ビルマの竪琴」(1985/市川崑

邦画の戦争モノは嫌われるらしく、世間ではけっこう酷評されてるようです。だいたいこの映画は1956年の白黒映画を同じ監督で再映画化。当時の売れっ子役者でキャスティングをすれば、おいしいものをたくさん食べてる人たちによる、戦争ごっこにしかならざるを得ないって事なのか。お前らに戦争の悲惨さは伝えられねぇよ、と世間は言いたいのか。

いやしかし、当時10歳になろうとしていた私はこの映画を見て泣いた。それ以降何度も見る事になる。私が見た映画の回数はこの映画が1番だ。

ビルマの地で終戦を迎えた井上隊長(石坂浩二)率いる部隊。水島上等兵中井貴一)は他の日本軍にも降伏を勧めようと隊を離れ、単身放浪する事になるのだけど、そこで彼が見たのは日本兵の無残な屍の数々。彼は日本兵の霊を慰めるべく、僧侶となってビルマに残る事を決めるのであった。

いや、日本兵を慰めるのはいいんだけど、イチイチ僧侶になるかね。別に僧侶にならなくても、慰霊できるでしょ、兵隊のままでも。まあ、俺が水島でも僧侶になるけどね。絶対なるね、僧侶に。

で、問題の名シーンですよ。僧侶になった水島上等兵を見つけ出した同じ部隊の仲間達は水島に言うわけですよ。

「水島〜!一緒に日本に帰ろ〜!」

全国の水島姓の小学生を恐怖のどん底に陥れた名台詞。当時、水島という苗字の小学生はこのセリフを毎日言われ続ける事になるのだ。「一緒に日本に帰ろう」である。すでに日本にいるのにも関わらずだ。

それはさておき、水島が取った行動とは、そう、竪琴を弾くのである。音楽好きだったこの部隊で言葉に換えて弾く竪琴の美しい旋律。

いやいやいや、しゃべろうよ。水島しゃべろうよ。せっかく必死に探して見つけてくれて、それで一生懸命、一緒に帰るよう説得してくれてる仲間達なんだから、ちゃんとした理由を言おうよ。黙って竪琴を弾いちゃうわけですか、あなた。まあ、俺が水島でも竪琴を弾くけどね。間違いなく弾くね、竪琴。

そんなわけで、この映画は何度見ても泣いてしまうのです。

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