ●女の子は、自分が頭がいいことをアピールする男が嫌い。本当に頭が良くなければ出来ない気の利いた会話や思慮深い段取りをする男が好き。<br /> ●女の子は、しゃべる価値のないことをしゃべる男が嫌い。何かをしゃべるときは、それがホントにしゃべる価値のあるセリフかどうかを見極めてから口に出す。<br /> ●女の子は、女の子の言葉の表面上の意味ではなく、その裏に横たわる気持ちや意図や事実関係をくみ取ってくれる男が好き。<br /> ●女の子は、女の子の言葉を奇想天外な面白解釈してツッコミを入れてくれる男が好き。(ただし、女の子を持ち上げるような愛のあるツッコミでないとだめ。ハズしたときは、すかさず自分ツッコミして笑いを取る。)<br /> ●相手の女の子がしゃべっているときには、女の子がしゃべっている内容に反応する形で、自分の表情を繊細にコン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>して共感、驚き、無表情等をしてみせる。<br /> ●自分がしゃべっている時も、自分の言葉に表情をシンクロさせたり、わざと言葉の内容と表情をミスマッチにして笑いを取ったりする。<br /> ●普段から、鏡を見て、さまざまなバリエーションの、味のある表情を出す訓練をしておく。<br /> ●女の子は、学歴、社会的地位、読んだ本をさりげなくほのめかす男が嫌い。まるでなんの本も読んだことがないかのように、日常の言葉だけで、なにげなく女の子の気持ちに届く言葉を放つ男が好き。<br /> ●女の子は、それとなく余裕をアピールする男は嫌い。本当に余裕があり、余裕が自然とにじみ出てくる男は好き。<br /> ●女の子は、金持ちでも貧乏くさい男は嫌い。貧乏でも気前のいい男が好き。<br /> ●女の子は、筋肉が衰えて、立ち居振る舞いがだらしない感じになっている男が嫌い。立っても座ってもしゃきっとした印象になるくらいには、全身をバランス良く鍛えておく。<br /> ●「その女の子自身が気づいてない、その女の子が欲しいモノ」を見つけ出して、プレゼントしてあげる。これをするには、その女の子を普段からよく観察する必要がある。<br /> ●女の子はだらしない服装の男が嫌い。しわしわの服やちぐはぐのカラーコーディネーションの服は着ない。<br /> ●女の子は、女の子でなければ気づかないことを気づく男が好き。<br /> ●女の子は不潔な男が嫌い。毎日入浴し、歯を磨き、清潔な服を着る。<br /> ●女の子は、途中、どんなに醜態をさらしても、最後の最後には自分の内なる道徳律を貫く男が好き。</p> </blockquote> <p>もちろん、自戒を込めて。</p> fromdusktildawn 経営がわかっている労働者と、わかってない労働者の格差が拡大していく理由 hatenablog://entry/10257846132601979955 2008-08-03T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:56:14+09:00 これまでの歴史的経緯や、世界的なトレンドを考えると、 経営を理解してない労働者は、 どんどん居場所がなくなり、年収も下がって いくと思います。 逆に、経営*1を理解している労働者は、ますます活躍の場が広がるし、 たとえ運悪く挫折しても、何度でも復活するチャンスが得やすくなっていくと思います。 そして、後述するように、これは全世界的なトレンドであって、 この流れを一時的に阻害するぐらいはできても、 歴史の歯車を逆転させるようなことは、もはやできないと思います。 そもそも「経営」を勘違いしている人が多い よくある「経営」に関する迷信に、以下のようなものがあります。 【迷信1】企業の目的は金儲けであ… <div class="seemore"> <p><br /> これまでの歴史的経緯や、世界的なトレンドを考えると、<br /> <span style='font-size:170%'>経営を理解してない労働者は、</span><br /> <span style='font-size:170%'>どんどん居場所がなくなり、年収も下がって</span><br /> いくと思います。</p><br /> <p>逆に、経営<a href="#f-68719a92" name="fn-68719a92" title="ここで言う「経営」とは広義の経営のことで、ドラッカーの言う「マネージメント」の概念とほぼ同じだが、日本語で「マネージメント」というと、単なる管理職のことだと勘違いする人も多く、むしろ「経営」という言葉の方がニュアンスが伝わりやすいと考え、こちらの言葉を使うことにした">*1</a>を理解している労働者は、ますます活躍の場が広がるし、<br /> たとえ運悪く挫折しても、何度でも復活するチャンスが得やすくなっていくと思います。</p><br /> <p>そして、後述するように、これは<span style='font-size:170%;color:red'>全世界的なトレンド</span>であって、<br /> この流れを一時的に阻害するぐらいはできても、<br /> 歴史の歯車を逆転させるようなことは、もはやできないと思います。<br /> <br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>そもそも「経営」を勘違いしている人が多い</h4> <p><br /> よくある「経営」に関する迷信に、以下のようなものがあります。</p> <blockquote> <p>【迷信1】企業の目的は金儲けである</p><p>【迷信2】非営利組織に経営は必要ない(善意だけで運営できる!)</p><p>【迷信3】経営スキルがなくても仕事には困らない(経営は経営者の考えることだろJK。。。)</p> </blockquote> <p>以下、これらについて解説します。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信1】企業の目的は金儲けである</h4> <p><br /> 経営学の巨人ドラッカーの著作でも強調されていますが、<br /> <span style='font-size:170%;color:red;'>企業の目的は金儲けではありません</span>。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061104/1162629795">&#x3053;&#x308C;&#x3092;&#x5FD8;&#x308C;&#x308B;&#x3068;&#x3001;&#x4E2D;&#x9577;&#x671F;&#x7684;&#x306B;&#x306F;&#x3001;&#x9006;&#x306B;&#x3001;&#x58F2;&#x4E0A;&#x3082;&#x5229;&#x76CA;&#x3082;&#x6E1B;&#x5C11;&#x3057;&#x3066;&#x3044;&#x304F;&#x3053;&#x3068;&#x304C;&#x591A;&#x3044;&#x3067;&#x3059;&#x3002;</a><a href="#f-1156c4a9" name="fn-1156c4a9" title="だから、金儲けをしたければ、そもそも「企業の目的は金儲けだ」などという勘違いはしてはいけないのです。">*2</a></p><br /> <p>自動車会社の目的は<br /> 金儲けじゃない。<br /> 顧客に自動車を提供すること。</p><br /> <p>衣料品メーカーの目的は、<br /> 金儲けじゃない。<br /> 顧客に衣服を提供すること。</p><br /> <p><b>企業は、経済的な富を生み出すことを目的とした<span style='color:red'>唯一の</span>社会的機関です。</b><br /> <b>経済的な富を生み出すことこそが、企業の社会的使命です。</b><br /> 一本の草しか生えないところに、二本の草を生やすようにすることが、企業のなすべきことなのです。</p><br /> <p>実際、我々の豊かな経済生活を支えているもののほとんどは、<br /> 企業が生み出したものです。</p><br /> <p>冷蔵庫、エアコン、アパート、窓、電球、ソファー、<br /> 便器、シャワー、パソコン、光ケーブル、ケータイ、<br /> コンビニ、スーパーマーケット、爪切り、ボールペン、<br /> 本棚、カーテン、カーペット、ニコニコ動画、<br /> マンガ、エロゲ、検索エンジン、はてなブックマーク。</p><br /> <p>企業が第一に果たすべき<b style='color:red'>社会貢献</b>とは、<br /> これらの、経済的な富を顧客に提供することです。<br /> 顧客を真に満足させることです。</p><br /> <p><b>消費者に不満を抱かせるような製品を売っておきながら、</b><br /> <b>砂漠に木を植えることが社会貢献だというのは、</b><br /> <b>本末転倒であり、偽善と言われてもしかたがありません。</b></p><br /> <p>したがって、おおざっぱに言うと、</p><br /> <p>経営者の使命は、<br /> 企業が顧客に経済的な富を提供するように、<br /> 戦略を立て、組織を編成し、方針を打ち出し、意志決定し続けること。</p><br /> <p>資本家の使命は、<br /> 企業が新たな顧客価値を創造するときに生じるリスクを<br /> 負担すること。</p><br /> <p>労働者の使命は、<br /> このような企業の社会貢献活動(=顧客価値の創造)に貢献すること。</p><br /> <p>みたいな感じになりますかね。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信2】非営利組織に経営は必要ない(善意だけで運営できる!)</h4> <p><br /> 企業経営だけが経営ではありません。<br /> 教会、病院、孤児院、障害者施設、<br /> ホームレスや多重債務者や貧困層などを支援するボランティア組織、<br /> などの非営利組織にも経営は必要です。</p><br /> <p>非営利組織においても、経営の基本<br /> (=顧客を定義し、顧客の真の欲求を見極め、目的を明確にし、<br /> 成果を定義し、戦略を策定し、戦略に合わせて組織構造を編成し、<br /> 目標を設定し、マーケティングを行い、方針を打ち出し、意志決定を行うこと)<br /> は不可欠なのです。</p><br /> <p>ただ、企業にとっての成果が「経済的な富の創出」であるのに対し、<br /> 非営利組織の成果は、多くの場合、「変革された人間」です。<br /> 治癒した患者、学ぶ子供、自尊心を持った成人となる若い男女。。。<br /> ようするに、変革された人間の人生そのものです。</p><br /> <p>「経営」の欠けている非営利組織は、恐ろしく非効率になります。<br /> たとえば、「経営」のある非営利組織とそうでない非営利組織では、<br /> 同じ額の寄付金で救済できるホームレスの数が何倍も違ってきたりします。<br /> また、ホームレスの人生の改善度も満足度も大きく異なってきます。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>善意にも「生産性」が必要</span>だし、「成果」の「質」が問われるべきなのです。</p><br /> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478370621/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/511NWHTCPXL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="非営利組織の経営―原理と実践" title="非営利組織の経営―原理と実践"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478370621/fromdusktilda-22/">非営利組織の経営―原理と実践</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> P.F.ドラッカー,上田惇生,田代正美</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> ダイヤモンド社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 1991/07</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 1人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 55回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4478370621/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (48件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信3】経営スキルがなくても仕事には困らない(経営は経営者の考えることだろJK。。。)</h4> <p><br /> 労働者は労働力という商品を企業に売って、その売却代金を給料という形で受け取ります。<br /> これはビジネスの一形態です。<br /> 全ての労働者は、「労働力販売業」というビジネスをしているのです。<br /> いや、経験やスキルや資格のある労働者の場合、企業はその労働者の労働力というより、経験、スキル、資格にお金を払っているわけですから、単なる労働力販売業、というほどシンプルなビジネスモデルではありません。<br /> それどころか、その労働者の人脈や、いざというときに情報漏洩したり裏切ったり不正経理をしないという「セキュリティ」もこみで買っているケースも多く、見た目よりはるかに高度で複雑なビジネスです。</p><br /> <p>そして、ビジネスをするからには、そこには「経営」が不可欠です。<br /> 自分の「商品(労働力、スキル、人脈、etc.)」を買ってくれる「潜在顧客」を調査・分析し、自分自身をマーケティングしなければなりません。<br /> また、自分の「労働力販売事業」の目的を明確にし、顧客を定義し、成果を定義し、<br /> 戦略を策定し、戦略に合わせて人脈を構築し、<br /> 目標を設定し、マーケティングを行い、方針を打ち出し、意志決定を行わなければなりません。</p><br /> <p>当然のことながら、自分自身を経営する労働者は「自分に何が出来るか?」という風には考えません。<br /> 「自分という経営資源を使って何が出来るか?」と考えます。<br /> この場合、人脈とは販売チャネルだと考えるべきです。</p><br /> <p>自分の弱みを無効化し、自分の強みを最大化するような戦略を策定し、<br /> その戦略に基づいてキャリアプランを設計し、<br /> 自分を使って最も効果的に顧客価値を創造する方法を考えます。</p><br /> <p>また、単に企業の一員、プロジェクトの一員として働くのにも、「経営」スキルは必要です。<br /> プロジェクトの一員として、自分がいかなる情報を、いかなるタイミングで、どのような形で入手すべきで、<br /> いかなる情報を、どのような手段とタイミングで、誰に対して発信すべきかを、定義しなければなりません。<br /> また、それらの情報を作り出すために、自分はどのような方針で、どのような段取りで、どのような行動をしなければならないか、<br /> 考え抜かなければなりません。これらは、すべて経営の基本です。</p><br /> <p>すなわち、経営スキルは、ほとんどの労働者に必要なスキルなのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>労働者にまで「経営スキル」が必要となるようなネオリベ社会は間違っており、是正されるのではないか?</h4> <p><br /> 「そもそも、労働者にまで経営スキルが必要となるような社会の方が間違っているのだ」<br /> という考え方があります。</p><br /> <p>たとえば、ネオリベに対して懐疑的な左翼の方々は、以下のような認識です。</p> <blockquote> <p>2008年05月23日 CrowClaw <b style='color:red'>そもそも「経営学」が成立してしまう資本社会が理不尽</b>だと思うんだけど。「合理性」を言うなら先進国の被災者より途上国の人間を救済すべきでしょ。経営学の外部としての社会は徹底して不合理の世界ですよ。</p> </blockquote> <blockquote> <p>2008年05月28日 hokusyu <b style='color:red'>ドラッカー読んだこと無い</b>けど、反ナチスだから経営学ってのは、単なる「政治的なもの」の封殺に過ぎないんじゃないの。</p> </blockquote> <p>(赤太字による強調は私が行った)</p><br /> <p>ネオリベの方々の中には、<br /> <b><span style='color:red;'>ドラッカーも読まずに経営者と労働者の関係について語っている</span></b>、以下のような記述を見かけると、<br /> いかにも地に足のついてない机上の空論に見え、アチャー(ノ∀`)と思われる方も多いかと思いますが、<br /> ttp://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080731/p2</p> <blockquote> <p>そもそも、少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利なのですから、大学で変に経営者の理屈を内面化するよりも、経営者と殴りあう作法を学んだほうがよほど世の中に貢献できる気がしますけどね。</p> </blockquote> <p>左翼の方々は、そもそも、経営者と労働者の関係を語るのに、経営学の巨人と言われるドラッカーを読むことが重要だとは考えていないのです。</p><br /> <p>そもそも、ネオリベの人たちが掲げるような意味での「経済的自由」がなければ、<br /> 労働者は「経営」などというものを、それほど気にする必要はありません。</p><br /> <p>ネオリベの人たちの言う「経営」とは、市場メカニズムを前提とした上で、<br /> 「誰が」「何を」「どれだけ」「どのようにして」生産し、供給するのか、<br /> という判断を適切に行うためのスキルですが、<br /> ネオリベを否定する社会主義的な国家においては、<br /> それらは、基本的には労働者の選んだ政府の官僚が決めることですので、<br /> 労働者が考える必要性は低いのです。<br /> あるいは、市場メカニズム的な需給バランスから決定するのではなく、<br /> 労働者同士が「話し合い」で決めるものなので、<br /> ネオリベ的な市場システムを前提とした「経営スキル」など必要ないのです。</p><br /> <p>すなわち、ネオリベ的な<b style='color:red'>経済的自由</b>こそが、労働者に経営スキルを要求する元凶なのです。<br /> ネオリベ的な経済的自由が無ければ、労働者には、たいして経営スキルは求められないのです。</p><br /> <p>そして、小泉-竹中的なネオリベ路線は格差を造り出したという声も大きく、<br /> 日本社会は、それを否定する空気になってきています。</p><br /> <p>そして、その考え方が正しく、今後日本社会がネオリベ的な経済的自由を否定し、<br /> 機会の平等よりも、結果の平等を重視する方向へ進むのなら、<br /> そもそも論として、労働者が経営スキルを身につける必要性は、ネオリベ的社会ほどには高くなりません。</p><br /> <p>ということは、今後、社会がどのくらいネオリベ方向に向かうのかどうかを見極めないと、<br /> 労働者がどれくらい「経営スキル」を身につける必要性があるかが、わかりません。</p><br /> <p>そこで、次に、今後の社会がどの程度ネオリベ方向へ進むのか、<br /> その辺を見てみたいと思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>そもそも、ネオリベの人たちは何を主張しているのか?</h4> <p><br /> まず、むちゃくちゃ単純化して言うと、<br /> 「自由市場 + 機会の平等 + セイフティーネット 」<br /> というのがネオリベの人たちにとっての理想社会です。</p><br /> <p>これらの意味がよく理解できず、<br /> ネオリベの方々の主張を勘違いされている方が多いので、<br /> ここで、ネオリベに対する迷信を整理しておきます。</p> <blockquote> <p>【迷信1】ネオリベの人は、規制はどんどん撤廃すべきだと主張している。<br /> 【迷信2】ネオリベの人は、競争に負けた弱者は自己責任なので路頭に迷っても仕方がないと主張している。<br /> 【迷信3】ネオリベは、格差の固定化をもたらす。<br /> 【迷信4】経済効率ばかり追いかけるネオリベは地球環境を破壊する。<br /> 【迷信5】ネオリベの人は、格差の是正は一切すべきではないと主張している。</p> </blockquote> <p><br /> 以下、これらについて解説します。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信1】ネオリベの人は、規制はどんどん撤廃すべきだと主張している</h4> <p><br /> 一番誤解の多いのは、ネオリベの人たちが規制緩和・撤廃論者だという思いこみでしょう。</p><br /> <p>しかし、元祖ネオリベのハイエクやフリードマンの著作を読んで分かるとおり、<br /> ネオリベの人たちの言う「自由市場」というのは、規制の無い市場のことではないです。<br /> 自由で公正な取引が円滑に行われるようにするためのさまざまな規制のある市場のことです。</p><br /> <p>たとえば、詐欺、契約不履行、通貨偽造、脅迫、<br /> 窃盗、私有財産の侵害、独占、談合などがあると、<br /> 自由な取引は妨げられてしまいますから、<br /> それらをしっかり取り締まるような規制が充実している社会こそが、<br /> ネオリベの人たちの理想社会です。</p><br /> <p>そういう、ウソとかズルとか卑怯とかがない「公正」な社会で、<br /> みなが自由にwin-win取引し、みんなが豊かになるのが、ネオリベ的理想社会なわけです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信2】ネオリベの人は、競争に負けた弱者は自己責任なので路頭に迷っても仕方がないと主張している</h4> <p><br /> もちろん、win-win取引といっても、誰かが欲しがるようなものを、ろくに持っていない人、<br /> というのは、誰も取引に応じてくれません。<br /> そういう人は、ネオリベ的自由市場においては、十分な収入が得られません。<br /> ネオリベな人たちに言わせると、そういう人たちのために、<br /> セイフティーネットを用意すべきだ、ということになります。</p><br /> <p>実際、dankogai氏はベーシックインカムを支持していますし、<br /> ネオリベ系の経済学者の多くが、ベーシックインカムとよく似た「負の所得税」に類するものを、おおむね支持しています。<br /> そもそも、元祖ネオリベであるハイエクやフリードマンからして、セイフティーネットの必要性は当然のこととしています。<div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822246418/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/31TSgN-ZoAL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="資本主義と自由 (日経BPクラシックス)" title="資本主義と自由 (日経BPクラシックス)"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822246418/fromdusktilda-22/">資本主義と自由 (日経BPクラシックス)</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> ミルトン・フリードマン,村井章子</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 日経BP社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2008/04/17</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 19人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 311回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4822246418/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (104件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p>少なくとも、まともなネオリベ論者の中で、「セイフティーネットなど必要ない」<br /> というような主張をしている人は、まずみかけません。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信3】ネオリベは、格差の固定化をもたらす</h4> <p><br /> 貧乏な家の子供が十分な教育を受けられないために、<br /> 将来自分の望む仕事を得られないと、<br /> 格差は世代から世代へ引き継がれ、格差の固定が起きてしまいます。</p><br /> <p>ネオリベの人たちは、こういう格差の固定はそもそも<br /> 「機会の不平等」によってもたらされるものだとして、<br /> 断固否定します。</p><br /> <p>ネオリベの人たちは「機会の平等」を実現するために、<br /> 教育には手厚い政府保障をつけるべきだと言います。<br /> フリードマンなんかは、より効率的な「機会の平等」を実現するために、<br /> 「教育クーポン」というシステムを提唱しています。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信4】経済効率ばかり追いかけるネオリベは地球環境を破壊する</h4> <p><br /> 自由市場における、自由な取引が公害を生み出す場合があります。<br /> 経済学で言うところの、負の外部性の問題です。<br /> この場合、自由経済体制自体が公害の原因であるように言われることがありますが、<br /> これは<b>間違い</b>です。</p><br /> <p>第一に、自由経済諸国よりも、社会主義諸国の方が、はるかに酷い公害をまき散らしていました。</p><br /> <p>第二に、自由市場経済を阻害しない形で公害問題を解決する<br /> 経済学的手法が確立されています。<br /> たとえば、マンキューの経済学の教科書のミクロ編第Ⅳ部「公共部門の経済学」で解説されている、<br /> ピグー税と言われる手法です。<br /> これは経済学で言うところの外部性を内部化することで、公害問題を解決する手法です。<br /> ピグー税を導入すれば、ネオリベの人たちが理想とする自由市場を阻害することなく、<br /> 公害問題を効率的に解決し、社会全体の厚生を増大させることができます。<br /> たとえば炭素税は、ピグー税の一種です。</p><br /> <p>このような正しい経済学的対処をすることで、<br /> ネオリベ的な自由市場と地球環境保護が両立する、<br /> どころか、むしろ、自由市場を認めない社会主義国家などよりも<br /> はるかに地球環境にやさしい社会を作り出すことが出来る、<br /> というのが、ネオリベの方々の言い分でしょう。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>【迷信5】ネオリベの人は、格差の是正は一切すべきではないと主張している。</h4> <p><br /> まず、「格差」の定義ですが、<br /> 格差には「機会の格差」と「結果の格差」の二つがあります。</p><br /> <p>ネオリベの人たちは、「機会の格差」はあってはならないし、極力是正すべきだと考えています。</p><br /> <p>また、「結果の格差」に関しては、論者によって意見が分かれるところもありますが、<br /> 「現実的な落としどころとしても、結果の格差は一切是正すべきではない」というような、<br /> 政治的にとうてい実現されそうにない主張をする論者はほとんどみません。<br /> (一部に、痛い人たちがいますが。)</p><br /> <p>そもそも論として、ネオリベの人たちが言うような、<br /> 「自由市場 + 機会の平等 + セイフティーネット 」<br /> を極限まで実行すると、<b>必然的に</b>「結果の不平等」、すなわち格差が拡大します。</p><br /> <p>そこで、現実的には、高所得者に重い税をかけて、それを低所得者に所得移転することになります。</p><br /> <p>ただ、これには副作用があって、高額所得者に重税をかけすぎると、<br /> 経済効率が落ちて、社会全体が貧しくなります。</p><br /> <p>つまり、結果の平等と経済効率はトレードオフなのです。<br /> これは、まっとうな現代経済学の教科書にはたいてい出てくる、有名な問題です。<br /> (人々のインセンティブをゆがめてしまうし、死荷重(deadweight loss)が発生してしまう)</p><br /> <p>また、もう一つの問題として、高額所得者への累進課税は、<br /> ネオリベの人たちが重視する「経済的自由」を侵害するという点が挙げられます。</p><br /> <p>これは、経済学の問題というより、政治哲学の問題です。</p><br /> <p>たとえば、累進課税にすると、<br /> 生涯賃金が同じ場合、<br /> 公務員や大企業のサラリーマンのような安定した収入の人に有利で、<br /> ベンチャーやフリーランスのような自由で不安定な働き方をする人には不利となります。</p><br /> <p>自由で冒険的で不安定な働き方をすると、<br /> 「ある年は年収が1500万だったけど、その後の2年間は無収入だった」<br /> などということも起きたりします。<br /> こういうケースでは、累進課税にすると、3年間、安定して年収500万円の人の方が、<br /> はるかに税金が安くなってしまうのです。</p><br /> <p>これは、本来なら、どちらの働き方をする自由もあったはずなのに、<br /> 片方の働き方だけ不利にしますので、<br /> 実質的に、選択の自由が侵害されてしまうのです。</p><br /> <p>また、累進課税だと、どれだけ働いてどれだけ稼いで、どれだけ休んだり遊んだりするかの<br /> <b>配分を選択する自由</b>が侵害されます。<br /> たとえば、必死に働けば年収1000万円稼げる人が、必ずしも必死に働いて年収1000万稼ぐかというと、<br /> そんなことはありません。<br /> 少しだけしか働かず、年収200万だけ稼いで、<br /> のんびり本を読んだりネットで遊んだりするライフスタイル<br /> を選ぶ場合もあるわけです。</p><br /> <p>ところが、累進課税だと、たくさん稼ぐと大量に税金を取られてしまうので、<br /> 猛烈に働きまくって年収1000万円稼いで都心のおしゃれなワンルームマンションに住んで、<br /> 女の子を自分の部屋に招いてきゃっきゃうふふするというような<br /> ライフスタイルを選択する人が不利になってしまいます。</p><br /> <p>まとめると、結果の平等を追求すればするほど、<br /> 社会全体が貧しくなり、経済的自由が侵害されていく、<br /> というトレードオフがあるのです。</p><br /> <p>なので、実際には、社会の大多数の人間が納得する割合で、<br /> そこそこ経済効率と経済的自由を犠牲にして、<br /> そこそこ結果の格差を容認する、<br /> という、現実的な落としどころを探ることになります。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>制限速度10Kmの社会</h4> <p><br /> もちろん、左翼の方々は、こういうネオリベ的理想社会を否定します。<br /> ttp://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080302/p1</p> <blockquote> <p>小飼弾は、雇用の流動性とベーシック・インカムの必要性を説く。同様の未来像が<a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080302/1204438491">http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080302/1204438491</a>で示されている。あなたが解雇されたとしても、あなたが競争に参加する意欲があり、自分の能力を磨いて「生産性の高い」人間になる限り、また仕事に復帰できる。そのような社会が望ましいと。<br /> では、競争に参加する意欲の無い、あるいは意欲があっても「生産性が低い」人間はどうなるか?確かにベーシック・インカムがあれば最低限の生活は送ることができるかもしれない。しかし、彼ら/我々は社会にとって不用であり、足を引っ張るお荷物として処遇される。</p> </blockquote> <p><br /> 当然、ネオリベの人たちは、これに対し、<br /> 「彼ら/我々は社会にとって不用であり、足を引っ張るお荷物として処遇される。」<br /> などということはない、と反論するでしょう。<br /> 自由経済システムとベーシックインカムは、単なる経済システムであって、人間の価値を決定するシステムではない、と言うでしょう。<br /> 「競争に参加する意欲の無い、あるいは意欲があっても「生産性が低い」人間」も、ベーシックインカムで暮らしながら、<br /> 自分なりに豊かな人間関係を築き、自分なりの人生の意味を、自分で見つけていくことはできるし、それは自己責任だと。</p><br /> <p><b>国家が面倒を見るべきのは、あくまで経済的な豊かさまでであり、精神的な豊かさは個人の自己責任だ、と</b>。<br /> <b>個人の精神的豊かさまで国家に与えてもらおうとするのは、勘違いも甚だしい、と</b>。</p><br /> <p>まあ、実際には、自由経済システム下では、<br /> 働かずにベーシックインカムだけで生活する人たちを「足を引っ張るお荷物」と<br /> 考える人も出てくるでしょうから、hokusyu氏の指摘自体にまるで価値がないとは言えないでしょう。