生活記録

日々のこと(旧はてなの茶碗)

亂歩展

幻影城

東武百貨店にて『江戸川乱歩と大衆の20世紀展』を觀る。會場は可成り込み合つてゐたので落着いてみることもまゝならぬ有樣だつた。

私にとつての亂歩の印象とは、御多分に漏れずポプラ社の少年探偵團だつたり、土曜ワイド劇場だつたりする。一體自分の中で、これらを同じ作者の世界として、どのやうに位置附けて兩立させてゐたのか、今思ふと乍我不思議だ。

あれこれ見隨ら、亂歩の探偵小説と云ふのは、昭和の(そして東京の)風俗小説でもあつたことが窺ひ知れる。あと亂歩の原稿の字は、とても讀みづらい字だつた。

紙芝居

會場のすぐ隣で、紙芝居の實演が行はれる處だつたので見物してゆく。淺草の時代屋紙芝居もしてゐる*1のか。

紙芝居は昔のものでなく、今囘新たに書き起こされたものを使用してゐる。當世風のモダンな畫風だ。私は柳瀬茂ばりの、あの泥臭い繪柄を期待してゐたけれど致し方無い。今は平成なのだ。

お話が始まると、筋を見知つてゐるとはいへ、それなりに話に引き込まれる。演題の「少年探偵団」は傍役を含めても登場人物が十人以上は下らない。これを一人で讀むのは存外骨かもしれないと思つた。無論繪があるのだから、同じ調子で讀んでも案外誰も氣にしないだらうが、讀み手はきちんと、人物毎に演じ分けてゐた。

土藏

立教大學まで歩き、舊江戸川亂歩邸の土藏(通稱幻影城)を見學する。此處も込んでゐて三十分位待たされた。邸宅の書齋も、中には這入れないが公開されてゐた。そして狹い土藏へと愈々差し掛かる。ところが藏のとば口の處で、ちようど凹型に張巡らされたアクリル板に隔てられて、玄關口の中より先には進めなかつた。板越しに藏書を見渡しただけで呆氣無く見終へて了つた。