Hatena::ブログ(Diary)

fujiha 絵巻物語

2016-12-31

頬なでる潮風〜私説・源氏物語〜 10

 本年の為事を納め、大山崎天王山の麓にて半日遊ぶ。此処は、京と摂津の境なり。千利休も遊んだ土地なり。「物を思ひつゝあちこち歩みゐる 」はファウスト(森鷗外さん訳)。余はただ気楽に散策す。無心に歩み椎尾神社に参拝す。参道に落葉が積もってゐる。そのうす紫、ほのかにかがやくをみる。此は、御所枇杷殿、寧樂春日大社の杜の色と同じなり。その後、「山崎蒸留樽熟成酒」を飲みて京に還る。四条大橋西詰先斗町の洋食店○洋亭にて、山崎Highballで乾杯。花街で舞妓と源氏物語「須磨明石」や恋ダンス等を論じ、ハイランドThe MACALLAN12を飲む。本日は、天皇誕生日

 源氏物語が千年も輝き続け、わたしたちが、何か気になるのはなぜでしょうか。

光源氏や藤壷、紫の上、夕顔、空蝉、朧月夜らの感情と御話の状況、土地の時代の色、気分が「源氏鼠のようなうす紫」のなか、境界なく醸し出している。この境界のない、あやういバランスの上に成り立つ雰囲気をもつ御話は、「事実ではないが、真実である」モノ語りになっているからだと思います。枇杷殿や奈良若草山を廻り春日大社の森に出ますと、そこには、「透明感のあるうす紫(近世に定められたとはいえ、正に和服にも仕立てる「源氏鼠」に近いうす紫色)」に帯びているのがみえるときが(わたしにはよく)あります。源氏物語で暗示されている「うす紫」色は、宮中道長邸など現地で紫式部さんが実際に見て感じた色(波動?)を表しているのだと思います

伊勢神宮の幕では、遷宮の折に浅葱幕(青・白)を目にしましたが、あの青色も鯨幕の黒色も透明感があり、本来の色は赤み青み、玄を帯びているように(伊雑宮の日輪も)色を言葉で表すのは困難です。

 森鷗外さんも、欧羅巴、獨逸国であやうい「うす紫」を観たようです。

己は無事にヱネチアに帰つた 。紫色の空気を波立たせて 、サン ・ステフアノ寺の鐘が響いてゐた 。そしてアルドラミンの家の館の古い壁に嵌めてある 、血のやうな色の大理石の花形が 、運河の水にうつつてゐた 。

『復讐 』B A L T H A S A R A L D R A M I N . K U R Z E L E B E N S G E S C H I C H T E A U S D E M A L T E N V E N E D I G .アンリ ・ド ・レニエエ H e n r i d e R e g n i e r 訳 森鷗外より引用

 うす紫、紫式部さんが『源氏物語』で、森鷗外さんは 『復讐』で「人、怨霊、物の怪のあはれ」をどちらも「(うす)紫」で象徴しました。鷗外さんがゲーテさんの『ファウスト』の訳出で、「物を思ひつゝあちこち歩みゐる 」と表現したのは流石だと思います。

 「家庭教師」先の彰子さん(藤原道長の娘)も、もののけに憑かれ、祈祷したのが『紫式部日記』に記されています。そのときの様子もうす紫が映っていたのでしょう。

 「物を思ひつゝあちこち歩みゐる 」はファウスト。

 光源氏も「おもひくまなし」で、よく人(特に女性)を想い、思索し、本心を聞き、優しく「物を思ひ」ます。(いろごのみ。だから女性が寄ります。笑。)ファウストと光源氏が重なります。ゲーテさんも『ハムレット』のシェイクスピアさんもそして、紫式部さんも、このような、「物を思ひつゝあちこち歩みゐる 」登場人物、物語を通して、この世の不思議、真実、「もののあはれ」を描いたと、わたしは考えます。