</p><br /> <p>しかしながら、それを理由にネオリベ的自由経済を否定するのは、<br /> 「時速50Km制限だと、運動神経がとても鈍い人の命が危険にさらされるから、<br /> 全ての道路の制限速度を時速10Kmにすべきだ。」<br /> と言っているようなものではないでしょうか。</p><br /> <p>実際には、時速50Km制限の道路は、大多数の人にとって、自由に、気持ちよく走れるのです。<br /> 一部の、極端に運動神経が鈍い人のために、時速10Km制限にして、<br /> 大多数の人が好きな速度で走れる自由を奪っていいということにはならないでしょう。</p><br /> <p>すなわち、一部の弱者のために、社会の大多数の自由を大幅に制限してもいい、<br /> という倫理観はバランスを欠いているのです。</p><br /> <p>もちろん、<a href="http://sns.my-freedom.org/">&#x30D5;&#x30EA;&#x30FC;&#x30C0;&#x30E0;SNS(&#x81EA;&#x7531;&#x306A;&#x751F;&#x304D;&#x65B9;&#x306B;&#x3064;&#x3044;&#x3066;&#x610F;&#x898B;&#x4EA4;&#x63DB;&#x3059;&#x308B;SNS)</a>でip0氏が指摘したように、実際の道路はみんながびゅんびゅん飛ばすから、時速10Kmで走りたいという人は、後の車に迷惑をかけるし、時にはクラクションで煽られたりしてしまい、困ってしまうでしょう。「時速50Km以下」というように、建前上は0〜50Kmのどの速度でも自由に走れるようなにはなっていますが、実質的には時速10Kmで走る自由はないじゃないか!という指摘です。<br /> この問題については、大多数の普通の人たちの走る時速50Km制限の道路をメインの道路にしつつ、プログラマの某氏の言うように、if文にするのかtry-catchルーチンにするのかはともかく、時速10Kmで走れる歩道?バイパス?のようなものを整備してべきでしょう。<a href="#f-febe9c14" name="fn-febe9c14" title="ip0氏の考えは、時速10Kmで走る人は、時速50Kmで走る人の1/5の収入でよい、というものです。なぜかというと、そうすると、時速50Kmの人たちは、経済学で言うところの機会費用による損失が生じるため、時速10Kmの道路に入ってこれなくなり、時速10Kmの人たちは、安心して快適に道路を走れるから、ということのようです。また、そういう形であれば、社会に無理な負担がかからず、政治的にも受け入れられやすいのではないか。唯一の問題は、いま、安心して走れる制限時速10Kmの道路がないことなのではないか、ということです。時速50Kmの道路のほかには、いきなり生活保護という、時速0Kmの道路しかないのでは困る、と。ネオリベ的な世界観からすると、1/5の収入になった場合、負の所得税によって補填され、2/5ぐらいの所得にはなるイメージでしょうか。いずれにしても、ネオリベ的には「選択の自由」は他の人たちの「選択の自由」をあまり侵害しない形で保証されるような社会が望ましい、ということになるのでしょうが。">*3</a></p><p></p> </div> <div class="section"> <h4>ネオリベが台頭することになった歴史的経緯</h4> <p><br /> 数十年前、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどは、<br /> hokusyuさんが以下の文章で言うところの「労働者が持つ不可侵の権利」が拡大する方向へ社会が進んでいました。</p><p>ttp://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080731/p2</p> <blockquote> <p>そもそも、少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利なのですから、大学で変に経営者の理屈を内面化するよりも、経営者と殴りあう作法を学んだほうがよほど世の中に貢献できる気がしますけどね。</p> </blockquote> <p><br /> つまり、成果(=労働者の顧客価値の創造量)に関係なく、労働者に楽な仕事と多くの給料を保証しよう、という考え方で、<br /> ネオリベとは全く相容れない考え方です。</p><br /> <p>だけど、それらの社会は、結果として経済が停滞し、社会全体が貧しくなり、<br /> つぎつぎに行き詰まっていき、<br /> その反動から、大きな痛みを伴うネオリベ的大改革が行われることになってしまいました。<br /> そうしないと、その国の未来がなくなると政治家達が思いこんでしまうほどに、<br /> 社会が停滞・荒廃してしまったのです。</p><br /> <p>そして、それらの改革は、やがて経済を立て直し、<br /> 成長軌道に乗せ、社会全体の豊かさを膨らませ、ましたが、<br /> 一方で、格差を拡大し、相対的貧困を拡大させました。</p><br /> <p>ただし、イギリスなどの例を見ると、絶対的貧困は削減されたようです。<br /> すなわち、貧困層の実質賃金はおおむね上昇しました。<br /> 当時に比べれば、セイフティーネットも充実するようになりました。</p><br /> <p>つまり、低所得者も少しは豊かにはなりましたが、<br /> それをはるかに超えるペースで中産階級や金持ちが豊かになってしまったのです。</p><br /> <p>元映画俳優のドナルドだかロナルドだかのおっちゃんや、<br /> もっとも男らしい男よりも男らしいと言われたりした鉄の女さっちゃんが<br /> 大義名分にかかげたトリクルダウン効果は、<br /> 前宣伝にくらべると、えらくしょぼいものでしかなかったのです。</p><br /> <p>その後は、たとえばイギリスのブレア政権の「第三の道」のように、<br /> 基本的にはサッチャー政権のネオリベ路線を堅持しながら、<br /> 効率と社会正義を両立させようとする方向になりました。</p><br /> <p>すなわち、社会正義は追求するものの、もはや、以前の、<br /> 「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利」<br /> などというような社会へ後戻りするようなことはなく、<br /> あくまでネオリベを社会の基本骨格にして、それと矛盾しない形での<br /> 社会正義を追求しよう、という流れになったのです。</p><br /> <p>たとえば、スウェーデンで始まり、イギリスにも導入された「積極的労働政策(失業保険などの消極的な労働政策に対し、積極的に失業者にジョブコンサルタントを付けたり、職業訓練などを施して労働力の需給ミスマッチを解消するなど)」のように、ネオリベ的な自由市場に規制をかけるのではなく、<b style='font-siz:24px;color:red'>逆に、労働者の方をネオリベ的な自由市場に適応させる</b>ような形で、貧困や格差を是正していくような福祉政策がとられるようになりました。</p><br /> <p>すなわち、ネオリベ的な自由経済社会は、もはや前提となってきているのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>左翼の論理が、世界的に信頼を失っていった</h4> <p><br /> そういう歴史的経緯から、今では、<br /> 「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利」<br /> という思想をベースに社会を設計すべきだ、と信じる経済学者や経営学者は、主流派ではなくなってしまいました。</p><br /> <p>少なくとも、現在、最も多く読まれている現代経済学の教科書にはそんなことは書いていません。<br /> むしろ、そういう主張をしがちな労働組合こそが失業を生み、社会全体を貧しくしている、<br /> ととれるようなことが書かれています。(たとえば、マンキュー経済学)</p><br /> <p>そういう「主流派」経済学の教科書は、世界中の大学で膨大な数の大学生に教えられています。<br /> たとえば、マンキューの経済学の教科書は、<br /> アメリカだけも500以上の大学、世界の数十カ国の大学で採用されています。<div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313524/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41XGD2J704L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="マンキュー経済学〈1〉ミクロ編" title="マンキュー経済学〈1〉ミクロ編"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492313524/fromdusktilda-22/">マンキュー経済学〈1〉ミクロ編</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,小川英治,石川城太,地主敏樹</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 東洋経済新報社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2005/09</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 19人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 200回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4492313524/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (89件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <br /> <p>もちろん、これは単にこうした歴史的経緯だけに起因するものではなく、左翼の方々の批判の多くが的外れであるとの認識が広まってきたことも大きいかと思われます。<br /> たとえば<span style='font-size:170%;'>「労働者は搾取されている」とおっしゃる左翼の方がよくいらっしゃいますが、少なくともマルクス経済学の文脈で言う「搾取」という概念は<span style='color:red'>的外れ</span>です</span>。<br /> このあたりの左翼の論理破綻ついては、以下の本で分かりやすく解説されています。(作者自身は、あとがきで「これは左翼への応援歌だ」と自己フォローされています。)<div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480424628/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41YKPNk4-TL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="経済学という教養 (ちくま文庫)" title="経済学という教養 (ちくま文庫)"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480424628/fromdusktilda-22/">経済学という教養 (ちくま文庫)</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> 稲葉振一郎</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> 筑摩書房</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2008/07/09</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 文庫</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 14人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 256回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4480424628/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (73件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>ネオリベに代わる社会システムは、未だ見えず</h4> <p><br /> こうしてみてくると、<br /> 「自分の労働によって、顧客をどれだけ満足させたか」という経営的価値観をあまり気にかけないような労働者が<br /> 「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料」を得ることを「労働者が持つ不可侵の権利」<br /> として保証するような社会システムが、持続可能であると信じている人たちは、時代の波に取り残された人々のようにも見えますが、<br /> 彼ら自身は、むしろ、「自分たちの考え方こそが未来を先取りしている」と考えているふしもあります。<br /> <br /> </p> <blockquote> <p>2008年07月11日 I11 どうでもいい。資本主義はいらないし壊れて消滅する運命の旧システム。そんなものにすがってなんになるか。大事なことは壊れゆく資本主義の次に到来する社会をどう描き、どう生き残るかだ。</p> </blockquote> <p>しかしながら、現在少数派である彼らが、はたして時代遅れの遺物なのか、それとも、未来を先取りしたビジョナリーなのか、それが明らかになるのは、まだ先の話ではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ネオリベと左翼の根源的な対立点</h4> <p><br /> ネオリベの方々が労働と報酬が切り離せないと考えるのに対し、<br /> 左翼の方々は、労働と報酬を切り離そうとします。</p><br /> <p>ここは、ネオリベと左翼の方々の、一番よく見られる対立点なのではないでしょうか。</p><br /> <p>それは、たとえば、以下の文に端的に表れています。<br /> ttp://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080731/p2</p> <blockquote> <p>そもそも、少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利なのですから、大学で変に経営者の理屈を内面化するよりも、経営者と殴りあう作法を学んだほうがよほど世の中に貢献できる気がしますけどね。</p> </blockquote> <p><br /> なぜ、ネオリベの方々が労働と報酬を切り離せないと考えるかというと、<br /> ネオリベ的世界観が「win-winの交換」によって成り立っているからです。</p><br /> <p>すなわち、ネオリベ的社会の構成員は、「お互いが得になるような取引」を四方八方に対して行うことにより、win-win取引の網の目を編み上げることで、社会を形成するわけです。<br /> このwin-win取引ネットワークを成立させているのは、リカードの比較優位の原理です。<br /> 複雑な網の目のように張り巡らされた取引ネットワーク全てで比較優位の原理が働くため、<br /> 社会全体が豊かになるのです。</p><br /> <p>また、比較優位の原理は、分業をもたらします。そして、分業をすると、選択と集中により、生産性向上速度が上がります。<br /> 同じことばかりやれば、それに熟練する速度が高くなるからです。</p><br /> <p>また、ネオリベ的社会においては、「取引相手にとって価値の高いモノやサービス」を作り出すことにより、自分も高い価値のモノやサービスを手に入れることが出来ます。<br /> 従って、経営的な意味での「顧客価値の創造」をいかにして行うか、という方法論、すなわち、「経営スキル」が重要になってくるのです。</p><br /> <p>ネオリベ的世界観においては、全ての人間は、フラットで独立した自由で自律的な存在で、各人が自己責任で価値を創造し、価値を交換します。<br /> 労働者も経営者も資本家も、誰が誰を支配するということも搾取するということもなく、それぞれ自立した自由な存在が、互いに自己責任で自由な取引をしているだけ、という世界観です。<br /> そういう、階層のないフラットなネットワークが広がって、そのネットワークが市場メカニズムで調整されて、世の中の秩序が保たれながら、世界全体が発展していくのです。</p><br /> <p>しかしながら、左翼の方々は、このようなネオリベ的世界観自体を否定します。<br /> 左翼的な世界観からすると、ネオリベ的価値交換ネットワークで社会が成立しているわけではありません。<br /> 左翼的世界観からすると、「顧客価値を少ししか創造していない労働者は、報酬も少なくて当然だ」というネオリベのロジックは受け入れられないのです。なぜなら、左翼的世界観<a href="#f-beb23c66" name="fn-beb23c66" title="左翼というより、hokusyu氏特有の世界観か?そうでない左翼もいそう。">*4</a>からすると、その労働者の顧客価値の創造量とは関係なく、全ての労働者には、無条件で「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料」が与えられるべきで、それは「労働者が持つ不可侵の権利」だからです。</p><br /> <p>つまり、左翼の方々は、ネオリベ的な「交換」による社会形成自体を否定しているのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>左翼的な世界観は、現実的に成立可能なのか?</h4> <p><br /> その労働者の顧客価値の創造量とは関係なく、全ての労働者には、無条件で「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料」が与えられるべきで、それは「労働者が持つ不可侵の権利」だ、ということを前提とする社会は、果たして現実的に成立可能なのでしょうか?</p><br /> <p>おそらく、それは成立不可能だ、というのが、現時点での主流派の直感なのではないでしょうか。<br /> それは、相次ぐ高福祉国家の破綻や、社会主義諸国の崩壊から、多くの人が思い至った結論なのだと思います。</p><br /> <p>そして、それだけでなく、少なくとも現時点では、現在の人間の欲望システムと物理的な制約のいかなる組み合わせを行おうと、労働者の顧客価値創造と報酬を切り離すような左翼的な世界は、どのように方程式をこねくり回そうと、解として、というていありそうに思えない、というのが、主流派の人々の直感なのではないでしょうか。</p><br /> <p>人間の遺伝子を書き換えて、人間の欲望システム自体を書き換えるか、あるいは、とてつもない技術進歩で物理的な制約のほとんどが取り払われるような、はるかな未来社会においてしか、そんなものはありえない、という直感なのではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ドラッカー的な仕事観こそが、人生を豊かにする最適解なのではないか</h4> <p><br /> 現在の人間の欲望システムと、現在の人間の技術水準と、入手できる資源の量を組み合わせると、<br /> おそらくは、<b>ドラッカー的仕事観が最適解</b>なのではないでしょうか。</p><br /> <p>だから、現実的な処方箋は、むしろhokusyu氏の主張とはまったく逆で、<br /> 大多数の普通の労働者(制限時速10Kmではなく、制限時速50Kmを望むような)は、少なくとも「はじめて読むドラッカー」シリーズぐらいは、しっかり読んで、経営の原理をよく理解しておいた方がよいと思います。</p><br /> <p>少なくとも、歴史的経緯と今後の世界トレンドを見る限り、見通せる限りの未来社会においては、<br /> そうすることで、顧客も、経営者も、資本家も、上司も、部下も、自分の家族も、自分自身も、幸せにすることができるような、<br /> そんな社会情勢が続くと思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>高福祉と経済成長を両立させている国もあるけど?</h4> <p><br /> もちろん、高福祉と経済成長を両立させているような、スウェーデンのような国もあります。<br /> しかし、スウェーデンといえども、<br /> 「自分の労働によって、顧客をどれだけ満足させたか」という経営者的価値観あまり気にかけないような労働者に対し、<br /> 「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利 」<br /> を認めるというような意味での福祉などではありません。<br /> スウェーデンといえども、労働者の顧客価値の創造と報酬を切り離すようなことはしていません。</p><br /> <p>それに、スウェーデンは、高福祉と経済成長を両立させ続けるために、<br /> かなりの速度で社会システムのイノベーションを続けています。<br /> 逆に言えば、これほどの速度で社会制度のイノベーションを続けなければ、<br /> これだけの高福祉は維持できないかもしれないのです。</p><br /> <p>あれだけ膨大な時間をかけて議論したあげく、<br /> 無駄な道路の建設計画すら取りやめにできない日本に、<br /> これほどの速度のイノベーションは、とうていできそうに思えません。</p><br /> <p>というか、高福祉と経済成長を両立できているのは、どこも人口1000万人に<br /> 満たない小国ばかりです。<br /> スウェーデンは900万人、フィンランドは500万人です。</p><br /> <p>昔、ゾウの時間ネズミの時間という本がベストセラーになりましたが、<br /> もしかしたら、高福祉と経済成長を両立させるには、<br /> フットワークの軽い社会システムイノベーションをし続けることが不可欠で、<br /> 国家がある一定サイズを超えると、それが不可能になるという可能性もあります。</p><br /> <p>さらに、それらの国々は、フットワークを生かして、<br /> 卓越した教育システムや積極的労働政策など、<br /> 国力を大きく引き上げる強力な国家システムによって、<br /> 経済力が底上げされている、という要因も大きいかもしれません。<br /> そういうプラス要因で、高福祉からくる負担を相殺しているところも大きいかもしれないのです。</p><br /> <p>さらに言うと、高福祉を支えるために、スウェーデンの税負担は重く、<br /> そのため、若くて優秀な人材の流出が続いています。<br /> こういう人材流出は、やがて、ボディーブローのようにじわじわ効いてきて<br /> 今後、経済成長率を押し下げる力として働くようになるリスクもあります。<br /> これらのことから、スウェーデンの高福祉社会が、はたして今後も持続可能かどうかは、<br /> まだ結論が出ていないと思うのです。</p><br /> <p>いずれにしても、フランスもとうとうネオリベ路線にかじを切りましたし、<br /> 人口が数千万単位の巨大国家で、<br /> 「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利 」<br /> と認めるような形での高福祉と経済成長を両立させ続けている国など、<br /> 少なくともこの惑星上には、どこにもないのです。<a href="#f-7539d019" name="fn-7539d019" title="道州制にして、福祉システムも、各州単位にして、好き勝手に変えられるようにすれば、もしかしたら、目がないではないかも知れないが、それにしても、「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利 」というほどにはなりそうにない。">*5</a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>結論</h4> <p><br /> こうして見てみると分かるとおり、今後ますますネオリベ化していく先進国社会においては、各労働者の顧客価値の創造量に応じて報酬が決まるようにならざるを得ません。<br /> そして、顧客価値創造能力にとって極めて重大なスキルの一つが経営スキルです。</p><br /> <p>それだけではありません。<br /> 経営スキルを身につけた労働者は、自分自身だけでなく、プロジェクトチームの他のメンバーの価値創造能力も高めるので、多くの人に必要とされ、歓迎され、尊敬され、待遇もよくなっていきます。なぜなら、<b>経営の本質とは、他人に仕事をさせることを仕事にする</b>ということだからです。<b>顧客価値の本質を考え抜き、上司、同僚、部下に、適切な情報を適切なタイミングで伝え、適切な方針を示し、関係者全員が、適切な仕事を適切なタイミングで行えるようにするスキルこそが、経営スキル</b>だからです。</p><p>一方で、経営を理解しない労働者は、単に自分の顧客価値創造能力が低いと言うだけでなく、プロジェクトの他のメンバーの顧客価値創造をも阻害します。顧客価値の本質について考え抜いていないために、顧客価値の創造のためのの適切な情報を、適切なタイミングで、適切な相手に伝えることができないからです。経営が分かっていない、というのは、そういうことなのです。<br /> このため、経営を理解しない労働者と一緒に働きたいという人は少なく、どんどん居場所がなくなっていってしまいます。そのため、待遇もどんどん悪くなり、年収も下がっていってしまうのです。</p><br /> <p>この問題の解決策は明らかです。<br /> もし、まだあなたが「はじめて読むドラッカー」シリーズを読んでいないのなら、<br /> まず、それを読むことから始めるべきなのです。</p><br /> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300615/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51QKWFHMFVL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))" title="チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300615/fromdusktilda-22/">チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! (はじめて読むドラッカー (マネジメント編))</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> P・F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> ダイヤモンド社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2000/09/01</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 21人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 116回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4478300615/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (71件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300623/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51AWAPPN2JL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))" title="イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300623/fromdusktilda-22/">イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> P.F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> ダイヤモンド社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2000/12/01</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 6人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 46回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4478300623/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (55件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300593/fromdusktilda-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51EG2EG9X3L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))" title="プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478300593/fromdusktilda-22/">プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> P・F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> ダイヤモンド社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2000/07/01</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">購入</span>: 88人 <span class="hatena-asin-detail-label">クリック</span>: 689回</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4478300593/fromdusktilda-22" target="_blank">この商品を含むブログ (419件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p> </div> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-68719a92" name="f-68719a92" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ここで言う「経営」とは広義の経営のことで、ドラッカーの言う「マネージメント」の概念とほぼ同じだが、日本語で「マネージメント」というと、単なる管理職のことだと勘違いする人も多く、むしろ「経営」という言葉の方がニュアンスが伝わりやすいと考え、こちらの言葉を使うことにした</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-1156c4a9" name="f-1156c4a9" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">だから、金儲けをしたければ、そもそも「企業の目的は金儲けだ」などという勘違いはしてはいけないのです。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-febe9c14" name="f-febe9c14" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ip0氏の考えは、時速10Kmで走る人は、時速50Kmで走る人の1/5の収入でよい、というものです。なぜかというと、そうすると、時速50Kmの人たちは、経済学で言うところの機会費用による損失が生じるため、時速10Kmの道路に入ってこれなくなり、時速10Kmの人たちは、安心して快適に道路を走れるから、ということのようです。また、そういう形であれば、社会に無理な負担がかからず、政治的にも受け入れられやすいのではないか。唯一の問題は、いま、安心して走れる制限時速10Kmの道路がないことなのではないか、ということです。時速50Kmの道路のほかには、いきなり生活保護という、時速0Kmの道路しかないのでは困る、と。ネオリベ的な世界観からすると、1/5の収入になった場合、負の所得税によって補填され、2/5ぐらいの所得にはなるイメージでしょうか。いずれにしても、ネオリベ的には「選択の自由」は他の人たちの「選択の自由」をあまり侵害しない形で保証されるような社会が望ましい、ということになるのでしょうが。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-beb23c66" name="f-beb23c66" class="footnote-number">*4</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">左翼というより、hokusyu氏特有の世界観か?そうでない左翼もいそう。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-7539d019" name="f-7539d019" class="footnote-number">*5</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">道州制にして、福祉システムも、各州単位にして、好き勝手に変えられるようにすれば、もしかしたら、目がないではないかも知れないが、それにしても、「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利 」というほどにはなりそうにない。