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2016-01-19 【読書感想】リーダー論

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リーダー論 (講談社AKB48新書)

リーダー論 (講談社AKB48新書)


Kindle版もあります。

内容紹介

AKB48を卒業する高橋みなみが、最後に語る"リーダー論"。


24歳にして、300人を超すメンバーたちを、ときに厳しく叱咤し、ときに優しく励ましながら率いてきたAKB48グループ総監督・高橋みなみ。14歳でAKB48に加入したときは、人の先頭に立つタイプではなかった彼女が、10年間のAKB48の活動の中でいかにして現在のような「まとめる力」を身につけたのか。

メンバーをつなぎ、チームをひとつにするコミュニケーション術、心を打つスピーチの秘訣、努力することの意味や嫌われる勇気を持つことの大切さなど、リーダーとしての心得を豊富な実体験をもとに語ります。

本書はAKB48グループのメンバーやファンへ向けた高橋みなみの"総監督としてのラストメッセージ"であると同時に、一般の社会人から学生まで、幅広い世代の人たちに「へこたれずに生きるヒント」を与えてくれる自己啓発書になっています!


 たぶん、安倍晋三首相に次ぐ、「日本で2番目に有名なリーダー」、AKB48高橋みなみさんが語る「リーダー論」です。

 2016年4月に、高橋さんはAKB48を卒業することが発表されましたが、高橋さんは、そんなにルックスや歌唱力、ダンスが突出した存在ではありません。トークがものすごく面白いわけでもない。

 本人の意識はさておき、AKBをつかず離れず、という感じで見てきた僕にとっては、「高橋さんにとっての最大の個性は「AKB48のリーダーであること」だったのです。

 この卒業というのは、AKBグループにとっても、本人にとっても、これから大変だろうな、という気がします。

 でも、この本を読むと「後輩に道を譲って、育てる」ということについても高橋さんはずっと考えていて、自分とは違うタイプの横山由依さんに総監督の座を任せるのもまた、高橋さんのリーダーシップの「締め」なのです。

 この本、大企業の管理職とか政治家にとっても役に立つところはありそうですが、いちばん参考にできるのは「もともと年齢差とか格の違いが少ない、同じような人間の集団のリーダーになった人」だと思います。

 部活のキャプテンに指名された人とか、趣味のサークルのリーダーとか。

 もともと同じような場所にいた人を、リーダーとして動かすのは、序列で上から命令できる組織とは違う難しさがあるのです。


 高橋さんは、AKBのスタートからのメンバーのひとりだったのですが、初期は、年齢的には下のほうだったそうです。

 グループ内には、年長グループと年少グループの間に、ちょっと溝があった、ともおっしゃっています。

 そんななか、高橋さんは、こんな工夫をしていくのです。

 コミュニケーションの仕方も意識的に変えていきました。例えば、楽屋に入った時に全体ではなく、その人に向けて挨拶をする。ひとりひとりに「おはようございます」と言いに行って、「おはよう、たかみな」という言葉をもらう。リハーサルの時には「ここの踊りがわからないんです」と、同世代ではなく、あえて年上の人に聞きに行って教えてもらうようにしました。

 その結果、私がチームの中でリーダー的な役割を果たす時も、「たかみな、頑張れ〜」という感じで見守ってもらえるようになりました。そして、徐々に徐々に、チームを引っ張ってまとまりを作っていくことの楽しさ、達成感や充実感に魅了されていったんです。

 あの頃は、ずっと計算式を解いていた感覚です。「あそことあそこがケンカしてる」「あそことあそこは仲がいいんだ」という様子を楽屋の中でじっと見つめながら、どうやったらみんな仲良くひとつにまとまっていけるのかを考えて、自分に出来ることがあれば行動に移していた。ある意味、自己満足のためだったと思うんです。みんなの仲が良かったら、自分も楽しいから。


 高橋さんは、「組織のリーダーであるためには、ひとりひとりのメンバーを大事にすること」「『全体』ではなく、『個人』に向かって、ちゃんと顔を見て、名前を呼んで声をかけ、コミュニケーションをとること」の重要性を何度も話しています。

