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旧ブログ:異色な物語その他の物語

2013-10-19

映画‘パッション’


 最新の携帯デザインを扱う広告代理店で、奔放で華やかなクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)と有能で控えめな部下イザベル(ナオミ・ラパス)は良好なパートナーシップで仕事を成功させている。しかしイザベルは密かに上司の恋人ダークと関係を持っていた。イザベルは自らの片腕ダニと共に画期的な広告の動画を作り上げたことから、クリスティーンとの間に亀裂が生じ始める。



 デ・パルマの最新作。最先端のビジネスオフィスが背景になるようなことは割合デ・パルマには少ない印象があり、前半はクリスティーンとイザベルとダークの三角関係が誰が真の悪か定まらない形で(まあダークは悪いけど)抑えた感じの心理劇として描かれ、おっこれは新機軸?と思ったが、成功するイザベルにクリスティーンが攻撃を開始し画面が暗転するといつもの画面とストーリーのめまいを起こすほどの映像マジックであっという間に(これまたいつもの)唖然とするようなラストへまっしぐら。うん!これでなくちゃ!いや〜堪能いたしました。監督、70越えても元気一杯なのがうれしい。一般性という意味では確かについていけない人も多々ありそうで、公開は短いのは残念だが仕方のない気もするが、是非多くの方に観て欲しい作品。あとリメイクだそうだが元はどんな展開だったのかなあ。



 



 以下若干ネタばれ。



 「ファム・ファタール」でもあった夢オチ的な手法が複数回使用され、まあある意味禁じ手がちょっと多いのは批判される可能性はあるが、流石に熟練の使い手であり、悪夢の生々しい手触りが巧みに表現されている。いやむしろ悪夢そのものを描き出している映画ともいえる。また転がる死体という描写も「ブラック・ダリア」などと共通し、主要なモチーフなのだなあと思った。



 

2013-10-13

『アル中病棟』失踪日記2 吾妻ひでお




 吾妻ひでおの傑作自伝漫画『失踪日記』の続篇。失踪の話中心であった前作で終盤に少し出てきたアルコール依存症治療の入院中の話の詳細が描かれている。
 基本的には管理された単調な生活ではあるが、一般的な病院の入院生活とは異なる、個性的な人物たちによる独特の社会が形成されている様子が興味深い。背景にある依存症という現実は本人や周囲に取って大変重く、一口で語れるようなものではないだろうが、本書ではギリギリのところでユーモアを持って描かれているのが素晴らしい。本書での妬み・悲哀・不安といったネガティヴな感情に襲われる人間の生き難さは、普遍的なものとして依存症ではない我々にもずしりと伝わっていくる。
 従来の三頭身ではない現実的寄りにアプローチのある絵柄については、デッサンを学校で学び直したという巻末の対談でのエピソードが泣かせるが、同時に漫画家という仕事の大変な過酷さも感じられた。

映画‘チャップリンの黄金狂時代’‘間諜X27’


 