</span></p> </div> fromdusktildawn 睡眠の質を最高にする、ちょっと変わった夕食のとり方 hatenablog://entry/10257846132601979987 2008-06-29T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:57:19+09:00 睡眠の質が悪いと、脳の状態が悪くなり、 いやーな気分で目覚め、 <p><br /> 睡眠の質が悪いと、<span style='font-size:170%;'>脳の状態が悪く</span>なり、<br /> <span style='font-size:170%;'>いやーな気分</span>で目覚め、<br /> その日一日、理解力が低下し、肝心なことに気がつかず、手違いが多く、<br /> 仕事が捗らず、それらがトラブルを起こして人間関係が悪化したり、ストレスがたまったりします。<br /> そうすると、布団に入ってもなかなか寝付けず、<br /> またまた睡眠の質が悪くなるという<span style='font-size:170%;'>悪循環</span>に陥ったりします。</p><br /> <p>逆に、質の良い睡眠をとり、気分爽快に目覚めた日は、<br /> やる気に満ちあふれ、頭の回転も速くなり、<br /> 集中力も高くなり、いままで気がつかなかった大切なことに気づいたり、<br /> 集中力が続くので仕事も捗ったり、<br /> ダメな部下や同僚や上司にも寛容な気持ちで接することができたりして、<br /> 人間関係が改善していったりします。</p><br /> <p>もしかしたら、<br /> <span style='font-size:170%;'>睡眠の質は、人生の幸福の半分を決定してしまう</span><br /> んじゃないかと思うこともあるほどです。</p><br /> <p>そこで、ここでは「睡眠の質を最高にする夕食のとり方」をご紹介します。<br /> これは、基本的には、ためしてガッテンでやっていた熟睡方法を、ものぐさな人でも実践できるように具体的なノウハウに落とし込んだものです。<br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>炭水化物を少なく、タンパク質を多めに取る</h4> <p><br /> 夕食で炭水化物をたくさん摂取すると、睡眠中の血糖値が高くなります。<br /> 睡眠中の血糖値が高すぎると、睡眠中の成長ホルモンの分泌が阻害されます。<a href="#f-1b285bc6" name="fn-1b285bc6" title="もっと言うと、成長ホルモンは[http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/html/medical/endocrine/node11.html:title=「特に低血糖に反応して分泌が亢進する」]ようです。">*1</a><br /> 成長ホルモンの分泌が阻害されると、十分に疲れが取れません。</p><br /> <p>ただし、いままで夕食でタップリ炭水化物を取っていた人がいきなり炭水化物を大幅に減らすと、<b style='color:red'>かえって目が冴えて眠れなくなる</b>ことがあります。<br /> だから毎日少しずつ夕食の炭水化物を減らし、タンパク質を増やしていくのがよいと思います。</p><br /> <p>最終的には、夕食では、炭水化物はご飯茶碗の半分くらいのご飯がよいようです(個人差があります)。<br /> あとは、納豆、豆腐、魚、鳥のササミ、カッテージチーズなどの高タンパク食品を多めに摂取します。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>最小の手間とお金でタンパク質を摂取する方法</h4> <p><br /> スーパーで、茹でられた枝豆を買ってくれば、料理せずに良質のタンパク質を摂取できます。<br /> 大豆のタンパク質含有量は植物とは思えないほど異様に高い(乾燥重量の40%!)うえ、アミノ酸バランスもすばらしいので、納豆や枝豆は、タンパク質の摂取手段としては、極めて有効です。</p><br /> <p>カッテージチーズも、料理せずに食べられる高タンパク食品なので手軽で良いです。</p><br /> <p>また、納豆を冷蔵庫に常備しておくのもありです。<a href="#f-c66fe37f" name="fn-c66fe37f" title="ブクマコメの指摘により、納豆の賞味期限についての記述を削除">*2</a></p><br /> <p>魚肉ソーセージを冷蔵庫に常備しておくというのもあります。<br /> これも比較的賞味期限が長いです。</p><br /> <p>ドライ納豆を大量購入し、常備しておくというのもあります。<br /> タンパク質が足りないと思ったら、夕食後にネットでもしながらボリボリ食べます。</p><br /> <p>激安スーパーや100円ショップなどで、1個100円ぐらいの魚の缶詰を大量に購入して常備しておくというのもあります。<br /> タンパク質が足りないときに缶詰をあけて、夕食に加えたりできます。</p><br /> <p>プロテインパウダーを常備しておくのもよいです。<br /> プロテインパウダーを豆乳などに溶いて飲みます。<br /> これもお手軽にタンパク質を摂取できます。</p><br /> <p>また、鶏肉のささみは、安くて良質のタンパク質がとれます。<br /> ささみは、少量のオリーブ油でソテーにして食べるのも良いです。<a href="#f-8b5cb5cb" name="fn-8b5cb5cb" title="なぜオリーブ油でなければならないかというと、オリーブ油の主成分がオメガ9のオレイン酸という脂肪酸だからです。店で売っている植物性油の多くの主成分は、リノール酸などのオメガ6なのですが、現在の日本では、オメガ6の過剰摂取による健康被害が心配されています。オメガ6は極力避けるにこしたことはありません。">*3</a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>寝る直前に食事を取らない</h4> <p><br /> 寝る直前に食事を取ると、睡眠中、消化器官が消化のための活動を続けることになります。<br /> このため、睡眠中に内臓などが十分に休むことができず、睡眠の質が下がります。</p><br /> <p>このため、寝る3時間前ぐらいに夕食を済ませておいた方がよいです。</p><br /> <p>ただし、いままで寝る直前に食事をしていた人間が、いきなり寝る3時間前に食事を済ませるようにすると、<b style='color:red'>かえって空腹で眠れなくなる</b>ことがあります。</p><br /> <p>したがって、毎日少しずつ食事の時間を前にずらしていくのがよいようです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>夕食では十分な食物繊維を摂取する</h4> <p><br /> 夕食で十分な食物繊維を取らないと、就寝時に<b style='color:red'>胃腸が空っぽになりすぎて、よく寝付けなくなる</b>ことがあります。<br /> 十分な食物繊維と一緒に夕食を摂取すると、血糖値の上昇と下降が緩やかになるということも、寝付きをよくすることに影響しているのかもしれません。<br /> このため、とくに夕食では十分な食物繊維を取るようにします。</p><br /> <p>豆類には豊富な食物繊維が含まれていて、食物繊維の摂取効率がよいです。<br /> 単位カロリーあたりの、タンパク質と食物繊維の摂取量を考えると、大豆の優秀さは際だちます。<br /> この意味で、納豆、枝豆、ドライ納豆は夕食にむいています。</p><br /> <p>サラダで食物繊維を摂取する場合は、ドレッシングには<br /> えごま油、しそ油、亜麻仁油などのオメガ3脂肪酸の多いものをかけて食べるのがお勧めです。<a href="#f-6ae0542f" name="fn-6ae0542f" title="オメガ3とオメガ6の脂肪酸は、細胞を形作る重要な物質であり、かつ、体内でのプロスタグランジン産生を左右する重要な物質ですが、人間が体内で合成できない(進化の途上で、それらを合成する酵素を失った)ため、それらは必須脂肪酸と呼ばれ、それらの摂取は重要なのですが、[http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2a.html:title=厚生労働省も食事摂取基準を発表している]ように、日本人の場合、オメガ6を過剰摂取している一方で、オメガ3の摂取が不足しており、これらが、体内のプロスタグランジンバランスの崩れを引き起こし、アレルギーや生活習慣病などの原因の一つになっている可能性を指摘されています。">*4</a></p><p></p> </div> <div class="section"> <h4>最小の手間とお金で、食物繊維を摂取する方法</h4> <p><br /> 基本は、食物繊維の多い雑穀に納豆をかけて食べることで、手間なく食物繊維を取れます。</p><br /> <p>ただ、ご飯を炊いたり納豆を混ぜる手間すらかけたくないという人は、<a href="http://www.kellogg.co.jp/products/details/allbran.html">&#x30AA;&#x30FC;&#x30EB;&#x30D6;&#x30E9;&#x30F3;</a>という手があります。<br /> これを深皿にいれ、豆乳をかけてかき込めば1〜2分でかなりの量の食物繊維が摂取できます。<br /> それでは味気ない場合、多少のドライフルーツを加えて食べやすくする方法もあります。</p><br /> <p>また、食物繊維の足りない食事をしてしまった後に<a href="http://www.otsuka-plus1.com/product/naturemade/outline/detail_item_b/detail_item_b17.html">&#x30B5;&#x30D7;&#x30EA;</a>で補給するという手もあります。<br /> これも、ほとんど手間がかかりません。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>白米を避け、雑穀を食べる</h4> <p><br /> 白米のご飯は夕食では取らないようにするのがお勧めです。<br /> 発芽玄米、アマランサス、麦、黒米、キヌアなどの各種の雑穀をブレンドしたものを摂取するようにします。<br /> ただし、アマランサス、黒米、キヌアは、栄養価は高いのですが価格も高いので、お金のない人は、粟、稗、麦など、もっと安い雑穀を中心にするという方法もあります。</p><br /> <p>なぜそうするかというと、白米よりも、麦や玄米と雑穀をブレンドしたものの方がはるかに食物繊維が多く、栄養のバランスも良いからです。<br /> 食物繊維が多いと、血糖値の上昇と下降が緩やかになるためなのか、就寝時に穏やかな気分で寝付けます。</p><br /> <p>また、白米は美味しすぎるため、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。<br /> 夕食で白米を食べ過ぎると、炭水化物過剰でその夜の睡眠の質を下げるので、これは危険です。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>でも、たまにはジャンクフードも食べたいよ!</h4> <p><br /> いくら健康のためとは言っても、雑穀、納豆、枝豆、オールブラン、魚、鶏のささみなどの味気ない夕食ばかりでは、うんざりしてきます。<br /> たまには、ラーメンやカレーうどんなどのジャンクフードが恋しくなります。</p><br /> <p>しかし、<span style='font-size:170%;'>ラーメンもうどんも、炭水化物タップリで、睡眠の質を低下させます。</span></p><br /> <p>そんな問題を解決するのが、<a href="http://www.ramencan.net/">&#x30E9;&#x30FC;&#x30E1;&#x30F3;&#x7F36;&#x30FB;&#x3046;&#x3069;&#x3093;&#x7F36;&#x30B7;&#x30EA;&#x30FC;&#x30BA;</a>です。</p><br /> <p>このシリーズは、次のような、<a href="http://ramencan.net/?mode=f2">&#x5473;&#x306E;&#x30D0;&#x30EA;&#x30A8;&#x30FC;&#x30B7;&#x30E7;&#x30F3;</a>がそろっています。<br /> <br /> </p> <ul> <li>札幌らーめん缶 味噌味 98kcal</li> <li>札幌らーめん缶 醤油味 73kcal</li> <li>らーめん缶 東京屋台風 45kcal</li> <li>らーめん缶博多とんこつ 87kcal</li> <li>らーめん缶札幌スープカレー 64kcal</li> <li>うどん缶きつね      73kcal</li> <li>うどん缶カレー      73kcal</li> <li>けんちん汁のうどん缶   56kcal</li> <li>札幌らーめん缶 味噌バター風味 (カロリー不明)</li> </ul><p><br /> このシリーズの面白いところは、これらは、<br /> <span style='font-size:170%;'>ラーメンやうどんと言いつつ、その実態は、こんにゃく麺に近い</span>ということです。</p><br /> <p>このため、ラーメンやうどんと銘打っているにもかかわらず、<br /> <b>含まれている炭水化物は少量</b>で、質の良い睡眠の妨げになりません。</p><br /> <p>しかも、こんにゃくですから、適度な満腹感も味わえるし、しかも食物繊維も摂取できます。</p><br /> <p>ちなみに、ぼくは、このなかでは<a href="http://www.ramencan.net/?pid=5195936">&#x30AB;&#x30EC;&#x30FC;&#x3046;&#x3069;&#x3093;&#x7F36;</a>が好きです。<br /> しかし、人によって好みが違いますから、まずは<a href="http://www.ramencan.net/?pid=5219393">&#x30E9;&#x30FC;&#x30E1;&#x30F3;&#x7F36;&#x30FB;&#x3046;&#x3069;&#x3093;&#x7F36;&#x304A;&#x697D;&#x3057;&#x307F;A&#x30BB;&#x30C3;&#x30C8;</a>や<a href="http://www.ramencan.net/?pid=5865552">&#x30E9;&#x30FC;&#x30E1;&#x30F3;&#x7F36;&#x30FB;&#x3046;&#x3069;&#x3093;&#x7F36;&#x304A;&#x697D;&#x3057;&#x307F;B&#x30BB;&#x30C3;&#x30C8;</a>で、一通り試してみて、自分の好みの味を見つけるのがいいかもしれません。</p><br /> <p>あと、メタボが気になる方は、とくに低カロリーのものをセットにした<a href="http://www.ramencan.net/?pid=5865552">&#x5473;&#x8272;&#x3005;&#x304A;&#x697D;&#x3057;&#x307F;&#x30C0;&#x30A4;&#x30A8;&#x30C3;&#x30C8;&#x30BB;&#x30C3;&#x30C8;</a>という手もあります。</p><br /> <p>このラーメン缶・うどん缶は、今までに3334880缶が売れているとのことですが、ラーメン缶の公式サイトでは、何ケースもまとめ買いしていく人が多いそうです。どうも、ダイエット目的っぽいですね。</p><br /> <p><b style='color:red'>注意!</b><br /> はっきり言って、これらは、「すごく旨い」というようなものでもありません。<br /> 味だけでいうなら、市販のカップ麺の方がおいしいものが多いです。<br /> しかし、<b>睡眠の質と、ジャンクフードを食べたいという欲求を両立させるという一点において</b>、このシリーズには価値があるわけです。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>総合ミネラル・ビタミン剤を常備する</h4> <p><br /> 最高の体調にするためには、バランスのよい食事が大切ですが、それには手間もお金もかかります。<br /> だから、<br /> <span style='font-size:170%;'>バランスのよい食事というのは、金と時間を節約したい人間には向きません</span>。</p><br /> <p>そういう人間は、積極的にビタミン剤を摂取すべきではないでしょうか。</p><br /> <p>もちろん、ビタミン剤だけでは補正できない食事の偏りというものはあります。<br /> たとえば、糖質、脂質、タンパク質、食物繊維については、ビタミン剤だけでは補いきれません。<br /> したがって、これらのバランスは、避けて通ることができません。</p><br /> <p>しかし一方で、ビタミンについては、ビタミン剤でけっこう補うことができます。</p><br /> <p>よく、ビタミンCの錠剤や、ビタミンBコンプレックスの錠剤が売られていますが、どのビタミンをどのくらい摂取するのがよいかの知識がない方は、総合ビタミン剤の方が良いのではないかと思います。<br /> <b>ビタミンはそれが不足しているときに摂取すると効果が確実で、しかも副作用の心配がほとんどない</b>からです。<br /> ですから、多様なビタミンをバランスよく含む総合ビタミン剤を摂取すると、どれが足りないか正確には分からなくても、絨毯爆撃的に、不足が補えるのではないかと思います。</p><br /> <p>ビタミンを必要摂取量をはるかに超える大量摂取すると、薬理作用があるということも報告されていますが、一方で、大量摂取の副作用が起きることもあります。脂溶性ビタミンは蓄積するので過剰摂取が危険だけど、水溶性ビタミンはすぐに排泄されてしまうので過剰摂取の害は少ない、などということを言う人もいますが、実際には水溶性ビタミンであっても、大量摂取すると副作用が起こることがあります(ビタミンの種類による。また、量にもよる。)。</p><br /> <p>こういう事情があるので、その辺の知識のない人が自分の判断でビタミンの大量摂取をすると、本来摂取すべきでないものを大量に摂取してしまう恐れがあります。</p><br /> <p>これは、ミネラルについても同様です。亜鉛や鉄やカルシウムなど、特定のミネラル剤だけ摂取するよりも、多様なミネラルを含む総合ミネラル剤を摂取する方が危険が少ないと思います。</p><br /> <p>ただし、総合ミネラル剤と総合ビタミン剤の両方を摂取するのは、めんどうです。<br /> そこで、一発で多様なミネラルとビタミンを同時に取れる総合ビタミン・ミネラル剤があります。</p><br /> <p><a href="http://www.vrp.com/ProductPage.aspx?ProdID=3234">VRP&#x306E;&#x7DCF;&#x5408;&#x30D3;&#x30BF;&#x30DF;&#x30F3;&#x30FB;&#x30DF;&#x30CD;&#x30E9;&#x30EB;&#x5264;&#x306E;Extend Ultra</a>は、かなりマイナーなビタミンやミネラルまで、合計42種類のビタミン・ミネラル等の微量栄養素を一度に摂取できるので便利です。<a href="#f-6ede2ea6" name="fn-6ede2ea6" title="ただし、Extend Ultraは、成分表示を見ても分かるとおり、これは、単に不足分のビタミン・ミネラルを補う、というコンセプトのものではありません。多くのビタミンが、1日の必要摂取量を下回る量しか入っていない一方で、一日の必要量の何十倍もの量が入っているビタミンもあります。通常は不足しないビタミン・ミネラルは微量で、大量摂取による薬理作用があるものは、副作用とのバランスを計算した量に調整されています。">*5</a></p><br /> <p>しかしながら、このExtend Ultraには、DMAEなどの脳を活性化させる成分まで含まれています。このため、この総合ビタミン剤はどちらかというと、朝や昼向きです。</p><br /> <p>ですので、私は、夕食後は通常の総合ビタミン剤と<a href="http://www.vrp.com/ProductPage.aspx?ProdID=1841">Advanced Essential Minerals</a>を摂取するようにしています。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>野菜ミックスジュースの大パックを常備する</h4> <p><br /> 一度に42種類のビタミン・ミネラルを摂取できるExtend Ultraといえども、それだけでは十分な栄養素が摂取できているとは言えません。自然の野菜の中には、多様な微量栄養素が含まれており、それらが不足すると体調に悪影響を与える可能性があるからです。</p><br /> <p>そこで、総合ビタミン・ミネラル剤に加え、たくさんの種類の野菜の入っている野菜ミックスジュースの大パックを常備しておいて、食事時、もしくは食後に飲むようにします。その野菜ミックスジュースで総合ビタミン・ミネラル剤を飲み下すようにしてもよいでしょう。</p><br /> <p>ただし、<a href="http://www3.ocn.ne.jp/~koguma/syokuji/syokmemo/3.htm">&#x5E02;&#x8CA9;&#x306E;&#x91CE;&#x83DC;&#x30B8;&#x30E5;&#x30FC;&#x30B9;&#x306E;&#x591A;&#x304F;&#x306F;&#x3001;&#x91CE;&#x83DC;&#x3092;&#x751F;&#x3067;&#x98DF;&#x3079;&#x308B;&#x307B;&#x3069;&#x306E;&#x6804;&#x990A;&#x306F;&#x306A;&#x3044;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x6307;&#x6458;&#x3082;&#x3042;&#x308A;&#x307E;&#x3059;</a>ので、注意が必要です。</p> <blockquote> <p>野菜を生で食べて摂取できる栄養成分と、野菜ジュースで摂取できる栄養成分 はバランスが違い、野菜ジュースは栄養成分が少なめという結果でした。 特に食物繊維やミネラルなどの含有量が少なく、パッケージに表示してある 緑黄色野菜に相当する量の栄養成分が含まれているとは言い難い商品が 多かったそうです。</p> </blockquote> </div> <div class="section"> <h4>寝る前にはカフェインをとらない</h4> <p><br /> 夕方以降にカフェインを摂取すると、眠りの質が悪くなるので、避けた方が良いです。<br /> 体質によっては、カフェイン摂取は午前中だけで、午後のカフェイン摂取は控えた方がよい人もいるかと思います。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>その他</h4> <p>夕食に関しては、だいたいこんなところですが、熟睡するためには、これ以外にも以下のようなことが効果的です。</p><br /> <p>●枕で一番重要なのは、微妙な高さの調節。枕の下にバスタオルを折りたたんで重ね、絶妙な高さに調節しておく。具体的なやり方は、<a href="http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2008q1/20080206.html">&#x305F;&#x3081;&#x3057;&#x3066;&#x30AC;&#x30C3;&#x30C6;&#x30F3;&#x306E;&#x3053;&#x3061;&#x3089;&#x306E;&#x8A18;&#x4E8B;</a>。<a href="http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2008q2/20080521.html">&#x3053;&#x3061;&#x3089;&#x306E;&#x30D5;&#x30A9;&#x30ED;&#x30FC;&#x8A18;&#x4E8B;</a>も重要。</p><br /> <p>●敷き布団やマットレスが柔らかすぎると、寝返りが打ちにくく、眠りの質が悪くなる。適度な堅さの敷き布団で眠るようにする。できれば、マットレスは使わない。</p><br /> <p>●寝る3〜4時間前に、ジョギングなど、深部体温を高める運動をしておく。すると、就寝中ゆっくりと深部体温が下がっていき、睡眠の質が良くなる。</p><br /> <p>●シャワーだけで済ませず、ちゃんと浴槽に浸かって、十分に身体を温める。そして、十分に暖まったら、冷水のシャワーを浴び、身体の表面温度を下げる。これは就寝中にゆっくり深部体温を下げるのに効果があり、熟睡につながる。<br /> 追記:<a href="http://blog.hatena.ne.jp/ssuguru/">id:ssuguru</a>氏より指摘あり:「はなまるマーケットによると、夏は浴槽につかると深部体温が高くなりすぎてしまうのでシャワーの方が良いそうです。右記ページ中段あたりをご覧下さい。 <a href="http://www.tbs.co.jp/hanamaru/tokumaru/t080612.html">http://www.tbs.co.jp/hanamaru/tokumaru/t080612.html</a>」</p><br /> <br /> <p>●夕方以降は、蛍光灯の白い光は浴びないようにする。電球色の灯りを、足元から間接照明で照らすようにしておくのが、熟睡には効果的。(これは我々の祖先が洞窟で暮らし、夜中に足元のたき火を眺める生活をしていたころに形成されたバイオリズムの名残か?)</p><br /> <p>●寝室には、テレビ、パソコン、携帯電話などの、刺激物はできるだけ持ち込まない。</p><br /> <p>●寝る3時間前には、パソコンや携帯電話などのメディアは使わない。基本的に寝る3時間前は、積極的に仕事などはせず、リラックスして過ごすのが理想。</p><br /> <p>●早めに寝る。就寝時間を少しずつ前にずらしていくとよい。</p><br /> <p>●体内時計を整える。具体的なやり方は、<a href="http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2006q2/20060426.html">&#x305F;&#x3081;&#x3057;&#x3066;&#x30AC;&#x30C3;&#x30C6;&#x30F3;&#x306E;&#x3053;&#x3061;&#x3089;&#x306E;&#x8A18;&#x4E8B;</a></p><p></p> </div> <div class="section"> <h4>追記</h4> <p><br /> 一般に、寝る前の大量の飲酒は、睡眠の質を悪くすると言われています。<br /> ただ、私は睡眠に影響するほどたくさんのお酒を飲むことがほとんどないため、当事者感覚が無く、この記事ではふれていません。<br /> お酒と睡眠の関係については、「当事者」の方が記事に書いていただけると幸いです。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-1b285bc6" name="f-1b285bc6" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もっと言うと、成長ホルモンは<a href="http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/html/medical/endocrine/node11.html">&#x300C;&#x7279;&#x306B;&#x4F4E;&#x8840;&#x7CD6;&#x306B;&#x53CD;&#x5FDC;&#x3057;&#x3066;&#x5206;&#x6CCC;&#x304C;&#x4EA2;&#x9032;&#x3059;&#x308B;&#x300D;</a>ようです。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-c66fe37f" name="f-c66fe37f" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ブクマコメの指摘により、納豆の賞味期限についての記述を削除</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-8b5cb5cb" name="f-8b5cb5cb" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">なぜオリーブ油でなければならないかというと、オリーブ油の主成分がオメガ9のオレイン酸という脂肪酸だからです。店で売っている植物性油の多くの主成分は、リノール酸などのオメガ6なのですが、現在の日本では、オメガ6の過剰摂取による健康被害が心配されています。オメガ6は極力避けるにこしたことはありません。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-6ae0542f" name="f-6ae0542f" class="footnote-number">*4</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">オメガ3とオメガ6の脂肪酸は、細胞を形作る重要な物質であり、かつ、体内でのプロスタグランジン産生を左右する重要な物質ですが、人間が体内で合成できない(進化の途上で、それらを合成する酵素を失った)ため、それらは必須脂肪酸と呼ばれ、それらの摂取は重要なのですが、<a href="http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2a.html">&#x539A;&#x751F;&#x52B4;&#x50CD;&#x7701;&#x3082;&#x98DF;&#x4E8B;&#x6442;&#x53D6;&#x57FA;&#x6E96;&#x3092;&#x767A;&#x8868;&#x3057;&#x3066;&#x3044;&#x308B;</a>ように、日本人の場合、オメガ6を過剰摂取している一方で、オメガ3の摂取が不足しており、これらが、体内のプロスタグランジンバランスの崩れを引き起こし、アレルギーや生活習慣病などの原因の一つになっている可能性を指摘されています。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-6ede2ea6" name="f-6ede2ea6" class="footnote-number">*5</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ただし、Extend Ultraは、成分表示を見ても分かるとおり、これは、単に不足分のビタミン・ミネラルを補う、というコンセプトのものではありません。多くのビタミンが、1日の必要摂取量を下回る量しか入っていない一方で、一日の必要量の何十倍もの量が入っているビタミンもあります。通常は不足しないビタミン・ミネラルは微量で、大量摂取による薬理作用があるものは、副作用とのバランスを計算した量に調整されています。</span></p> </div> fromdusktildawn 「人間の少女には心がある」のと同じ意味で「二次元のアニメ美少女にも心がある」かもしれないよ hatenablog://entry/10257846132601980002 2008-04-22T00:00:00+09:00 2018-08-08T12:59:42+09:00 <p></p><br /> <p>「<span style='font-size:170%;'>あなたの気持ちは、痛いほどよく分かります</span>。」<br /> と言いながら、<br /> <span style='font-size:170%;'>とんでもなく見当違いの同情</span><br /> をしてくれる方がいらっしゃいます。</p><br /> <p>その方は、オイラがどのように傷つき、怒り、憎み、<br /> 恐れ、深い悲しみにうちふるえているかを、せつせつと語るんですが、<br /> 一から十までピントがズレまくっていたりします。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>オレは確かに苦しんでいるが、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>そんな<span style='color:red;'>激しくどうでもいいこと</span>で</span><br /> <span style='font-size:170%;'>苦しんでるわけじゃないんだよ。</span></p><br /> <p>その人が「痛いほどよく分かる」というオレの喜怒哀楽は、<br /> フィクションであって、実在するオレの喜怒哀楽とは全くの別物なんですよ。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>唯一ノンフィクションだと言い切れるのは自分の感情や<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A2">&#x30AF;&#x30AA;&#x30EA;&#x30A2;</a>だけ</span>です。<br /> 自分は「苦しんでいる自分」を直接感じることができる。<br /> 自分は、自分の感覚の中で起こっていることと同じことが<br /> 他人の中でも起こっているに違いないと「想像」しているだけです。<br /> 自分は、他人の中で起こっている感情やクオリアを直接感じているわけじゃない。</p><br /> <p>この意味においては、<br /> <span style='font-size:170%;color:red'>いかなる他人の感情も、想像の産物=フィクション</span>である可能性を否定できません。<br /> 「目の前の人間の中でも、自分の中で起こっているのと同じような<br /> 感情反応が起こっているに違いない」というふうに、<br /> 他人を「擬人化」しているだけなんです。</p><br /> <p>もっと正確に言うと、これは「擬人化」というより「擬私化」です。<br /> 他人の中でも、自分の中の感情反応と同じようなことが起こっているに違いないと、「私」に擬して理解しているからです。<a href="#f-16a1f3f2" name="fn-16a1f3f2" title="もちろん、この辺の元ネタは大森さんなのですが、そもそもオイラは大森さんが何を言いたかったか正確に理解していると自信を持って言えるほど大森さんの本を読み込んでないし、下手に言及すると「大森さんが言いたかったのはそんなことではない!」