琥珀色の戯言 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2008-01-16 流星ワゴン/文学賞メッタ斬り!|第138回芥川賞・直木賞選考会

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流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)

出版社 / 著者からの内容紹介

38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。

僕らは、友達になれるだろうか?

死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

この本、かなり評判が良いのは知っていたのですけど、こういう「タイムスリップもの」「親子の感動ストーリー」には全く心惹かれないので、実際に手にとることはありませんでした。重松清さんの本では、以前読んだ『その日のまえに』が、あまりに「泣け泣け小説」だっので、あまり好きになれなかったということもあって。

先日、『本の雑誌』の「文庫ランキング」のなかで書店員さんが薦めていたのを読んで購入したものの、しばらく「そのうち読むリスト」に積んだままにしていたのですが、当直のときに思いついて読み始めてしまったら、見事なまでにのめりこんでしまいました。面白い、面白いですよこれ。

いや、「父と子の『親子愛』の物語」「幸せなはずの『日常』の陰に芽吹いていた破綻」というようなテーマは確かにしっかり描かれているのですが、僕はずっと「それで、この主人公は結局どうなるのだろう?」という興味を持続していられたんですよね。

「この物語の結末を見届けたい感」とでも言えばいいのでしょうか。

正直、この本の「内容紹介」を読んでも、「なんてベタな『泣け泣け小説』なんだ……浅田次郎も似たようなの書いてたじゃないか(『地下鉄に乗って』とどちらが先かは知りませんが)」としか思えなかったのですが、純粋に「先が知りたくなる物語」としてオススメできる作品です。

設定そのものはかなり強引で中途半端に御都合主義的であり、「そんなことまでできるのに、なんで未来に反映されないの?」なんて言いたくなるところはあるんですよね、確かに。この世界の、そしてワゴンの「ルール」は、読んでいてもよくわかりません。「論理的整合性」については、いいかげん極まりない小説です。

ただ、にもかかわらず、本当に「面白い」のですよこれ。

中高生くらいのときに読んでいたら、「よくわからない小説」で、なんでこんなチャンスをみすみす逃してしまうんだ、とか、どうしてそんな裏切りに対して寛容になってしまうんだ、というような憤りすら感じてしまうかもしれません。でも、30代半ばをとぼとぼと彷徨っている僕にとって、この小説は、あまりに「自分のために書かれたように思われる作品」だったのです。

「お父さんは、よくわかったよ、いまので。だから、もう無理して考えなくていいんだ」

「……ごめんなさい」

「謝らなくていい」

そんな必要はどこにもない。誰が悪いわけでもない。間違ってもいない。

広樹は僕と美代子の喜ぶ顔を励みにしてがんばって、僕と美代子は広樹ががんばっているを見るたびに嬉しくなった。幸せな家族だったのだと思う。我が家は幸せだった。幸せな日々を積み重ねながら、少しずつ不幸せな未来へと向かっていったのだ。

この文章の重さを噛みしめられるのは、ある程度の長さを生きてきた人間の特権なのではないかなあ。

やるせない、本当にやるせない物語なのだけれども、読み終えると少しだけ「生きてみようかな」という気がしてきます。

中年男性諸氏は、ぜひ。

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文学賞メッタ斬り!|第138回芥川賞・直木賞選考会

そういえば、もう今日発表なんですね。今回は候補作のリストを見た時点であまり僕としては気分が盛り上がらず、毎回楽しみにしていた「メッタ斬り!」も全然読んでませんでした。ここで紹介されている「候補作のあらすじ」をみても、「これ読んでみよう!」という気になるのは、桜庭一樹さんの『私の男』と津村記久子さんの『カソウスキの行方』くらいです。考えようによっては、「タイトル獲ってなきゃ、手にもとらないような本」を読んでみようという気になるのも、文学賞の功績なのかもしれませんが。

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芥川賞に川上未映子さん 直木賞は桜庭一樹さん(朝日新聞)

この時間に両賞とも発表されたということは、比較的すんなりと決まった、ということなのでしょう。

僕は桜庭さんに『私の男』で授賞するのなら、『赤朽葉家の伝説』のときにあげてほしかったなあ、とも思うのですが、これもまた直木賞、なんですよね、きっと。『鉄道員』で浅田次郎さんが受賞したときにも、「なぜ『蒼穹の昴』に……」って思ったものねえ。

なんとなくむさくるしい候補者のたちのなかで、話題性も華もある受賞者で良かったといえば良かったのですが、結果的に、「タイミングに恵まれた」面もあるかもしれませんね。

そうそう、『私の男』は、正直ちょっと「重そう」な感じなのですが、桜庭さんの読書日記は本好き、とくにミステリ好きにはオススメです。「読み手」としても、これだけ本を読んでいる人って、なかなかいないんじゃないでしょうか。桜庭さんの「芸域」の広さは、この読書量に支えられているのだろうなあ。

桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

↑の僕の感想はこちら。



私の男

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