レジェンド・オブ・ゾロ


 ヒーローも悪役も冒険活劇のパターン通りなんだけれど、そこが楽しい。スパニッシュギターの音とともにゾロを演じるアントニオ・バンデラスが現れると、民衆(ヒスパニック系)はみんな拍手する。悪役は顔に傷のあるワイルド系と何かをたくらんでいるクール系の二種類ちゃんと用意されていて、彼らは民衆の敵であり、アメリカの敵である。彼らの戦いはリアリズムではありえないようなもの(馬で汽車の上に飛び乗ったりする)だけれど、バンデラスとお茶目な黒馬トルネードのコンビなら許せてしまう。
 さらに今回は家庭内コメディの要素もあって、妻と子の活躍も楽しい。ゾロも家庭に戻れば家族サービスの足りない夫、父であり、妻や子に文句を言われて困ってしまうし、妻が他の男といるのを見れば、やけになって泥酔してしまう。妻エレナ役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズはバンデラスとの離婚騒動を楽しそうに演じていて、悪役を蹴っ飛ばすときの表情とか結構迫力がある。父親そっくりのアクションで意地悪な先生をやっつけてしまう子供ホアキンアドリアンアロンソ)の活躍も見所で、最後は父親の馬に乗って颯爽と登場する。
 セクシーなバンデラスだけれど、今回は自分の周りに女たちが寄ってくるわけではなく、召使に裸を見られるとおどおどするし、妻に嫉妬して酔いつぶれてしまい、子供にも愛想をつかされているお父さんである。ゼタ=ジョーンズもそうだけれど、セクシーなのにコメディも演じられる俳優というのは映画を楽しいものにしてくれる。