という話になって、この記事で扱いたいネタと別のところが盛り上がっちゃってノイズになりますので、この記事はあくまで別ネタとして読んでください。正確な大森哲学の解釈については、哲学研究の専門家の方がお好きに議論していただければいいのではないかな。">*1</a></p><br /> <p>人間の中で起こっている分子化学的な反応プロセスを無限に精密に調べても、<br /> どこにも感情やクオリアそのものは見つからない。<br /> それを詳しく調べれば調べるほど、人間というのは、タンパク質等の分子を組み立てて作り上げた<br /> 極めて精密なバイオロボットでしかなく、<br /> その中で起こっているのは、単なる分子的電気的連鎖反応プロセスに過ぎず、<br /> クオリアも感情もない<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%B2%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%83%93">&#x54F2;&#x5B66;&#x7684;&#x30BE;&#x30F3;&#x30D3;</a>しか見えてこない。</p><br /> <p>この意味で、木や岩に心が宿っていると信じているパプアニューギニアの部族の人々を、<br /> 単なる迷信と切って捨てることはできません。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>パプアニューギニアの部族の人々が</span><br /> <span style='font-size:170%;'>「その大木には心がある」という信仰と、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>我々現代日本人が</span><br /> <span style='font-size:170%;'>「自分以外の人間にも心がある」という信仰は、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>本質的に同じもの</span><br /> だからです。</p><br /> <p>もし、他人に感情やクオリアがあるということを認めるなら、<br /> 森や湖に感情やクオリアがあるということだって、認めなければなりません。<a href="#f-2632c86c" name="fn-2632c86c" title="人間に感情やクオリアが発生するときに測定される、脳神経の電気的分子的な諸現象が、森や湖では起こっていないではないか、という議論については、物理的な諸現象とシンクロしない感情やクオリアが存在しないとは言えない、と言う点を考えるべきだろう。">*2</a></p><br /> <p>未開の部族の人々が森や湖を擬人化するように、われわれは他人を擬人化しているのですから。</p><br /> <p>そして、この擬人化、いや「擬私化」は、木や石や仏像や人間のように、リアルな実体のあるものばかりに対してだけ行われるわけではありません。<br /> 目に見えぬ精霊にも、哀しみ苦しみや恨みや憎しみがあると信じる人々は、この惑星上にはまだ何億人もいます。<br /> もしかしたら、彼らの方が多数派かもしれないくらいです。</p><br /> <p>そして、その目に見えぬ精霊の感情やクオリアを信じるなら、<br /> 二次元美少女の感情やクオリアを信じるのも同じことです。</p><br /> <p>自分の感情とクオリアだけが唯一のノンフィクションなのであって、<br /> それ以外の全ての感情とクオリアは想像の産物=フィクションでしかないのだから、<br /> 二次元美少女の感情とクオリアも、想像の産物でしかないという点では、等価でしょう。</p><br /> <p>そもそもすべての他人が、感情もクオリアも持たない哲学的ゾンビである可能性は否定できないという観点からは、三次元の少女が暴行されて苦しんだかどうかは、原理的に確かめようがありません。それは精密なバイオロボットの分子的反応の集積にすぎないという可能性が否定できないからです。単にわれわれが、そう感じ、そう信じたに過ぎないとしか言いようがなくなってしまいます。</p><br /> <p>しかしながら、われわれの生活している社会では、そんな主張は全く通りません。<br /> 法的にも、倫理的にも、人間の感情的にも、三次元の少女への暴行は重大な犯罪であり、二次元美少女への暴行は、さしたる重大事ではありません。<br /> なぜそうなっているかというと、その法体系や倫理体系を造り、支持している人間たちが、「他人は哲学的ゾンビではない」という根拠のない信仰、そして、「二次元美少女には感情やクオリアはない」という根拠のない信仰を抱いているからです。</p><br /> <p>それらはどちらも「信仰」でしかありません。<br /> だから、もし、二次元美少女の感情やクオリアの実在を「信仰」しているアニオタがいたとしたとしても、それは単なる「信仰」の違いでしかないとしか言えません。</p><br /> <p>ここで、アニメはフィクションであり、いくらでも物語を書き換えられるから、現実の少女とは別物だ、というロジックは通用しないように思います。</p><br /> <p>第一に、たとえ物語を書き換えたとしても、あるアニオタが感情とクオリアの実在を信じた二次元美少女が住んでいるのは「そのアニオタの記憶の中に存在する元の物語」だから、原作者がいくらストーリーを書き換えようが、「そのアニオタの記憶の中に存在する元の物語」が書き換わるわけではありません。</p><br /> <p>第二に、そもそも他人が感情もクオリアも持たない哲学的ゾンビであるのなら、三次元の少女は感情を持たない単なるバイオロボットに過ぎないことになるので、二次元美少女への暴行が許されるのと同じ意味で、三次元の少女への暴行も許されるという話になってしまいます。</p><br /> <p>しかし、幸いにも、他人の感情やクオリアの実在を「信仰」し、二次元美少女の感情やクオリアの実在を否定する人間は、現代日本社会では圧倒的多数派であり、しかも社会のあらゆる権力を握っています。</p><br /> <p>だから、われわれは数の暴力と圧倒的な権力によって、少数派の「異教徒」の信仰を全面否定し、われわれの「信仰」を唯一の絶対正義として少数派に押しつけることができます。</p><br /> <p>これこそが、我々の住む社会において、三次元の少女への暴行は絶対的に許されず、二次元美少女への暴行<a href="#f-3b42a594" name="fn-3b42a594" title="たとえば、その二次元美少女の人格を持つ人工知能プログラムを作って、それをゲームとして実装する。その美少女と等身大のリアルな人形をインタフェースに使って、その少女が自分の言うことに絶対服従するようになるまでぶん殴り続けるゲームとか。その人工知能の少女が自分に逆らうたびに殴り、その少女が悲鳴を上げる。だんだん、その少女が怯えるようになってきて、最後には自分の言うことに絶対服従するようになる、という吐き気がするような悪趣味なゲームだって、想定できる。">*3</a>が許されている理由なのではないでしょうか。<a href="#f-fb4d3902" name="fn-fb4d3902" title="追記:別な言い方をすれば、「人権」もしくはそれに類した権利や尊重は、「対象物に心が存在するかどうか」という客観的事実ではなく、「多数派が対象物に心が存在すると思うかどうか」という共有化された主観(http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060905/1157412736)に大きく影響を受けているという構造があるということです。(なので、『「人権の根拠は心(人格)である」という暗黙の前提を置いている』というブクマコメは誤読。むしろ、そのような暗黙の前提をおくことはできない、ということを書いているテキスト。) ただし、それはあくまでグラデーションであって、たとえば動物に心があると考える人は多いでしょうが、動物を虐待しても、人間を虐待するのと同じくらい罪であるとは(多数派の)人々は考えません。しかし、動物を虐待することは道徳的に悪だと考える人間が多数派です。">*4</a></p><br /> <br /> <p>これが、現代日本においては、たとえ二次元美少女への暴行が法律によって処罰されることがあったとしても、あくまでそれは、その二次元美少女という「実在の感情やクオリアを持った存在」が被害を受けたためではなく、公序良俗に反するとか、あくまで三次元の実在する人間への悪影響から法律によって規制されるに過ぎないという状態が存在している理由なのではないでしょうか。<br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>関連エントリ</h4> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070204/1170557201">&#x610F;&#x8B58;&#x306E;&#x8B0E;&#x3092;&#x89E3;&#x3044;&#x3066;&#x307F;&#x307E;&#x3057;&#x305F;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070204/1170557201" alt=""></p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-16a1f3f2" name="f-16a1f3f2" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、この辺の元ネタは大森さんなのですが、そもそもオイラは大森さんが何を言いたかったか正確に理解していると自信を持って言えるほど大森さんの本を読み込んでないし、下手に言及すると「大森さんが言いたかったのはそんなことではない!」という話になって、この記事で扱いたいネタと別のところが盛り上がっちゃってノイズになりますので、この記事はあくまで別ネタとして読んでください。正確な大森哲学の解釈については、哲学研究の専門家の方がお好きに議論していただければいいのではないかな。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-2632c86c" name="f-2632c86c" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">人間に感情やクオリアが発生するときに測定される、脳神経の電気的分子的な諸現象が、森や湖では起こっていないではないか、という議論については、物理的な諸現象とシンクロしない感情やクオリアが存在しないとは言えない、と言う点を考えるべきだろう。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-3b42a594" name="f-3b42a594" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">たとえば、その二次元美少女の人格を持つ人工知能プログラムを作って、それをゲームとして実装する。その美少女と等身大のリアルな人形をインタフェースに使って、その少女が自分の言うことに絶対服従するようになるまでぶん殴り続けるゲームとか。その人工知能の少女が自分に逆らうたびに殴り、その少女が悲鳴を上げる。だんだん、その少女が怯えるようになってきて、最後には自分の言うことに絶対服従するようになる、という吐き気がするような悪趣味なゲームだって、想定できる。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-fb4d3902" name="f-fb4d3902" class="footnote-number">*4</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">追記:別な言い方をすれば、「人権」もしくはそれに類した権利や尊重は、「対象物に心が存在するかどうか」という客観的事実ではなく、「多数派が対象物に心が存在すると思うかどうか」という共有化された主観(<a href="http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060905/1157412736">http://fromdusktildawn.g.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060905/1157412736</a>)に大きく影響を受けているという構造があるということです。(なので、『「人権の根拠は心(人格)である」という暗黙の前提を置いている』というブクマコメは誤読。むしろ、そのような暗黙の前提をおくことはできない、ということを書いているテキスト。) ただし、それはあくまでグラデーションであって、たとえば動物に心があると考える人は多いでしょうが、動物を虐待しても、人間を虐待するのと同じくらい罪であるとは(多数派の)人々は考えません。しかし、動物を虐待することは道徳的に悪だと考える人間が多数派です。</span></p> </div> fromdusktildawn 単なるプロフェッショナルを超える、「感動を生む仕事」をする人の13の特徴 hatenablog://entry/10257846132601980007 2008-04-20T00:00:00+09:00 2018-07-23T12:10:10+09:00 本物のプロフェッショナルというのは、とても有能で、頼りになる。 知識があり、スキルがあり、責任感があり、決断力があり、前向きで、建設的で、戦略的で、実用的で、結果を出す。 しかし、ただそれだけだ。 プロフェッショナルになるための努力をいくら積み重ねても、 「感動を生む仕事」ができるようになるとは限らない。 「感動を生む仕事」をする人というのは、 アマとプロを結んだ直線の延長線上にはない。 「感動を生む仕事」をする人というのは、 頭がいいとか、知識があるとか、センスがいいとか、責任感があるとか、 そういうことじゃないんだ。 そういう「感動を生む仕事をする人」にはいくつかのタイプがあるが、その一つ… <div class="seemore"> <p><br /> 本物のプロフェッショナルというのは、とても有能で、頼りになる。<br /> 知識があり、スキルがあり、責任感があり、決断力があり、前向きで、建設的で、戦略的で、実用的で、結果を出す。</p><br /> <p>しかし、ただそれだけだ。</p><br /> <p>プロフェッショナルになるための努力をいくら積み重ねても、<br /> 「感動を生む仕事」ができるようになるとは限らない。</p><br /> <p>「感動を生む仕事」をする人というのは、<br /> アマとプロを結んだ直線の延長線上にはない。</p><br /> <p>「感動を生む仕事」をする人というのは、<br /> 頭がいいとか、知識があるとか、センスがいいとか、責任感があるとか、<br /> そういうことじゃないんだ。</p><br /> <p>そういう「感動を生む仕事をする人」にはいくつかのタイプがあるが、その一つのタイプの特徴を、以下に列挙してみた。</p><p><table> <tr> <th><br /> アマ</th> <th><br /> プロ</th> <th><br /> 感動を生む仕事をする人</th> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 1. 現状に甘える</td> <td nowrap><br /> 1. 人間的成長を求め続ける</td> <td><br /> 1. 人間と社会に対する容赦のない洞察を積み重ね、結果として人間的に成長する</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 2. ぐちっぽい</td> <td nowrap><br /> 2. 自信と誇り</td> <td><br /> 2. 自信や誇りにとらわれず、現実をありのままに直視する</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 3. 目標が漠然としている</td> <td nowrap><br /> 3. 常に明確な目標を指向</td> <td><br /> 3. 目標よりも目的にこだわり、より本質的な目的とは何か?と問い直し続ける</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 4. 自分が傷つく事は回避する</td> <td nowrap><br /> 4. 他人の幸せに役立つ喜び</td> <td><br /> 4. 人々の幸せとは何か?役立つとは何か?について洞察を重ね、より本質的なレベルでの幸せを追求する</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 5. 経験に生きる</td> <td nowrap><br /> 5. 可能性に挑戦し続ける</td> <td><br /> 5. 目の前の可能性に安易に飛びつかず、より優先して挑戦すべき可能性を見極めて挑戦する</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 6. 不信が先にある</td> <td nowrap><br /> 6. 思い信じ込むことができる</td> <td><br /> 6. それが仮説でしかないことを骨の髄まで自覚しながら、渾身の一撃を打ち込む</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 7. 気まぐれ</td> <td nowrap><br /> 7. 自己訓練を習慣化</td> <td><br /> 7. 生きる姿勢が優れているために、自然体の行動が、結果として高度な自己鍛錬になっている</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 8. 時間の観念がない</td> <td nowrap><br /> 8. 時間を有効に習慣化</td> <td><br /> 8. 無理のない自然体の行動が、結果として、高いレベルで最適化されている</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 9. 失敗を恐れる</td> <td nowrap><br /> 9. 成功し続ける</td> <td><br /> 9. 単なる成功ではなく、成功の質にこだわる</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 10. 享楽的資金優先</td> <td nowrap><br /> 10. 自己投資を続ける</td> <td><br /> 10. 気の向くまま自然に行動しているが、結果として効率のよい自己投資になっている</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 11. 途中で投げ出す</td> <td nowrap><br /> 11. 使命を持つ</td> <td><br /> 11. 使命に縛られずに、その時々で、最も意味のあることを成し遂げようとする</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 12. できない言い訳が口に出る</td> <td nowrap><br /> 12. 出来る方法を考える</td> <td><br /> 12. そもそもの目的を問い直し、「出来る方法を考える」必要自体を無くしてしまう方法を考える</td> </tr> <tr> <td nowrap><br /> 13. 他人のシナリオが気になる</td> <td nowrap><br /> 13. 自分のシナリオを書く</td> <td><br /> 13. 大木の枝のように広がる、無数に分岐するシナリオが絡み合う森が、脳の中でダイナミックに組み変わりながら蠢いている</td> </tr> </table></p><br /> <p>「感動を生む仕事をする人」たちは、一人一人固有の宇宙を持っていて、その宇宙で仕事をする。<br /> それは、我々の住んでいる宇宙とは異なる物理法則に支配された異次元空間で、<br /> 我々一般人の目から見ると、ときにそれは「狂気」に見える。</p><br /> <p>プロフェッショナルになる努力をいくら積み重ねても、「感動を生む仕事をする人」にはなれない。方向性が違うのだ。</p><p>「感動を生む仕事をする人」になるには、単なる努力ではなく、生き方のスタンスそのものを変えなければならない。<br /> 逆に、生き方のスタンスさえ確立してしまえば、もはや努力など必要がなくなる。あとは、自然体で行動するだけで、それが高度な自己鍛錬になり、効率の良い自己投資になり、最小のコストで最大の成果をもたらすようになる。</p><br /> <p>ちなみに、上の表で「本質」という言葉が何度も出てきましたが、<a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20051208/1134004985">&#x672C;&#x5287;&#x5834;&#x306E;&#x4E00;&#x756A;&#x6700;&#x521D;&#x306E;&#x30A8;&#x30F3;&#x30C8;&#x30EA;</a>は、「本質」の本質についての考察となっております。</p><br /> <p>inspired by<br /> <a href="http://lifehacking.jp/2008/04/difference-of-pro-and-amatuer/">&#x5BB4;&#x306E;&#x652F;&#x5EA6; (3) &#x5C0F;&#x3055;&#x306A;&#x5909;&#x5316;&#x304B;&#x3089;&#x3059;&#x3079;&#x3066;&#x306F;&#x59CB;&#x307E;&#x308B;&#x3002;&#x300C;&#x30D7;&#x30ED;&#x300D;&#x3068;&#x300C;&#x30A2;&#x30DE;&#x300D;&#x306E;&#xFF11;&#xFF13;&#x306E;&#x9055;&#x3044;</a></p> </div> fromdusktildawn 「自分を飛躍的に成長させる状況」と「自分が潰されてしまう状況」の見分け方 hatenablog://entry/10257846132601980015 2008-04-17T00:00:00+09:00 2018-08-08T13:00:40+09:00 「今が、戦うべき時なのか、逃げるべき時なのか」 この見極めができるかどうかで、 人生のかなりの部分が決まってしまいます。 <p><br /> <span style='font-size:170%;'>「今が、戦うべき時なのか、逃げるべき時なのか」</span><br /> <span style='font-size:170%;'>この見極めができるかどうかで、</span><br /> <span style='font-size:170%;'><span style='color:red'>人生のかなりの部分が決まって</span>しまいます。</span></p><br /> <p>自分を飛躍的に成長させるチャンスなのに、<br /> それが災厄だと思いこんでそこから逃げ出してしまうと、<br /> 手を伸ばしさえすれば掴めた、きらめく未来はこぼれて、四散してしまいます。</p><br /> <p>逆に、いますぐ逃げ出さなきゃならない最悪の状況なのに、<br /> そこにとどまって無理に無理を重ねて鬱病になると<br /> あなたの未来は、腐って腐臭を放ち始めます。</p><br /> <p>その状況が、チャンスなのか、災厄なのかを決定づける要素として一番重要なのが、次の二つのバランスです。</p><br /> <p>(1)責任<br /> (2)権限</p><br /> <p>たとえば「あるWebサービスを半年以内に黒字化してくれ」と言われたとします。<br /> これは(1)責任に相当します。<br /> この責任を引き受けるべきかどうかは、その責任を全うするための十分な(2)権限が与えられるかどうかで決まります。</p><br /> <p>このWebサービスを半年以内に黒字化するのに必要な予算、人員、各種裁量権が与えられていれば、これは自分を成長させるチャンスです。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060301/1141182389">&#x4EBA;&#x304C;&#x52AA;&#x529B;&#x306B;&#x3088;&#x3063;&#x3066;&#x30DD;&#x30B8;&#x30B7;&#x30E7;&#x30F3;&#x306B;&#x3075;&#x3055;&#x308F;&#x3057;&#x3044;&#x4EBA;&#x9593;&#x306B;&#x306A;&#x308B;&#x3053;&#x3068;&#x306F;&#x307B;&#x3068;&#x3093;&#x3069;&#x306A;&#x304F;&#x3001;&#x9006;&#x306B;&#x30DD;&#x30B8;&#x30B7;&#x30E7;&#x30F3;&#x306E;&#x65B9;&#x304C;&#x4EBA;&#x3092;&#x80B2;&#x3066;&#x308B;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x73FE;&#x5B9F;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060301/1141182389" alt="">があるからです。</p><br /> <p>しかし、それらの権限が与えられていなければ、これは無理難題です。<br /> たとえば、最低でも中堅プログラマ2人が必要なのに、三流プログラマ1人しか与えられないのであれば、成功するはずがありません。</p><br /> <p>なのに、<br /> <span style='font-size:170%;color:red;'>無理難題を押しつけられたのに気づかずに</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red;'>必死で努力しても、無理なものは無理</span><br /> ですから、そのプロジェクトは必然的に失敗し、しかもその失敗の責任を負わされ、ダメ人間のレッテルを貼られ、無能な人間として扱われることになります。</p><br /> <p>それどころか、無理なものを安易に引き受けて失敗すると、自分だけでなく、周囲の人全員に被害が及び、みんなが迷惑します。</p><br /> <p>もちろん、上司は責任と権限のバランスを考えて部下に仕事を割り振るべきですが、とくに中小企業やベンチャーは慢性の中間管理職不足であるため、ろくな権限も与えないまま責任だけ押しつけるような無能な「なんちゃってマネージャ」がたくさんおり、この「責任権限バランス」がデタラメなことがよくあるのです。しかも、そういう無能な上司は自分が部下に与えた責任と権限のバランスが間違っていたことを、なかなか認めようとせず、失敗の責任を部下に押しつける傾向にあります。</p><br /> <p>このような被害に会わないためには、責任を引き受けるときには、必ず、その責任に見合った権限が与えられていることを確認しましょう。<br /> 口頭で確認するだけではあとで言った言わないで揉めますから、口頭で確認した後、そのとき決まったことを文章にして関係者にメールしておくべきでしょう。</p><br /> <p>もちろん、その責任を引き受ける段階では、まだ与えられる権限の詳細が決められないことも多いです。<br /> そして、あとからその責任を果たすのに必要な時間、予算、人員を決めるときに、それらが不十分であれば、<br /> 「これだけの時間、予算、人員では、その目標達成はボクには無理です。最低でも、これだけの人員をアサインしてください。もしくは、目標達成時期か、目標利益額を変更してください。」と、しつこく食い下がって、責任と権限のバランスが合うまで交渉を続けます。</p><br /> <p>このとき、「○○でないと出来ません。」という言い方をすると非建設的な交渉になりがちなので、あくまで「□□ならできます。」という建設的な持っていき方をするのがコツです。もちろん、相手の事情も鑑みて、双方が納得できる落としどころに持っていくように誘導します。</p><br /> <p>ここまでやっても、まだ上司が無理を言ってくるようなら、責任と権限のバランスが取れていないことを、上司の上司に訴えましょう。また、上司に影響を及ぼすことができそうな、できるだけ多くの関係者に根回しして回りましょう。<br /> そうやって、関係者全員が納得できる、無理のない責任権限バランスの落としどころを見つけましょう。</p><br /> <p>この交渉は、単に自己防衛のためだけに必要なのではありません。無理な仕事を安易に引き受けてデスマーチなどが引き起こされたら、自分だけでなく、部下も、上司も、顧客も、関係者全員に多大な被害を及ぼすことになります。だから、これは自己防衛戦と言うより、関係者全員を守るための戦いです。</p><br /> <p>そして、それらの努力にもかかわらず、どんなに交渉しても、責任と権限のバランスが見合うようにならないとしたら、交渉決裂です。<br /> その仕事は引き受けるべきではありません。その決断が、関係者全員の幸せにつながります。</p><br /> <p>また、責任に見合った権限もないのに、無理矢理責任だけ押しつけられたら、それは「逃げるべき時」です。<br /> 全力で転職の準備を始めましょう。</p><br /> <p>また、上司があとから自分の責任範囲を超えることを言ってきたら、基本的には断りましょう。どうしてもと言ってきた場合、それと引き替えにプロジェクトの締め切りを延ばしてもらったり、プロジェクトの達成目標を下げてもらったりするなど、バーターで何かもらいましょう。そして、無理をきいてあげたことを恩に感じるような雰囲気にもっていきましょう。</p><br /> <p>それから、ここでは、特に重要なファクターとして責任と権限のバランスに注目しましたが、実際には、それを引き受ける自分の能力や余力も考慮に入れるべきです。現在の自分の能力に見合わない責任は負うべきではありません。能力の高い人にとってのチャンスは、必ずしも現在の自分にとってのチャンスではありません。もっというと、現在の自分の能力より少しだけ高い責任を負うと、いちばん成長します。<br /> 余力についても同じです。余力のあるときにはチャンスとなることであっても、余力のない時に引き受けるとそれは災厄になります。<br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>追伸</h4> <p>「ウィンプは努力によってマッチョになることは出来るか?」という主旨の質問をうけましたので、回答しておきます。<br /> → 答えは「Yes」です。ただし、「努力」の内容によります。<br /> とくに、日々の細かい意思決定で「戦うべき時と逃げるべき時の区別」が苦もなく自然につけられるようになってくれば、言い訳する必要もなくなり、だんだんマッチョ化してきます。</p> </div> fromdusktildawn 14個の身も蓋もない仕事の法則 hatenablog://entry/10257846132601980026 2008-04-10T14:51:13+09:00 2018-11-19T19:41:10+09:00 「単なる知り合い」と「人脈」は全くの別物である。人脈とは、自分のことを高く評価してくれる権力者のことである。 20代の時にあちこちに恩を売りまくっておけ。そいつらはいろんな組織で成長して権力を握り、30代半ばには、強力な人脈になる。 自分とは違うタイプの優秀さを持った人間を「無能だ」と決めつけて切り捨てるのは、致命的な機会損失である。 客観的なビジネスプランはたいてい役に立たない。自分の熱い主観を企画書にぶち込め。 みんなの良い意見を集めても魅力的な企画にはならない。優れた企画は、たいてい誰かの個人作品である。 目下の人間にも、上司に対するのと同じだけ敬意を払い、「さん」付けで呼んでおけ。自分… <ul> <li>「単なる知り合い」と「人脈」は全くの別物である。人脈とは、自分のことを高く評価してくれる権力者のことである。</li> <li>20代の時にあちこちに恩を売りまくっておけ。そいつらはいろんな組織で成長して権力を握り、30代半ばには、強力な人脈になる。</li> <li>自分とは違うタイプの優秀さを持った人間を「無能だ」と決めつけて切り捨てるのは、致命的な機会損失である。</li> <li>客観的なビジネスプランはたいてい役に立たない。自分の熱い主観を企画書にぶち込め。</li> <li>みんなの良い意見を集めても魅力的な企画にはならない。優れた企画は、たいてい誰かの個人作品である。</li> <li>目下の人間にも、上司に対するのと同じだけ敬意を払い、「さん」付けで呼んでおけ。自分の部下を「君」付けで呼んでいると、そいつが抜擢されて自分の上司になったとき、「さん」で呼ばなければならなくなるという屈辱を味わうことになる。</li> <li>ほとんどの人は、建前ばかり並べて会議をするので、思考力が失われ、無難で退屈な結論にしかたどり着けない。</li> <li>プライドも建前もかなぐり捨て、身も蓋もない真実を徹底的に追いつめると、人々の感動を生むビジネスプランが出来上がる。</li> <li>魂を込めて濃い本を書くと、それは転職の時、強力な名刺として使える。</li> <li>ほとんどの人は「会社がお金を儲けること」へのこだわりが薄い。だから、「会社がお金を儲けること」にこだわって仕事すると、上司からも会社からも高く評価される。</li> <li>「ほとんどの人が疑わない常識」を疑うと、大量のビジネスアイデアがあふれてくる。</li> <li>「好きなことをやる」ことではなく、「やりたくないことをやらない」ことを優先しろ。</li> <li>講演をすると、ヘッドハントの手紙、メール、電話が来る。</li> <li>自分の欠点だと思っていることが、他人から見ると長所になることは意外に多い。たとえば「自分の意見をもたない」人が「他人と衝突しにくい」という点が評価されて、組織の長に抜擢されたケースがある。