トランプ大統領の政治スタンスと経済政策は正当化できるか

トランプ大統領の経済政策は滅茶苦茶だというのが殆どの論評である。トランプ氏はサミットの共同宣言は承認しないと宣言した。安倍首相が「自由で公正な貿易ルールを確認したサミットの宣言採択」と語っていたのは、フェイクそのものである。

自由貿易を主張するのは、中国、日本、ドイツなどの輸出超過国。貿易制限を行なうのは輸入超過国のアメリカ。自由貿易の旗は自国の利益(輸出産業の利益)のためのもっともらしい主張のように思える。
アメリカが輸入品に追加関税を課すのは、これ以上は輸入できないというシグナルでもある。ところが輸出超過国はこれまでと同じように気前よく買ってくれという。
輸出超過国は、貿易の持続可能性を考える地点にいることを自覚しないといけなのではないだろうか。

アメリカがこれ以上は輸入できないと思っているなら、大幅減税や財政の拡大は矛盾している。そこが政治と経済の境目で、矛盾しているようなことが起きている。貿易赤字を減らすためには、利上げや増税、緊縮財政で国内の需要を冷ますのが経済学的に正当なやり方である。だがそれでは中間選挙を控え政治的にはもたないので、一方では国内の需要を煽るようなことをして、他方では輸入の入口を絞る。政治家としての政策の進め方である。日本でも3%の賃上げを政府が主導していながら、他方では外国人労働者の受け入れ拡大とか副業容認という矛盾する政策が大っぴらに施行されようとしている。
もしアメリカが増税と緊縮財政を採用して輸入が劇的に減ったとしても、輸出超過国は文句は言えない。それはアメリカの国内政策であるからだ。持続可能な貿易を考えてこなかった輸出超過国の知的怠惰が問われている。

参考
6/15日経経済教室「米利上げ、新興国への影響」「拡張的な政策運営避けよ」
一橋大学教授・武田真彦
拡張的財政政策と金融引き締めの組み合わせ:総需要管理面では互いの影響がバランスする。その結果として高金利、そして為替相場上昇を生む。現状のマクロ政策の組み合わせは資本フローへの影響をいたずらに高める。不要な財政拡張はトランプ政権による幾多の不適切な政策の一つに過ぎない。米国を「正気」に戻す努力を続ける必要がある。