琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

文章から人はわからない

http://blog.livedoor.jp/otaruohtaru/archives/50436344.html

僕は以前、「ネット上の文章と人間性」に関して
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060119#p3
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060204#p2

↑のようなことを書きました。僕は基本的に「文章の力」を信じたい人間なので、こういう物言いになってしまうのかもしれませんけど。

中学校の頃だったかな、僕はけっこう真剣に悩んでいたのです。
外見とか、スペック(学歴とか職業)とか、口のうまさとかじゃないところで、本当に自分のことを好きになってくれる人と出会いたいものだ、と。
でも、年を重ねるたびに、僕にはだんだんわかってきました。
「人間性」なんていうのは、実は、外見とかスペックとか以上に「虚飾」なのではないか、と。

ここに僕という一人の人間がいます。そして、あなたという人間がいます。
外見による先入観を持たないために、あなたには僕の姿が見えません。
スペックがわからないように、あなたには僕についての事前の情報がありません。
口のうまさに騙されないように、あなたには僕の声が聞こえません。

……これで、人は人を好きになれるのかね?

「手のぬくもり」とか言うけどさ、そんなの、こういう「情報」がない状態では、「ぬくもり」なんて誰でもみんな一緒じゃないのかね(子供やお年寄りくらいはわかるとしても)
そもそも、「ぬくもり」だって、排除されるべき「先入観」なのだし。

実は、僕たちが「外見や職業に関係なく」なんて言っている裏には、「(こんなにかわいいのに)温かい人」とか「(あんな偏差値の高い大学を出ているのに)謙虚な人」なんていうような、「前提条件」が隠されている場合が多いのです。
「心」を純粋に判断しているつもりでも、その計算式には、ちゃんとこういう「前提条件」が、意識下、無意識下にかかわらず、含まれていると思うのですよ。

「人間性」とか「心」なんて、結局誰にもその正体は「わからない」のです。ガンダムに出てくるニュータイプにでもならないと、永遠にわからないよ、きっと。だから逆に僕は、そこに書いてあることから、「その人が身にまとっている鎧の一部」を読み取りたい。
たぶん、鎧こそが僕たちの「正体」であって、それを全部はぎとったら、そこにはもう、何もないんだよ。

「中身」なんて、幻想だ。

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

医療現場を取り上げたミステリー。「このミステリーがすごい!大賞」を圧倒的な評価で獲得した作品でもあり、「面白い」と評判でもあったので、「医療現場モノ」の小説とかはあまり好きではない僕も、手にとってみる気になったのです。
それで、読み終えての感想なのですが、確かに面白いミステリーなので、一読の価値はあると思います。けっこう専門的な用語も使われているのですが、それはかえって、リアリティを増す効果を挙げているものだと想像できますし。田口先生、白鳥、高階院長、桐生先生などの登場人物も個性的かつ魅力的です。これはいったいどうなるんだ?と最後までぐいぐいと引っ張られていくのです。各所で賞賛されている、白鳥という人物に対して、僕はあまり好感は抱けなかったのだけれど。

ただ、「手放しで絶賛」とまではいかないところもあって。

(以下、完全ネタバレなので、未読の方は御注意ください)

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