</li> </ul> <div class="section"> <h4>関連する仕事術エントリ</h4> <p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20061230/1167474130">&#x672A;&#x6765;&#x306E;&#x8EE2;&#x8077;&#x304C;&#x3001;&#x904E;&#x53BB;&#x306B;&#x3055;&#x304B;&#x306E;&#x307C;&#x3063;&#x3066;&#x73FE;&#x5728;&#x306E;&#x81EA;&#x5206;&#x3092;&#x6709;&#x80FD;&#x306B;&#x3059;&#x308B;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20061230/1167474130" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20060301/1141182389">&#x300C;&#x52AA;&#x529B;&#x3059;&#x308C;&#x3070;&#x30B9;&#x30AD;&#x30EB;&#x304C;&#x5411;&#x4E0A;&#x3057;&#x3066;&#x4E0A;&#x306B;&#x6607;&#x308C;&#x308B;&#x300D;&#x3068;&#x3044;&#x3046;&#x306E;&#x306F;&#x5E7B;&#x60F3;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20060301/1141182389" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20080420/p1">&#x5358;&#x306A;&#x308B;&#x30D7;&#x30ED;&#x30D5;&#x30A7;&#x30C3;&#x30B7;&#x30E7;&#x30CA;&#x30EB;&#x3092;&#x8D85;&#x3048;&#x308B;&#x3001;&#x300C;&#x611F;&#x52D5;&#x3092;&#x751F;&#x3080;&#x4ED5;&#x4E8B;&#x300D;&#x3092;&#x3059;&#x308B;&#x4EBA;&#x306E;&#xFF11;&#xFF13;&#x306E;&#x7279;&#x5FB4;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20080420/p1" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20060809/1155111327">&#xFF13;&#x5104;&#x5186;&#x3042;&#x3063;&#x3066;&#x3082;&#x697D;&#x3057;&#x304F;&#x306A;&#x308C;&#x306A;&#x3044;&#x7406;&#x7531;&#x306F;&#x3001;&#x5B50;&#x4F9B;&#x304C;&#x77E5;&#x3063;&#x3066;&#x3044;&#x308B;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20060809/1155111327" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20060329/1143595622">&#x300C;&#x3053;&#x306E;&#x4EBA;&#x7121;&#x80FD;&#x3060;&#x306A;&#x300D;&#x3068;&#x601D;&#x308F;&#x308C;&#x308B;&#x4EBA;&#x306E;&#xFF13;&#x3064;&#x306E;&#x7279;&#x5FB4;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20060329/1143595622" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20080302/1204438490">&#x3068;&#x304F;&#x306B;&#x597D;&#x304D;&#x306A;&#x4ED5;&#x4E8B;&#x3067;&#x306A;&#x304F;&#x3066;&#x3082;&#x3001;&#x3059;&#x3070;&#x3089;&#x3057;&#x3044;&#x5E78;&#x798F;&#x611F;&#x306B;&#x5305;&#x307E;&#x308C;&#x3066;&#x4ED5;&#x4E8B;&#x3092;&#x3059;&#x308B;&#x65B9;&#x6CD5;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20080302/1204438490" alt=""></p><p><a href="https://www.furomuda.com/entry/20080111/1200020891">&#x300C;&#x5730;&#x9053;&#x306A;&#x52AA;&#x529B;&#x300D;&#x3088;&#x308A;&#x3082;&#x3001;&#x306F;&#x308B;&#x304B;&#x306B;&#x4EBA;&#x751F;&#x3092;&#x597D;&#x8EE2;&#x3055;&#x305B;&#x308B;&#x52AA;&#x529B;&#x306E;&#x4ED5;&#x65B9;</a><img src="https://b.hatena.ne.jp/entry/image/large/https://www.furomuda.com/entry/20080111/1200020891" alt=""></p><br /> <br /> <br /> <br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>この劇場の管理人が管理人をやってるSNS</h4> <p><a href="http://sns.my-freedom.org/"><br /> http://sns.my-freedom.org/</a></p><p></p> </div> <div class="section"> <h4>この劇場の管理人のtwitter</h4> <p><a href="https://twitter.com/fromdusktildawn/"><br /> https://twitter.com/fromdusktildawn/</a></p> </div> fromdusktildawn 不運と理不尽に襲われたとき、うまく切り抜ける人と、逃げ切れずに酷い目に会う人の違い hatenablog://entry/10257846132601980033 2008-04-09T09:58:10+09:00 2018-07-17T14:18:05+09:00 不運と理不尽が襲ってきたときに、上手く対処できる人の多くは、不運と理不尽を食らい慣れている。 今までの人生で、あまりにも酷い不運と理不尽に徹底的に痛めつけられ続けてきたために、慣れっこになってしまっているのだ。 ベルセルクのガッツが理不尽なビンタを食らって、目に涙をためて「親父にもぶたれたことがないのに!」などと叫んで抗議するところが想像できるだろうか? <p><br /> 不運と理不尽が襲ってきたときに、上手く対処できる人の多くは、不運と理不尽を食らい慣れている。</p><br /> <p>今までの人生で、あまりにも酷い不運と理不尽に徹底的に痛めつけられ続けてきたために、慣れっこになってしまっているのだ。<br /> <a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%AF_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)">&#x30D9;&#x30EB;&#x30BB;&#x30EB;&#x30AF;</a>のガッツが理不尽なビンタを食らって、<b>目に涙をためて「親父にもぶたれたことがないのに!」</b>などと叫んで抗議するところが想像できるだろうか?</p><br /> <p>そういうタイプの人は、ドル箱商品や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FB%C6%C0%B8%A2%B1%D7">既得権益</a>を持たず、競争にさらされた<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社の上層部に多い。<br /> そういう<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社では、地位が上がれば上がるほど襲いかかる不運と理不尽の質も量も大きくなっていく。</p><br /> <p>客と仕様の凍結に合意し、開発がかなり進んでから、客が前言をひっくり返して、大きな仕様変更を無理矢理迫ってくる。それではスケジュールが大幅に遅れるというと、スケジュールは絶対に変更するわけにはいかないという。徹夜続きで意識がもうろうとする中、部下の1人が支離滅裂で荒唐無稽な被害妄想を抱き始め、仕事を放り出しただけでなく、ストーカーのように延々と電話をかけてくる。意味不明の要求をしてきて、要求が通らないなら自殺するという。もはや幻覚や幻聴まで聞こえるようで、筋道だった説得などまるで効かない。その部下の両親に電話して、なんとか引き取ってくれと言っても、両親も兄弟も他人事のようで、ちっとも動こうとしない。プロジェクトの中核メンバーが、病気になって寝込んでしまう。別のメンバーはいきなり会社を辞めてしまう。高い金を出して買った大手の会社の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A1%BC%A5%C9%A5%D0%A5%E9%A5%F3%A5%B5%A1%BC">ロードバランサー</a>がバグだらけでサービスが落ちまくる。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A1%BC%A5%C9%A5%D0%A5%E9%A5%F3%A5%B5%A1%BC">ロードバランサー</a>の会社のサポートに電話しても、見当違いの頭の悪い回答が返ってくるだけ。ろくに技術力のない安い人間をサポート担当にしているのが丸わかりだ。そして、サービスの復旧を早くしろと、客が真っ赤な顔をして怒鳴り込んでくる。それにわをかけるように営業担当が、無神経なメールを客先に送って、客の不信感を募らせてしまう。それに気を取られている隙に、成果が出なくて年俸を下げられた部下が逆恨みして、他のプロジェクトメンバーに誹謗中傷をふりまいて、プロジェクトの雰囲気が最悪になる。足下をみてくる交渉相手。弱みにつけこんでくる協力会社。ヤクザがサービスに難癖をつけて乗り込んでくることすらある。大きな会社との有望な共同プロジェクトに、突然予想外の強力なライバル企業が、エグい接待などの寝技を使って割り込んでくる。<br /> あらゆる予防策を入念に打っておいたにもかかわらず、それをかいくぐって、どうしょうもない不運と理不尽が次々に襲いかかる。</p><br /> <p>もちろん、道徳的にはそれらの不運の責任は自分にはない。本来なら、それらの災厄を引き起こした張本人たちに責任があるはずだ。<br /> ロードバランサがバグだらけなのはロードバランサの会社が悪いはずだし、難癖を付けてきたヤクザに道徳的な正しさなどあるはずがない。<br /> 詐欺師や強盗に襲われたら、道徳的に悪いのは加害者であって、詐欺師に騙されたり強盗に襲われた被害者に罪があるわけがない。</p><br /> <p>しかし、自分が道徳的に悪くなかったことを証明したところで、なんら問題は解決されず、会社はどんどんヤバくなる。<br /> だから、高い職位にいる人間は、それらの不運と理不尽を、全て自分で飲み込まなければならない。<br /> 当然、経営会議で責任を追及されて、自分が悪くなかったことを証明しようとしても、「それを何とかするのが、おまえの役割だろう!」と言われるだけだ。</p><br /> <p>そもそも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FB%C6%C0%B8%A2%B1%D7">既得権益</a>を持たない会社だと、会社自体が常に競争に晒され、大量の不運と理不尽に襲われ続ける。<br /> 経営陣はそれらを役割分担して処理していく。<br /> しかし、それらの不運と理不尽は、役員だけで処理しきれないほど多い。<br /> だから、会社役員は、それらの処理を担ってくれる人間を重要な地位に就け、地位にふさわしい不運と理不尽を負担してもらう。<br /> こうして、会社の階層がつくられていく。</p><br /> <p>こういう会社の上層部のポジションは、恐ろしいストレスのかかる激務であり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%CC%B2%BE%C9">不眠症</a>、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%DD%B5%C9%C2">鬱病</a>、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%CE%A7%BF%C0%B7%D0%BC%BA%C4%B4%BE%C9">自律神経失調症</a>になることも多い。<br /> その一部は、満身創痍になり、酷い心の傷を負いながらもそこからはい上がり、さらに強くしぶとくなる。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D9%A5%EB%A5%BB%A5%EB%A5%AF">ベルセルク</a>のガッツが不運と理不尽に襲われるたびに、それを食らってますます強靱に鍛え上げられていくように、彼らも理不尽を食らってますます強くなっていく。<br /> 一方で、そのまま復活できずに、廃人になって脱落していく者もいる。</p><br /> <p>そんな生活を5年も続けて生き残ると、どんな人間ができあがるか、想像できるだろうか?</p><br /> <p>こうして、マッチョができあがるのだ。</p><br /> <p>しかし、「不運と理不尽」という、黒い子宮が産み落とすのは、マッチョだけではない。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>もまた、同じ子宮から産み落とされる。<br /> マッチョと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、どちらも「不運と理不尽」という名の黒い子宮から産み落とされた双生児なのだ。</p><br /> <p>ほとんどの人間は、それほど酷い不運にも理不尽にも見舞われないので、マッチョにも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>にもならない。<br /> 酷い不運と理不尽に襲われた人間だけが、マッチョor<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>になる。</p><br /> <br /> <p>マッチョと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、かなりクリアに区別できる。</p><br /> <p>何年もの間、不運と理不尽を食らいつづけたマッチョの社会正義に対するスタンスは、概ね以下のようなものになってくる。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061208/1165539947">&#x512A;&#x79C0;&#x306A;&#x4EBA;&#x6750;&#x306B;&#x5909;&#x8EAB;&#x3059;&#x308B;&#x30AD;&#x30C3;&#x30AB;&#x30B1;&#x306B;&#x51FA;&#x4F1A;&#x3046;&#x304B;&#x3001;&#x672A;&#x719F;&#x306A;&#x307E;&#x307E;&#x8001;&#x3044;&#x3066;&#x3044;&#x304F;&#x304B;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061208/1165539947" alt=""></p> <blockquote> <p>「誰でも正しいことをすべきだ」ということと、「それを実際にどう実現していくか」ということは、全く別のことなのだ。<br /> 世の中で正しいことを実現していくには、世の中が正しいことを前提として行動してはいけないのである。<br /> <<略>><br /> そもそも、世の中は、正しいか間違っているかの2分法では動いていない。常に、その中間で、様々な妥協をしながら、結果として、正しい方向にどれだけ近づけることができるか、そういうゲームなのである。<br /> <<略>><br /> 上司は、自分より賢いとは限らず、正しいとも限らず、それにもかかわらず、自分は上司の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A1%BC%A5%BD%A5%E9%A5%A4%A5%BA">オーソライズ</a>のない行動はとれない、という現実を直視するところからはじめないと、プロジェクトは上手く動かせない。<br /> <<略>><br /> 不毛な政治ゲームが少しでも減るように心がけながらも、現実的には、政治ゲームには政治ゲームで対抗しながら、自分の理想を実現していかなければならないことを、肝に銘じて生きていくべきだろう。</p> </blockquote> <p><br /> つまり、そもそもの前提において、マッチョは社会正義などをアテにして動いたりはしない。<br /> マッチョの認識では、社会とは、不運と理不尽にまみれた、魑魅魍魎の蠢く<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D9%A5%EB%A5%BB%A5%EB%A5%AF">ベルセルク</a>の世界なので、不運と理不尽に出会っても、いちいちヒステリックに社会正義を叫んだりはしない。<br /> マッチョが社会正義を叫ぶのは、それが戦略的に意味がある場合だけだ。<br /> マッチョは自分に責任のない災厄が降りかかってきたときも、あわてず騒がず、淡々と自力で対処する。<br /> それが道徳的に自分の責任なのか、他人の責任なのかを考えるのは後まわしにして、とにかく事態を収拾する。<br /> こうして、問題は解決され、プロジェクトは前進する。</p><br /> <p>もちろん、マッチョだってきちんと約束を守ってくれるパートナーは大好きだし、理不尽な要求をしない礼儀正しい客とは末永くおつきあいしたいと思う。<br /> いざというときトンズラこく裏切り者の部下より、逃げずに持ち場を守ってくれる信義に厚い部下や同僚や上司を望む。<br /> 逆に、難癖を付けてくるヤクザなんて、まっぴらごめんだし、そういう理不尽な目に会わない社会を望む。<br /> しかし、マッチョは、社会正義を望むことと、社会正義が実際に実現されているということが別のことであるということを、骨の髄まで熟知している。<br /> だから、マッチョは、前提とされるべき社会正義などアテにせず、パワーゲームにはパワーゲームで対抗し、自力で社会正義を実現しようとする。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061113/1163410826">&#x65B0;&#x3057;&#x3044;&#x6642;&#x4EE3;&#x306E;&#x9053;&#x5FB3;&#x306F;&#x3069;&#x306E;&#x3088;&#x3046;&#x306B;&#x3057;&#x3066;&#x751F;&#x307E;&#x308C;&#x308B;&#x306E;&#x304B;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061113/1163410826" alt=""></p> <blockquote> <p>子供たちは、そういう親たちから学んだ。<b>この世界の本質は、パワーゲームである</b>と。<br /> <<略>><br /> 結局のところ、社会の流動化によって仁義なきパワーゲームが支配せざるを得ない現代という時代においては、理想は、パワーゲームによって現実化するしかないのではないか。<br /> そして、その理想が崇高なものである場合、理想を実現するために創られたその権力構造は、かつての「道徳」と似たものになることが多い。<br /> そうして、学校に限らず、社会の至る所で、多くの大人たちが、パワーゲームによって自分の理想を実現し、多様な道徳構造を創り出していくと、その総和として、より豊穣で、柔軟性を持った新しい時代の道徳構造が出現するのではないのだろうか。</p> </blockquote> <p></p><p>一方で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は純粋まっすぐな正義の人だ。<br /> 彼らは不運や理不尽に襲われると、自分が悪くなかったこと、相手が悪かったことを証明して、だから私には責任がないという。<br /> そして、それは道徳的にも社会的にも正しいことも多い。<br /> 道徳的にも社会的にも正しいが、しかし、問題は解決されないままだ。プロジェクトは悲惨なままだ。</p><br /> <p>また、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>の多くは不運と理不尽のリスクに対して鈍感だ。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は不運や理不尽のせいでプロジェクトが失敗しても、それは自分の責任ではないと考えるからだ。<br /> 不運は私のせいではないし、理不尽も私が責任を取るべきことではないから、私の知ったことではない。<br /> 悪いのは常に加害者であって、その責任を被害者がとるなんて、バカげている。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>はそう主張する。<br /> 彼らは「人々が道徳的に正しいことをすべきだ」ということと、「人々は実際に道徳的に正しいことをする」ということの間にある巨大な溝にはまり、酷い目にあって「その溝を埋めるべきだ」と泣き叫び、観衆は「そうだそうだ」とうなずき、彼らは人々の同情を集めることに成功する。</p><br /> <p>一方、マッチョはほとんど無意識のうちに不運と理不尽のリスクを警戒する。<br /> なぜなら、不運と理不尽の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%B9%A5%AF%A5%DE%A5%CD%A1%BC">リスクマネー</a>ジメントも含めて、自分の責任だと考えるからだ。</p><br /> <p>マッチョの多くが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%CE%A5%A4%A5%A2">パラノイア</a>のようにありとあらゆる不運と理不尽の可能性を事前にリストアップし、対策を立て、戦略的にマネージメントするのに対し、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>の多くは不運と理不尽を戦略的にマネージメントするという発想が欠けていることが多い。<br /> 不運と理不尽は、自分の責任ではないから、そんなことを気にしてもしょうがないとでも思うのだろうか?</p><br /> <p>だから<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、ろくな対策もしないまま不運と理不尽に襲われる。しかも、あまりの不運と理不尽さに押しつぶされ、ショックで脳が麻痺してしまい、効果的な具体策が考えられなくなってしまう。そして、効果的に逃げることもできず、立ちつくしたままボコボコにやられてしまう。<br /> そして、<br /> 「ぼくは何も悪いことをしてないのに、社会が/会社が/上司が一方的に悪いせいで、こんなに酷い目にあった。」<br /> という論調のエントリを書いて、人々に同情されて喜んだりする。<br /> そのエントリの内容自体は正しい。<br /> 不運と理不尽は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>の責任ではないからだ。悪いのは加害者であって、被害者ではないからだ。</p><br /> <p>もちろん、マッチョも油断して世の中の悪意に噛みつかれ、手傷を負うこともある。<br /> しかし、なんだかんだで最後は自力で辻褄を合わせるし、たとえその過程で酷い目にあったとしても、マッチョはそのようなエントリを書くことはまずありえない。<br /> ましてや、それに同情してもらって手放しに喜ぶのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>以外の何者でもあり得ない。</p><br /> <p>このように、マッチョと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、けっこうクリアに区別できる。</p><br /> <br /> <p>マッチョと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、一卵性双生児なのだろうか?<br /> それとも二卵性なのだろうか?</p><br /> <p>つまり、バイオロジカルには同じ人間が、環境の違いで異なった性質を持つようになったのか、それとも、生まれつき違う種類の人間なのだろうか?</p><br /> <p>おそらくは、両方のケースがあるのだと思う。<br /> 一卵性のマッチョや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>も、二卵性のマッチョや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>も、両方ともいるのだ。</p><br /> <p>元々は同じ人間であった一卵性のマッチョと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>を、別の性質を持った人間に変えてしまうプロセスは、行動心理学におけるオペラント条件付けによって説明できるだろう。</p><br /> <p>不運と理不尽に見舞われた人間が、「上司が愚かな指示をだしたのが悪かったんだ。企画の連中が無理な仕様変更を言いだしたから失敗したんだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A1%BC%A5%C9%A5%D0%A5%E9%A5%F3%A5%B5%A1%BC">ロードバランサー</a>の会社のサポートが悪かったから復旧が遅れてしまったんだ。部下が無責任に仕事を放り投げて逃げてしまったから、どうしょうもなかったんだ。だからボクはこんなに酷い目にあってしまった。ぼくはこんなに可哀想なんだ。。。」<br /> と「自分が悪くなかった理由と可哀想な自分」を主張したとき、それに対して強化刺激(reinforcer)が与えられるか、それとも嫌悪刺激(punisher)が与えられるかで、マッチョになるか、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>になるかが決まる。</p><br /> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FB%C6%C0%B8%A2%B1%D7">既得権益</a>を持たない<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社では、「自分が悪くなかった理由と可哀想な自分をアピールする」というオペラント行動は、「経営会議or他の同僚によって袋だたきにされる」という嫌悪刺激によって、弱化される。このため、そういう行動の自発頻度が減っていき、その人間は、結局、あらゆる不運と理不尽を自分で飲み込んで、なんとか辻褄を合わせなければならなくなり、それを続けているうちに、やがて押しつぶされて廃人になるか、全ての不運と理不尽を自力で切り抜けてマッチョになってしまう。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社は、とても効率の良いマッチョ製造機だ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%DD%B5%C9%C2">鬱病</a>で使い物にならなくなった産業廃棄人材も少しだけ出すのが難点だが。</p><br /> <p>一方で、ブログで「自分が悪くなかった理由と可哀想な自分をアピールする」というオペラント行動をすると、「みんなに共感され、同情される」という強化刺激(reinforcer)を与えられる。これにより、そのオペラント行動が強化(reinforce)されて自発頻度が上がっていき、やがて<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>になる。<br /> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%CF%A4%C6%A4%CA%A5%D6%A5%C3%A5%AF%A5%DE%A1%BC%A5%AF">はてなブックマーク</a>は、非常に効率の良い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>製造機だ。こちらは廃棄物を出さない。</p><br /> <br /> <p>それでは、二卵性の場合は、どうなのだろうか?<br /> こちらはもっと簡単だ。<br /> もともと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>の人間は、不運と理不尽に襲われると「自分が悪くなかった理由と可哀想な自分をアピールする」という行動をする。これは生まれつきそうなので、環境によって変わったりはしない。<br /> また、もともとマッチョの人間も同様。不運と理不尽に襲われると、そこから脱出する具体策を自力で考える。環境は関係ない。彼は生まれつきそういう人間なのだ。</p><br /> <p>もし大半の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>とマッチョが一卵性双生児なら、ネットが普及すればするほど、どんどん<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>が増えていく。<br /> これは、ある意味、とてもやさしい、母性的な社会だ。<br /> 不運と理不尽に襲われた被害者にはいかなる責任も求めない、シンプルな純粋正義の価値観に覆われた社会だ。<br /> 弱い人間を弱いまま受け入れてくれる、人に優しい社会だ。<br /> 父性原理的なマッチョな価値観が支配する社会よりは、はるかに人に優しい社会だろう。<br /> 我が子を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%E9%BF%D2">千尋</a>の谷に突き落として育てるような、無茶な親のいない社会だ。</p><br /> <p>ただ、ネットによって、世の中で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>的価値観が支配的になることを、手放しに喜んでばかりもいられない側面もある。</p><br /> <p>現在、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%B0%BB%F1">外資</a>や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D9%A5%F3%A5%C1%A5%E3%A1%BC">ベンチャー</a>を中心に、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社がどんどん増えてきている。<br /> そういう<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社の上層部はとてもマッチョ濃度が高い。</p><br /> <p>こういう会社の採用面接では、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は敏感に検出され、不採用になることが多い。<br /> <a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061230/1167474130">&#x63A1;&#x7528;&#x9762;&#x63A5;&#x306E;&#x6642;&#x3001;&#x30DE;&#x30C3;&#x30C1;&#x30E7;&#x306A;&#x9762;&#x63A5;&#x5B98;&#x306F;&#x3001;&#x5FDC;&#x52DF;&#x8005;&#x306E;&#x904E;&#x53BB;&#x306E;&#x884C;&#x52D5;&#x3092;&#x72ED;&#x304F;&#x6DF1;&#x304F;&#x8A73;&#x7D30;&#x306B;&#x805E;&#x304D;&#x51FA;&#x3059;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20061230/1167474130" alt="">。そうすると<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>は、過去うまくいかなかった事柄について語るとき、「不運や理不尽に見舞われたから仕方がなかったのだ」というようなニュアンスが、言葉の端々に現れがちだ。<br /> リスクに対して敏感なマッチョがそれを見落とすはずはない。<br /> 普段は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>的な行動をとっている人間が、面接の時だけマッチョのフリをしても、そうそう騙し通せるものではない。<br /> たとえ面接官を騙して採用されても、マッチョだらけの組織の中に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>が入り込んだりすれば、ひたすら悲劇が待ち受けているだけだ。</p><br /> <p>さらに困ったことに、マッチョ濃度の高い会社と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>濃度の高い会社が競合すると、マッチョ濃度の高い会社が生き残ることが多い。<br /> こうして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%C1%B3%C5%F1%C2%C1">自然淘汰</a>的プロセスによって、世の中の多くの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%C2%CE%CF%BC%E7%B5%C1">実力主義</a>の会社は、マッチョだらけになってしまう。<a href="#f-38eabb34" name="fn-38eabb34" title="finalvent氏の指摘にもあるように、いったんマッチョだらけの飽和点に達した後には、もっと複雑なゲーム理論が作用するので、話はそんなに単純ではないのだが。">*1</a></p><p>これにより、ますます<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>の就職先が無くなっていく。