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旧ブログ:異色な物語その他の物語

2010-03-05

「NOVA 1」 大森望責任編集


 書き下ろし日本SFコレクションである。一昨年あたりからまた少し現在の日本SFを読み出したような人間にとって、こうしたアンソロジーは有難い。短篇好きだし。(以下特に面白かったものに○)

「社員たち」北野勇作 敵の攻撃によって沈んでしまった会社を掘り返す社員たち。シュールなノリがいいんだけど、もっと長くてもよかったかなあ。
「忘却の侵略」小林泰三 姿をとらえられない侵略者がもう人類を攻撃しているらしい。会話で話をすすめていく形式の原型は落語なのかな。まあまあ。
エンゼルフレンチ藤田雅矢 数学科で学ぶ主人公の彼氏が宇宙飛行士に選ばれたという。体の弱い彼は無人探査機に無償で脳情報を提供することによって、自分の分身を宇宙に飛ばすことになったのだ。しかし脳情報を転写したのちに、彼は飛行機事故にあって亡くなってしまう。この人の短篇は「奇跡の石」とか叙情性があって好きで、途中までは大傑作にだと思ったんだが。ちょっと尻すぼみ気味。
「七歩跳んだ男」山本弘 月に死体。月面で起こった初めての殺人事件なのか。トンデモネタを含んだ実にらしいSFミステリ。もうちょっとシリアスにキメてもよかったのでは。
「ガラスの地球を救え!」田中啓文 SFヲタクの夢<SCI-FIランド>をめぐる南海電鉄宇宙船をご利用いただき毎度ありがとうございます!この人しか書けない見事なアホアホ話。
「隣人」田中哲弥○ 住宅地でなぜか本格的に牧畜や農業を行っている隣人。糞尿で溢れ、匂いが気になってたまらないが、なぜか家族は気にしていない。主人公の違和感といら立ちがリアルに伝わってくる。
「ゴルコンダ」斎藤直子○ 先輩の新居を訪ねる。美人の奥さんがいるので嬉しい主人公だが、なにやら家の様子が変で。「ガラス〜」と並ぶドタバタものだがコンパクトにまとまっていてよかった。
「黎明コンビニ血祭り実話SP」牧野修 閑散とした夜明けのコンビニにいるのは癖のある客ばかり。やるせない気分で客を眺めるバイトのカワタの前に、さらには強盗まで登場。深夜のコンビニの情景からあっという間に言語実験とドロドログチョグチョ趣味のあいまった著者十八番の世界へなだれ込む。
「Beaver Weaver」円城塔○ 宇宙戦争を回避するために改造された、数理構造を齧りとる海狸(ビーバー)をめぐるスペースオペラ(なのか?)。海狸だからダムを作るわけで、「大いなる正午」(荒巻義雄)と並ぶ時空土木SF(なの?)。これも(「ゴルコンダ」「黎明コンビニ〜」と同じく)テキストによる現実改変ものでもある。「観測者を発生する技術」っていうあたりのセンスがさすが。
「自生の夢」飛浩隆○ 稀代の殺人者間宮潤堂は拘留中。彼との接触を図ろうとする<わたし>の目的とは。これまたテキストによる人類の変容がテーマになっていて、多少込み入った内容だが、やはり面白く集中No.1。映画、小説「白鯨」のオマージュもあり、言葉遊びも多く含まれているようで、素養のある方はより楽しめそう。「白鯨」読まなきゃなー。
屍者の帝国伊藤計劃 フランケンシュタインの怪物をつくる技術が広まった十九世紀末を舞台にした作品の導入部(絶筆)。A Study In Scarletを読んで、ようやく主人公の正体が分かったよ。それを考えると、虚々実々の様々な事件・人物とリンクさせる構想があったんだろうなあ。最高に胸躍る放っておくには勿体ない設定なんで、シェアード・ワールドものとしてアンソロジーが出来るのを夢見てしまうなあ。

 結果的にテキストに関するものが多くなったので、テーマ性があるともいえるが同じテイストのものが多いともいえる。さてお次はどんなものに。
 



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