琥珀色の戯言

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ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション ☆☆☆☆☆


あらすじ
正体不明の多国籍スパイ集団“シンジケート”をひそかに追っていたIMFエージェントのイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、ロンドンで敵の手中に落ちてしまう。拘束された彼が意識を取り戻すと、目の前に見知らぬ女性と、3年前に亡くなったはずのエージェントがいた。拷問が開始されようとしたとき、その女性は思わぬ行動に出る。


参考リンク:映画『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』公式サイト


 2015年22作目。
 平日のレイトショーを観賞。字幕版。
 お客さんは15人くらいでした。

 
 トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル』シリーズ5作目。
 このシリーズ、僕のなかでは『2』が最高傑作で、その後はちょっとマンネリ感が強かったのです。
 『3』までは映画館で観たのだけれど、前作『ゴースト・プロトコル』は、DVDで観ている途中に寝てしまい、結局観ないままになっていました。


 今回の『ローグ・ネイション』、ネットの感想ではえらく評判が良くて、正直、「これは、ステマか?」とか疑っていました。
 だって、『ミッション・インポッシブル』なんて、どう作っても、マンネリにしかならないんじゃない?

 
 でもまあ、ものは試しというか、夏休みの宿題をこなすようなつもりで、観たんですよ。
 観て驚きました。
 いやあ、これは確かに良い映画だ。
 ものすごく感動する、とか「泣ける」というような映画ではなく、「アクション映画、スパイ映画としての面白さ」を徹底的に追求した傑作だと思います。
 観終えたあと、『スパイ大作戦』のテーマを小声で口ずさみながら車に乗り、爆発物が仕掛けられてないだろうな、なんて思ってしまう自分に苦笑しながら、意気揚々と家に帰れる幸せ。

 
 アクションシーンって、もう出尽くした感じがして、どんなすごい特撮を観ても「お約束」感が拭えないのですが、この映画の場合、イーサン・ハントの「痛み」みたいなものが伝わってくるし、映画的には死なないのがわかっていても、何度も「これ死ぬだろ……」と心の中で呟いてしまいました。
 ものすごく斬新、とか、これが見せ場、という大きなクライマックスがあるわけではないのだけれど、どのアクションも、ものすごく丁寧に撮られていて、どのシークエンスにも、ひとつかふたつ、「これはちょっとだけ今までとは違う」と感心するような意外なシーンがあって。
 ちょっとした伏線の回収の仕方もいちいち気が利いているし(イーサン・ハントって、絶対性格悪いというか、根に持つタイプだよなあ、とラストを観て思いました)、場面の転換もスムースで、こんなに切り詰めてもいいのか、と思うくらい、「演技者の余韻」みたいなものを排して、観客を飽きさせないようにしているのです。
 ある意味、アクション映画のベスト版、みたいな作品なんですよ。
 でも、ネットで30秒とか1分とかのショートムービーを毎日観て、「短い時間でのクライマックス」に慣れている世代には、このくらいの密度じゃないと、冗長に感じられるのかもしれません。
 秘密のファイルよりも、一国の元首のほうが警備が緩いようにみえたのも、現代的ではありますね。
 まあ、人間は金庫に閉じ込めておくわけにはいかないし。


 途中の劇場での『トゥーランドット』のシーンとかすごいですよほんと。
 この映画のためだけに、これだけのことをやるのか、と。
 『アマルフィ 女神の報酬』を思い出してしまったのですが、比べるのは、『アマルフィ』にとっては、ちょっとかわいそうな感じです。
 『アマルフィ』だって、可能であればここまでやりたかったのかもしれないけれど、日本国内だけで黒字にしなければならない映画に、そんな予算があるわけでもなく。
 映画の入場料というのは、この『ローグ・ネイション』も、『アマルフィ』も同じなわけで、作る側にとっては、不公平なシステムではありますね。
 僕だって、劇場公開される映画が、みんな「ハリウッド超大作」になることを望んではいないけれど(ただし、みんな『アマルフィ』になって欲しいわけでもない)、こういうのを観せられると、「グローバル映画とローカル映画の格差」みたいなものを痛感せずにはいられません。
 それは日本映画が悪いとかそういうんじゃなくて、いくら巨人や阪神ソフトバンクでも、ヤンキースレッドソックスとは財政規模そのものが違うから、スター選手にメジャーリーグと同じ額の年俸は出せない、というのと同じなんだろうな、と。
 もちろん、世界中で制作されているのは「非ハリウッド映画」のほうが多いわけで、みんな「予算なりの工夫」をしているのでしょうけど。


 ある意味、これからのアクション映画の「基準」になる作品ではないかと思います。
 「斬新」ではなくても、これだけの完成度のものを見せられると、これを比較されるこれからの作品は、大変ですよね。


 最後に「字幕・戸田奈津子」というのを観て、ちょっと久々に名前を見たな、ああ、トム・クルーズの映画だからな、とひとりで納得しました。
 これだけ満足度の高い娯楽映画というのは、そうそうあるもんじゃない。

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