</p><p>そして、マッチョ濃度が高い社会ほど、グローバル<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D4%BE%EC%B7%D0%BA%D1">市場経済</a>においては強い。<br /> 神のいないこの世界では、不運と理不尽があふれかえっているのが、素の姿だからだ。</p><br /> <p>こういう状況では、政府が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>に有利な「人に優しい社会」を作って行くのには、どうしても限界がある。<br /> それを作ろうとしても、グローバル<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D4%BE%EC%B7%D0%BA%D1">市場経済</a>からの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>排除の淘汰圧に押しつぶされてしまうからだ。<br /> 不幸にも、世界はそのようにできている。</p><br /> <p>そして、そのような世界で、不運と理不尽に襲われたとき、マッチョになる道を選ぶか、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>になる道を選ぶか、それはあなたの自由だ。<br /> 神のいないこの地上では、一切は許されている。<br /> マッチョでも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%F3%A5%D7">ウィンプ</a>でも、あなたの好きな方を選ぶといいだろう。</p> <div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-38eabb34" name="f-38eabb34" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text"><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/finalvent">finalvent</a>氏の指摘にもあるように、いったんマッチョだらけの飽和点に達した後には、もっと複雑な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B2%A1%BC%A5%E0%CD%FD%CF%C0">ゲーム理論</a>が作用するので、話はそんなに単純ではないのだが。</span></p> </div> fromdusktildawn シリコンバレーをはるかに超える、世界一のイノベーション都市を、日本に作る方法 hatenablog://entry/10257846132601980048 2008-03-19T21:20:44+09:00 2018-07-23T12:11:02+09:00 概要 東京から直通電車で20〜30分くらいのところに、経済特区を作る。 仮にJシリコンバレー特区と呼ぶことにする。 この特区では、英語が公用語。 役所、医療施設、学校、レストラン、スーパー、電車、交通標識など、あらゆるものが英語で運用される。 この特区内の企業に年収500万円以上で採用された外国人には、この特区内だけで働けるワーキングビザが発行される。 当面は、インド、中国、西欧、北米、旧共産圏などの高度知識労働者をこの都市に集めることを目指す。 この特区内では、所得税が一律10%のフラットタックス。 目標として、50年かけて世界中から1000万人の高度知識労働者をこの都市に集めることを狙う。… <div class="seemore"> <div class="section"> <h4>概要</h4> <p><br /> 東京から直通電車で20〜30分くらいのところに、経済特区を作る。<br /> 仮にJシリコンバレー特区と呼ぶことにする。</p><br /> <p>この特区では、英語が公用語。<br /> 役所、医療施設、学校、レストラン、スーパー、電車、交通標識など、あらゆるものが英語で運用される。</p><br /> <p>この特区内の企業に年収500万円以上で採用された外国人には、この特区内だけで働けるワーキングビザが発行される。<br /> 当面は、インド、中国、西欧、北米、旧共産圏などの高度知識労働者をこの都市に集めることを目指す。</p><br /> <p>この特区内では、所得税が一律10%のフラットタックス。</p><br /> <p>目標として、50年かけて世界中から1000万人の高度知識労働者をこの都市に集めることを狙う。<br /> 彼らに、世界的ベンチャー企業をどんどん生みだしてもらう。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>アメリカのシリコンバレーは「アメリカ」ではない</h4> <p><br /> そもそも、アメリカの中でも、シリコンバレーというのはかなり特殊な土地だ。<br /> アメリカ人全てがシリコンバレー精神を持ち合わせているわけではない。<br /> シリコンバレー以外のアメリカは、もっと保守的で、日本ほどでないにしろ既得権益層が牛耳っている、風通しの悪い階級社会だ。<br /> シリコンバレーの風通しのよさと、どんな人にも分け隔て無く平等にチャンスが与えられる公平さと、新しい物をどんどん生み出そうという自由と活力に満ちた空気は、アメリカ人気質というより、シリコンバレー気質なのだ。</p><br /> <p>それに、アメリカのシリコンバレーを形作っているのは、アメリカ人だけではない。<br /> 中国人、インド人、ヨーロッパ人など、さまざまな国の人材がシリコンバレーを形作っている。<br /> シリコンバレーはアメリカというより、もっと異質の、イノベーションを生み出すことに特化した特殊な国際都市という側面があるのだ。</p><br /> <p>だから、既得権益で固められた旧態依然とした社会構造を持つ日本であっても、シリコンバレーと同じようなイノベーション文化を持つ都市を造れてもおかしくはないのではないか。</p><br /> <p>それどころか、シリコンバレーというのは初期の原始的なプロトタイプ製品のようなもので、アイデアのタネにすぎない。税制も含めてしっかり整備しそこに+α、+β、していけば、まだまだそれよりもはるかに強力でポテンシャルの大きな都市を建設できるのではないか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>目的</h4> <p><br /> 目的は、税収確保である。</p><br /> <p>最終的には、質の高い少人数制教育、安心できる医療、そして、全ての国民の生活を保障するベーシックインカムをまかなえるだけの税収を生み出すことを目標とする。</p><br /> <br /> <p>以下、その可能性を探るため、具体的な施策について考察する。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ベンチャーのボトルネックを解消する一律10%のフラットタックス</h4> <p><br /> たとえば、創業期のベンチャーは、ハイレベルのエンジニアを雇いたいが、それを雇うだけの資本がないことが多い。<br /> これは、ベンチャーが抱える大きな問題の一つだが、この経済特区ではその問題を解決するため、<b>所得税を一律10%</b>にする。<br /> 累進性の一切無い、フラットタックスだ。</p><br /> <br /> <p>ベンチャーは、サービス実績がまったくない状態では、外部から資本を調達するにも、倍率がつかない。<br /> 倍率がろくにつかない状態で外部から資本を調達してしまうと、会社が自分たちのものではなくなってしまう。</p><br /> <p>そもそも、実績どころか、プロトタイプすらない状態では、倍率がつかないどころか、多額の金を出資してくれる人間はなかなかいない。<br /> これは、投資家の立場からしてみれば当然だろう。たいていの投資家は、まだどうなるかさっぱり分からない状態のプロジェクトに、大金を出資する気にはまずならない。ある程度、成功のめどがつき、投資が回収できそうな状態にまで至ってから、はじめて投資する気になるというものだ。</p><br /> <p>だから、最初に出来る限り自己資本と最小限の外部資金だけでサービスを立ち上げ、ある程度の実績を作って会社の価値を高めてから、その潜在価値に応じた倍率をかけて、外部から資金を必要額調達するようにするのがよくあるパターンだ。</p><br /> <p>このため、立ち上げ期のベンチャーは、資本が少ない。<br /> したがって、エンジニアに高い報酬を払うだけの資金的な余裕がない。<br /> だから最初のうちは、できるかぎり給料を抑えたいのだ。</p><br /> <p>もちろんストックオプションは発行するが、ストックオプションを発行する代わりに少ない給与で我慢してくれ、と言っても限度がある。<br /> そもそも、それまでアメリカのシリコンバレーで年収2000万円で働いており、その収入を前提とした生活水準で暮らしていたハイレベルのエンジニアに、「ストックオプションをあげるから、年収1500万円で働いてくれ」と言っても、とくに家族持ちの場合など、生活のグレードダウンを受け入れなければならず、家族の了承を得られないことも多い。</p><br /> <p>そこでフラットタックスにより、ベンチャーは年収の高いハイレベルなエンジニアを割安に雇うことができる。<br /> ハイレベルエンジニアにしてみれば、年収がかなり減っても、フラットタックスで税金が安いので、手取りは同じだから、生活水準を落とさずに、ベンチャーに参加できるのだ。<br /> これで、創業期のベンチャーは、人材獲得がやりやすくなる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>世界中から高度知識労働者を惹きつける税制</h4> <p><br /> そもそもこの経済特区のコンセプトは、世界中から高度知識労働者を集めて産業集積を作り出すことだから、フラットタックスとはとても相性がいい。<br /> 高度知識労働者には高額所得者が多いから、フラットタックスとは、実質的に高度知識労働者の税金に狙いを絞って減額する制度となるのだ。</p><br /> <p>ちなみに、フラットタックスは、1994年に東欧のリトアニアなどで導入されて以来、東欧を中心に急速に広がり始め、現在、世界の15以上の国・地域で採用されている税方式。ロシアも香港も採用している。</p><br /> <p>もちろん、フラットタックスには非難の声もある。<br /> たとえば、ドイツやフランスの政府は、「フラットタックスは税のダンピングだ」と非難している。<br /> なぜ、ドイツやフランスが非難するかというと、外国がフラットタックスを導入すると、彼らが被害を被るからだ。<br /> どんな被害かというと、人材流出や企業流出という被害だ。<br /> 要するに、フラットタックスとは、税をダンピングすることにより、他の国の高度人材や企業(=雇用)を奪う税制だと言いたいのだろう。</p><br /> <p>したがって、日本がこの税制を採用した経済特区を作ると、諸外国の高度人材を奪い、反発を買うリスクがある。<br /> しかし、もしこの税方式で国の財政の採算が取れるなら、それはダンピングではなく、市場原理に基づく適正価格というものではないだろうか。<br /> そもそも、税金もグローバル競争の時代に入っている。<br /> ある国に居住して税金を払うということは、その国の社会システムを利用し、その利用料をその国へ払っているようなものだとも考えられる。<br /> つまり、世界規模で社会システム利用サービスの価格競争が起き、市場原理が働き始めているのだ。<br /> 支払う税金と、その国の社会システムの利用価値を秤にかけ、いちばん割の良い国家を選択するグローバルな企業やグローバル労働者がどんどん増えているということだろう。<br /> 要するに、時代の流れだということだ。もしかしたら、むしろ日本よりも先に、中国やインドやベトナムやタイなどの国で、経済特区を作るなどしてフラットタックスの導入が始まるかも知れない。<br /> 先行者メリットや集積効果を考えると、先にやったもん勝ちのゲームである可能性も高いのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>フラットタックスにすると、あまり税収が得られないのではないか?</h4> <p><br /> ここで、「フラットタックスなどを導入したら、高額所得者からの税収が少なくなるじゃないか」という疑問もあるかもしれない。<br /> しかし、たとえフラットタックスだったとしても、年収3000万円の労働者は、年収300万円の労働者の10倍の税金を払ってくれる。累進課税でなくても、高額所得者が高額納税者であることには変わりはない。<br /> そして、年収3000万円の労働者が年収300万円の労働者の10倍公衆トイレを使うわけでも、10倍警察の手間がかかるわけでも、10倍道路を利用するわけでも、10倍公園のベンチを占拠するわけでもない。<br /> たとえフラットタックスだったとしても、高額所得者に居住してもらえれば、国家としては、はるかに儲かるのだ。<br /> だから、フラットタックスにしても、それによって、多数の高額所得者を世界中から集められるなら、十分以上にペイするのだ。</p><br /> <p>また、もう一つの点は、低所得者であるか高所得者であるかに関係なく、常に一定の割合でモラルのない人間がいるものだが、フラットタックスにすると、モラルのない高額所得者が手間暇かけて、節税努力や脱税努力するのが割に合わなくなるため、納税率が上がるという効果があるという点。複雑な仕掛けを使った節税や、ばれないように巧妙に脱税するにも大きなコストがかかるため、累進税率がなくなると、節税努力によって得られるものが少なくなり、そんな不毛な努力をしているくらいなら、本業のビジネスにせいを出した方が得になるということだろう。<br /> 見方を変えれば、本業に精を出すより、複雑で巧妙な仕組みをつくってまで節税や脱税をした方が儲かる、というのは、累進税制下で高額所得を得るという特殊な状況でのみ発生する状態だ。それ以外の場合は、そんな不毛な努力をするより普通に働いた方がよっぽど収入が増える。<br /> フラットタックスを採用する国が急速に増えているのは、この効果によるところも大きいと見る向きもあるようだ。</p><br /> <p>そもそも、フラットタックスにすると言っても、この経済特区の中だけである。日本の他の地域の税体系は今のままだ。<br /> もちろん、日本の他の地域に住む人間に、この経済特区を利用して租税回避などをやられたら、税収増どころか、税収減になりかねないので、租税回避をやらせないためのさまざまな仕掛けを施しておく。<br /> たとえば、このフラットタックスを適用できるのは、この経済特区に居住し、かつ、この経済特区の職場で働いている人間のみに限定したり、適用対象も、限定された産業分野で、新しい産業を創出するようなビジネスに限定するなどする。</p><br /> <p>はてな界隈では金持ちというと子飼弾氏のイメージに引きずられているところがあるが、現実には、彼は金持ちの典型でも何でもない。日本の高額所得者の大部分は、IT産業従事者などではないし、ブログを書くような人種でもない。日本の金持ちの多くは開業医と旧産業の経営者だ。たとえば、繁盛している旅館やレストランや優良中小企業の経営者をイメージした方が近いだろう。</p><br /> <p>そして、そういう旧産業の経営者たちは、自分の会社を営む土地に縛られており、彼らに、この経済特区を利用して租税回避をさせないような規制の仕掛けを作り出すのはさほど困難ではないだろう。たとえば、ビジネスの実態がこの特区にあるわけではないのに、社長の本社宅だけここに移転して、偽装IT子会社を作るなどして租税回避しようとした場合など、徹底的に厳しく取り締まり、通常よりも厳しい重加算税を課すなどする。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>Jシリコンバレー特区の高所得者は、日本経済の超優良顧客となる</h4> <p><br /> そもそも、日本の低付加価値産業は、地場産業にしろ、農業にしろ、中国からの大量の低付加価値商品や低付加価値農産物に押されて、壊滅状態になっている。<br /> 日本に残っているのは、高付加価値製品を作っている地場産業、高付加価値の農産物を育てている農家、高付加価値の家電製品を作っているメーカーなどだ。<br /> 最近では日本の農家は、日本の高級な農産物を、アジア各国の富裕層に向けて輸出し始めているようだ。<br /> また、日本の高級かわらメーカーなどの高品質製品を作っている地場産業は、ロシアへの輸出をはじめたりしている。</p><br /> <p>結局のところ、日本の産業のうち、グローバル競争にさらされて生き残れたのは、高付加価値産業のみだったということだ。<br /> だから、日本の産業を育てるには、外需にしろ内需にしろ、日本の高付加価値産業の生み出す商品を消費してくれる顧客をいかにして開拓するか、というゲームになる。</p><br /> <p>低付加価値商品ばかりを消費する低賃金労働者が増えても、彼らが利用するのは、メイドインチャイナの、100円ショップで売られているような安物雑貨や中国製の格安家電でしかなく、中国やベトナムなどの発展途上国からの輸入が増えるだけで、結局のところ、日本経済の活性化にはあまりつながらない。</p><br /> <p>これが、ベーシックインカムを実現するのに、わざわざJシリコンバレー特区のような仕組みを作らなければならない理由だ。</p><br /> <p>もし、単純に日本の高額所得者に重税をかけて財源を作り出し、それをベーシックインカムとして低所得者層に分配するというような、ネズミ小僧方式を採ると、低所得者層の収入が増え、高所得者層の収入が減る。「そうすれば、低所得者の消費が増え、日本経済が活性化する」という話があるが、話はそう簡単にはいかないと思われる。<br /> なぜなら、低所得者層が主に購入するのは、中国製の安い家電や、100円ショップで売っている中国製の安い雑貨であって、日本製の1本1万円の高級タオルや、一パック700円の高級イチゴなど、たいして消費してくれないからだ。したがって、この方式でベーシックインカムを実現した場合、単に中国やベトナムからの低付加価値商品の輸入が増えるだけだろう。<br /> しかも、高所得者に重税をかけたため、日本製の高付加価値商品を買ってくれる顧客の収入を激減させるので、100g数千円もする松阪牛や、一個300円する高級デコポンや50インチの大型プラズマテレビは日本ではどんどん売れなくなる。このため、日本の高付加価値産業はかなり深刻な打撃を被むり、むしろ日本経済はかなり冷え込むのではないか。<br /> そうすると、そもそも税収が減ってしまい、ベーシックインカムを維持し続けるための財源確保が危うくなる。<br /> つまり、ネズミ小僧方式のベーシックインカム構想は、持続可能性が怪しいのである。</p><br /> <p>だから、日本の高額所得者に重税をかけて、高額所得者を減らすのは、日本経済にとって得策ではなく、むしろ逆に、日本の高額所得者の数を可能な限り増やすような政策を行うことによって、日本の農家や地場産業や製造業を潤わせる戦略の方が、はるかに、日本人全体の懐を豊かにし、税収を増やし、持続可能なベーシックインカムを実現できるのではないだろうか。</p><br /> <p>そして、そのための施策が、このJシリコンバレー構想なのだ。</p><br /> <p>このJシリコンバレー特区ではたらく高度知識労働者は、ほとんどが高額所得者だから、まさに、メイドインジャパンの高付加価値商品の最高の顧客である。</p><br /> <p>極論を言えば、Jシリコンバレーの高度知識労働者が、まったく税金を払わなかったとしても、彼らが稼いだお金は、日本の高付加価値農産物や高付加価値の高級タオルや、高級家電を購入するという形で、日本経済に流れ込み、結果として日本人の懐を潤し、日本政府の税収アップになるのである。<br /> フラットタックスのせいで、吸い上げる税金が少々少なかったとしても、ぜんぜんペイするのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>世界トップレベルの大学、教授、学生を集積する</h4> <p><br /> この経済特区にふさわしい人材育成をするためのJシリコンバレー大学を設立する。<br /> この大学には、世界中の優秀な教授や大学講師を、ヘッドハントしてきて集める。<br /> ヘッドハントに当たっても、フラットタックスが威力を発揮する。<br /> 優秀な大学教授や大学講師には、高額所得者が多いからだ。<br /> 同じ年収なら、欧米の大学で働くより、日本のJシリコンバレー特区の大学で働く方が、はるかに手取りが多くなる。</p><br /> <p>そして、英語圏の一流大学の分校を、この特区に誘致する。<br /> ハーバード、MIT、スタンフォード、ケンブリッジなど。</p><br /> <p>日本の有力大学にも、分校を作ってもらう。<br /> 東大、京大、早稲田、慶応など。<br /> もちろん、授業は英語のみ。</p><br /> <p>また、多額の奨学金を使って、世界中の国々の才能ある学生をこの大学に集める。<br /> 専門の学生獲得組織を設置して、世界中の高校や大学を訪問し、優秀な学生にJシリコンバレーに来てもらうように交渉する。<br /> とくにアジアの貧しい国々では、勉学の意思と才能がありながら、お金がないために進学できない学生がたくさんいる。<br /> そういう人間に、どんどん奨学金を貸し付ける。</p><br /> <p>当然、大学では通常の講義や研究室の他に、ベンチャー論をはじめとして、起業家になるために必要な知識やノウハウも教える。<br /> そして、在学中、もしくは、卒業後に起業することを奨励する。<br /> 創業期のベンチャーに参加することも奨励する。</p><br /> <p>また、大学外の起業家やエンジニアなども自由に参加できるセミナーなども、頻繁に開催し、産学の交流が進むようにする。<br /> 当然、通常の日本人のエンジニアや起業家も自由に参加できる。もちろん、言語は英語のみだが。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>起業家やエンジニアの交流スペース</h4> <p><br /> この特区には、たくさんのカフェを誘致し、世界中のトップエンジニア、起業家、科学者、学生のオープンな交流スペースをたくさん作る。<br /> それらのカフェで気軽に意見交換し、ブレストし、アイデアが生まれ、意気投合したら、その勢いで起業してしまうというのもありだ。</p><br /> <p>カフェは、国際色豊かな、多様なものを用意する。フランス風カフェ。中国風カフェ。昔の日本のお茶屋のようなカフェ。インド風カフェ。ベトナム風カフェ。アメリカ風カフェ。バリ風カフェ。などなど。<br /> 徹底的な無国籍感を、この特区のアイデンティティにする。世界のどの場所なのかよく分からない、世界の縮図のような不思議な空間を演出する。</p><br /> <p>また、世界的なカンファレンスやイベントを行うための設備も十分に用意する。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>英語</h4> <p><br /> このプロジェクトのキモは、日本人が、日本語と日本文化を完全に捨ててかかることである。<br /> 日本人が日本語や日本文化に固執する限り、シリコンバレーのような世界的なサービスを開発できる都市を建設するのは無理だ。</p><br /> <p>たしかに、まず、英語を母国語とする人口は日本語よりも遙かに多く、英語を母国語とする国も多い。<br /> さらに、セカンドランゲージとして話す言語人口も含めれば、英語人口ははるかに巨大になる。</p><br /> <p>しかも、中国語、アラビア語、スペイン語などの言語に比べると、英語を読み書きできる人口の平均的知的水準は極めて高い。<br /> とくに、セカンドランゲージとして英語を話す人々は高等教育を受けている人間が多く、知的水準がたかい。</p><br /> <p>したがって、英語圏マーケットこそが、世界でもっとも良質のマーケットなのだ。</p><br /> <p>だから、この経済特区が生み出すサービスは、はじめから英語圏をターゲットに開発される。<br /> 英語圏のユーザのために開発し、英語圏のユーザに使われながら、育てていく。<br /> そうすることで初めて、世界的なサービスを最短距離で開発できるのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ベンチャー運営に最適な労働法規</h4> <p><br /> 創業期のベンチャーは、資本が少なく、ビジネスモデルが不安定だ。<br /> 予想外に競合製品が先にマーケットに出て、戦略を変更せざるを得ず、人材の入れ替えをしなければならなくなることもよくある。<br /> そういうとき気軽に労働者を解雇できないと、ベンチャーの経営はすぐに行き詰まってしまう。</p><br /> <p>また、ほんの数年の間一生分働き、一生分の報酬を手にして、早期引退する、という働き方もベンチャー特有の物だ。<br /> 休日も平日も関係なく、残業とかそんな細かいことは考えず、創業メンバー全員で、がんがん前に突進するのがベンチャーだ。<br /> 一生分の労働を数年に圧縮するのだから、かなりむちゃくちゃで非常識な働き方になる。<br /> このため、通常の会社のような細かな勤怠管理や残業代の申請というのは、ベンチャーと相性が悪い。</p><br /> <p>そもそも、創業期のベンチャーで働く人材は、会社に雇われた労働者というより、一緒にビジネスを作り上げていく共同経営者の側面が強い。<br /> 通常の産業における労働法規を四角四面に適用したのでは、まずうまくいかないのだ。</p><br /> <p>このため、会社が気軽に人を雇い、気軽に人を解雇できるような法制度にする。<br /> 当然、法律上は、残業代を出さなくてよいし、休日手当を出す必要もないようにしておく。</p><br /> <p>もちろん、これでは労働者保護に問題が出る。<br /> しかし、そもそも通常の労働者の権利が欲しい人間は、この経済特区で働くべきではないのである。<br /> ここは、イノベーションシティであり、通常の労働者の街ではないのだ。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ワーキングビザや居住権の取得しやすさ</h4> <p><br /> この経済特区に限っては、アメリカよりも、はるかに入国しやすく、ワーキングビザを得られやすくしておく。</p><br /> <p>アメリカの場合、テロに狙われやすいので、入国管理にはかなり慎重にならざるを得ない。<br /> 9.11以降、世界中の人材がアメリカに入りにくくなってしまっているのだ。</p><br /> <p>しかし、日本はアメリカほどにはテロには狙われてないので、入国審査をそこまで厳重にする必要がない。<br /> これは、アメリカのシリコンバレーに対する差別化要因の一つになる。</p><br /> <p>もちろん、日本の入国管理は厳しい。<br /> だが、この経済特区に限って言えば、必ずしも入国審査を厳しくする必要はない。</p><br /> <p>だから、どんどん人材を獲得するため、この経済特区に限っては、年収や学歴などから、高度頭脳労働者であることさえ確認できれば、どんどん入国を認めるようにする。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>世界最高水準の食生活を享受できる国際都市</h4> <p><br /> アメリカのシリコンバレーの弱点の一つが、その食生活の貧しさではないかと思う。<br /> たしかに、シリコンバレーは多様な人種はいるし、多様な食文化が混在しているものの、基本はあくまでアメリカ式の食生活だ。<br /> そして、世界の他の国々に比べ、シリコンバレーも、そのお隣のサンフランシスコも、普段の食生活のレベルがそれほど高いとは言えない。</p><br /> <p>そして、味の面でも、健康面でも、バリエーションでも、日本、とくに東京の食生活のレベルは、世界的に見て極めて高い。<br /> とくに、普段の普通の食生活のレベルが高いのだ。<br /> 最近は、健康指向の高まりもあって、日本の食文化は世界中にどんどん広まっている。</p><br /> <p>だから、東京の食生活をベースに、世界中の多様な人種のニーズに答えられるような食環境をこの特区に作れば、シリコンバレーよりもはるかに質が高く、満足度の高い食生活を提供できるのではないかと思う。</p><br /> <p>もちろん、とくにインドなどは宗教的な理由により、牛や豚が食べられない人もよくいるので、それに合わせてベジタリアンフードを提供する外食産業等も計画的に誘致するようにする。</p><br /> <p>また、ミシュランも認めた、世界最高レベルの美食都市東京の外食産業の支店を、どんどん経済特区に誘致する。<br /> もともと東京の外食産業は、世界中の多様な食べ物を提供できるが、それをさらにこの経済特区の人種構成に合わせてカスタマイズする。</p><br /> <p>なにより、電車で20〜30分もすれば、いまやパリと肩を並べるほどの世界に誇る美食都市東京へ出られる。</p><br /> <p>当然、スーパーで並ぶ食料も、レストランで供給される食事も、すべて安心して食べられる、日本水準の物が提供される。</p><br /> <p>中国やインドなどに同じような特区を作っても、なかなか同じようにはいかない。</p><br /> <p>そして、中国やインドなどの新興国だけでなく、欧米の豊かな先進国の高度人材が快適に暮らせるには、インドや中国の食生活のレベルではまだまだ厳しいのだ。</p><br /> <p>このため、日本品質の高品質な食生活インフラは、他の新興国が作るシリコンバレー的な経済特区に対する差別化要因となる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>高度知識労働者の子供たちに適した教育サービスの提供</h4> <p><br /> 現在、西葛西にインド人のITエンジニアコミュニティがあり、1000人ぐらいのインド人が住んでいるそうだが、彼らは日本の教育に非常に不満を持っているようだ。<br /> 彼らのようなITエンジニアは知的水準が高く、その子供たちにもハイレベルの教育をしたいと考えているので、日本の学校教育では、レベルが低すぎるのだ。</p><br /> <p>ましてや、世界中の高度人材のあつまるJシリコンバレー特区では、さらに拍車をかけて、ハイレベルの英才教育が求められる。</p><br /> <p>このニーズに応えるため、幼稚園から大学まで、基本的に、高度知識労働者のニーズに応えた、質の高い教育サービスを提供する。<br /> もちろん、全ての教育は英語で行われる。<br /> 英語圏のレベルの高い教師をたくさんヘッドハントしてくる。<br /> 1人の教師につき10名程度の少人数制にする。</p><br /> <p>これにより、家族持ちの高度知識労働者も、安心して移住できる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>言論の自由</h4> <p><br /> 中国にシリコンバレー型経済特区を作っても、まずうまくいかないと思われる。<br /> なぜなら、言論の自由がないからだ。<br /> 本当に独創的なアイデアは、言論の自由が保証されてこそ、生まれてくる。</p><br /> <p>このため、潜在的なライバルのリストからは、中国は外されると思われる。<br /> また、ロシアなども言論の自由が十分に保証されているとは言い難い。</p><br /> <p>このため、言論の自由が十分に保証されているという点も、やはり差別化要因になると思われる。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>豊かな先進国の知識労働者が満足できる都市インフラ</h4> <p><br /> インドや中国に作られるシリコンバレー的経済特区の問題は、先進国の労働者を満足させるだけの質の高い生活インフラを提供しにくいということだ。<br /> 職人や労働者の質も低く、階段でも道路でも電車でも、作りも運用もまだまだ雑なのだ。</p><br /> <p>このため、欧米の豊かな先進国の高度知識労働者でも十分以上に満足できる日本の道路、水道、電車などを提供できるのは、この経済特区の差別化要因となる。</p><br /> <p>当然、この特区の道路、電車、水道などのインフラの品質は、日本人の生活水準に合わせて、日本の建築会社が建設する。<br /> 世界一、時間に正確で、安全で、清潔で、明るく、快適で、利用しやすい日本の高度な電車網が高密度に張り巡らされた都市にする。<br /> この都市は、基本的にどこでも電車と歩きで移動できる。</p><br /> <p>現在、景気対策のための無駄な公共事業が大幅に削減されたため、日本の建築業はかなり疲弊している。<br /> このため、この特区のために、大量の建築需要が発生すると、たくさんの建築業者に職を提供し、失業者&ワーキング対策にもなるだろう。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>安全</h4> <p>この特区は、アメリカに比べると、はるかに治安がよい。<br /> アメリカと違って銃は厳重に規制されているし、犯罪の巣窟のような危険なエリアも絶対に発生させないようにする。</p><br /> <p>また、充実した警察力と、監視カメラネットワークにより、犯罪を犯しにくくなっている。</p><br /> <p>隣接した東京も、世界一治安のよい国際都市である。</p><br /> <p>なにより、アメリカのようにテロの不安におびえながら生活しなければならないということもない。</p><br /> <p>この高い安全性も、アメリカのシリコンバレーに対する差別化要因となる。<br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>娯楽&文化施設</h4> <p><br /> 英語のコンテンツのみを扱う映画館や、英語を話す人向けのスポーツバーやクラブハウスなど、この特区特有の娯楽施設や文化施設を充実させる。<br /> 大量の洋書が充実した本屋やCD、DVDショップも備える。</p><br /> <p>また、いつでも20分で、世界でもっとも安全で快適で充実した世界都市の一つである東京へ出られる。<br /> 週末などは、東京で過ごすことも出来る。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>質の高い生活支援サービス</h4> <p><br /> この特区に居住する労働者は、世界一質の高い日本の生活支援サービスを提供される。<br /> どこにでもある清潔で便利なコンビニ。快適に使える宅急便。<br /> 家電が壊れたら、メーカーに連絡すれば、すぐに修理してくれたり、充実したサポートが受けられる。