使命と魂のリミット

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東野さんの医療ミステリは始めて読むな。
手術中の描写は、現役医師である海堂さんや久坂部さんほどリアルで専門用語バンバンのとは違うけど、そんなことは関係ないぐらい話の展開が緻密で引き込まれたのだよ。
医者としての、刑事としての、遺族としての、被害者の婚約者としての、それぞれの使命や運命、凍りつくような疑心暗鬼・・・・
主人公の研修医の最後の言葉が示す完全和解。
持っていき方、終わり方がさすがだなぁ。

久しぶりに本屋に寄ったが、店に足を踏み入れたとたんに東野圭吾の作品がわんさかと載せられたワゴンが目に飛び込んできました。

3月度のカレンダー

あら、3月やないの。
今日は天気が良くてあったかいわ。
ってことで、恒例のデスクトップカレンダーをいってみよー!

Audi A4 allroad ですな。
http://www.audi.com/com/brand/en/experience/audi_gallery.html#source=http://www.audi.com/com/brand/en/experience/audi_gallery.tab_0.html&container=tabAjax
アドレスが変わってるわ。

秘密・・・2度目

今日は4冊返して残り2冊・・・と思ったら予約本1冊来てました。
残り2冊は宮部みゆきの「模倣犯」の上下巻と今日の1冊は東野圭吾の「夜明けの街で」。
来週いっぱい持つかなぁ?

さて、東野圭吾の「秘密」を読みなおしました。
以前の感想では書かなかったけど、加害者(バスの運転手)側のもう1つの秘密について、こういう伏線の張り方がうまいな、と。
加害者側の元妻の長男、これが加害者の実子ではないのだが立派に成人して娘の藻奈美(中身は直子)と結婚するところでラストになるわけですね。
加害者の現妻の娘は、最後は元妻の資金援助で救われそうですがHappy Endというほどでもなさそう。
創作の上とはいえ、運命は平等ではないからねぇ。

で、読み直して痛かったのは、やはり娘の藻奈美(中身は直子)が高校生になってテニス部に入り、そこでの男子先輩との電話のやり取りに嫉妬した平介がやったこと、電話の会話を盗聴しよとしたところか。
自分でも卑怯で、陰湿で、やってはいけないことと理解しながらもそれでもやらざるを得ない男のエゴ丸出しが実にリアルで痛々しい。
で、藻奈美(中身は直子)にバレて・・・あぁ。。。。

この作品では「性の営み」を避けずに真正面からとらえたところが素晴らしい。
奇麗事で済まされないからね。
男としての本来あるはず欲情をうまく処理できない平介の痛さ加減が我がことのように感じて愕然としたわ。
心が妻でも外見が娘なら無理もない、禁断の所業となるわけで永遠の封印を決断した平介の思いが重くのしかかってきました。

さて、娘の藻奈美が高校2年生あたりから一挙に25歳になってしまっいて、その間の二人がどうだったのかは想像するしかないのですが、無事大学(多分東大医学部か?)に入って、卒業して医師免許を取ったというところでしょう。
藻奈美は娘役を演じきったであろうし、平介も父親として9年間ほど演じきったのだろう。
ただ、平介にとっては演技ではなく父親然としていたであろうことは想像に難くない。
彼の妻、直子は身も心も喪失したことになっていたのだから。

さぁ、ラストの藻奈美の結婚式当日が最大の山場。
藻奈美の体から直子は完全にいなくなったものとして9年間を過ごした平介にとって衝撃的な事実を時計屋から告げられる。
藻奈美が妻・直子の結婚指輪を溶かして新郎の指輪に作り直させていたのだ。
この指輪のありかは二人だけの秘密であったはずだし、それを平介には絶対に内緒でといって直させていた。
平介が全てを悟る、読者もこれが本題の「秘密」の本当の意味だったことを悟ることになる。。。。
妻・直子が消えたわけではない、あの時「直子」を捨てて藻奈美として生きていくことで平介を苦しみから解き放とうとしたんだということを。
平介は悟った上で姿が「藻奈美」である妻・直子を責めない。
責める理由もない、無意味だし。
それが切なくて哀しい、男だけどね。
表向き美しい幕切れ、そして地獄の始まりなのだよ、お互いに。
でも妻・直子は女だから図太く生きていけるんだよ、きっと。 結して悪い意味ではない。
その点、男は弱いよな。

物語で語られていない平介のその後・・・・どういった人生を歩んだのだろう?
藻奈美が25歳ということは、平介がその時点で54歳の勘定。
もう棺おけに片足を突っ込んでいるようなもの。
妻は2度目の人生を楽しむことは出来ても(もちろん彼女の責任ではないし、本心はどうなのかは計り知れないのだが)、彼は残りの余生を楽しめたのだろうか?
もちろん藻奈美は子供を産むだろうから孫が出来てお爺ちゃんになるわけだ。
ただ、それは妻の直子が実質的に産むわけだし、それも他人の子を。
わかりきっていることだといしても心境察して余りある。
再婚はどうだろう?
しないんじゃないだろうか。
妻が直子を捨てる時、「私のこと忘れないでね」と言った重くて罪深い一言が胸に突き刺さる。
平介のことだ、表面上は好々爺を演じただろうけどね。
そしていずれは訪れる最期のとき、藻奈美は平介をどう見送るのだろう?
互いに共有する「秘密」、もうこの秘密を知る人間が、かつては愛した夫がこの世からいなくなるというときに藻奈美はどう思うのだろう?
最期は妻・直子に戻って抱きしめて看取ったという風に思いたい。

この物語の続きを含めて妻・直子の視点でぜひ読んでみたいと思う。
ま、絶対に書かないだろうけどね。(^_^;