『アル中病棟』失踪日記2 吾妻ひでお

 吾妻ひでおの傑作自伝漫画『失踪日記』の続篇。失踪の話中心であった前作で終盤に少し出てきたアルコール依存症治療の入院中の話の詳細が描かれている。
 基本的には管理された単調な生活ではあるが、一般的な病院の入院生活とは異なる、個性的な人物たちによる独特の社会が形成されている様子が興味深い。背景にある依存症という現実は本人や周囲に取って大変重く、一口で語れるようなものではないだろうが、本書ではギリギリのところでユーモアを持って描かれているのが素晴らしい。本書での妬み・悲哀・不安といったネガティヴな感情に襲われる人間の生き難さは、普遍的なものとして依存症ではない我々にもずしりと伝わっていくる。
 従来の三頭身ではない現実的寄りにアプローチのある絵柄については、デッサンを学校で学び直したという巻末の対談でのエピソードが泣かせるが、同時に漫画家という仕事の大変な過酷さも感じられた。