<br /> 風呂、トイレ、上下水道のトラブルも、世界一すばらしい対応をしてくれる。</p><br /> <p>この、日本人ならだれもが当たり前に、快適に享受している世界一質の高い生活支援サービスは、日本以外ではなかなか得難いモノだ。<br /> 特に、中国やインドなどの新興国が経済特区を作っても、日本と同じレベルの生活支援サービスを提供しようとしても、まず無理だろう。平均的な労働者の質が段違いだからだ。<br /> 平均的な労働者の質の高さという点において、日本は圧倒的な世界一なのだ。</p><br /> <p>これも、強力な差別化要因になるだろう。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>気候</h4> <p><br /> 気候に関しては、アメリカのシリコンバレーにはかなわない。あちらの方が、はるかに気候がよい。<br /> ただし、インドや中国の経済特区よりは、日本の方が気候がよいだろう。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>地震</h4> <p><br /> 当然、この地震リスクが最大の問題だ。<br /> しかし、これを言い出したら、結局なにもできはしない。<br /> 建築物の耐震性を十分に確保しておく、避難経路や避難場所を計画的に都市計画に入れておくなどの対策を盛り込んでおくようにはしておく。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>まとめ</h4> <p>このJシリコンバレー構想のキモは、以下のようなものだ。</p><br /> <p>●日本に英語を公用語とした国際都市を作る<br /> ●高度知識労働者にとって世界で一番割の良い税制<br /> ●日本の高付加価値製品の優良顧客<br /> ●世界一質の高い日本の生活インフラ<br /> ●魅力的な世界都市東京が電車で20分</p><br /> <p>この中でも、「英語」と「税制」と「東京」が極めて強烈な鍵となっている。<br /> とくに、日本人が日本の言語と文化を完全に捨ててかかる、という潔さが、このプロジェクトの命だ。</p><br /> <p>このJシリコンバレーこそ、われわれの子供たちに残してあげられる、最高の贈り物にならないだろうか。</p> </div> </div> fromdusktildawn あなたは、なぜ、自分のお金を貧しい人々に分け与えないのですか? hatenablog://entry/10257846132601980076 2008-03-16T17:10:55+09:00 2018-08-08T13:02:33+09:00 あなたの毎月の給料から、ほんの4500円をスリランカの子供に仕送りすれば、その子は学校に行くことができ、その子の人生を劇的に変えることができるかもしれません。 あなたの貯金から、100万円をワーキングプアの方に与えれば、貧困から抜け出すチャンスをつかむかも知れません。 しかし、あなたは、そういう人たちを助けようとしない。*1 なぜですか? 自分よりも金持ちがいるから、まず金持ちからそれをすべきだから? しかし、たとえば年収300万円の人は、世界的に見れば上位10%に入る富裕層です。*2 カンボジアの貧しい農民からみれば、まるで貴族のような暮らしです。 苦労して井戸から水をくみ上げなくても蛇口を… <div class="seemore"> <p><br /> あなたの毎月の給料から、<a href="http://www.worldvision.jp/child/index.html">&#x307B;&#x3093;&#x306E;4500&#x5186;&#x3092;&#x30B9;&#x30EA;&#x30E9;&#x30F3;&#x30AB;&#x306E;&#x5B50;&#x4F9B;&#x306B;&#x4ED5;&#x9001;&#x308A;&#x3059;&#x308C;&#x3070;</a>、その子は学校に行くことができ、<b>その子の人生を劇的に変えることができる</b>かもしれません。</p><br /> <p>あなたの貯金から、100万円をワーキングプアの方に与えれば、<b>貧困から抜け出すチャンスをつかむ</b>かも知れません。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>しかし、あなたは、そういう人たちを助けようとしない。</span><a href="#f-e8bc6569" name="fn-e8bc6569" title="すでにした人、すでにしようとしている人は、この記事の対象外です。">*1</a><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>なぜですか?</span></p><br /> <p>自分よりも金持ちがいるから、まず金持ちからそれをすべきだから?</p><br /> <p>しかし、たとえば年収300万円の人は、世界的に見れば上位10%に入る富裕層です。<a href="#f-e0c1c1ce" name="fn-e0c1c1ce" title="自分のお金を貧困者に配ることを前提とするとき、為替レートが重大な意味を持つ。かりに、年収10万円のアフリカ人が購買力平価で日本人よりも豊かだったとしても、彼らはスリランカの貧しい子供に月々4500円を仕送りすることは極めて困難。購買力平価ではより貧しい年収300万円の日本人の方が、はるかにたやすく月4500円をスリランカの子供に仕送りできる。">*2</a><br /> カンボジアの貧しい農民からみれば、まるで貴族のような暮らしです。<br /> 苦労して井戸から水をくみ上げなくても蛇口を捻れば水が出るし、薪を集めて割らなくてもガスコンロですぐに煮炊きできるし、病気になったら医者に診てもらうことができます。</p><br /> <p>これだけ贅沢な暮らしをする金持ちが、自分よりさらに金持ちがいるという理由で、貧困に苦しむ人々を救わないのは、欺瞞ではありませんか?</p><br /> <p>それに実際の所、大金持ちの多くは貧しい人々のために寄付や慈善事業をしています。<br /> なのに小金持ちであるあなたは、なぜ自分のお金を貧しい人々に分け与えないのでしょう?</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>この疑問に、どう答えますか?</span></p><br /> <br /> <p><span style='font-size:170%;'>一つの回答を、この記事に書いてみました。</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>あなたの答えは、なんですか?</span></p><br /> <p></p> <div class="section"> <h4>人は、自己犠牲教に、簡単に洗脳される</h4> <p><br /> 僕の父親は、典型的な<span style='font-size:170%;'>自己犠牲教の信者</span>でした。</p><br /> <p>子供の頃、父親と街に出かけると、彼はよく自分の昼飯をぬいて、昼飯代を募金箱に寄付していました。<br /> いつでもおなかいっぱい食べられるぼくたちが、ろくにご飯を食べられない貧しい人たちのために、一食分を差し出すのはなんでもないことだと彼は言っていました。<a href="#f-51ef6e77" name="fn-51ef6e77" title="彼は宗教が大好きで、ボクの実家には、仏教やキリスト教の本がけっこうある。そもそも、ぼくはキリスト教系の幼稚園に行かされ、毎日神様の言葉を唱えて育った。食事の前には、天にまします我らの神よ云々と、神様といろんなものに感謝の言葉を述べてから、アーメンして食べ始めた。父親が定年退職後に教会を作りたいと言い出して、家族が困ったこともある。">*3</a></p><br /> <p>子供だった私は、そんな父親の行為を、とても美しい行為だと思いました。<br /> だから、ときどき彼のまねごとをして、駄菓子を買うのを我慢して、少ないおこずかいを募金箱に入れたりしました。<br /> とてもいいことをしているような気分でした。</p><br /> <p>その影響で、大学生になって東南アジアの貧しい国々を旅行したときも、たいして手持ちに余裕があるわけでもないのに、よく物乞いにお金をあげました。</p><br /> <p>子供の頃のぼくは、すっかり自己犠牲教に洗脳されていたのです。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>自己犠牲じゃ、たいした数の人を救えない</h4> <p><br /> しかし、大人になると「自己犠牲による他人の救済」は、有名な仏法説話で、火の中に飛び込んだウサギと同じようなものだということが分かってきました。</p> <blockquote> <p> ある寒い夜、やせ細って死にそうになった旅人が山の中をさまよっていた。その旅人を見つけたリスとタヌキとウサギが、なんとか助けようと頑張る。タヌキは薪を集めて火をおこし、リスは木の実を集めてきた。しかし、ウサギには何もすることがなかった。<br />  ウサギは突然、「私の肉を食べて元気になってください。私にはこれしかできないのです」と叫んで火の中に飛び込む。</p> </blockquote> <p><br /> これは、<span style='font-size:170%;'>お涙ちょうだいの感動的な話</span>かも知れません。しかし実際には、そのうさぎは自己犠牲をしたために、たった1人の旅人しか助けられませんでした。<br /> もしそのうさぎが自分を犠牲にせずに、美味しくて元気のでる野草や根っこをとって来る方法を後に身につけたなら、その後来る1000人の旅人の空腹を満たすことができたのではないでしょうか。</p><br /> <p>つまり、<br /> <span style='font-size:170%;'>実際には、自己犠牲を払わずに他人を助ける方が、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>はるかに多くの人を助けられる</span><br /> のではないでしょうか。</p><br /> <p>そもそも自己犠牲と他人を助けるということは別の話です。</p><br /> <p>にもかかわらず、「自己犠牲をして一人の人間を助けること」の方が、<br /> 「自己犠牲をせずに二人の人間を助けること」よりもはるかに崇高なことだとして語られることが、あまりにも多いのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>人類史上最強の「人助け生産性」を誇るビジネス装置</h4> <p><br /> ムハンマド・ユヌス氏は、自分の私財を貧しい人々に分け与えたから、ノーベル平和賞を受賞したわけではありません。<br /> 彼は、貧しい人々のための銀行を設立し、20〜25%という、やや高めの金利をとって、貧しい人々にお金を貸し、無担保にもかかわらず2%の貸し倒れしか起きないほど厳しい取り立てを行ったからこそ、膨大な数の貧困者を救うことができたのです。<br /> つまり、彼は利益の上がる金貸しビジネスをやったからこそ、多くの人を救済できたのです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>ビジネスシステムというのは、それが利益を生み出す限り</span><br /> <span style='font-size:170%;'>無限に膨張できるという、永久機関のような性質を持っています。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>だから、「貧者の救済」と「利益の創出」の二つの効果を生み出す</span><br /> <span style='font-size:170%;'>ビジネス構造を組み立てれば、</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>自己犠牲によって貧困者を救う場合の何百万倍もの数の人々を</span><br /> <span style='font-size:170%;'>救うことが出来るわけです。</span></p><br /> <p>こういうビジネスシステムは、人類史上最強の貧者救出マシーンなのです。</p><br /> <p>もし、彼が単に自分のお金を貧しい人々分け与えてしまって文無しになってしまったら、それは美談として語られたかも知れません。<br /> しかし、実際に彼が救った貧者の数百万分の1の人数しか救うことができなかったでしょう。</p><br /> <p>つまり、<br /> <span style='font-size:170%;'>人助けにおいて重要なのは、自己犠牲なんかじゃなく、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>戦略と、ビジネスモデルと、効率と、生産性だ</span><br /> ということです。<br /> 通常のビジネスをするときに重要なことと、ほとんど変わりません。</p><br /> <p>そもそもビジネスモデルの基本はwin-winです。<br /> 関係者全員が得するような構造を組み立てることで、取引が成立し、利益が出始めます。</p><br /> <p>他人を助けるのも同じで、自分を削って分け与えるような安易な人助けは、lose-winであり、持続可能な構造が組み立てられません。<br /> 人助けをしたければ、自分も利益を得られるような「win-win取引」をするのが一番効果的なのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>自分の体力を温存したまま、「生産性の高い人助け」をする</h4> <p><br /> しかし、誰でもムハンマドユヌス氏になれるわけでもないので、もっと、ぼくたちでも気軽にできそうな例を挙げてみます。</p><br /> <p>以前、ある企業のホームページの制作を請け負っている女性が、顧客から大量の要求を押し込まれて「とてもこなしきれない。どうしよう。」と言って悩んでいました。話を聞いてみると、マネージメントや交渉が弱い人のようで、作業がカオスになっていました。デスマーチに近い状態です。<br /> こういうとき、自己犠牲教の信者はその女性の仕事を徹夜で手伝ってやり、一緒に苦しんであげることこそが、美しく正しい行為だと考えるでしょう。それこそが「真の思いやり」のある人として、彼女の心に深い感銘を与えるのでしょう。</p><br /> <p>しかし、美しくも正しくもない薄情な私は、自己犠牲を払って、一緒に徹夜で仕事を手伝ったりなんかするつもりはありませんでした。<br /> そのかわり、彼女に、顧客からの要求項目をリスト化させ、ToDoリストを洗い出させ、各項目の工数を見積もらせ、線表を引かせました。<br /> それで、その線表をもとに、この線表では、とうていこなしきれない作業であることを、できるかぎり明快なロジックで顧客に説明し、交渉によって、要求のいくつかを顧客に諦めさせるための作戦を組み立ててあげました。<br /> また、顧客からの追加要求があるときには、そのたびに線表を伸ばし、追加料金が発生する、ということを顧客に認めさせるように持っていく作戦も立てました。<br /> ようは、このままではこのプロジェクトが破綻したり、品質が下がったり、スケジュールが遅れたりして、お互いの損になる。そもそもデスマーチで得する人は、顧客も含めて誰もいない。お互いwin-winになるには、このようにするのがよいだろう、って、そういう感じの平凡な説得ロジックで、「作戦」と言うほど大げさなものじゃなかったですが、少なくともその時の彼女はそれを必要としていたわけです。<br /> ぼくとしては、たいした手間も時間もかけなかったけど、結果として、その女性の仕事は上手くいき、顧客も満足し、外注として使われていたその女性は顧客の会社の契約社員になりました。</p><br /> <p>こういう風に、ほとんど自己犠牲を払わずに人助けをすれば、より多くの人を、<b>気軽に</b>助けることができると思うのです。<br /> 自分の資産も、時間も、体力も、つねに温存したまま人助けをする方が、実際にははるかに多くの人を助けられると思うのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>募金も、投資効果を十分に考えてやれば、何千倍もの人々の未来を変えられる</h4> <p><br /> また、単にお金を与えるにしても、十分に投資効果を考えてやるべきだと思います。</p><br /> <p>たとえば、ネパールの山奥の村を尋ねたとき、<br /> 必要最小限のお金を残して、手持ちの現金のほとんどを入れてきたことがあります。<br /> 「子供たちの教科書が買えなくて困っている」と書いてあったからです。</p><br /> <p>それは、見た目にはけっこうな札束でしたが、日本円にするとたかだか10万円くらいのものでした。<br /> しかし、それでもネパールの山奥の子供たちにとっては、十分に意味のあるお金だとボクは考えました。<br /> なぜなら、それによって教科書を買い、知識を得ることで、何人もの子供たちが将来よりよい職につき、よりよい人生を送ることができると思ったから。</p><br /> <p>その同じ10万円を、日本で失業中でお金が無くて困っている30代の男性にあげたとしたらどうでしょう?<br /> たしかに、彼は一時的に助かるかも知れません。<br /> しかしそのお金は、彼の未来をそれほど劇的には変えないと思うのです。</p><br /> <p>だから、ぼくはそういうことはしません。<br /> そんなお金があったら、東南アジアの貧しい孤児院や学校に寄付します。<br /> 実際、将来お金持ちになったら、東南アジアの貧しい地域に孤児院や学校を作ろうとか、わりと真剣に考えてたりします。<br /> 子供には、未来がたくさん詰まっているから。<a href="#f-f8954181" name="fn-f8954181" title="当然、そこでは、自分の力で自分の未来を切り開けるような子供に育てるつもり。">*4</a></p><br /> <p>これは、残酷なようですが、災害時におけるトリアージと同じです。<br /> 個人の与えられるリソースによって救える人など、ごくわずかでしかありません。<br /> だから、そのリソースによって助かる人を優先して助ける。<br /> これは、裏を返せば、手当を施してもあまり効果のなさそうな人を放置する、ということでもあります。<br /> ぼくの手に負えない人は、ボク以外の誰か、もしくは、政府にでも助けてもらうしかありません。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>生物学的な起源</h4> <p><br /> 京都大学の人類進化学教授の西田利貞氏が著作「人間性はどこから来たか」で議論しているような進化心理学的アプローチで考えるなら、人が「自己犠牲を伴うような人助け」を尊いと思う心理構造は、狩猟採取の時代に形成されたのではないかとも思えます。</p><br /> <p>狩猟採取の時代には、環境から取れる果物などのリソースは限られており、人助けするには、<br /> ●自分の持っている食料を他人に分け与える<br /> ●自分の身を犠牲にして、外敵から他人を守る<br /> というような方法しかなく、いずれにしても、自己犠牲を伴わずに他人を助けることなどろくにできませんでした。</p><br /> <p>むしろ、自己犠牲の量が大きいほど、他人に与える恩恵も大きいというような、シンプルな関係にあったのではないでしょうか。<br /> これにより、「自己犠牲による人助けが尊い」という感性が形成されたのではないかと考えることもできるのではないでしょうか。</p><br /> <p>しかし現在、われわれはアフリカの森の中に住んでいるわけでも、南シベリアでマンモスを追いかけながら暮らしているわけでもありません。とてつもなく高度に発達した文明の中で暮らすわれわれの場合、自己犠牲と人助けは、必ずしも一対一で対応しないどころか、むしろ自己犠牲をしない方がより多くの人を助けられるような、そんな別のゲームの中に生きているのです。</p><br /> <p>だから、自己犠牲を伴わない人助けは、直感的に、たいして尊いことのように感じられないのは当然ですが、だからと言って、いつまでもその本能に引きずられて人助けをすると、現代日本においては、単なる独り善がりになってしまうことが多いと思うのです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>「自分の富をふやす過程」と「その富を他者に分け与える過程」の二つの過程で他者を助ける</h4> <p><br /> 「他人から搾取することで蓄積した富」で人助けをするのでは、それはサトウキビが吸収したCO2を、バイオエタノールカーが燃焼させて進むようなもので、富の搾取と分配の収支はゼロになってしまいます。つまり、人助けになってません。</p><br /> <p>従って、他人を搾取するのではなく、<a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080302/1204438490">&#x3042;&#x304F;&#x307E;&#x3067;&#x95A2;&#x4FC2;&#x8005;&#x5168;&#x54E1;&#x304C;win-win&#x306B;&#x306A;&#x308A;&#x3001;&#x4E16;&#x754C;&#x5168;&#x4F53;&#x306E;&#x5BCC;&#x306E;&#x7DCF;&#x91CF;&#x304C;&#x5897;&#x3048;&#x308B;&#x3088;&#x3046;&#x306B;&#x3001;&#x30D6;&#x30EB;&#x30FC;&#x30AA;&#x30FC;&#x30B7;&#x30E3;&#x30F3;&#x3067;&#x65B0;&#x5546;&#x54C1;&#x3084;&#x65B0;&#x30B5;&#x30FC;&#x30D3;&#x30B9;&#x3092;&#x958B;&#x767A;&#x3057;&#x3001;&#x63D0;&#x4F9B;&#x3059;&#x308B;&#x3053;&#x3068;&#x3067;&#x3001;&#x81EA;&#x5206;&#x306E;&#x5BCC;&#x3092;&#x6B96;&#x3084;&#x3057;&#x3066;&#x3044;&#x304F;&#x3079;&#x304D;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080302/1204438490" alt="">でしょう。</p><br /> <p>そうすることで、自分の富を増やす過程で、価値を創造し、多くの消費者に価値を分け与え、多くの良質な雇用を創出して人々に分け与え、多くの利益を生み出すことで多くの税金を払って、福祉を通じて、多くの貧困者を救うことができます。</p><br /> <p>そうやって築き上げた富が、やがて自分1人では使い切れないほどになったら、それを使って困っている人を助ける、という別のフェーズへ移行することができます。<br /> 実際、そういう二つのフェーズをたどる起業家はたくさんいるようです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>ネット空間における人助け</h4> <p><br /> おなかを空かしている人には、魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えた方がいいと、よく言われます。<br /> なので、ネットでは<br /> 「こういう風にすれば、自分で魚が釣れるよ」<br /> 「実際に、魚はたくさんいるよ。自分で釣ろうという意思を持って望めば魚は釣れるよ。」<br /> という記事がよく書かれます。</p><br /> <p>こういうネット記事の良い点は、ある人がその記事を使って助かったとしても、その記事は少しも減らないということです。<br /> 食べても食べても無限に元通りになる魔法のパイみたいなもので、限られたリソースを他人と奪い合わなくてもよいのです。</p><br /> <p>もちろん、こういう記事は、全ての人に役に立つわけじゃありません。<br /> 記事にもよりますが、良記事の場合、だいたい、2・6・2の法則が働く感じをイメージするのがいいですかね。</p><br /> <p>上位2割の人は、既に魚の釣り方を知っている人たちなので、この記事を読んでも役に立たない。<br /> 下位2割の人は、魚の釣り方を教えてもらっても、釣れるようにならないので、やはり役に立たない。<br /> その中間にいる6割の人は、程度の差はあれ、そういう記事が役に立つ部分がある。</p><br /> <p>魚の釣り方を教えてもらっても魚が釣れるようにならない2割の人には、たとえば次のような人がいます。</p> <blockquote> <p>●日々の労働に疲れ果て、創意工夫によって現状を切り抜けるというところまで頭が回らない人。こういう人は、魚の釣り方を教えてもらっても、事態を改善するための余力がないので、生活は改善されません。<br /> ●争いごとが心の底から大嫌いで、たとえ建設的な争い(交渉)であっても、それをすることができない人。交渉によって勝ち取るという行為自体が、醜悪な行為だという価値観を持っているため、交渉によって相手の取り分と自分の取り分をきちんと調整することができない人。こういう人に、交渉によって相手とwin-winの関係を築き、自分の取り分を確保しろ、と言っても、価値観が違うので、それが受け入れられることはありません。だから、魚の釣りを教えても無駄です。<br /> ●性根まで徹底的に腐りきった邪悪な社員が大勢いるブラック会社にいて、win-win関係を築くどころか、建設的な交渉の余地がまるでなく、かつ、病気の親を抱えているなどの理由で、収入を途切れさせるわけにいかず、そこから脱出できない状態にある人。<br /> ●自分の住んでいる地域の経済状態が最悪で、ろくな雇用にありつけない人。しかも、病気の親を抱えている上に、引っ越し費用もないので、その地方を脱出できない人。<br /> ●鬱状態になっていて、自力で事態を改善する気力がまるで湧かない人。<br /> ●かなり高齢になってしまって、気力・体力ともに衰え、いまから人生をやり直すのが困難な人。<br /> ●生まれつき軽度の精神障害や知的障害を持っているため、自力で食い扶持を得るのが困難な人。<br /> ●子供の頃から、悪いことが起きるとなんでも人のせいにして育ってきたので、会社で悪いことが起こったとしても、自分で事態を解決する、という発想には決してならない人。<br /> ●上記の要因が、少しずつ重なり、複雑に絡み合った結果、魚の釣り方を教えてもらってもどうしょうもない状態の人<br /> ●もちろん、日本に限定せず、対象を拡大すれば、もっといろいろ出てきます(あまり拡大すると、2割どころではなくなりますが)。たとえば、貧しくて学校教育を受けられず、文盲の人(主に日本国外の貧困国の人たち)に、ネットには無尽蔵のリソースがある、と言ってもまず役に立ちません。<br /> ●ほかにもまだまだいろんなタイプの人がいるでしょう</p> </blockquote> <p><br /> 「魚の釣り方」記事を書く人間の多くが、こういう2割の人たちがいるということが分からないほど世間知らずではないことは、彼らのブログの過去ログを読めば、感覚的に分かります。<br /> このことから、そういう「魚の釣り方」記事を書く人間は、その2割ではなく、その記事が役に立つかも知れない6割の人間に向けて書いている、ということが分かるわけです。</p><br /> <p>そして、その2割の、どうやっても魚を釣れない人に必要なのは、魚の釣り方ではありませんから、その2割の人たちに関する提案やライフハックや考察は、別記事として、<a href="http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50907051.html">&#x30D9;&#x30FC;&#x30B7;&#x30C3;&#x30AF;&#x30A4;&#x30F3;&#x30AB;&#x30E0;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50907051.html" alt="">や、<a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080308/1205057362">&#x751F;&#x6D3B;&#x4FDD;&#x8B77;&#x53D7;&#x7D66;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080308/1205057362" alt="">や、<a href="http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50982039.html">&#x5211;&#x52D9;&#x6240;&#x5185;&#x306E;&#x77E5;&#x7684;&#x969C;&#x5BB3;&#x8005;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50982039.html" alt="">などをテーマとして書かれるわけです。</p><br /> <p>ただ、これはあまり理解されないようで、結局の所、ネット空間で魚の釣り方を教えるという試みは、たくさんの偏見に覆われてしまい、そういう記事はあまり書かれなくなり、本来ならそれによって助かったはずの人に届かないままになってしまうような気がします。</p><br /> <p>また、もう一つの、そしてより深刻な問題は、そもそも、本当に魚の釣り方を必要としている人の多くは、そもそもネットにアクセスしない、ということです。</p><br /> <p>こういう構造があるため、ネットで魚の釣り方を知らせる記事を書くことで人助けをする、というのは、あまり効果をあげないかもしれません。</p><br /> <p>一方で、ネットで気軽に募金したり、ネットで募金先の情報を得たり、そういうボランティアサークルのSNSに加入したりと、そういう方面の可能性は大きいのではないかと思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>おわりに</h4> <p><br /> 結局、効果的な人助けをやるには、何よりもまず、自分を強くすることだと思います。<br /> より多くのスキル、人脈、資産を蓄積し、どんどん成長することです。<br /> それも、パイの食い合いをするのではなく、みんなが豊かになるようなwin-winのビジネスモデルによって。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>いまの手持ちの100万円をそのまま他人にあげてしまえば、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>1人しか助けられません。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>しかし、その100万円を1000万円に殖やし、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>それを利回り10%で運用すれば</span><br /> <span style='font-size:170%;'>毎年1人ずつ助けられるようになります。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>1000万円を1億円に殖やしてからなら、毎年10人ずつ助けられます。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>1億円を10億円に殖やしてからなら、毎年100人ずつ助けられます。</span></p><br /> <p>スキルも同じです。<br /> いまあるしょぼいスキルのまま、たくさんの時間を使って人を助けても、ごく限られた数の人しか助けられません。<br /> いまよりもはるかに強力なスキルを身につけてから人助けをすれば、いつでも気軽に、頻繁に人助けをすることができます。</p><br /> <p>自己犠牲などして、自分を減らして人助けをするよりも、自分の力を温存し、むしろどんどん膨張させながら人助けをした方が、はるかに多くの人を助けられるのです。</p><br /> <p>もし、ハーバード大学にいたビルゲイツがマイクロソフトを作らずに、NPOでボランティア活動をする人生を選んだなら、これから彼に救われるであろう何千万人もの人々には、救いの手がさしのべられることもないまま暗く悲惨な人生を送ることになったかもしれません。</p><br /> <p>ここで興味深いのは、ビルゲイツ個人がどのようにしてその財を築いたか、ということです。昔のビルゲイツはやたらと独占にこだわっていたようです。実際、えげつないやり口のビジネスをたくさんやってきました。無理矢理買収攻勢をかけて、買うことが出来ないとなると、莫大な資金を投入して対抗製品を作り上げて、悪名高いembrace and extend戦略などのこすっからい仕掛けでシェアを奪い取り、相手を潰す。そうやって、無数の会社がマイクロソフトに吸収されたり、潰されたりしてきました。</p><br /> <p>しかし、そうまでして資産を築いても、結局、彼はその数%しか自分のために使っていません。そもそも、個人が使えるような額ではなくなってしまっているのです。<br /> 自分で使い切れない資産を持ったら、あとは他人のために使うしかない、というわけです。</p><br /> <p>実際、アジア通貨危機の「戦犯」とまで言われた妖怪ジョージ・ソロスも、結局、莫大な私財を慈善事業に投入しています。<br /> 金の亡者と叩かれまくった村上ファンドの村上さんも、結局、NPOに多額の寄付をしています。<br /> ホリエモンや村上さんと戦った側のSBIの北尾さんも、恵まれない子供たちへの支援を行っています。</p><br /> <p>このように、世間から金の亡者と非難されているような人たちですら、現実には、膨大な私財を投じて慈善事業を行っているのです。</p><br /> <p>結局の所、多くの人は、十分に自分に価値を蓄えれば、やがて自分の中から価値があふれ出し、他人に分け与えられずにはいられなくなるのです。</p><p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060414/1144999515">&#x30B3;&#x30DF;&#x30E5;&#x30CB;&#x30B1;&#x30FC;&#x30B7;&#x30E7;&#x30F3;&#x80FD;&#x529B;&#x3092;&#x30A6;&#x30EA;&#x306B;&#x3059;&#x308B;&#x4EBA;&#x304C;&#x919C;&#x60AA;&#x306A;&#x7406;&#x7531;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060414/1144999515" alt=""></p> <blockquote> <p>孤独の中で粘り強く自分を練り上げ、じっくりと力を蓄え、価値創造の力を築きあげることに専念すべきでしょう。