新橋文化で2本立て。以下雑感(内容に触れてます)。



チャップリンの黄金狂時代’
 ゴールドラッシュの時代に一攫千金を狙い雪山に例のいで立ちで乗り込むチャップリン。猛吹雪の中飛びこんだ山小屋に指名手配の凶悪犯。そこですったもんだするうちに金鉱を発見した男も避難してさらにひと騒動。何とか町に辿り着いて酒場の娘に一目ぼれして・・・。といった感じの話。
 革靴を食べるシーン、フォークとパンによる食卓での見事なダンスのシーン、崖ぎりぎりに置かれてしまった小屋でのギャグなどなど観たことのある有名なシーンがテンコ盛りだった。代表作なんですな。後のコメディ映画への影響力は当然ながら、体を張ったアクションにも特筆すべきものがあり、現代の映画でみられるユーモア風味のアクションシーンにも影響を及ぼしているのではないかと思った。ただ全体はコメディながら、凶悪犯による殺人もある一方で片思いの切ないシーンもあるという多面性がいちおう納得のいくプロットに収められているものの、それぞれの要素は分離してブツ切れのようにも感じられた。何はともあれ、名シーンの数々は大変素晴らしく歴史に残る作品であるのは間違いない。
‘間諜X27’
 第一次大戦中のウィーン政府諜報機関にスパイとして働くよう打診された娼婦。スパイ活動をしているロシア大佐と運命的な邂逅をする。
 伝説の女スパイ<マタ・ハリ>がモデルになっているらしい。いやーこの映画は何といってもマレーネ・ディートリッヒ!不勉強ながら初めて出演作を観たんだけれども、いるだけで妖艶でどことなく頽廃的な空気を身にまといちょっと他にいないようなタイプの女優である。一つ一つの動きが独特で、一挙手一投足に魅入られてしまう。例えば椅子があって座る場合でもほとんど普通には座らず、横に腰かけたり斜めに座ったりゆっくり足を組んだりする。そういう意味ではわざとらしく感じられてもおかしくないのだが不自然じゃないんだよなあ、不思議と。これ他の人が形だけ真似するとコントにしかならない気がするよ(笑)。また垢ぬけない娘のコスプレもしていて、ある意味そういうアイドル映画ともとらえられるかもしれない。筋立てはシンプルでこれというほどのこともないのだが、冒頭からラストまで画面を支えるスターの存在があれば傑作になるということか。



2013-10-12

"Random Access Memories" Daft Punk




 最近70〜80年代のいわゆるB級Disco〜Boogieを好んで聴いていて、youtubeなどで検索をしていたらこのアルバムのLose Yourself to Danceが出てきた。ダフトパンクの新作かー。ダフトパンクの存在は知って多少は耳にしたことがあったが、すごくテクノが好きでそれも古典タイプのものが好きな人向けと思っていて縁遠く感じていたが、ゲスト参加のナイル・ロジャースとのコラボレーションがハマっていて自分のDisco〜Boogieの気分とドンピシャリ。ヴォーカルのファレル・ウィリアムスのカーティス・メイフィールド風のファルセットが70年代の空気を漂わせている。
 アルバムの方もゲストにジョルジオ・モロダーポール・ウィリアムズ(ああファントム・オブ・パラダイス!)と実に70年代な顔ぶれが並び実にオサーンの自分のツボをついてくる。本人達が生まれた頃の音楽なのにねえ。
 ちょっと他のアルバムも聴いてみようかなあ。

2013-10-04

『闇の宴 酒天童子異聞』 永井豪




手天童子」の作者永井豪が、“酒天童子”説話の謎を追うという漫画。いったい“酒天童子”の正体は誰だったのか。

永井豪によりラストに明かされる正体については、解説で学者により反論が示されていることから、学術的な内容とは言えないところが多々あるのだろう。しかしさすがに長年魅せられてきたモチーフらしく多くの資料に当たり各所に赴いた実体験が、自らの漫画というフィールドでフィクションパート多めでサービス精神たっぷりに表現され、なかなか魅力的な読み物になっている。研究というより、著者の発想のプロセスが読みどころのエッセイ漫画といったところだろう。ファンの方にはオススメ。「手天童子」が楽しみになるね<まだ読んでないのかよ

2013-10-03

『赤い惑星への航海』 テリー・ビッスン




 大恐慌NASA民間企業に売却され、火星飛行計画は頓挫。そんな中、ハリウッドから有人火星飛行を映画に撮ろうという話が持ち上がる。

 ユーモア短篇の名手ビッスンの本格SF。ハリウッドや火星飛行といった道具立てはいかにも王道路線だが、そこにアフロフューチャリズムの要素やラスタファリアニズムもあるかな、そんなところがユニーク。ビッスンをそういった作家と思っていなかったことでの発見もあるし、アフロフューチャリズムとラスタファリアニズムはよく考えればアフリカ回帰主義的につながりがあるもののFunkとReggaeとして分けて一緒に考えていなかった自らの迂闊さを気づかせられたし、非常に興味深い一冊だ。

twitterでこの本を紹介して下さったすけるさんによる読み応えのあるSF書評ブログ「わたしがSF休みにしたこと」での本書のレビュー。Jefferson Starship も含んでアメリカのポップミュージックの歴史への広がりを感じさせてくれる素晴らしい内容でその辺りにご興味の方は是非ご一読を。