 チームのメンバーにとって、いいリーダーとはどういう人か。それは、「自分のために」何かしてくれる人だと思います。「チームのために」頑張ってくれる姿ももちろん立派ですが、それって結局、他人事になっちゃうんですよね。「自分のために」頑張ってくれているんだ、「自分を見てくれているんだ」という信頼感がないと、いいリーダーとは思われないんじゃないでしょうか。


高橋さんは、「自分は芸能人として、前田敦子大島優子のようなオーラがない」と仰っているのですが、だからこそ、「みんなのため、AKBのために何ができるか」をずっと考えてきたのです。

 人が変わってしまう姿を見るのが、一番悲しいです。

 AKB48に入って来た頃は元気で、目を輝かせて私に自分の夢を語ってくれたのに、何かひとつのちっちゃなことがきっかけで、心が変わってしまう。ヘンに自分の立ち位置をわきまえはじめて、夢を見ることもなくなってっちゃう子たちって正直、今までいっぱい見てきました。そのまま卒業してしまった子も、たくさんいます。

 私が声をかけることで救えたケースもあるとは思いますが、ほんの一部です。救えなかったケースのほうがぜんぜん多い。

 元気な子ほど繊細なんです。「大丈夫、大丈夫!」と言っている子ほど、折れるときはゆっくりとではなく、ぽきっといってしまう。その前例を知っているので、なるべく早く「大丈夫?」と声をかけたい。「分かっているよ」と伝えたいんです。「ひとりじゃないよ。少なくとも私は、あなたのことを見ているよ」と。

 例えば選抜総選挙の時、テレビに映るのはステージの真ん中です。会場にいる観客のみなさんも、視線はそこに集中していると思います。でも、順位発表が始まってしばらくすると、「自分はもう呼ばれないんだ」と泣き崩れたメンバーが、ステージの袖に倒れ込むようにして下がっていっているんです。

あらためて考えてみると、AKBって、スポットライトが当たるところとそうでないところの格差が大きいのだよなあ、と。

メンバーの「序列」みたいなものも、あれだけの大所帯にもかかわらず、そんなに急激に変化することはない。

卒業やスキャンダルで転落するメンバーがいたり、指原莉乃さんや島崎遥香さんのように急上昇してくる人がいたりするけれど、総選挙の上位は、ほとんど同じ顔ぶれが占めています。

上位のメンバーはメディアへの露出の機会も多いので、よほどのきっかけがなければ、「下克上」は難しい。

高橋さんは、リーダーとして、長年、「総選挙でテレビに一度も名前を呼ばれることもなく、泣き崩れ、下がっていったメンバー」を見てきたのだよなあ。

それは、ものすごくつらいことだったはず。


 高橋さんは、この本の最後に、こう仰っています。

 でも、2014年12月に卒業発表をしてから、気が付きました。

 私はなんのために、AKB48の中でリーダーとして活動してきたのか。「みんなのために」じゃない。「自分のために」だと思えたんです。

 もしも私がいちメンバーだったら、グループを卒業することに対して、ここまで注目していただけることはなかったと思います。グループを引っ張る立場の人が卒業するから、世間の人がびっくりしてくれた。自分の名前を知ってもらう大きなきっかけは、総監督に就任したことだったと思いますし、幅広い世代の方々に知ってもらえたのは、この肩書の持つインパクトが大きかったからです。

 メンバーやファンのみなさんに希望を持たせる言葉を伝えることができたり、「たかみなさんがそう思っているなら、こうしよう」と思ってもらえたのは、総監督という肩書があったからこそ、なんです。

 僕は、高橋みなみさんって、組織の中のほうが「活きる」人なんじゃないかな、と思うんですよ。

 でも、世の中っていうのは、結局、「組織」なんだよなあ。

AKB48よりも、さらに大きい。


世間の「ビジネス書」が「あまりにも当たり前のこと」だと思い込んでいるのか、スルーしてしまっている「人間関係の基本」が語られていると僕は感じました。


みんなの山本彩 (ヨシモトブックス)

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