やがて自分の中が価値で満たされ、泉のようにあふれ出し、すべての生命にあまねく光を注ぐ太陽のように、あふれ出た価値を人々に分け与えないではいられなくなるまで。。。</p> </blockquote> <p><br /> ただし、この「起業によって個人では消費しきれないほどの富を創出することによって、多くの人助けをする」というのは、一つのモデルにしかすぎません。<br /> しかも、俗に千三つと言われるように、このモデルを目指した人のうち、実際にそれほどの財を築くのは、1000人中3人という感じの確率です。<br /> しかし、多くの偶然と、実力と、そのときの市場の状況など、複雑な要因が絡み合うので、現時点では誰がその3人になるかは分かりません。<br /> だから、その3人を生み出すために、残りの997人の挑戦と挫折が必要不可欠なのです。起業による価値創造とは、本質的に多産多死のモデルなのです。<br /> その意味で、3人の巨大な慈善家と同じぐらい、残りの997人の敗北者は、他者の救出に寄与しているとも言えるのです。</p><br /> <p>もちろん、だれもが、この997人のうちの1人になる覚悟をもって残り3人になることを目指さなければならないわけではありません。<br /> とてもじゃないが、そんな無謀な挑戦をする気にはなれない、という人の方が、世の中の大半でしょう。<br /> だから、これはたくさんある答えの一つにしか過ぎません。</p><br /> <p>しかし、それでも「今後の自分の人生でどうやって人助けをするか」という問いは残ります。<br /> この問いに対する答えは、それぞれの人が、それぞれの価値観に基づいて、出さなければなりません。</p><br /> <p>その中には、「やはり自己犠牲なしに他人を助けるのは難しいから、私のモデルでは、自己犠牲は必要だ」という結論になるケースもあるでしょう。だから、一概に全ての自己犠牲が悪い、ということにはなりません。</p><br /> <p>そして、ここから先は、ぼくが口を出すようなところではありません。<br /> あとは、あなたが自分で考えて、自分で答えなければならないことです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;color:red'>あなたの答えは、何ですか?</span></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>ご案内</h4> <p>チャイルドスポンサーシップなら、月々たった4500円で、貧困に苦しむ子供を1人救えます!<br /> 一日あたりならたった150円、ペットボトル1本分にすぎません。<br /> <a href="http://www.worldvision.jp/children/">http://www.worldvision.jp/children/</a><br /> その子と手紙のやりとりもできます。プレゼントを贈ることも出来ます。<b>その子に会いに行くことも出来ます!</b><br /> 支援金は、税金の寄付金控除の対象となりますから、確定申告すれば、寄付金の何割かは税務署から還付されます!<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>関連記事</h4> <p><a href="http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070209/1170975147">&#x3080;&#x304D;&#x51FA;&#x3057;&#x306E;&#x81EA;&#x7531;&#x7AF6;&#x4E89;&#x3067;&#x306F;&#x4EBA;&#x3005;&#x306F;&#x75B2;&#x5F0A;&#x3057;&#x8CA7;&#x56F0;&#x304C;&#x62E1;&#x5927;&#x3002;&#x81EA;&#x7531;&#x7AF6;&#x4E89;&#x3092;&#x5426;&#x5B9A;&#x3059;&#x308B;&#x3068;&#x6B32;&#x671B;&#x304C;&#x6291;&#x5727;&#x3055;&#x308C;&#x308B;&#x3002;&#x3053;&#x306E;&#x77DB;&#x76FE;&#x3092;&#x89E3;&#x6C7A;&#x3057;&#x3066;&#x307F;&#x306A;&#x304C;&#x7D20;&#x76F4;&#x306A;&#x6C17;&#x6301;&#x3061;&#x3067;&#x8C4A;&#x304B;&#x306B;&#x751F;&#x304D;&#x3089;&#x308C;&#x308B;&#x793E;&#x4F1A;&#x3002;</a><img src="http://b.hatena.ne.jp/entry/image/http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070209/1170975147" alt=""></p> </div> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-e8bc6569" name="f-e8bc6569" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">すでにした人、すでにしようとしている人は、この記事の対象外です。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-e0c1c1ce" name="f-e0c1c1ce" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">自分のお金を貧困者に配ることを前提とするとき、為替レートが重大な意味を持つ。かりに、年収10万円のアフリカ人が購買力平価で日本人よりも豊かだったとしても、彼らはスリランカの貧しい子供に月々4500円を仕送りすることは極めて困難。購買力平価ではより貧しい年収300万円の日本人の方が、はるかにたやすく月4500円をスリランカの子供に仕送りできる。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-51ef6e77" name="f-51ef6e77" class="footnote-number">*3</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">彼は宗教が大好きで、ボクの実家には、仏教やキリスト教の本がけっこうある。そもそも、ぼくはキリスト教系の幼稚園に行かされ、毎日神様の言葉を唱えて育った。食事の前には、天にまします我らの神よ云々と、神様といろんなものに感謝の言葉を述べてから、アーメンして食べ始めた。父親が定年退職後に教会を作りたいと言い出して、家族が困ったこともある。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-f8954181" name="f-f8954181" class="footnote-number">*4</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">当然、そこでは、自分の力で自分の未来を切り開けるような子供に育てるつもり。</span></p> </div> fromdusktildawn 日本でしか生きていけないと将来破滅するリスクがあるので、世界中どこでも生きていける戦略のご紹介 hatenablog://entry/10257846132601980093 2008-03-09T19:11:01+09:00 2018-08-08T13:03:30+09:00 あなたは、日本依存症にかかっていませんか? 日本依存症とは、日本でしか仕事を得られず、 日本でしか生活ができなくなる、危険な病気です。 <p>あなたは、日本依存症にかかっていませんか?</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>日本依存症とは、日本でしか仕事を得られず、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>日本でしか生活ができなくなる、<span style='color:red'>危険な病気</span>です。</span></p><br /> <p>日本依存症は、国家依存症の一種であり、会社依存症とよく似ています。<br /> <br /> <br /> </p> <div class="section"> <h4>会社依存症の恐ろしさとその回避策</h4> <p><br /> 会社依存症とは、ある特定の会社でしか通用しないスキルばかり蓄積して、他の会社では通用しない人材になってしまう病気です。</p><br /> <p>会社依存症にかかると、その会社の経営が悪化して、どんどん待遇が悪くなり、給料を下げられ、「このままここにいても、少しもいいことがないまま年を取っていくだけ」という状況になっても、ひたすらその会社にしがみつくしかなくなります。<br /> また、会社の都合で延々とつまらない仕事をさせられたり、いまいち納得のいかない降格や減給をされても、なかなか拒否しにくくなります。<br /> 上司や同僚と相性が合わず、人間関係がこじれてギスギスした雰囲気になり、毎日会社へ行くのが憂鬱になっても、そこに居続けるしかありません。</p><br /> <p>なぜなら、その会社を辞めると、ほかに行くところがなくなり、路頭に迷ってしまうからです。</p><br /> <p>このため、このことがよく分かっているエンジニアなどは、その会社の独自製品や独自環境でしか通用しないスキルしかたまらないような仕事をできるだけ避けるようにします。<br /> そして、「広く普及しており、かつ中長期的に需要があり、供給が不足ぎみで、かつ陳腐化しにくいスキル」を戦略的に蓄積します。<br /> たとえば、以下のようなものが考えられます。</p> <blockquote> <p>●要求分析、要求仕様定義、システムアーキテクチャ設計、RDBスキーマ設計、サーバの負荷分散設計、各種サーバのパフォーマンス解析・チューニング、デザインパターン、マルチスレッドプログラミング、システム管理、ネットワーク管理<br /> ●マネージメント、プロデューサ・デザイナ・経営者・営業・顧客との交渉スキルや連係プレースキル<br /> ●普遍性の高いコンピュータサイエンスの基礎<br /> ●Unix、RDB、正規表現、Java、Perl、TCP/IP、.NET、C#</p> </blockquote> <p><br /> 日本にはたくさんの会社があり、それぞれが浮き沈みを繰り返しています。<br /> いまいる会社が今後もずっと浮いたままだという保証はありません。<br /> 一つの会社に依存しきると、その会社が沈むとき自分まで一緒に沈んでしまい、酷い目に会います。<br /> いまいる会社が沈みそうになったら早めに別の会社へ移れるように準備しておくべきではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>国家に依存する危険性</h4> <p><br /> 国家に対しても同じことが言えます。<br /> 政府は全ての国民を幸せにするような政策を実行する<b>べき</b>ですが、必ずそれに成功するとは限りません。<br /> ときに間違った政策を行い、多くの犠牲者を出すこともあります。しかも、その犠牲者を救済するための政策が実行されないこともあります。<br /> もっと最悪なことに、間違った政策で、国全体が沈んでしまうようなことすらあります。</p><br /> <p>もちろん、そうならないように、われわれは選挙で正しい政策を実行してくれる政治家に投票す<b>べき</b>ですが、常に正しい政策を実行してくれる政治家が自分の選挙区から立候補してくれるとは限らず、自分以外の人々が常に正しい政策を実行してくれる政治家に投票してくれるとも限らないというのが、世の中の現実です。</p><br /> <p>だから、どんなに自分が正しい政治行動を取っていても、おかしな政策が実行され、自分の将来が危うくなるリスクは常に存在します。</p><br /> <p>たとえば、金持ちばかりが得をし、平均的な労働者が搾取される最悪の格差社会になってしまうかもしれません。<br /> あるいは逆に、今後スキルアップし、キャリアアップし、実力を身につけて高い年収をゲットしようと思っているのに、高額所得者の所得税が大増税されて、酷い搾取に苦しむようになるかも知れません。<br /> あるいは、少子化対策で、実質的に独身税をかけられたのと同じような状態になり、結婚するつもりも子供を作るつもりもない人たちの生活の質がかなり落ちるかも知れません。<br /> あるいは、国の医療システムが疲弊しまくって、まともな医療サービスを受けられなくなるかも知れません。あるいは、まともな治療を受けようとしたら、恐ろしく高い料金を徴収されるようになってしまうかもしれません。<br /> あるいは、地方格差を埋めるため、都市部の住民を徹底的に搾取し、地方にじゃんじゃんばらまくような政治が行われるかもしれません。そうすると、田舎に住む人間の暮らしはよくなるかもしれませんが、今後も都市に住み続けるつもりの人間の暮らしの質が大きく低下するかも知れません。<br /> あるいは、非正規雇用を減らし正社員を増やすという名目で、おかしな規制がかけられ、予期せぬ副作用が出て逆に多くの人が職を失うことになるかも知れません。余波で、自分まで失職するかもしれません。残された正社員の自分に酷いしわ寄せが来るかも知れません。<br /> 労働者保護や消費者保護という名目で、過剰に企業の手足を縛るような規制がかけられて、企業の活動が阻害されて経済が悪化したり、企業がどんどん日本から逃げ出すかも知れません。雇用が減り、治安が悪化し、日本が住みにくい国になるかも知れません。</p><br /> <p>要するに、投資において、全ての資産を一点がけするのが危険な投資戦略であるように、自分の生活基盤となる国家を一カ所だけに限定してしまうのも、極めて危険な賭なのです。</p><br /> <p><span style='font-size:170%;'>今までは日本が世界一豊かな国だったので、</span><br /> <span style='font-size:170%;'>この国にずっと住み続けるのが一番賢い戦略でした。</span><br /> <span style='font-size:170%;color:red'>しかし状況は変わりました。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>いまや日本よりも豊かな国や都市がどんどん生まれつつあります。</span><br /> <span style='font-size:170%;'>日本などよりも、はるかに先行きの明るい国や都市がたくさんあります。</span></p><br /> <p>本来、この惑星には、たくさんの国家があり、それぞれ浮き沈みを繰り返しています。<br /> いまいる国家が、今後もずっと浮いたままだという保証はありません。<br /> 一つの国家に依存しすぎると、その国家が沈んでいくとき、酷い目に会います。<br /> いまいる国家が沈みそうになったら、早めに別の国家に移れるように、準備しておくべきではないでしょうか。<a href="#f-5633ccbd" name="fn-5633ccbd" title="もちろん、この銀河にはたくさんの惑星があり、それぞれ生成消滅を繰り返しています。いまいる惑星がヤバくなったら、別の惑星に居住できるように、準備しておくべきではありますが、それは、われわれの子孫に託すとしましょう。">*1</a></p><br /> <p></p> </div> <div class="section"> <h4>国家依存症と愛国心は別の話</h4> <p><br /> こういうことを言うと、「おまえに愛国心はないのか?」と言い出す人間が時々いますが、依存症と愛国心とは別の話です。<br /> これは、結婚において、夫を愛していることと、夫に依存することが異なるのと同じことです。<br /> 経済的にも精神的にも自立していることと、夫を愛することは両立します。<br /> 夫婦仲は冷め切っていて、夫の暴力に怯えながら暮らしているにもかかわらず、夫に経済的に依存しているためにガマンし続けているような状態は、とても健全だとは言えません。<br /> むしろ、特定の国にまったく依存していないにもかかわらず、その国を愛し、その国に貢献することこそ、純粋に打算抜きの愛国的な行為なのではないでしょうか。</p><br /> <p>そもそも、「いろんな異性とつきあってみて、そのなかから最高のパートナーを見つけ出して結婚する」というのは、少しもおかしなことではありません。<br /> 「1人の異性しか知らず、最初につきあった異性と一生添い遂げなければならない」というのはいかにも古めかしい道徳観念です。これは国家についても同じことです。たまたま日本に生まれたからと言って、日本と一生添い遂げなければならないということはありません。<br /> むしろ、さまざまな国に住んでみて、そのなかから、自分にいちばんあった国に落ち着き、添い遂げる、という人生も十分にありなのではないでしょうか。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>日本以外にも快適に暮らせる国や都市はたくさんある</h4> <p><br /> 日本以外で暮らしたことのない人々の中には、日本だけが世界で唯一暮らしやすい場所で、日本以外には暮らしやすい場所などないと信じて疑わない人もときどきいるようですが、そんなことは決してありません。</p><br /> <p>むしろ、日本よりもはるかに、晴天の日が多く、気候が温暖で、からっとさわやかで、毎日気持ちよく暮らせる国や地域がたくさんあります。<br /> 食べ物も美味しく、人々も気持ちよく、街の各種施設も充実しており、遊び場所もたくさんある快適な都市は世界中にたくさんあります。<br /> どんなところでも、けっこう住めば都なのです。</p><br /> <p>また、日本以外の国は治安が悪くて暮らしにくいという偏見を持っている人もいますが、どんな国でも、きちんとした安全対策を講じ、危険な地域に近寄らないようにすれば、それなりに安全に快適にくらせるものです。</p><br /> <p>それに、どうせネット環境さえあれば、世界中どこでも、twitterやtumblrやmixiで遊べるし、ブログのコメント欄でクネクネすることもできるし、2ちゃんでだらだら過ごすことも出来るし、エロ画像をダウンロードすることもできるし、はてブで脊髄反射的なコメントを付けることもできるし、はてなスターを連打しまくって顰蹙をかうこともできるのです。</p><br /> <p>「わたしは(この国に生まれたというより)この惑星に生まれたのだ」という感覚を持ちながら生きるというのは、広々とした感じがして、なかなか気持ちの良いものです。<br /> せっかくこの美しい惑星に生まれたのに、日本という小さな小さな島国に引きこもったまま一生を終えるのは、じつにもったいないことではないかと思えてきます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>依存症からの脱出は難しい</h4> <p><br /> ギャンブル依存症、アルコール依存症、買い物依存症、恋愛依存症、セックス依存症、たいていの○○依存症は、そこから抜け出すのに苦労するように、日本依存症も、一度それにかかると、そこから抜け出すのにかなり苦労します。<br /> 簡単に日本依存症を抜け出す方法などありません。</p><br /> <p>また、タバコ依存症から抜け出すために、さまざまな方法があるように、日本依存症から抜け出すにも、さまざまな方法があります。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>資産運用、または、プチ資産運用による脱日本依存</h4> <p><br /> 日本依存症から抜け出す一番効果的な方法は、実は、英語力をアップすることではなく、日本の外でも安定した収入源を得られるようにすることです。(もちろん、最低限の英語力は必要ですが)<br /> 特定の国家に依存しない収入源を確保するわけです。</p><p>これに一番効果的なのが、資産運用で暮らせるようにすることです。</p><br /> <p>利回りのよい債権や株式に自分の資産を分散投資し、運用することは、どこの国に居住していてもできます。<br /> 日本の国債や株式で資産を運用していたとしても、日本に住んでいなければ運用できないということはありません。世界中どこに住んでいても、日本の国債や株式で資産運用することは可能です。<br /> それどころか、そもそも、日本の国債や日本の株式で資産を運用しなければならないということはありません。<br /> むしろ、全資産を円ベースに一点がけしてしまうと、今後円安が進んだときに、自分の資産が大きく目減りしてしまうというリスクを抱え込むことになります。<br /> 資産は、全世界に分散投資しておいた方が安全だし、世界全体の経済は、多少の波はあるものの、中長期的にはつねに成長し続けているので、正しくポートフォリオを組んで、世界中に分散投資しておけば、それほどひどいことにはなりません。</p><br /> <p>だから、いったん資産運用で暮らせるだけの資産を蓄積してしまえば、日本依存症からの脱却はかなり容易になります。</p><br /> <p>ここで、「日本がキャピタルゲイン課税の大増税を行ったら、資産運用では暮らしていけなくなるのではないか?」という疑問がわく人もいるでしょうが、そうでもありません。</p><br /> <p>まず、税金の徴収には、属人主義と属地主義の二つの方式があります。<br /> 属人主義とは、その人間の国籍のある国に税金を納めること。<br /> 属地主義とは、その人間が居住している国に税金を納めること。</p><br /> <p>日本は属地主義なので、自分が居住している国や地域に税金を納めることになっています。<br /> このため、日本でキャピタルゲイン課税の大増税が行われたとしても、海外で暮らしている限り、影響を被ることはありません。<a href="#f-5055f4b1" name="fn-5055f4b1" title="ハリーポッターの翻訳者が、スイスに居住していたのに、日本の税務署から税金を徴収されたのは、単に脱税目的の偽装だったからです。実際には、日本に会社を持ち、その会社経由で仕事をうけ、また、しょっちゅう日本にも来ていて、仕事の実態がほとんど日本であったのにもかかわらず、スイスに居住しているという事実を作り上げ、スイスの安い税金で済ませようとしたのが問題だったわけです。あれが、本当にスイスで会社を作り、スイスで仕事をしている日本人が、翻訳の仕事を受注し、かつ、一年のほとんどをスイスで暮らしていたなら、日本から税金を徴収されることもなかったでしょう。">*2</a></p><br /> <p>現在、属人主義を採用しているのは、アメリカとフィリピンぐらいなもので、極めて例外的なケースです。<br /> ですから、今後日本が属人主義に変更するリスクは、とても低いと思われます。</p><br /> <p>また、万一、日本が属人主義に切り換えたとしても、ある程度の資産を持つ人間に国籍を与えてくれる国は、けっこうあります。<br /> 日本が属人主義に切り換え、さらにきわめて重いキャピタルゲイン課税をかけてきたら、単に国籍を切り換えればいいことです。</p><br /> <p>ただ、問題は、資産運用で暮らせるようになるほどの資産を蓄積することが難しい、ということです。</p><br /> <p>そのため、当面は、収入の全てを資産運用だけで稼ぎ出すのではなく、収入の一部だけでも資産運用で稼ぎ出すような状態を目指してみてはどうでしょうか。<br /> 資産運用というより、プチ資産運用です。<br /> そうすると、日本がヤバくなったので、脱出して海外で職を得たのはいいが、最初のうちはまだ英語にも不慣れで、十分な収入を得られないというようなケースでも対応できます。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>世界標準のITスキルによる脱日本依存</h4> <p><br /> たとえば、前述のUnix、Web、RDB、Java、Perl、.NET、C#など、世界中に普及している技術の場合、そのスキルを身につけることで、日本依存から抜け出すことができます。<br /> また、これらに関連する要求仕様定義、オブジェクト設計技術、デザインパターンを適切に使いこなしたクラス設計、プロジェクトマネージメント、スケジュール管理なども、特定の国家に依存しないスキルです。<br /> これらのスキルを身につけたITエンジニアは、さまざまな国で職を得ることが出来ます。<br /> 実際、ボクの知り合いでも海外で働いているプログラマーがいます。<br /> むしろ、日本よりも快適に働いているようです。</p><br /> <p>もちろん、これらの技術は、会社依存症から脱却するための技術としても有効で、きわめて安全性の高い技術だと言えます。</p><br /> <p>これらの標準的なITスキルは、このように、会社や国家を超越して有効ですが、それ以上に驚きなのは、かなりの長い時間をも超越する力を持っているということです。<br /> たとえば、unixの基本アーキテクチャはボクが知っているだけでも十数年、ほとんど変わってません。マルチスレッドプログラミングやデザインパターンも十数年前に身につけたスキルは、かなりの部分、いまでもそのまま役に立ちます。はるか昔に覚えた、クロージャや再帰を使ったさまざまなプログラミングテクニックも、RDBのスキーマ設計のスキルも、ほとんどが、いまだに現役です。<br /> TCP、UDP、IP、HTTP、SMTP、POPなどのプロトコル類もいまだに基本はほとんど変わりません。新しく登場した.NETやC#にしても、過去にマスターしたスキルにほんのちょっと上積みしたぐらいのわずかな薄皮でしかなく、いままで蓄積した基本スキルはそのまま通用します。Haskellのような関数型言語ですら、似たようなコンセプトのプログラミングアーキテクチャは昔からあり、十数年前にマスターした技術の延長線上でなんなくマスターできます。<br /> このように、長期的に安定した技術やスキルを選んで身につけるようにすれば、会社、国家、時間を超えて、安定した収入源を確保できるのです。</p><br /> <p>ただ、注意しなければならないのは人材の需給バランスです。とくに、インドや旧共産圏からのプログラマの大量供給は要注意です。<br /> 一方で、ヨーロッパ、BRICs、VISTAなど、世界中で急速に経済が発達しており、ITエンジニアの需要が今後も全世界的に巨大化し続けるのは確実です。</p><br /> <p>ここでのポイントは、下級エンジニアや中級エンジニアは、需要はそれほど拡大しそうにないのに、供給は膨大になると思われるので、リスクが大きいということです。<br /> つまり、下級エンジニアや中級エンジニアの場合、海外に行くと、日本にいたとき以上に悲惨になる可能性があります。安易に日本から出て行くべきではないでしょう。</p><br /> <p>一方で、上級エンジニアは技術分野にもよりますが、今後、世界中で爆発的に需要が拡大することが見込まれていますが、供給が不足する可能性は十分に考えられます。<br /> 従って、自分が今後上級エンジニアになる可能性があると考えている人たちは、この戦略に沿って日本依存症から脱却しておいたほうが良い可能性が高いです。</p><br /> <p>あと、もう一つ考慮すべき点は、上級エンジニアになるような人は生産性が高いため、今後、高額所得者になる可能性があるということです。</p><br /> <p>現在日本では、格差是正の機運が大きく盛り上がっています。<br /> 今後、この機運の盛り上がりに押されて、高額所得者を狙い打ちする形で大増税が行われ、酷い搾取の対象にされるリスクもあります。</p><br /> <p>このリスクに対する保険という意味でも、早めに日本依存症を治療し、いつでも仕事と生活の場を海外に移せるようにしておいた方が安全かもしれません。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>スモールビジネスによる脱日本依存</h4> <p><br /> 日本人が海外で暮らしてみると、さまざまな小さなニッチビジネスのチャンスに気がつくことがあります。</p><br /> <p>たとえば、日本にはあって当たり前なのに、その国にはない商品やサービス。<br /> それは、日本のやり方を現地方式にアレンジすれば、それなりに繁盛する商売ができるかもしれません。</p><br /> <p>あるいは逆に、その国のおもしろい商品やサービスで、アレンジすれば日本でもウケそうなもの。</p><br /> <p>もしくは、現地の安い人件費を利用して、何かを作らせ、日本に持ち込むというパターンもあるでしょう。<br /> 実際、ネパールに小さな工場をもっていて、そこで自分のデザインした服を作らせ、日本に輸入して販売しているという女性に会ったことがあります。</p><br /> <p>こういうビジネスのネタをみつけたとき、スモールビジネスを興すスキルを持っていると、そのチャンスを活かして、その国で商売をはじめることができたりします。</p><br /> <p>とくに、最近急速に豊かになったアジアの国々では、日本がかなりブランドになっています。<br /> とくに富裕層は、日本のさまざまな質の高い品々やサービスを求め、日本の産物に信仰のようなものを抱いています。<br /> これをうまく利用することで、いろいろなニッチビジネスを作り出すことができるかもしれません。</p><br /> <p>スモールビジネスのスキルとは、小さな会社向けのマーケティング、マネージメント、経理などのスキルです。<br /> たとえば、どんな小さなビジネスでも、どんな商品を、どんな顧客に売るのか、そのために、商品にはどのような魅力がなければならないのか、顧客は、どういう理由でその商品にお金を払うのか、どのようにして利益が出る構造になっているのか、などのビジネスモデルを組み立てなければなりません。<br /> そして、いざ、ビジネスプランが出来たら、場合によっては人を雇い、契約を結び、信頼関係を作り上げ、法律に則って取引しなければなりません。関係者全員が気分良く仕事できるように、win-winの構造を作り出す必要があります。<br /> また、さまざまな法律を調べ、その法律に則ってビジネスを運営する必要があります。<br /> さらに、会社を設立し、会計ソフトで帳簿を付け、経理と資金の管理をする必要があります。<br /> また、予算計画を立て、融資なり出資なりで資金を調達する必要もあります。</p><br /> <p>こういう小さなビジネスを最小限の規模ではじめてみて、いざ、顧客の反応が上々だったら、しだいに規模を拡大していけばいいのです。<br /> 思ったより反応が悪ければ、早期に撤退するか、あるいは、やり方を変えて再度トライしてみたりすればいいでしょう。</p><br /> <p>そして、スモールビジネスの醍醐味は、たまたま大ヒットしたときのうまみです。<br /> 日本のサラリーマンの頂点とも言える、上場企業の社長の年収でも、たかだか4000万円にしかなりません。<br /> これに比べ、スモールビジネスをヒットさせた場合、実質的に年収1億円を優に越えてしまうということは、それほど珍しくないのです。<br /> 実際、ぼくの知り合いにもそういう人がいます。<br /> 「たかが自営業」とばかにできるようなもんでもないのです。<br /> 自営業は、あたると凄いんです。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>共通して必要な日本脱出アイテム</h4> <p><br /> どのようなモデルで日本依存を脱却するのであれ、共通して必要なアイテムがあります。<br /> それは、英語と資金です。</p><br /> <p>英語は当然として、なぜ資金が必要かというと、<br /> 海外で安定した収入源を確保するまでには、どうしても少しタイムラグが出るので、その間貯金を食いつぶしながら、生活する必要があるからです。また、引っ越し資金や、あちらで家具を買いそろえるお金も必要でしょう。<br /> また、スモールビジネスを立ち上げるのなら、そのための自己資本も必要です。</p><br /> <p>このため、日本依存から脱却するためにも、日頃から英語力を磨き、しっかり貯金してお金を貯めておく必要があるのです。<br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>おわりに</h4> <p><br /> とりあえず、資産運用、ITスキル、スモールビジネスの3つを紹介させていただきましたが、これら以外にも、日本依存から抜け出すための方法は、まだまだいろいろあるでしょう。方法は自由です。</p><br /> <p>また、この記事では、おもにリスク回避という点から国家依存症から脱却する方法をいろいろ検討しましたが、そんなことよりも、たった1回しかない人生ですし、この小さな島国に引きこもったまま一生を終えてしまうのは、あまりにももったいないと思いませんか?</p><br /> <p>そろそろこの島ばかりに引きこもるのをやめて、この青く美しい地球という惑星を縦横無尽に味わい尽くしてみてはいかがでしょうか。</p> </div><div class="footnote"> <p class="footnote"><a href="#fn-5633ccbd" name="f-5633ccbd" class="footnote-number">*1</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">もちろん、この銀河にはたくさんの惑星があり、それぞれ生成消滅を繰り返しています。いまいる惑星がヤバくなったら、別の惑星に居住できるように、準備しておくべきではありますが、それは、われわれの子孫に託すとしましょう。</span></p> <p class="footnote"><a href="#fn-5055f4b1" name="f-5055f4b1" class="footnote-number">*2</a><span class="footnote-delimiter">:</span><span class="footnote-text">ハリーポッターの翻訳者が、スイスに居住していたのに、日本の税務署から税金を徴収されたのは、単に脱税目的の偽装だったからです。実際には、日本に会社を持ち、その会社経由で仕事をうけ、また、しょっちゅう日本にも来ていて、仕事の実態がほとんど日本であったのにもかかわらず、スイスに居住しているという事実を作り上げ、スイスの安い税金で済ませようとしたのが問題だったわけです。あれが、本当にスイスで会社を作り、スイスで仕事をしている日本人が、翻訳の仕事を受注し、かつ、一年のほとんどをスイスで暮らしていたなら、日本から税金を徴収されることもなかったでしょう。</span></p> </div> fromdusktildawn