 (ここはわたしの妄想です)紫式部さん談(「彰子(あきらこ)様、摂関政治で不満もおありでしょうけれど、もののあはれを受け入れてみてごらんなさい。なんとかなります。これが人生の醍醐味。(尊子内親王もそうでしたし、)わたしも激動の3年間など、(そして今もだけど)不遇が山ほどあります。ヒントは源氏物語。特に「若紫うすむらさき)」ですよ。若紫を読んで、石山寺で映る色をご覧になれば総てわかりますよ。円融天皇一条天皇の父)も見た色ですよ。(源氏物語の意図。時空を超え、しかも眼の前の御雑煮の湯気にも映る世界の秘密。)

彰子さんは、特に「若紫」が好きだったようです。

「余はただ気楽に散策」

何も考えずに無心に気楽にも大事だと思いますが、

「物を思ひつゝあちこち歩みゐる 」

ことで、もっと人の世の真実に近づき、モテる(笑)ようになるかもしれません。1:9ぐらいのバランスが良いでしょうか。いや、源氏物語で紫式部さんは、一見矛盾するようですが、「無心に、気楽に、物を思ひ」が一体となった、境界がない生き方を物語の筋と和歌で織りなして綴りました。醍醐・村上・円融天皇、尊子内親王、そして夫の宣孝さんや出会った人々、史書、物語は、そのような「もののあはれ」について気づかせてくれたのでしょう。

 

 松岡正剛さんの『千夜千冊』では、本居宣長さんや折口信夫さんの説に触れながら、「いろごのみ=もののあはれ」として、大変興味深い読み取りをしています。

 

 晩年の紫式部さんのことはよくわかっていませんが、心配していた(うす紫、もののあはれを伝授した)彰子さんの無事、母同様、彰子さんを護った娘賢子さん(後の大弐三位)の成長、活躍を喜んだことでしょう。須磨、明石にいた期間もあったと、わたしは思います。若菜下、懐かしく面白い東遊。(星飛雄馬のお姉さん明子のように、木陰から…(笑))松の緑、頬なでる潮風のなか佇むその穏やかなほほえみには、十二単よりも、さらに薄い薄いうす紫、源氏鼠の着物が映えます。

今年も一年読んでいたただき、ありがとうございました。記事を書く途中先ほど、神社への参拝をしました。シングルモルト(今宵は山崎12年)を頂きながら家族と年越しです。皆様良いお年をお迎えください。

東天紅東天紅 2017/01/08 20:46 明けましておめでとうございます。酉年ですが東天紅がいる石上神宮には一度、参拝してみたいです。
元旦には賀茂鶴を頂きました。昨年、呉の大和ミュージアムに行きましたが、大和に積まれた日本酒は賀茂鶴でした。大和との関係は知らずに年末、酒店で何気なく賀茂鶴を選んだのですが、美味しかったので調べてみたら大和との因縁を知って驚きました。
鼠色っぽい紫色には深い意味があるのですね。
博多は十日恵比須のお祭りで賑わっていますが、サントリーといえば、橙サイトでヒルコ神の分霊を宿すとされていた女性歌手さんが、天然水のCMで南アルプスの山に登っていました。ヒルコ神もかなり健脚になられたようです(笑)

ふじ葉ふじ葉 2017/01/08 22:08 明けましておめでとうございます。

東天紅さん
石上神宮は、東天紅さんにとって何かの縁のあるところかもしれませんね。
わたしの知人も昨年何人か大和ミュージアムを訪れ、カレーなどのお土産をいただきました。呉は祇○の水炊きの御店関連で、御縁をいただきました。水炊きも、元祖は博多ですね。日本酒も好きなので、近々の一杯はおいしそうな賀茂鶴にしてみます。『宇宙戦艦ヤマト』では、軍医の佐渡酒造(笑)が「大酒」や「大吟醸 唯我独尊」を持ち込んでいますね。
小説では、(一部歴史のとらえに違和感もありましたが)『ウィスキー・ボーイ』吉村喜彦(PHP文芸文庫)を愉しみました。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/fujiha/20161231/p1