暮しの器 「むぎわら」の日記

元「暮しの器むぎわら」店主の独り言

「日々の器 (写真と文 祥見知生)」(河出書房新社)を読んで

久しぶりに、共感する器の本を読みました。
著者は鎌倉で器のお店を経営されているようです。
日々の器、つまり普段使いの器ですが、それを一般的に云々するのではなく、毎日の生活の中で器を使い続けることの意味、使う人作る人の思い、器と料理の関係などを詩情豊かにうたい上げています。
構成は次のようになっています。
 第1章 ごはんの器
 第2章 器を愛する
 第3章 時を経た器
 第4章 うつわびとを訪ねて
どの章からも、著者の日々の器に対する深い想いが伝わってきます。
特に「うつわびと」という言葉がいいですね。
作品的なものばかりがもてはやされる現代にあって、日常的な当たり前の器を、当たり前の視点できちんと評価することはとてもすばらしいことだと思います。
私はいつも器の基本は、陶磁器だったらごはん茶碗と湯呑、漆器だったらお椀、ガラスだったらコップと思っているので、著者の想いと共通するものがあり引き込まれるようにこの本を読んでしまいました。
昔、渡辺俊明先生がごはん茶碗の大切さを話されていたことを久しぶりに思い出しました。先生はある町から依頼されて、成人式の記念品にと、何年もごはん茶碗の絵付けを続けられたそうです。
後味のよい本でした。