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2016-01-15 【読書感想】教養は「事典」で磨け ネットではできない「知の技法」

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Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)

辞書・辞典・事典・図鑑。これらを、引いたり調べたりするものだと思ってはいないだろうか。また、大人になってからはすっかり縁遠くなってしまった、という人はいないだろうか。実は辞書や事典は、生涯をかけて読まれるべき、実に面白い「本」である。いまやインターネットでなんでも調べられるが、そこで得られる知識は、入力したキーワードから予測される範囲の事柄にすぎない。一方、辞書や事典を読むのにキーワードはいらない。適当にページを開けば、必ず知らない何かが記載されており、思いもよらなかった知識を得ることができるのだ。本書では、こうした類の本を「事典」と定義し、おすすめの作品を紹介する。


 そういえば、最近、「事典」って、英和辞典か、仕事で使う専門用語辞典くらいしか、ページをめくった記憶がないなあ、そういえば、子どもが大好きな「のりもの図鑑」は、一緒に見ているのか……とか思いながら読みました。

 この年齢になって、『きかんしゃトーマス』のきかんしゃの名前とか、『妖怪ウォッチ』の妖怪の分類とか、そうそう、「はたらくくるま」の種類とか、やたらと詳しくなっています。

 子ども用の図鑑をみていると、僕が子どもだった頃よりも、図鑑はすごく見やすくなって、「進化」しているなあ、と感じます。

 そして、僕もけっこう「辞典や図鑑を端から端まで読むのが好きな子ども」だったのです。


 ボクは幼い頃、百科事典を読んでいた。引くのではなく、文字通り読んでいた。「あ」から順に読み「ん」までたどり着いたら、また「あ」に戻った。そうして、五十音順以外にはルールのない状態で並べられているものを楽しく読んでいた。

 そうやって見つけた言葉のひとつに「クリスマスツリー」がある。おそらく、百科事典や国語辞典でクリスマスツリーの意味を調べる人はいないだろう。調べるまでもなく、あ、あれね。とわかるからだ。

 しかし、五十音順に眺めていて目に留まったクリスマスツリーの項目は、12月になって飾られるもみの木ではなく、石油採掘に使うリグ(やぐら)について説明していた。プロはそのリグをクリスマスツリーと呼ぶのだ。

 グーグルでこれを知ろうと思ったら、検索窓にはクリスマスツリーに並べて「掘削」とか「リグ」とかいった言葉を入力する必要があるだろう。しかし、リグをクリスマスツリーと呼ぶと知らない人に、「掘削」や「リグ」というキーワードは思い浮かばない。つまり、グーグル先生はキーワードを持たない人には何も教えてくれないのだ。

 一方、辞典を読むのにキーワードはいらない。適当にページを開けば、そこに必ず何かが記載されている。そのページをたまたま開いたという偶然が、未知を既知に変える。だから事典は素晴らしいのである。


 グーグルは、なんでも検索できるけれど、逆にいえば、検索したもののことしか教えてくれない。

 「紙の辞書派」の人たちは、「調べたい言葉の隣の項目が、自然と目に入ってくる」とか、「昔、国語辞典で調べているとき、つい、Hな言葉とか引いてニヤニヤしていたでしょう?ああいうのは紙の辞書の強みなんですよ」とよく仰っています。

 ただ、いま40代半ばの僕からすると、そういうのって、「辞書マニア」か、僕よりひとつ上の世代の「紙の本への思い入れが強い世代」の判官贔屓のような気もするんですよね。

 ネットでも、Wikipediaで何かを調べていて、ちょっと気になる単語のリンクを辿っていくうちに、いつの間にか本来調べたかったこととは全く別の項目を読んでいることはよくありますし、これだけモノや情報が溢れている時代の子どもたちは、紙の辞書を最初から1ページずつ読むほど娯楽や知識に飢えてもいないというか、そもそも、そんな時間が無いんじゃないかと思うのです。

 紙の辞書のメリットというのは、「検索するための機械が不要である」とうことと、紙の辞書を引くことに慣れている人にとっては、使いやすい、ということくらい。

 そもそも、電子辞書でも「ランダムにいろんな言葉に跳ぶ機能」なんて、すぐに作れるはずです。

 もしかしたら、どこかがもう作っているのだろうか。


 僕自身は、まだ「紙の書籍への愛着」があるので、「気持ちはわかる」のですけどね。

 なんのかんのいっても、紙の本が無くなることはないと思うし。


 この新書のいちばんの読みどころは、著者が、さまざまなジャンルの「面白い事典」を紹介している章です。

 世の中には、本当にいろんな事典があるのだなあ、と。

 値段も、数万円クラスから、数千円で買えるものまで。

 事典というのは、「わからないことを検索する」ためだけではなく、あるジャンルの知識を一通り網羅するためにつくられているものもあるのです。


 朝倉書店の『現代科学史大百科事典』について。

 たとえば「せ」を引くと、こんな具合に言葉が並ぶ。「性」「斉一性と激変説」「星雲」「生化学」「精神科学」「生態学」「精度と確度」「政府」「生物学用機器」。この並びを見るだけでも、この事典が科学全体を網羅していることがわかる。しかも、一つひとつの解説は科学史なので、時系列でたいそう読みやすい。たとえば先の「生物学用機器」では、光学顕微鏡が誕生し、聴診器が生まれ、それから電気測定装置ができたという流れがわかる。こうした技術発展の過程は、「光学顕微鏡」をウィキペディアで調べてもわからない。

 項目にも発見がある。先の「政府」もそうだし、「啓蒙活動と産業革命」という項目を見ても、なるほど科学を読み解くにはこういった複合的な視点が必要だと気づかされる。

 

 小学館の『城のつくり方図典』の項より。

 これから城を建立する予定のない人にもおすすめの、城ブックである。5章立て、フルカラー250ページで図版も写真も惜しみなく使われていて、図典の名に恥じないし、ハードカバーであるのもいかにも図典というたたずまいで好ましい。

 内容は書名の通りで、曲輪(城を構成する区画)を築くところから始まり、土塁の盛り方、天守の上げ方など、城の構造に関わることが丁寧に書かれていて、土木関係者ならこの一冊があることで実際に城をつくれるのではないかと思う。土木関係者でない人は、時代小説を読んでいるときやテレビで城を見たときに浮かぶ疑問を解くために備えるといいと思う。城めぐり好き、時代劇好き、城の模型好きにもバイブルと言える存在だ。


 ちなみに、『現代科学史大百科事典』は936ページで29160円。『城のつくり方図典』は、フルカラー250ページで、3024円。

 城を建立する予定はありませんが、『城のつくり方図典』を買ってしまいそうです。

 こういう「事典」がけっこうたくさん紹介されているんですよね、この新書では。


 事典好きにとっては欠かせない「創元社」への取材も収録されていて、「事典」の世界に興味がある人には、格好の「事典の世界への入り口」になる新書だと思います。

 個人的には、こういうちょっとマニアックな事典こそ、どんどん電子書籍化してほしいんだけどなあ。



城のつくり方図典

城のつくり方図典

 

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